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断罪が終わり、そして
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「皆、せっかくの舞踏会を中断した事、本当に申し訳ない。先日、宣告した通り。ここで私が王太子になる事が決まった。そしてゆくゆくは王となる。私の全てを尽くして国をより良いものへと発展させていくつもりだ。ここにいる皆も、その頃には国の為や自領の民の為に尽くす立場になっているだろう。どうか国を、民を守ることに協力して欲しい」
俺は、舞台に上がり宣言した。会場中から拍手や歓声が上がる。デュランやエルマンノも嬉しそうに歓声を上げている。
そう。俺は舞踏会の数日前、学園長を通して先生は勿論、Dクラス以外の生徒達全てに、ダヴィデが舞踏会の会場でアリーに婚約破棄を突き付けた途端に、俺が王になる事が決定すると公表していたのだ。
舞台を見渡せば、涙を流しながらこちらを見つめるアリーの姿があった。彼女と目を合わせると、美しい瞳が煌いて天使のような笑みが返ってきた。今すぐにでもここから飛び降りて、彼女を思い切り抱きしめたい衝動に駆られながらも、もう一度会場を見渡す。
「本来であれば、こんなことが起こったのだから、会を中止すべきなのだろうが、せっかく美味い料理が並べられて、時間もまだある。もう一度舞踏会を仕切り直そうと思うのだが、皆はどうだろうか?」
問いかければ再びの大歓声。これはほとんどが賛成してくれているとみていいだろう。
「では、もう一度。心行くまで楽しんでくれ!」
大きな声で開始を告げれば、それを合図に音楽が奏でられた。そして皆、思い思いに楽しみだした。
俺は、その光景を見届けてから、アリーたちの元へと戻った。
「お疲れ様でした、ゲイブリエル殿下」
「ご苦労だったな、宰相殿。このまま城へまた戻るのか?」
「はい。陛下に一刻も早く報告しませんと。きっと執務室で熊のようにウロウロしているはずですから」
「はは、そうだな」
「殿下、長い間辛い思いをさせていた事、本当に申し訳ありませんでした」
突然頭を下げる宰相殿に少し慌ててしまう。
「何のことだ?別に辛いことなどー」
言い終わらないうちに宰相殿は、彼の後ろにいたアリーの背中をそっと押した。
「私も陛下も、そしてヴォルテーラ公爵もわかっていたのです。二人がずっと想い合っていることは。しかし、彼女の力を教会に託して一生囲われる生活をさせないためには、次代の王に嫁がせるしかなかった。私の可愛い姪を、教会などという窮屈な籠の中で終わらせたくなかったのです」
俺たちだけじゃなく、父上たちも辛かったのだと。そう思えば怒る気など更々なかった。
「いいんだ。これからはずっと、アリーを堂々と幸せにしてやれるんだから。もういいんだよ。いつまでも爺三人がうじうじしてると、そのうち禿げるぞ」
アリーの手を取り、俺の隣へとエスコートしてそう笑ってやれば、宰相殿は泣きそうな顔で笑った。
「アリーをよろしくお願いします。もし泣かせるようなことになったら、爺三人がかりで殿下をこらしめますので」
「はは、万が一にもそんなことはありえないが、肝に銘じておくことにする」
宰相殿は満足そうにして王城へと戻って行った。
「お疲れ様、ゲイブリエル殿下」
「アリー」
そっと彼女を抱きしめる。
「やっと、やっとアリーを抱きしめる事が出来た。どれほど希ってきたか」
「殿下、私もです。ずっと殿下だけでした」
嬉し過ぎて抱きしめる腕を強めてしまう。
「愛しているよ、アリー」
「私も愛しています。ゲイブリエル殿下」
「アリー。もうなんの枷もないんだ。昔のように呼んでくれないのか?」
少し意地悪くそう言うと、アリーの顔が真っ赤になった。
「あ、あれはまだ小さかったから上手く言えなかっただけで……」
「はは、そうだったな。でも、あの呼び方がいい」
彼女の髪を梳きながらそう願えば、照れながらも応えてくれた。
「……ガビー」
久しぶりに聞くアリーだけの俺の愛称。小さな頃は俺の名前が発音出来なくて、愛称呼びをさせていた。感動で叫び出したい気持ちになる。
「もう一度」
「ガビー」
「もう一度だ」
「ガビー、大好き」
堪らない気持ちになった俺は彼女に顔を近付けた。
「はい、ストーップ」
あと少しという所で、誰かの手が俺の顔を掴む。
「邪魔すんな」
威圧感たっぷりで手を出した相手を睨む。
「怖いですから。気持ちが盛り上がってるのは百も承知ですけど、ここ何処かわかってます?」
デュランが呆れ顔で俺を見た。
周りを見渡せば、皆が固唾を飲んで成り行きを見守っていた。
「……そうだった。舞踏会の最中だったな」
「はあ、理性を取り戻してくれて良かった」
「俺としては別にキスくらい、いいんじゃないか?って思うけどな」
エルマンノが真っ赤になっているランザ嬢の腰を支えながら言った。
「駄目です。主にうちのフランとランザ嬢の為に」
見るとフランカ嬢も顔を真っ赤にして、でもしっかり目を開けてアリーを凝視している。
「アリーが、アリーが史上最高の可愛さだった……もっと見たかった」
「ホントにスマン」
フランカ嬢のセリフで完全に理性を取り戻した俺は素直に謝った。
「終わりましたね」
未だ熱の冷めないフランカ嬢の顔を手で仰ぎながらデュランが言う。
「ここからまた大変だぞ。立太子までに学ぶことはたくさんある」
「俺も、もっと強くならないと。打倒父上だからな」
「俺は父上に教えを乞わないと。現宰相である先輩ですから」
「アリーたちが学園を卒業するまでには全てを確立させておかないと、いつまでも結婚出来なくなるぞ」
「ですよね。フランのお兄さん、手強いからなあ」
「俺はランザの弟と仲良しだもんねえ」
「エルマンノのラスボスは団長でしょ」
「そうなんだよなぁ。今のところ、勝てる気がしない」
「3年。3年で未来の為の地盤を固めるぞ」
「よし!」
「3年ですね」
「……の前に腹ごなししねえか?」
「はああぁ、台無し」
「はははは、俺も腹が減った。アリー、何か食おうか?」
「はい!」
アリーの腰をしっかり抱いて、残りの時間を楽しむことにした。
俺は、舞台に上がり宣言した。会場中から拍手や歓声が上がる。デュランやエルマンノも嬉しそうに歓声を上げている。
そう。俺は舞踏会の数日前、学園長を通して先生は勿論、Dクラス以外の生徒達全てに、ダヴィデが舞踏会の会場でアリーに婚約破棄を突き付けた途端に、俺が王になる事が決定すると公表していたのだ。
舞台を見渡せば、涙を流しながらこちらを見つめるアリーの姿があった。彼女と目を合わせると、美しい瞳が煌いて天使のような笑みが返ってきた。今すぐにでもここから飛び降りて、彼女を思い切り抱きしめたい衝動に駆られながらも、もう一度会場を見渡す。
「本来であれば、こんなことが起こったのだから、会を中止すべきなのだろうが、せっかく美味い料理が並べられて、時間もまだある。もう一度舞踏会を仕切り直そうと思うのだが、皆はどうだろうか?」
問いかければ再びの大歓声。これはほとんどが賛成してくれているとみていいだろう。
「では、もう一度。心行くまで楽しんでくれ!」
大きな声で開始を告げれば、それを合図に音楽が奏でられた。そして皆、思い思いに楽しみだした。
俺は、その光景を見届けてから、アリーたちの元へと戻った。
「お疲れ様でした、ゲイブリエル殿下」
「ご苦労だったな、宰相殿。このまま城へまた戻るのか?」
「はい。陛下に一刻も早く報告しませんと。きっと執務室で熊のようにウロウロしているはずですから」
「はは、そうだな」
「殿下、長い間辛い思いをさせていた事、本当に申し訳ありませんでした」
突然頭を下げる宰相殿に少し慌ててしまう。
「何のことだ?別に辛いことなどー」
言い終わらないうちに宰相殿は、彼の後ろにいたアリーの背中をそっと押した。
「私も陛下も、そしてヴォルテーラ公爵もわかっていたのです。二人がずっと想い合っていることは。しかし、彼女の力を教会に託して一生囲われる生活をさせないためには、次代の王に嫁がせるしかなかった。私の可愛い姪を、教会などという窮屈な籠の中で終わらせたくなかったのです」
俺たちだけじゃなく、父上たちも辛かったのだと。そう思えば怒る気など更々なかった。
「いいんだ。これからはずっと、アリーを堂々と幸せにしてやれるんだから。もういいんだよ。いつまでも爺三人がうじうじしてると、そのうち禿げるぞ」
アリーの手を取り、俺の隣へとエスコートしてそう笑ってやれば、宰相殿は泣きそうな顔で笑った。
「アリーをよろしくお願いします。もし泣かせるようなことになったら、爺三人がかりで殿下をこらしめますので」
「はは、万が一にもそんなことはありえないが、肝に銘じておくことにする」
宰相殿は満足そうにして王城へと戻って行った。
「お疲れ様、ゲイブリエル殿下」
「アリー」
そっと彼女を抱きしめる。
「やっと、やっとアリーを抱きしめる事が出来た。どれほど希ってきたか」
「殿下、私もです。ずっと殿下だけでした」
嬉し過ぎて抱きしめる腕を強めてしまう。
「愛しているよ、アリー」
「私も愛しています。ゲイブリエル殿下」
「アリー。もうなんの枷もないんだ。昔のように呼んでくれないのか?」
少し意地悪くそう言うと、アリーの顔が真っ赤になった。
「あ、あれはまだ小さかったから上手く言えなかっただけで……」
「はは、そうだったな。でも、あの呼び方がいい」
彼女の髪を梳きながらそう願えば、照れながらも応えてくれた。
「……ガビー」
久しぶりに聞くアリーだけの俺の愛称。小さな頃は俺の名前が発音出来なくて、愛称呼びをさせていた。感動で叫び出したい気持ちになる。
「もう一度」
「ガビー」
「もう一度だ」
「ガビー、大好き」
堪らない気持ちになった俺は彼女に顔を近付けた。
「はい、ストーップ」
あと少しという所で、誰かの手が俺の顔を掴む。
「邪魔すんな」
威圧感たっぷりで手を出した相手を睨む。
「怖いですから。気持ちが盛り上がってるのは百も承知ですけど、ここ何処かわかってます?」
デュランが呆れ顔で俺を見た。
周りを見渡せば、皆が固唾を飲んで成り行きを見守っていた。
「……そうだった。舞踏会の最中だったな」
「はあ、理性を取り戻してくれて良かった」
「俺としては別にキスくらい、いいんじゃないか?って思うけどな」
エルマンノが真っ赤になっているランザ嬢の腰を支えながら言った。
「駄目です。主にうちのフランとランザ嬢の為に」
見るとフランカ嬢も顔を真っ赤にして、でもしっかり目を開けてアリーを凝視している。
「アリーが、アリーが史上最高の可愛さだった……もっと見たかった」
「ホントにスマン」
フランカ嬢のセリフで完全に理性を取り戻した俺は素直に謝った。
「終わりましたね」
未だ熱の冷めないフランカ嬢の顔を手で仰ぎながらデュランが言う。
「ここからまた大変だぞ。立太子までに学ぶことはたくさんある」
「俺も、もっと強くならないと。打倒父上だからな」
「俺は父上に教えを乞わないと。現宰相である先輩ですから」
「アリーたちが学園を卒業するまでには全てを確立させておかないと、いつまでも結婚出来なくなるぞ」
「ですよね。フランのお兄さん、手強いからなあ」
「俺はランザの弟と仲良しだもんねえ」
「エルマンノのラスボスは団長でしょ」
「そうなんだよなぁ。今のところ、勝てる気がしない」
「3年。3年で未来の為の地盤を固めるぞ」
「よし!」
「3年ですね」
「……の前に腹ごなししねえか?」
「はああぁ、台無し」
「はははは、俺も腹が減った。アリー、何か食おうか?」
「はい!」
アリーの腰をしっかり抱いて、残りの時間を楽しむことにした。
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