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一章 はじまり
第一話 神を名乗る者
しおりを挟む「ブルハハハハッ! おい良く見ろ、この人間生きてるぜ」
「ぷっ、なんだコイツ呪いでもかけられたのか?」
二人組の男が同じところを指を差して大いに笑っている。
笑われている張本人――鹿羽無苦朗は唖然と男たちを眺めていた。
男。男で正しいはずだ。しかし二人の姿を見ているとつい男ではなくオスと言い表しそうになってしまう。
こちらを指差して笑う二人組。その容姿は一言で説明すれば、二本足で立つ馬と牛だった。
初めてその姿を見たときは着ぐるみでもかぶっているのかなと思った無苦朗だったが、口を大きく広げて笑うその男たちの表情はとても作り物とは思えなかった。
「おまけに俺たち魔族に見つかるたあ、どこまでも運が無え野郎だ」
馬頭の男が無苦朗へと手を伸ばしてくる。
そしてその大きなキャッチャーミットのような手で、無苦朗の頭は乱暴にわし掴みにされた。
できれば抵抗したいのは山々だったが、無念なことにいま無苦朗は手も足も出せない身だった。怖いのではない。いや少しある。しかし出せないのには別の理由があった。
無苦朗の頭が馬男の眼前まで持ち上げられる。
馬男はにやけながら口を開いた。
「しかし笑えるぜ。呪いかなにか知らねえが――頭だけの人間なんてよ」
そう、今の無苦朗は手も足も出ないどころか首から下がさっぱり無い、頭だけの生首状態だったのだ。
持ち上げられたその姿はまさしく晒し首の如し。
……どうしてこんな事になったのか、無苦朗はほんの少し前の事を思い返す。
◆
春の暖かな陽気がただよう朝。大勢の人々が行き交う駅前でそれは起こった。
「危ないッ!」
そう言って、突然ひとりの青年が道路へ飛び出した。彼の視線の先には一人の女の子。それとその娘へ迫る一台のトラック。
トラックの運転手は女の子に気付いていないのか、止まろうとする気配が一切無い。
青年はさらに強く、大きく地面を蹴り出した。間に合ってくれと願いながら。
そして――
バァン‼ キキーッ‼
衝突音が辺りに響く。次にブレーキ音。『きぁああああ‼』という叫び声。
『どうした⁉』『事故だ』『男が飛び出した』『いや子供が』
周りが騒然とする中、女の子が泣いていた。ひかれそうになった女の子だ。膝や腕に擦り傷が出来ていたが命に別状は無さそうだった。
薄れ行く意識の中、青年は確かにそれを確認した。
(無事で……良かった…………)
そして青年の意識は途絶えた。
この日、一人の青年が命を落とした。
現場は悲惨の一言だった。跳ねられた青年の制服は真っ赤に染まり、靴は潰されてペシャンコになっていた。
青年は高校生だった。
勇気ある若い青年の死に、その場にいた人々は心を痛めた。
しかし命を落とした青年の顔は、不思議なほど穏やかなものであった。
この青年こそが無苦朗であり、彼の生涯はこのとき永遠に閉じる――はずだった。
無苦朗が目を覚ますと、そこは見覚えの無い場所だった。周りに人の姿はなく、病院とも思えない。唯一、優しく明るい光だけが場所全体を照らしていた。
「ここはどこだろう? 確か僕は女の子を助けるためにトラックとぶつかって……」
「そのまま死んでしまった」
無苦朗は驚いた。誰もいなかったはずなのに突然、自分以外の声がしたからだ。
目の前にはいつの間にか見知らぬ老人が立っていた。
「あ、あなたは?」
「本当に申し訳ない」
すると見知らぬ老人はどうしたことか、無苦朗へと頭を下げ謝罪の言葉を口にした。
「な⁉ どうしたんですか急に、そんな、とにかく頭を上げてください」
老人の突然の行動に無苦朗は困惑した。
ワケも分からず頭を下げらるなど心地好いものではなかったからだ。
とにかく、頭を上げさせようと無苦朗が老人へ歩み寄ろうとしたその時。
「え?」
無苦朗は自分の体が動かい事に気付いた。いや、それだけじゃない。そもそも手足の感覚さえ無いことに今更ながら気付いた。
体がどうなっているのか確認しようと下を向こうとしたが首が動かせない。
無苦朗は恐る恐る目線だけを下に向けた。
「⁉」
それを見た無苦朗は、ある意味トラックと衝突した以上の衝撃を受けた。
「か、体が! 僕の体が無くなっている‼」
そこには有るべきであるはずの、自身の体がどこにも無かった。
「何がどうなってるんだ⁉」と、無苦朗は叫ぼうとした。
しかし、ふと目の前で謝罪し続ける老人の姿が目に入る。
無苦朗はもしやと思い老人に問いかけた。
「もしかして、貴方は知っているんですか、僕の体がこうなっているワケを?」
いま自分が置かれている、このおぞましい状況の理由を老人は知っているのではないだろうか。
「……教えてくださいおじいさん。どうして貴方が謝っているのかを。そして、僕の体がどうなってしまったのかを……!」
無苦朗はできるだけ冷静になろうとしたが、どうしても語気が荒らいでしまう。
そんな無苦朗の要望に答えてか、老人は頭を上げると開口一番にこう言った。
「自分は神である」と。
「まさかそんな、本当にそんな事が……!」
「信じられないのも無理はない」
無苦朗は自分の耳を疑った。
神と名乗る老人曰く。
無苦朗は本来、死ぬ宿命ではなかったこと。
それに気付いたときには無苦朗の魂の大部分が輪廻の輪の中に送られてしまっていたこと。
首だけなのは残った魂がそこだけだったためであること。
以上が無苦朗が老人から聞かされた話しの大まかな内容だった。
「気付くのが遅れて本当に申し訳ない」
そう言ってまたもや頭を下げだす自称、神樣。
正直、老人の話しは無苦朗の理解の範疇を軽く越えていた。しかし夢でもない限りこの状況を説明できないのもまた事実。そして夢にしては鮮明すぎた。
「……しかし、死ぬ宿命とはいったい何なんですか?」
どちらにせよ、自分が死ぬ宿命ではなかったとはどういう事なのか、それを知りたくなった無苦朗は老人に質問した。
「うむ、ならば教えよう。そもそも本来ならあの場で死んでしまうのは、あの娘ひとりだけのはずだった」
「? それはどういう事です?」
老人の言葉に無苦朗は眉をひそめた。
老人の言うあの娘とは、おそらくトラックにひかれそうになった女の子の事だろう。
だが無苦朗が注意したのはそこではなく。
「ひとりだけのはずだったとは?」
「……生物は産まれながらに、みな宿命と言うものを背負っている」
「生物と言うことは、人間もですか?」
「そのとおり。それからは何者も逃れる事はできん。そしてあの時、あの娘がひかれて死ぬのはそれこそ宿命であるはずだった」
「そんなバカな!」
「本当だとも。宿命によって定められた命は何があってもそこで尽きる。それが世界が誕生してから今この時まで変わらぬ決まりなのだよ」
「それじゃあ僕たちが産まれていつ死ぬのかは――最初から全部決められてるって事じゃないですか!」
「まさしく」
そう断言する老人に、無苦朗は絶句した。だが同時におかしい事に気付いた。
「しかし、あの娘は生きているはずです!」
そう、自分の命が途切れる間際、確かにあの娘の無事をこの目で確認した。
まさか、あの後やはりあの女の子は助からなかったのかと無苦朗は不安に思った。
「心配しなくとも良い。あの娘は間違い無く生きている」
無苦朗の心のうちを読んだかのように老人が答えた。
ドキッとする無苦朗の目を老人はジッと見つめ、さらに言葉を続けた。
「そして、それこそ変わらぬはずの宿命が変わった証拠…………お前によってな」
「僕が?」
コクッと老人が首を縦に振る。
「どうしてか、それは神であるワシでさえ分からん。だが、あの娘は助かりお主は死んだ。それは紛れもない真実よ」
「そう、ですか……」
無苦朗はいまだにこの老人の話したことが信じきれずにいた。
しかし――
あの娘が生きている。
――それだけで無苦朗は他のことはどうでもよく感じられた。
「…………と言うわけで、お前にはワシからの侘びとして生き返って異世界に行ってもらいたいと思う」
「はい?」
この老人は唐突に何を言い出すんだろう、と無苦朗の頭に疑問符が浮かぶ。
「能力は……そうな……とりあえずその世界で一番高い魔力にしておこう」
「ちょっと待ってください!」
「ああ、心配せずとも特典は他にも付けておこう。中身はその時になってからのお楽しみだがな」
フフフと怪しく笑う老人。魔力だ特典だとなんの事やら無苦朗にはさっぱりだったが、何故かろくでもない予感だけはした。
「そうではなくて、お詫びなんて受け取れませんよ! 話しを聞く限りですと迷惑かけたのは僕の方みたいですし――」
「なになに、神の領分である宿命を変えるほどの前途ある若者をこのまま普通に転生させてしまっては、それこそ神の名折れと言うも、のッ!」
お詫びなんて要らないと言う無苦朗の言葉なぞどこ吹く風とばかりに、老人はいつの間にか手元に出した平たい半透明のパネルに何かを打ち込んだり、もしくはスライドさせたりタッチしたりと操作する。心なしか手さばきが荒い。
もしかして、と無苦朗はふと思った。
「もしかして……怒ってます?」
「まさか! そんなわけ! 神であるワシがちょっと宿命を変えられたくらいでそんな、ハッ!」
老人は無苦朗の方をを見ることなく操作を続ける。どう見てもイライラしていた。
どうやら老人は無苦朗が宿命とやらを変えたことに、えらくご立腹らしかった。
「あの、知らぬこととはいえ、僕がやったことは謝りますから怒りを沈めて――」
「だから怒ってないわっ!」
そう語気を荒らげながら老人が勢いよくパネルに自身の親指を突きつける。
すると無苦朗の頭を中心に不思議な模様が次々と浮かび上がり発光しだした。
その光景に無苦朗の不安は加速する。
「おじいさんこれは何ですか⁉」
「これこそ『ニュヴァール』への扉」
「ニュヴァール?」
「キミが旅立つ新たな世界よッ!」
老人はそう言って、またもやパネルに強く指を押し当てる。
無苦朗の周りに浮かぶ模様の発光がさらに強くなる。
「いや、ですから僕はそんな世界に行く気はありませんと――」
「そう言えばキミの名前はなんだったっか?」
「? 鹿羽無苦朗ですが」
こんな状況にも関わらず、無苦朗はつい律儀に答えてしまった。
《コード鹿羽無苦朗。設定完了いたしました》
すると老人の持つパネルから機械で作られたような声が聞こえてきた。
「あの、いま何を?」
「なあに、キミが気にすることはない。ではゴォトゥニュウワールド!」
「ええぇ⁉」
無苦朗は浮かぶ模様の発光の強さに思わず目をつむる。それと同時に自分の体――今は頭だけだが――が徐々に浮かんでいくのを感じた。
「無苦朗よ。最後にキミに言っておきたいことがある」
「?」
自身がどうなっているのかも分からない状況で、老人の声だけが耳に入ってくる。
「確かにワシはキミに言われたように、ほんのちょっとだけイラついていのは確かだ」
やはり、と無苦朗は口には出さず心のなかで呟いた。
「しかしな、無苦朗。キミのような前途ある若者をこのままにしておけないと言うのはまぎれもない本心よ」
聞こえてくる老人の声が小さくなっていく。
なんだろう、何を言っているのだろう。
「だから期待しているぞ無苦朗。キミと『ニュヴァール』のその先の未来を」
無苦朗にはもう何も見えず、何も聞こえなかった。
しかし無苦朗は、なぜかあの神と名乗る老人が自分に向かって微笑んだような、そんな気がしてならなかった。
そして模様の発光が最高潮に達すると――無苦朗はこの世界から消えた。
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