16 / 36
皆、過保護
しおりを挟む
剣が私に向かって飛んでくるのが、まるでスローモーションのようにゆっくり見える。なのに、私はその場で微動だに出来ない。
訓練用の剣なので刃は潰れている。だからってあのスピードでこられたら大ケガ間違いなしだな。
そんな、しょうもない事ばかりが頭に浮かんでくる。女性たちの悲鳴が耳に木霊した。
ぶつかる!そう思った時、ふっと視界が暗くなった。木霊していた悲鳴が一段階小さくなる。
温かいと感じたと同時にキンッという金属の当たる音がした。
なんだろう?そう思い上を見上げると、綺麗なアメジストが見えた。
「綺麗……」
思わず呟くと
「アンジェロ?大丈夫か?」
そう聞かれた。
はたと我に返る。
綺麗なアメジストはルドルフォ副団長の瞳だった。理解するのに少しばかり時間がかかってしまう。何故、真上からルドルフォ副団長の声が聞こえるのか、飛んできたはずの剣はどうしたのか、少しして全てを理解した。
私はルドルフォ副団長に抱きしめられた形になっていた。その状態で剣を弾いてもらったらしい。
「どうした?」
何の反応も見せなかった私を心配そうに見るルドルフォ副団長。
「すみません、大丈夫です。あの、ありがとうございました」
「いや、大丈夫ならそれでいい」
しばらく見つめ合う。
「キャー」
耳をつんざくような黄色い声にびっくりして慌てて離れた。
ライ兄様とジャンヌ副団長、エミリアーノ副隊長にグイドまでが慌てた様子で駆け寄ってきてくれた。
「アンジー、大丈夫か?」
「アンジー、ケガは?」
皆がそれぞれに心配して声をかけてくれる。
「大丈夫です。ルドルフォ副団長に助けて頂いたのでなんともないです」
「はあ、良かった」
ジャンヌ副団長にぎゅうっと抱きしめられる。
「寿命が縮んだわ」
「心配かけてしまってすみません」
「ううん、いいのよ。大事な身体に傷がつかなくて本当に良かった」
「皆さんもありがとうございます」
駆けつけてくれた皆にお礼を言う。
すると
「アンジー!」
団長が物凄い形相で走ってきた。あまりの恐ろしさにその場にいる全員が後ずさる。
「大丈夫だったか?」
後ずさる私の肩をむんずとつかむ。
「は、はい。大丈夫です」
「出遅れた、すまない」
走ってきた時とは一転、泣きそうな顔で言う団長がなんだか可愛く見えてしまった。
「ルドルフォ副団長のお陰で、かすり傷一つありませんよ。だから大丈夫です」
ニッコリと笑顔で言うと
力一杯抱きしめられてしまった。
「ちょ、く、苦しい」
悲痛な声を聞いた他の面々が慌てて団長から私を引き剥がす。
「団長、落ち着いて。アンジー潰されてるから」
「あ、しまった。加減するの忘れてた」
「クッ、クク、アハハハハ」
突然、ルドルフォ副団長が大きな声で笑い出した。笑った顔を初めて見た私はびっくりしてしまう。他の皆も珍しいものでも見るようにポカンとしている。
「ククク、俺はアンジェロに対して過保護過ぎるかとずっと悩んでいたんだが、おまえらも大概だな。悩んでいるのがバカバカしくなったよ」
ポカンとしていた皆も
「確かに。ここにいる皆、アンジーに対してそうなっているかもしれないですね。なんというか、剣は強くてもなんだか他が危なっかしいんですよねえ、この子」
エミリアーノ副隊長だ。
「そうそう。世間知らずというか、なんでも鵜呑みにするから騙されそうで一人に出来ないんですよ」
グイドまで。
「アタシは単純に気に入ってるの。可愛くって仕方ないわ」
ジャンヌ副団長まで言う。
「ハハ、良かったな、アンジー」
ライ兄様が頭をぐりぐり撫でまわす。
「こればっかりはアンジーが可愛いからしょうがない」
最後に団長が締めるように言うと、皆が笑った。
ひとしきり笑った後
「それにしても、もう第二部隊は全員これからの訓練では木剣のみにするわ」
「その方がいいだろう。いくら刃がない剣だからってあれが当たったら大ケガするところだったぞ」
「どんだけ握力ないんだ。握りが弱いからあんなに剣を飛ばされるんだ」
そしてこれ以降、本当に第二部隊だけ、訓練は木剣しか使えなくなった。
そしてもう一つ、今回を機に訓練場のみを月に一度、見学出来るということになった。
市民からは多数の嘆願書が、貴族からは父親たちが娘の為にと、是非見学できる機会をもっと設けて欲しいという要望が鬼のように届いたためにフィエロ殿下が決めたらしい。
なんでも、四人の貴公子たちのうち三人も見れる上に、月の貴公子と精霊の貴公子の関係を見届けたいという事だそうだ。
ゲラゲラと、おおよそ王族らしくない笑い方でフィエロ殿下が教えてくれた。
「私としても可愛いアンジーの貴公子っぷりをもっと見たいからね。その時間を作るために頑張って執務に励むことにするよ」
そう言って、ディアナ姉様に怒られるまで笑っていたのだった。
訓練用の剣なので刃は潰れている。だからってあのスピードでこられたら大ケガ間違いなしだな。
そんな、しょうもない事ばかりが頭に浮かんでくる。女性たちの悲鳴が耳に木霊した。
ぶつかる!そう思った時、ふっと視界が暗くなった。木霊していた悲鳴が一段階小さくなる。
温かいと感じたと同時にキンッという金属の当たる音がした。
なんだろう?そう思い上を見上げると、綺麗なアメジストが見えた。
「綺麗……」
思わず呟くと
「アンジェロ?大丈夫か?」
そう聞かれた。
はたと我に返る。
綺麗なアメジストはルドルフォ副団長の瞳だった。理解するのに少しばかり時間がかかってしまう。何故、真上からルドルフォ副団長の声が聞こえるのか、飛んできたはずの剣はどうしたのか、少しして全てを理解した。
私はルドルフォ副団長に抱きしめられた形になっていた。その状態で剣を弾いてもらったらしい。
「どうした?」
何の反応も見せなかった私を心配そうに見るルドルフォ副団長。
「すみません、大丈夫です。あの、ありがとうございました」
「いや、大丈夫ならそれでいい」
しばらく見つめ合う。
「キャー」
耳をつんざくような黄色い声にびっくりして慌てて離れた。
ライ兄様とジャンヌ副団長、エミリアーノ副隊長にグイドまでが慌てた様子で駆け寄ってきてくれた。
「アンジー、大丈夫か?」
「アンジー、ケガは?」
皆がそれぞれに心配して声をかけてくれる。
「大丈夫です。ルドルフォ副団長に助けて頂いたのでなんともないです」
「はあ、良かった」
ジャンヌ副団長にぎゅうっと抱きしめられる。
「寿命が縮んだわ」
「心配かけてしまってすみません」
「ううん、いいのよ。大事な身体に傷がつかなくて本当に良かった」
「皆さんもありがとうございます」
駆けつけてくれた皆にお礼を言う。
すると
「アンジー!」
団長が物凄い形相で走ってきた。あまりの恐ろしさにその場にいる全員が後ずさる。
「大丈夫だったか?」
後ずさる私の肩をむんずとつかむ。
「は、はい。大丈夫です」
「出遅れた、すまない」
走ってきた時とは一転、泣きそうな顔で言う団長がなんだか可愛く見えてしまった。
「ルドルフォ副団長のお陰で、かすり傷一つありませんよ。だから大丈夫です」
ニッコリと笑顔で言うと
力一杯抱きしめられてしまった。
「ちょ、く、苦しい」
悲痛な声を聞いた他の面々が慌てて団長から私を引き剥がす。
「団長、落ち着いて。アンジー潰されてるから」
「あ、しまった。加減するの忘れてた」
「クッ、クク、アハハハハ」
突然、ルドルフォ副団長が大きな声で笑い出した。笑った顔を初めて見た私はびっくりしてしまう。他の皆も珍しいものでも見るようにポカンとしている。
「ククク、俺はアンジェロに対して過保護過ぎるかとずっと悩んでいたんだが、おまえらも大概だな。悩んでいるのがバカバカしくなったよ」
ポカンとしていた皆も
「確かに。ここにいる皆、アンジーに対してそうなっているかもしれないですね。なんというか、剣は強くてもなんだか他が危なっかしいんですよねえ、この子」
エミリアーノ副隊長だ。
「そうそう。世間知らずというか、なんでも鵜呑みにするから騙されそうで一人に出来ないんですよ」
グイドまで。
「アタシは単純に気に入ってるの。可愛くって仕方ないわ」
ジャンヌ副団長まで言う。
「ハハ、良かったな、アンジー」
ライ兄様が頭をぐりぐり撫でまわす。
「こればっかりはアンジーが可愛いからしょうがない」
最後に団長が締めるように言うと、皆が笑った。
ひとしきり笑った後
「それにしても、もう第二部隊は全員これからの訓練では木剣のみにするわ」
「その方がいいだろう。いくら刃がない剣だからってあれが当たったら大ケガするところだったぞ」
「どんだけ握力ないんだ。握りが弱いからあんなに剣を飛ばされるんだ」
そしてこれ以降、本当に第二部隊だけ、訓練は木剣しか使えなくなった。
そしてもう一つ、今回を機に訓練場のみを月に一度、見学出来るということになった。
市民からは多数の嘆願書が、貴族からは父親たちが娘の為にと、是非見学できる機会をもっと設けて欲しいという要望が鬼のように届いたためにフィエロ殿下が決めたらしい。
なんでも、四人の貴公子たちのうち三人も見れる上に、月の貴公子と精霊の貴公子の関係を見届けたいという事だそうだ。
ゲラゲラと、おおよそ王族らしくない笑い方でフィエロ殿下が教えてくれた。
「私としても可愛いアンジーの貴公子っぷりをもっと見たいからね。その時間を作るために頑張って執務に励むことにするよ」
そう言って、ディアナ姉様に怒られるまで笑っていたのだった。
35
あなたにおすすめの小説
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!
ぽんちゃん
恋愛
――仕事で疲れて会えない。
十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。
記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。
そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
ある日突然、醜いと有名な次期公爵様と結婚させられることになりました
八代奏多
恋愛
クライシス伯爵令嬢のアレシアはアルバラン公爵令息のクラウスに嫁ぐことが決まった。
両家の友好のための婚姻と言えば聞こえはいいが、実際は義母や義妹そして実の父から追い出されただけだった。
おまけに、クラウスは性格までもが醜いと噂されている。
でもいいんです。義母や義妹たちからいじめられる地獄のような日々から解放されるのだから!
そう思っていたけれど、噂は事実ではなくて……
『生きた骨董品』と婚約破棄されたので、世界最高の魔導ドレスでざまぁします。私を捨てた元婚約者が後悔しても、隣には天才公爵様がいますので!
aozora
恋愛
『時代遅れの飾り人形』――。
そう罵られ、公衆の面前でエリート婚約者に婚約を破棄された子爵令嬢セラフィナ。家からも見放され、全てを失った彼女には、しかし誰にも知られていない秘密の顔があった。
それは、世界の常識すら書き換える、禁断の魔導技術《エーテル織演算》を操る天才技術者としての顔。
淑女の仮面を捨て、一人の職人として再起を誓った彼女の前に現れたのは、革新派を率いる『冷徹公爵』セバスチャン。彼は、誰もが気づかなかった彼女の才能にいち早く価値を見出し、その最大の理解者となる。
古いしがらみが支配する王都で、二人は小さなアトリエから、やがて王国の流行と常識を覆す壮大な革命を巻き起こしていく。
知性と技術だけを武器に、彼女を奈落に突き落とした者たちへ、最も華麗で痛快な復讐を果たすことはできるのか。
これは、絶望の淵から這い上がった天才令嬢が、運命のパートナーと共に自らの手で輝かしい未来を掴む、愛と革命の物語。
毒味役の私がうっかり皇帝陛下の『呪い』を解いてしまった結果、異常な執着(物理)で迫られています
白桃
恋愛
「触れるな」――それが冷酷と噂される皇帝レオルの絶対の掟。
呪いにより誰にも触れられない孤独な彼に仕える毒味役のアリアは、ある日うっかりその呪いを解いてしまう。
初めて人の温もりを知った皇帝は、アリアに異常な執着を見せ始める。
「私のそばから離れるな」――物理的な距離感ゼロの溺愛(?)に戸惑うアリア。しかし、孤独な皇帝の心に触れるうち、二人の関係は思わぬ方向へ…? 呪いが繋いだ、凸凹主従(?)ラブファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる