修道士たちは罪に濡れて愛に出会う

谷村にじゅうえん

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第3章 獅子と牝山羊

第10話

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気がつくとユァンは、山羊小屋の飼葉の上に横になっていた。

窓から見えるの空色は、明け方の藍色だ。
司教の執務室から、どうやってここに戻ってきたのか分からない。
それほどの緊張にあの時はさらされていた。

そばに寝ている子山羊を起こさないよう気を遣い、ユァンはゆっくりと体を起こす。
それから空腹を感じ、小屋の外の水道から手のひらにすくった水を飲んだ。
昨日はバルトロメオを探すために夕食を諦めた。
それでも結局、彼には会えず終いで。
胃も心も満たされない現実に、寂しさと空しさが込み上げる。
以前なら神さまと山羊たちが心を満たしてくれたのに……。

好きな人といる時間の輝きを知ってしまったら、もう、あの頃には戻れない。



それから朝の礼拝と朝食を終え、ユァンが訪れたのは先日、ペティエ神父主催のパーティが開かれていた宿泊棟だった。
バルトロメオが宿舎にいる様子はない。
だったらここだと踏んで、来てみると、普段使われていないこの建物に人が出入りしている。
嫌な記憶がよみがえるが、今はそんなことに囚われてはいられなかった。

洗濯物を持ち出す清掃担当の修道士を物陰から見送り、ドキドキしながら裏口のドアを押してみる。
幸いそこに鍵はかかっていなかった。
足を踏み出し、きしむ床板にまたドキリとする。

風格ある中世ロマネスク様式の本館とは違い、この建物は過ごしやすさを重視した木造建築になっている。
ユァンは物音を立てぬよう細心の注意を払いながら、人の気配を求めて明るい庭沿いの廊下を進んだ。

1階に人のいる様子はなく、階段を昇って2階に上がる。
あの時、バルトロメオが飛び降りてきたのは、この辺りの窓だろうか。
いつの時代のものなのか、美しい色ガラスがはめ込まれた窓の前を通り過ぎ、先へ行こうとした時。
廊下を挟んで向かいにある部屋から、物音が聞こえた気がした。
2階の部屋はどこも、来客用のベッドが置かれた個室になっているはずだ。

ユァンは息を詰め、ドアに耳をつける。
誰かが書きものでもしているんだろうか。椅子を引く音と、紙の擦れるような音が響いた。

しばらくためらったあと、ユァンは意を決してドアノブをひねる。
しかしドアを開いてすぐに見えた奥のデスクには、人影がなかった。

「バルト……?」

小声で呼びかけながらすり足で進み、部屋の中を見回す。

「残念だったね、ここにいるのは僕だけだ」

声に振り返ると、ドアのすぐ脇の壁にヒエロニムスが寄りかかっていた。
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