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デュラン・チェルコーネ2
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「女性に?一体誰に贈るのか聞いても?」
「はい、アリアンナにです」
「アリーに?一体どういう風の吹き回しだ?」
ダヴィデ殿下が今まで一度も彼女にそんな事はしていないのを知っているゲイブリエル殿下は、訝しげな眼で彼を見た。
「あ、あの、えっと、えっとですね……」
しどろもどろになる様を見ていると、なにか思惑がありそうだ。
「あ、あ、あの!先日ダンスで失礼をしてしまったのでお詫びに……」
やはり俺は頭がいい、この理由は素晴らしいだろうとでも思っていそうな顔をしている。
ダヴィデ殿下が悪い事を考えていると踏んだゲイブリエル殿下の片方の眉がピクリと動いたが、それがどうしてなのかダヴィデ殿下にはわからないだろう。
「……そうだな、詫びであるならば、形に残らないもの方がいいだろう」
「形の残らないもの?ですか」
「そうだ。それがなくなったら綺麗に忘れてくれという意味でな」
「なるほど」
「それならばチョコとかがいいのでは?アリーはチョコレートが好きですから」
デュランが提案してきた。
「そう言えば、デュランがあげたチョコの詰め合わせを、三人であっという間に食べてしまったと、このままでは豚に変身してしまうと言っていたな」
エルマンノが何かを思い出したのか、クククと笑いながら言った。
ゲイブリエル殿下も、私もあの時の可愛らしい三人を思い出して笑ってしまった。
「ふっ、そう言えばそうだったな。三人ともデュランにどうしてくれるのと詰め寄って……デュランがその姿が子豚のようだと」
「デュラン、フランカ嬢に殴られてたもんな」
「あんなの、撫でられたようなものだよ」
「はは、いいんじゃないか?チョコレート。色々な種類の詰め合わせにしたら、きっと喜ぶと思うぞ」
「わかりました。ありがとうございます」
一礼をして執務室から去って行ったダヴィデ殿下を見て、エルマンノが呟く。
「ダヴィデ殿下はゲイブリエル殿下に対してだけは礼を欠かさないよな」
「そういえばそうだね。ゲイブリエル殿下が怖いのかな」
「刷り込みだろう。幼い頃からああだからな」
思い返せば確かに、昔からゲイブリエル殿下の言う事は聞いていた気がする。
「他の人に対しても同じ事が出来ていれば良かったのに」
私が呟けばゲイブリエル殿下も賛同する。
「全くだ。そうすれば、俺がこんな仕事に埋もれる思いはせずに済んだのに」
「殿下、大丈夫だ。まだ埋もれてはいない」
エルマンノが満面の笑顔だ。
「……たまに、本気でこいつを殴りたいと思う時がないか?」
「たまにどころか。俺はしょっちゅうありますよ」
俺の黒い笑顔にエルマンノが焦る。
「おいおい、その笑顔やめろ。フランカ嬢に言いつけるぞ」
「そこで彼女を出す所がまたムカつくね。だけどまあいい。彼女の名前が出たおかげで興が削がれたからね」
「ふう、フランカ嬢様様だな」
エルマンノがふうっと溜息を吐くのを横目で見ながら進言する。
「しかし、あれは何かを企んでますよ」
「だろうな。アイツが女性に詫びるわけがない」
「なら、アリーに何かしようって事か。とうとうアリーに対して触手が動いたんじゃないか?」
エルマンノの軽い口調に俺も殿下も固まった。
「まさか、先日のダンスの授業でか?」
「腰を掴まれてアリーが嫌がっていたと言っていましたね」
「それじゃないか?拒まれたら逆に燃えるってやつだよ。アリーを手籠めにしようとでも思っているんじゃないのか?」
「なん、だと!?」
呪いでも唱えるのかという位、低い声が執務室に響いた。
「ゲイブリエル殿下、落ち着いて。本人は居ないんですから、ここで怒っても仕方ないですよ。でも多分、エルマンノの言っていることが正解でしょう。ホント、アホな上にゲスとか、つくづく救えない男ですね」
「デュランも落ち着け。大体、アリーがチョコくらいで落ちるわけないだろう」
「……それはそうだ。少しばかり暴走仕掛けてしまったよ」
「チョコだけならな……」
何かを考えるようにゲイブリエル殿下が言った。
「ダヴィデがいくらアホ王子だと言っても、自分の事を歯牙にもかけていないアリーがチョコだけで自分の思い通りに行くとは思っていないだろう。だとしたら、何を仕掛ける?」
皆でしばらく考えるが、アホの考えることは突拍子もない事のような気がして推測が出来ない。
「エルマンノ、おまえならどうする?」
「俺か?俺は……手籠めにするために……チョコ……そうだなぁ。とりあえず睡眠薬でも入れるか。寝ている間に自分の部屋に連れて行くとか?」
「なるほど、一理ある」
「媚薬の可能性もあるのでは?」
「媚薬だと!?」
「それならば城にもあるものですし、チョコに入れてしまえばきっとわからないでしょう」
「睡眠薬か、媚薬……どうやらそのどちらかで間違いなさそうだな」
「とにかく、アリーにはダヴィデの話をしておこう」
「そうだね。ダヴィデ殿下から何かもらっても口にしないように言わないと」
「そうだな」
「アリーに付けている影にも知らせるように。それとアリー自身にもな」
ゲイブリエル殿下には仕事に戻ってもらい、影の方はエルマンノが私の父である宰相に手配をお願いし、俺はアリーに直接知らせるために、それぞれ行動するのだった。
「はい、アリアンナにです」
「アリーに?一体どういう風の吹き回しだ?」
ダヴィデ殿下が今まで一度も彼女にそんな事はしていないのを知っているゲイブリエル殿下は、訝しげな眼で彼を見た。
「あ、あの、えっと、えっとですね……」
しどろもどろになる様を見ていると、なにか思惑がありそうだ。
「あ、あ、あの!先日ダンスで失礼をしてしまったのでお詫びに……」
やはり俺は頭がいい、この理由は素晴らしいだろうとでも思っていそうな顔をしている。
ダヴィデ殿下が悪い事を考えていると踏んだゲイブリエル殿下の片方の眉がピクリと動いたが、それがどうしてなのかダヴィデ殿下にはわからないだろう。
「……そうだな、詫びであるならば、形に残らないもの方がいいだろう」
「形の残らないもの?ですか」
「そうだ。それがなくなったら綺麗に忘れてくれという意味でな」
「なるほど」
「それならばチョコとかがいいのでは?アリーはチョコレートが好きですから」
デュランが提案してきた。
「そう言えば、デュランがあげたチョコの詰め合わせを、三人であっという間に食べてしまったと、このままでは豚に変身してしまうと言っていたな」
エルマンノが何かを思い出したのか、クククと笑いながら言った。
ゲイブリエル殿下も、私もあの時の可愛らしい三人を思い出して笑ってしまった。
「ふっ、そう言えばそうだったな。三人ともデュランにどうしてくれるのと詰め寄って……デュランがその姿が子豚のようだと」
「デュラン、フランカ嬢に殴られてたもんな」
「あんなの、撫でられたようなものだよ」
「はは、いいんじゃないか?チョコレート。色々な種類の詰め合わせにしたら、きっと喜ぶと思うぞ」
「わかりました。ありがとうございます」
一礼をして執務室から去って行ったダヴィデ殿下を見て、エルマンノが呟く。
「ダヴィデ殿下はゲイブリエル殿下に対してだけは礼を欠かさないよな」
「そういえばそうだね。ゲイブリエル殿下が怖いのかな」
「刷り込みだろう。幼い頃からああだからな」
思い返せば確かに、昔からゲイブリエル殿下の言う事は聞いていた気がする。
「他の人に対しても同じ事が出来ていれば良かったのに」
私が呟けばゲイブリエル殿下も賛同する。
「全くだ。そうすれば、俺がこんな仕事に埋もれる思いはせずに済んだのに」
「殿下、大丈夫だ。まだ埋もれてはいない」
エルマンノが満面の笑顔だ。
「……たまに、本気でこいつを殴りたいと思う時がないか?」
「たまにどころか。俺はしょっちゅうありますよ」
俺の黒い笑顔にエルマンノが焦る。
「おいおい、その笑顔やめろ。フランカ嬢に言いつけるぞ」
「そこで彼女を出す所がまたムカつくね。だけどまあいい。彼女の名前が出たおかげで興が削がれたからね」
「ふう、フランカ嬢様様だな」
エルマンノがふうっと溜息を吐くのを横目で見ながら進言する。
「しかし、あれは何かを企んでますよ」
「だろうな。アイツが女性に詫びるわけがない」
「なら、アリーに何かしようって事か。とうとうアリーに対して触手が動いたんじゃないか?」
エルマンノの軽い口調に俺も殿下も固まった。
「まさか、先日のダンスの授業でか?」
「腰を掴まれてアリーが嫌がっていたと言っていましたね」
「それじゃないか?拒まれたら逆に燃えるってやつだよ。アリーを手籠めにしようとでも思っているんじゃないのか?」
「なん、だと!?」
呪いでも唱えるのかという位、低い声が執務室に響いた。
「ゲイブリエル殿下、落ち着いて。本人は居ないんですから、ここで怒っても仕方ないですよ。でも多分、エルマンノの言っていることが正解でしょう。ホント、アホな上にゲスとか、つくづく救えない男ですね」
「デュランも落ち着け。大体、アリーがチョコくらいで落ちるわけないだろう」
「……それはそうだ。少しばかり暴走仕掛けてしまったよ」
「チョコだけならな……」
何かを考えるようにゲイブリエル殿下が言った。
「ダヴィデがいくらアホ王子だと言っても、自分の事を歯牙にもかけていないアリーがチョコだけで自分の思い通りに行くとは思っていないだろう。だとしたら、何を仕掛ける?」
皆でしばらく考えるが、アホの考えることは突拍子もない事のような気がして推測が出来ない。
「エルマンノ、おまえならどうする?」
「俺か?俺は……手籠めにするために……チョコ……そうだなぁ。とりあえず睡眠薬でも入れるか。寝ている間に自分の部屋に連れて行くとか?」
「なるほど、一理ある」
「媚薬の可能性もあるのでは?」
「媚薬だと!?」
「それならば城にもあるものですし、チョコに入れてしまえばきっとわからないでしょう」
「睡眠薬か、媚薬……どうやらそのどちらかで間違いなさそうだな」
「とにかく、アリーにはダヴィデの話をしておこう」
「そうだね。ダヴィデ殿下から何かもらっても口にしないように言わないと」
「そうだな」
「アリーに付けている影にも知らせるように。それとアリー自身にもな」
ゲイブリエル殿下には仕事に戻ってもらい、影の方はエルマンノが私の父である宰相に手配をお願いし、俺はアリーに直接知らせるために、それぞれ行動するのだった。
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