王子と婚約するのは嫌なので、婚約者を探すために男装令嬢になりました

Blue

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皆、過保護

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 剣が私に向かって飛んでくるのが、まるでスローモーションのようにゆっくり見える。なのに、私はその場で微動だに出来ない。
訓練用の剣なので刃は潰れている。だからってあのスピードでこられたら大ケガ間違いなしだな。

そんな、しょうもない事ばかりが頭に浮かんでくる。女性たちの悲鳴が耳に木霊した。

 ぶつかる!そう思った時、ふっと視界が暗くなった。木霊していた悲鳴が一段階小さくなる。
温かいと感じたと同時にキンッという金属の当たる音がした。

なんだろう?そう思い上を見上げると、綺麗なアメジストが見えた。
「綺麗……」
思わず呟くと
「アンジェロ?大丈夫か?」
そう聞かれた。

はたと我に返る。
綺麗なアメジストはルドルフォ副団長の瞳だった。理解するのに少しばかり時間がかかってしまう。何故、真上からルドルフォ副団長の声が聞こえるのか、飛んできたはずの剣はどうしたのか、少しして全てを理解した。

私はルドルフォ副団長に抱きしめられた形になっていた。その状態で剣を弾いてもらったらしい。
「どうした?」
何の反応も見せなかった私を心配そうに見るルドルフォ副団長。
「すみません、大丈夫です。あの、ありがとうございました」
「いや、大丈夫ならそれでいい」
しばらく見つめ合う。

「キャー」
耳をつんざくような黄色い声にびっくりして慌てて離れた。
ライ兄様とジャンヌ副団長、エミリアーノ副隊長にグイドまでが慌てた様子で駆け寄ってきてくれた。

「アンジー、大丈夫か?」
「アンジー、ケガは?」
皆がそれぞれに心配して声をかけてくれる。
「大丈夫です。ルドルフォ副団長に助けて頂いたのでなんともないです」

「はあ、良かった」
ジャンヌ副団長にぎゅうっと抱きしめられる。
「寿命が縮んだわ」
「心配かけてしまってすみません」
「ううん、いいのよ。大事な身体に傷がつかなくて本当に良かった」

「皆さんもありがとうございます」
駆けつけてくれた皆にお礼を言う。
すると
「アンジー!」
団長が物凄い形相で走ってきた。あまりの恐ろしさにその場にいる全員が後ずさる。

「大丈夫だったか?」
後ずさる私の肩をむんずとつかむ。
「は、はい。大丈夫です」
「出遅れた、すまない」
走ってきた時とは一転、泣きそうな顔で言う団長がなんだか可愛く見えてしまった。
「ルドルフォ副団長のお陰で、かすり傷一つありませんよ。だから大丈夫です」
ニッコリと笑顔で言うと
力一杯抱きしめられてしまった。

「ちょ、く、苦しい」
悲痛な声を聞いた他の面々が慌てて団長から私を引き剥がす。
「団長、落ち着いて。アンジー潰されてるから」
「あ、しまった。加減するの忘れてた」

「クッ、クク、アハハハハ」
突然、ルドルフォ副団長が大きな声で笑い出した。笑った顔を初めて見た私はびっくりしてしまう。他の皆も珍しいものでも見るようにポカンとしている。

「ククク、俺はアンジェロに対して過保護過ぎるかとずっと悩んでいたんだが、おまえらも大概だな。悩んでいるのがバカバカしくなったよ」

ポカンとしていた皆も
「確かに。ここにいる皆、アンジーに対してそうなっているかもしれないですね。なんというか、剣は強くてもなんだか他が危なっかしいんですよねえ、この子」
エミリアーノ副隊長だ。
「そうそう。世間知らずというか、なんでも鵜呑みにするから騙されそうで一人に出来ないんですよ」
グイドまで。

「アタシは単純に気に入ってるの。可愛くって仕方ないわ」
ジャンヌ副団長まで言う。
「ハハ、良かったな、アンジー」
ライ兄様が頭をぐりぐり撫でまわす。
「こればっかりはアンジーが可愛いからしょうがない」
最後に団長が締めるように言うと、皆が笑った。

ひとしきり笑った後
「それにしても、もう第二部隊は全員これからの訓練では木剣のみにするわ」
「その方がいいだろう。いくら刃がない剣だからってあれが当たったら大ケガするところだったぞ」
「どんだけ握力ないんだ。握りが弱いからあんなに剣を飛ばされるんだ」

そしてこれ以降、本当に第二部隊だけ、訓練は木剣しか使えなくなった。

そしてもう一つ、今回を機に訓練場のみを月に一度、見学出来るということになった。
市民からは多数の嘆願書が、貴族からは父親たちが娘の為にと、是非見学できる機会をもっと設けて欲しいという要望が鬼のように届いたためにフィエロ殿下が決めたらしい。

なんでも、四人の貴公子たちのうち三人も見れる上に、月の貴公子と精霊の貴公子の関係を見届けたいという事だそうだ。
ゲラゲラと、おおよそ王族らしくない笑い方でフィエロ殿下が教えてくれた。

「私としても可愛いアンジーの貴公子っぷりをもっと見たいからね。その時間を作るために頑張って執務に励むことにするよ」
そう言って、ディアナ姉様に怒られるまで笑っていたのだった。
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