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ゲイブリエル・アッガルディ3
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放課後、デュランがフランカ嬢を捕まえに……想いを告げるために中庭に行った。俺たちは食堂で待っていようって事になったのだが、どうにも気になって仕方がない。
なので、中庭に続く扉の外でそっと中の様子を皆で覗いている。
「フランカ嬢、答えはわかった?」
「……はい」
「そっか。じゃあ教えてくれる?」
「ふえっ」
そんなやり取りにアリーが飛び出していってしまった。
「兄様!女性から告白させようなんて。とんだ腑抜けですわよ」
「アリー!?」
デュランとフランカ嬢の声が重なった。面白がったエルマンノも出てってしまう。
「そうだぞ。男なら自分からビシッと言え」
後ろ姿だが、エルマンノが物凄くニヤついた顔をしているのが容易く想像できる。仕方がないので、俺たちも出て行く事にした。
「君たちは大人しく留守番も出来ないの?全く……でも確かに、ちょっと腑抜けてたかな。ごめんね、フランカ嬢……いや、フランカ」
「はいい」
「フランカ、君の事が好きだよ。こんなに俺の目を釘付けにするのは君だけなんだ。だからね、卒業したら俺と結婚してくれる?」
彼女の口がパクパクしている。呼吸が上手く出来ていないのでは?
「フラン、落ち着いて。深呼吸して。そう、上手ね」
ふうっと息を吐いたフランカ嬢は、アリーに支えられながらもデュランの目を見た。
「私も、デュラン様が好き、です。あの、よろしくお願いしましゅ」
噛んだ。最後の最後で噛んだ。それでもデュランは、今までで一番嬉しそうな顔をした。
「ありがとう、フランカ。愛してる」
フランカ嬢のおでこにキスを落とす。
「キャー、フラン!」
キャパオーバーだったのか、フランカ嬢は気を失ってしまった。
まあ、そんなこんなで二人は無事に上手くいった。
卒業がすぐそこまで来たこの時に、親友二人がいい人を見つけたのは嬉しい事だった。しかもアリーの親友二人と。
「あとは俺か」
先日皆で出かけた時、屋敷へと迎えに行った俺の前に現れたのは、真っ白いワンピースを着たまさしく天使だった。煌めくプラチナブロンドはサイドに編み込みがされたハーフアップ。白いワンピースの襟元にワンポイントでサファイアブルーのリボンが付いていた。俺の色だ。そう思ったが口には出来ない。
「綺麗だよ、アリー」
彼女の姿が眩しくて目を細めると、嬉しそうにはにかんだ笑顔が見えた。
「ありがとうございます、殿下も素敵です。商人には見えませんけれど」
「それはアリ―もだな。こんな綺麗なレディは街どころかどこを探してもいない」
そのまま二人、しばし見つめ合ってしまう。
「今日は娘をよろしくお願い致します。ゲイブリエル殿下」
そんな時間を終わらせたのは、彼女の父であるヴォルテーラ公爵の声掛けだった。
「ああ、今日一日、何をも彼女を害さないと誓おう」
何をも……つまり私自身も含めてという意味だ。
意図を感じ取った公爵は、複雑な顔を一瞬した後に笑った。
「はい、信じております」
街へ出たアリーは、見るもの全てが新鮮だったようで、何を見ても嬉しそうに瞳をキラキラさせていた。彼女の不思議な色合いの瞳は、その時々で色を変えた。フランカ嬢とランザ嬢もやはり、商人の娘には見えなかった。勿論、エルマンノとデュランも。
「商人の子供たちの設定は無理だったな」
最近出来たというカフェに入ってお茶をする。街中でもここでも、どうしても注目の的になってしまう。アリーはそんな事はまったく気付くことなく、美味しそうにフルーツがたくさん載ったケーキを頬張っていた。
口の端にクリームが付いているのに気付いた俺は、無意識に彼女の口元を指で拭ってその指を舐めた。一連の動作を見ていた連中がポカンとしている。一方、俺の指の行方を追っていたアリーは、辿り着いた先を見て真っ赤になってしまった。その顔を見て自分のしたことを自覚した。
「すまない。つい……」
「……いいのです。あの、ありがとうございました」
若干、二名が彼女の照れたような笑顔にやられていたが、俺もやられた。
雑貨屋に入りたいという三人を、少し離れたベンチで待つことにした。
「もうフランカ嬢が可愛すぎて辛い」
「俺も。ランザを誰にも見せずにしまっておきたい」
そんな話をして待っていると、いかにも男好きしそうな雰囲気の女性が数名近寄ってきた。
「お兄さんたち、皆揃っていい男だね。私たちと遊ばないかい?」
この時の二人の顔の変わりように俺はつい笑ってしまった。
「申し訳ないけど、全然お呼びじゃないから」
「俺たちが女性と一緒にいた事知っていただろう。よくやるな」
それでも女たちはめげなかった。
「あんなねんねな子が好みなの?私たちならあんた達を満足させてあげるのに」
「そうよ。ね、あんな子たちほって、遊びましょう」
そう言って、俺の後ろから抱きついてこようとした腕を掴む。
「こちらが大人しく断っている間に、とっとと逃げた方が賢明だと思うが?」
低い威圧的な声で、女の腕を掴んでいる手に少しばかり力を加えた。
「な、なによ。お子様のくせに、いい気になってんじゃないわよ」
チープな捨て台詞を吐いて逃げて行った女たちに溜息を吐いていると
「おい!あっち!」
エルマンノが言ったと同時に駆け出した。見れば、あちらも男たちに声を掛けられている。慌てて助けに行くと、楽しそうに会話をしていた。早々に彼らを蹴散らし彼女たちに向き合う。
「何もされてないか?」
「何もって何を?」
キョトンと首を傾げて俺を見上がるアリー。可愛すぎるからやめてくれ。
そして、そんな事が2回ほど続いた結果。俺たちはそれぞれ手を繋いで行動することにしたのだ。
なので、中庭に続く扉の外でそっと中の様子を皆で覗いている。
「フランカ嬢、答えはわかった?」
「……はい」
「そっか。じゃあ教えてくれる?」
「ふえっ」
そんなやり取りにアリーが飛び出していってしまった。
「兄様!女性から告白させようなんて。とんだ腑抜けですわよ」
「アリー!?」
デュランとフランカ嬢の声が重なった。面白がったエルマンノも出てってしまう。
「そうだぞ。男なら自分からビシッと言え」
後ろ姿だが、エルマンノが物凄くニヤついた顔をしているのが容易く想像できる。仕方がないので、俺たちも出て行く事にした。
「君たちは大人しく留守番も出来ないの?全く……でも確かに、ちょっと腑抜けてたかな。ごめんね、フランカ嬢……いや、フランカ」
「はいい」
「フランカ、君の事が好きだよ。こんなに俺の目を釘付けにするのは君だけなんだ。だからね、卒業したら俺と結婚してくれる?」
彼女の口がパクパクしている。呼吸が上手く出来ていないのでは?
「フラン、落ち着いて。深呼吸して。そう、上手ね」
ふうっと息を吐いたフランカ嬢は、アリーに支えられながらもデュランの目を見た。
「私も、デュラン様が好き、です。あの、よろしくお願いしましゅ」
噛んだ。最後の最後で噛んだ。それでもデュランは、今までで一番嬉しそうな顔をした。
「ありがとう、フランカ。愛してる」
フランカ嬢のおでこにキスを落とす。
「キャー、フラン!」
キャパオーバーだったのか、フランカ嬢は気を失ってしまった。
まあ、そんなこんなで二人は無事に上手くいった。
卒業がすぐそこまで来たこの時に、親友二人がいい人を見つけたのは嬉しい事だった。しかもアリーの親友二人と。
「あとは俺か」
先日皆で出かけた時、屋敷へと迎えに行った俺の前に現れたのは、真っ白いワンピースを着たまさしく天使だった。煌めくプラチナブロンドはサイドに編み込みがされたハーフアップ。白いワンピースの襟元にワンポイントでサファイアブルーのリボンが付いていた。俺の色だ。そう思ったが口には出来ない。
「綺麗だよ、アリー」
彼女の姿が眩しくて目を細めると、嬉しそうにはにかんだ笑顔が見えた。
「ありがとうございます、殿下も素敵です。商人には見えませんけれど」
「それはアリ―もだな。こんな綺麗なレディは街どころかどこを探してもいない」
そのまま二人、しばし見つめ合ってしまう。
「今日は娘をよろしくお願い致します。ゲイブリエル殿下」
そんな時間を終わらせたのは、彼女の父であるヴォルテーラ公爵の声掛けだった。
「ああ、今日一日、何をも彼女を害さないと誓おう」
何をも……つまり私自身も含めてという意味だ。
意図を感じ取った公爵は、複雑な顔を一瞬した後に笑った。
「はい、信じております」
街へ出たアリーは、見るもの全てが新鮮だったようで、何を見ても嬉しそうに瞳をキラキラさせていた。彼女の不思議な色合いの瞳は、その時々で色を変えた。フランカ嬢とランザ嬢もやはり、商人の娘には見えなかった。勿論、エルマンノとデュランも。
「商人の子供たちの設定は無理だったな」
最近出来たというカフェに入ってお茶をする。街中でもここでも、どうしても注目の的になってしまう。アリーはそんな事はまったく気付くことなく、美味しそうにフルーツがたくさん載ったケーキを頬張っていた。
口の端にクリームが付いているのに気付いた俺は、無意識に彼女の口元を指で拭ってその指を舐めた。一連の動作を見ていた連中がポカンとしている。一方、俺の指の行方を追っていたアリーは、辿り着いた先を見て真っ赤になってしまった。その顔を見て自分のしたことを自覚した。
「すまない。つい……」
「……いいのです。あの、ありがとうございました」
若干、二名が彼女の照れたような笑顔にやられていたが、俺もやられた。
雑貨屋に入りたいという三人を、少し離れたベンチで待つことにした。
「もうフランカ嬢が可愛すぎて辛い」
「俺も。ランザを誰にも見せずにしまっておきたい」
そんな話をして待っていると、いかにも男好きしそうな雰囲気の女性が数名近寄ってきた。
「お兄さんたち、皆揃っていい男だね。私たちと遊ばないかい?」
この時の二人の顔の変わりように俺はつい笑ってしまった。
「申し訳ないけど、全然お呼びじゃないから」
「俺たちが女性と一緒にいた事知っていただろう。よくやるな」
それでも女たちはめげなかった。
「あんなねんねな子が好みなの?私たちならあんた達を満足させてあげるのに」
「そうよ。ね、あんな子たちほって、遊びましょう」
そう言って、俺の後ろから抱きついてこようとした腕を掴む。
「こちらが大人しく断っている間に、とっとと逃げた方が賢明だと思うが?」
低い威圧的な声で、女の腕を掴んでいる手に少しばかり力を加えた。
「な、なによ。お子様のくせに、いい気になってんじゃないわよ」
チープな捨て台詞を吐いて逃げて行った女たちに溜息を吐いていると
「おい!あっち!」
エルマンノが言ったと同時に駆け出した。見れば、あちらも男たちに声を掛けられている。慌てて助けに行くと、楽しそうに会話をしていた。早々に彼らを蹴散らし彼女たちに向き合う。
「何もされてないか?」
「何もって何を?」
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