まんじゅう草

829

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小さな×の小心者ども

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きみが作るアプリの×は小さいかな

×の大きさは、きみの心を
きみの勤める会社の心を映している。
罰ではない閉じるだけの×を
どうして、そんなに、小さく
作るのか
×に何を怖れている。

829は片手で繰り返し×をタップして
不本意なページを
開いては戻る開いては戻る
積んでは崩し積んでは崩し
今日は彼岸入りだ。
両手で操作するのは簡単だ
しかし彼岸と此岸の狭間には
大きな川が流れている。
幼子が両手では持ちにくい川原の小さな石を
片手で高く積み上げようとしているが
集中すればするほど
その石をつまんだ片手が震えて
あっと、もう片方の手を添えたところで
石は無情にも崩れてしまう。
花よ。解るぞ、緊張して飲みにくいコップを
両の手で持ってしまうに似たその震え。
829には解る。

「×と石は大きくあれ」

その首に刻印されし×は罰に非ず
愛の証しだ。タオルで隠すな春よ
勘のいい同僚女子を怖れるな、怖れるな春よ。
記憶の中の春よ
829は春が怖い
戻りなき、春よ
千年の闇に「春」を捧げる。
だから「波」を

小さな無数の渦が
彼岸に夜風の波が渦巻いている
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