王子と婚約するのは嫌なので、婚約者を探すために男装令嬢になりました

Blue

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早速、模擬戦をします

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「ライより強いのは……団長とアタシとドルフ、あと第四部隊と第五部隊の隊長ね。でも第四第五の隊長は妻帯者だから却下でしょ。ライよりは劣るけれどそれなりに強いのは……ライの所の副隊長と第五の副隊長かな?少し落とすと第一と第五に数人いるわね。アンジーはどれくらい強いの?」

「私は家族で勝てるのはディアナ姉様くらいです。ジル兄様にも勝てません。学園では私より強い方はいないのですけれど」
「ジルベルトも強いからねえ。一度、お願いして手合わせしたけれど、嫌な攻撃の仕方するのよねえ」
ジャンヌ副団長の眉間にしわが寄った。

「ジル兄様は相手の剣筋を読むのが得意なので、それを上手く使うんです。散々攻撃してるのに手応えがなくてイラつく頃に反撃してくるんです」
「はあ、頭と勘のいい奴ってイヤねえ」
「ふふ、でもジル兄様は天然で可愛いですよ。まあその天然のせいで空気読めませんけど」
「なんかわかるわ」

そんな話をして笑い合っていると訓練場に到着した。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ジャンも団長と共に執務室へ行ってしまい、一人で訓練に参加する。団員たちはアンジェロの事が気になるらしく訓練に身が入ってないようだ。
それはそうだろう。男性にしては細く華奢で、とても力があるとは思えない。なのに、団長は実力者だという。皆からしたら眉唾ものだ。

俺としては実力云々よりも、他に気になることがあって頭が回らない。
一目見た時のあの衝撃は一体なんだったのか?まるで、あの女神を見つけた時と同じような衝撃を、アンジェロを見た時に感じた。全く違う人物だというのに。
しかし、良く見ると真っ直ぐな金の髪も、サファイアのような瞳もなんとなく女神に似ている気がして、思わず彼を呼び止めて聞いてしまった。やはり関係はないようだったが。

それなのに、どうしても彼の事が気になる。団長の親戚だからなのかもしれない。そう思って、深く考えない事にした。

そして、やっと少し落ち着いた頃、ジャンと共に彼が現れた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「よし、じゃあ早速誰かと模擬戦してみましょ」
「はい、でも誰とですか?」
「そうねえ……じゃあ」
そう言ったあと、ジャンヌ副団長が大声を張り上げる。

「ちょっと、あんたたち。誰かアンジェロと模擬戦したい奴いる?」
すると、一番近くに居たニヤニヤと嫌な笑い方をする一団が手を挙げた。
「是非、対戦願いたいですねえ」
一団の中でのリーダーっぽい男が言う。

「あの連中は第二部隊よ。第二部隊はね、貴族の跡取りが多いの。箔付けのために騎士団に入ったようなボンボンばっかり。どうする?」
小声で教えてくれるジャンヌ副団長。
「では、秒で片付けます」
「ふふ、言うじゃない。いいわね、ギャフンと言わせてやりなさい」

「じゃあ、あんたで決まりね。ドルフ、ボケッとしてないで審判頼むわよ」
「わかった。アンジェロいいか?」
「はい、僕はいつでも」
ニッコリ微笑んで答える。どうしてかルドルフォ副団長が一瞬たじろいだ。

「よし、両者前へ」
団員たちの好奇の眼差しが向けられる中、第二部隊の男と対峙する。
「二人とも、この木剣を使え。剣を弾くか膝をついた方が負けだ」
「はい」
「おまえ、そんな細いと木剣でさえ重いんじゃないのか?」
「……」
「もしかして、怖くて声も出ないのかな?」

ニヤニヤと、貴族のくせに下品極まりない。きっとそれほど高くない階級の者だろう。こんなのが跡取りとか……どこの家の者かは知らないけれど、この人の代で終わるな。こんなアホでは領地の経営なんて出来ないだろう。

「大丈夫か?」
ルドルフォ副団長が気遣わし気に聞いてきた。黙っていたせいで、どうやら私がビビっていると思ったらしい。

「いつでも行けますよ」
再びニッコリと返事をする。今度は視線が泳いだ。なんで?

「よし、では」
剣を構える。
「始め!」

「俺は優しいからな。最初の攻撃は新入りに譲ってやるよ」
構えを解いてにやつく男。本当にアホだ。
「では、お言葉に甘えて」
言い終わった瞬間、一気に間合いを詰めて男の剣を弾き飛ばした。
「それまで!」

男は何が起こったかわからないまま立ち尽くしている。
「やっぱりこのレベルではダメね。全く実力なんてわからないまま終わっちゃったわ。ねえライ、あなたが見繕いなさいよ」
ライ兄様はぐるっと周りを見て一人の男性に視線を向けた。
「じゃあグイド、相手を頼めるか?」

「はい」
「なるほど、グイドね。アンジー行ける?」
「はい、頑張ります」
「ん、いい返事。行ってらっしゃい」

引き続きルドルフォ副団長が、審判を務めてくれるらしい。
「両者、前へ」
剣を持ち構える。
「始め!」

細いながらもしっかり筋肉は付いているらしいグイドという騎士は、ライ兄様が見繕っただけの事はあってなかなか強かった。けれど、暗部で培ったこのスピードはそう簡単に見破られることはないのだ。
一瞬のスキをついて剣を弾く。

「そこまで」
「ありがとうございました」
「アンジーやるじゃない。もうますます気に入ったわ」
ギューッとされる。うん、やっぱりいい匂い。

「アンジェロ、おまえ強いな」
グイドが握手を求めながら言ってきた。
「ありがとうございます」
「ホントにね。団長がべた褒めだったのも頷けるね」
もう一人、穏やかそうな雰囲気の男性が近寄ってきた。

「第一部隊副隊長のエミリアーノだよ、よろしくね」
「アンジェロ・マルケーゼです。よろしくお願いします」
「先に謝っておくよ。正直、少し疑っていたんだ。団長のコネで入っただけの子なのかなって。とんでもなかったね。あのスピードは尋常じゃないよ。もしかすると私より強いかもしれない。これはうかうかしていられないね。他の団員たちにもカンフル剤になったんじゃないかな……もしかするとそれが狙いなのかな」

この副隊長さんは賢い人のようだ。ライ兄様には勿体ない人だ、なんて思ったのが顔に出ていたのかライ兄様に鼻ピンされた。

そして、この模擬戦をきっかけに皆が打ち解けてくれるようになったのだった。
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