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『あなたへ』

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 あなたを初めて見かけたのは電車のホームでの事でした。
 死にそうな顔をして線路を眺めているのを見て、不安になった事を覚えています。
 次に見た時、あなたは傘もささずに歩いていて、風邪でも引いてしまうんじゃ無いかと心配になりました。
 その次に見た時は、ふらふらと薬局で1人薬を選んでいて、やはりと言う気持ちと同時に、何かできる事は無いかと思いました。
 あなたはいつも死にそうで、けれど必死に生きていました。
 そんな姿が、どれだけ救いになった事でしょう。
 あなたが必死に生きているだけで、今日という日があって良かったと、どれだけ思った事でしょう。
 あなたが死にたがっている事は、到底耐え切れないけれども、そんな気持ちを耐えて、日々を生きていってくれる事にどれだけ感謝した事でしょう。
 あなたが生きていてくれるだけで嬉しくて、今日という日を共に迎えられる事が有り難くて、そんな日々がずっと、ずっと続けば良いと願ってやまないのです。
 だからどうか、1人で耐えてしまわないで。あなたが痛みに1人で耐えてしまえる人なのは、苦しいほどにわかるけれど、どうか私に助けて欲しいと言って。
 あなたは、自分がいなくなっても誰も悲しまないと思っているかもしれないけれども、あなたがいなくなったら、きっと私は朝な夕なに泣きくれて、しまいに後を追うでしょう。
 あなたがどうして死んでしまいたくなるのか、私には分からないけれど、それでもあなたの話を聞くことで、あなたの気持ちが少しでも分かれば良いと、思ってしまうのです。
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