王子と婚約するのは嫌なので、婚約者を探すために男装令嬢になりました

Blue

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悩みは抱え込まない方がいい

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「あの笑顔、怖いだろう」
ライ兄様が言う。
「第一部隊で本当に怒らせたらいけないのはエミリアーノだからな。あの笑顔のまま、延々と説教するんだぞ。その日の夢には必ずアイツが出てきて、夢でも説教するんだ」

「わあ、それは怒ったジル兄様よりも質が悪いわ」
「だよなあ。まあジル兄は何日経っても蒸し返すって大技持ってるけどな」

コソコソ話していると
「はいそこ、私を悪く言ってますよね。聞こえなくてもわかりますよ」
超笑顔で言われた。
「ごめんなさい」
あまりの恐怖に、二人して素直に謝った。

四人の女性たちの拘束を解いていく。
「大丈夫ですか?どこかお怪我はされていませんか?」
怖がらせないようにゆっくり喋る。
「大丈夫です」
四人とも、特にケガもなくすぐに立ち上がることが出来た。
立ち上がった拍子に一人の女性がふらついた。支えてあげると嬉しそうな顔でお礼を言われた。

伝令役が呼んでいた大きな幌馬車に捕まえた男たちを詰め込んで、数人の騎士と共に騎士団棟へと運ばせ、私たちは巡回の続きをした。

「お前が支えてあげた女性、目がハートになってたぞ」
グイドが肘で突いてきた。
「そう?普通の目の形だったけど?」
そう返すと前を歩いていたライ兄様に笑われた。
「お前って鈍感君なんだな」
グイドが溜息を吐く。

「?」
何を言われてるのかわからず首を傾げる。

「……なんだろう?一瞬お前が可愛く見えた」
「アンジーはいつも可愛いですよ」
エミリアーノ副隊長が入ってきた。
「え?まさか副隊長……」
「だって、小動物みたいでしょ。おやつを食べてる姿なんてリスみたいですし」
「まさかの愛玩動物扱い……」

そんな会話が続いている間中、ライ兄様は笑い続けて挙句、お腹がつって死にそうになっていた。

それから割と間隔を開けずにまた巡回が回ってきた。王都の人たちからの要望らしい。また何かきな臭いことでもあるのかと、警戒して行って見ると物凄い歓迎をされてしまった。前回の捕物の感謝を込めてだったらしい。

行きかう人皆に感謝される。先日捕らえた連中は、最近流れ着いてあの辺りに住み着き、あくどい事を繰り返して困っていたらしい。どんどんやることがエスカレートしていたようで、捕らえることが出来て本当に良かった。

巡回はしっかりやろうと街を歩いていると、小さな女の子が近づいてきた。ニコロと同じ位かしらと思っていると、私に小さな花を差し出してくる。目線に合わせて膝を折り女の子と向き合うと
「これね、騎士様にあげる」
「僕に?」
そう聞くと
「うん。騎士様とっても綺麗だから。絵本の中の精霊様みたい。精霊の王子様よ」
「そっかあ、嬉しいな。ありがとう」
笑顔でお礼を言うと
「どういたしまして、精霊の騎士様」
そう言って女の子は満足そうに駆けて行った。

私はなんだか嬉しくてもらった花を胸のポケットに差し、巡回を続けるのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 巡回から戻ったアンジェロを見かけた。ジャンに言われたあの日から、なるべく近づかないようにしていた。近づけばきっとまた過保護になってしまいそうだったから。

そんな自分の中の複雑な思いに翻弄され続けて悶々としていたある日、団長に頼まれて書類をフィエロ殿下の執務室に持って行くために王城を歩いていた。
角を曲がった時、その向こうに去って行く令嬢の姿が見えた。絹糸のような金の髪をなびかせて綺麗な姿勢で歩いている。遠く離れているのに女神だと確信した。途端、心臓が誰かに握られたかのようにぎゅっとなった。

そしてなんだか既視感を感じた。
考えるまでもない。アンジェロと重なるのだ。歩いている歩幅は全く違う。なのに何故だか似ている。

一向に晴れない気持ちのまま執務室へ入る。ふわっと優しいいい匂いがした。もしかしたら彼女の残り香かもしれない。そう考える自分にまたもやなんとも言えない気持ちが広がる。

フィエロ殿下の前まで行き、書類の説明を軽くしてからジルベルトに渡す。
「悩める青年って顔をしているねえ」
フィエロ殿下がニヤリと笑った。

「……そうでしょうか」
「うん。生まれて初めての想い。果たしてどちらに向かっているのだろうか?そんな顔してるよ」
「え?」
素で驚いてしまった。この方は俺の心を読んでいるのだろうか。

「私ならどちらともしっかり向き合って、自分の想いとも向き合う努力をするけどなあ」
「殿下、あまり煽るような事は言わないで頂きたい」
ジルベルトのこめかみに青筋が立った。なんだ、どこまでわかっているんだ?

「向き合いたいのは山々ですが、一人は向き合う機会がありませんので」
「ならば、向き合える方とまずじっくり向き合ったらいいんじゃないのか?」
目から鱗が落ちた。考えてもみなかった。過保護になるからと、最もな理由をつけて避けてすらいたのに。

「……そうですね。考えてみます」
「うんうん。いい顔になったじゃないか。私はね、お前に大いに期待しているんだ。仕事の面においても、それ以外でも。ひいてはそれが私の大事な者の幸せに繋がると信じているからね」

「殿下」
「ジル、マジで怖いからその顔やめて。もう黙るから」
ジルベルトの機嫌が悪くなっていっている。もう退散しよう、そう思った時だった。

「ルドルフォ副団長、釈ですが私もあなたの強さは認めています。だからと言って簡単に許す気にはなりませんが」
「?」
「こちらの話です。とにかく、殿下の言われたこと、真剣に考えてください」
「……わかった」

そう言って執務室を後にする。
何をどこまで理解しているのか、考えると空恐ろしいので考えない事にする。しかし、気持ちはスッキリした。
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