6 / 47
ザ・王子様
しおりを挟む
声の方へと顔を向ける。
『それは視線も感じるわ』
後ろで眩しいくらいの笑顔を見せて、声を掛けてきたのは今日の主役であろう第二王子だった。
陽に輝く金の髪をかき上げて、微笑む姿は正にザ・王子様。絵本に出てくる、お手本のような王子だ。チョコレート色の瞳はキラキラして甘そうだ。この瞳で口説かれたら、世の女性のほとんどが陥落するに違いない。
「ああ、オスカー。楽しいよ。彼女の魔法は凄いんだ」
両手を拘束されたまま、楽しそうに笑うグランディ様。やはり変態だ。でも、流石に王子の前で、このままなのもマズイと思い拘束を解く。
「美しいレディ、彼が失礼なことをしたようだね。申し訳ない」
何故か彼に変わって謝罪する第二王子殿下。
「殿下に謝っていただくなんて、畏れ多い事でございます」
慌てて立ち上がる。
「レディは知らないかな?アーチーは私の従兄弟えでね。歳も同じで学校でも同級生だったんだよ」
それは初耳だ。こんな変態が殿下と血が繋がっているなんて。
「申し訳ありません。存じ上げませんでした」
「ああ、いいんだ。別に誇る事でもないし」
困ったような表情で笑う殿下。殿下もこの人で苦労しているのかもしれない。
「ねえ、オスカー。彼女は花の三姉妹の末の妹だよ」
「え?ではローズ嬢の妹君か?」
「はい、ご挨拶が遅れました。アヴァティーニ公爵家三女、リリー・アヴァティーニでございます。以後、お見知りおきを」
「見た目がまるで違うのでわからなかったよ。私はオスカー・バウドーラ。この国の第二王子でローズ嬢とは同級生だったんだ」
座るように促される。そして、何故か殿下もこのテーブルに座った。なんで?
「ローズ嬢から二人の妹君の話はよく聞いていたよ。聞いていると言った方がいいかな。今でも会えば君たちの話を聞くからね」
「それはとんだお耳汚しを」
「全然。君のお父上の方が凄いから」
笑う殿下。
「それは重ね重ね……」
穴があるのなら今すぐ入りたい。
「はは、そんな恐縮しないでいいよ。アーチーの時と同じ感じでいい」
無理だから。こんな変態と同じ扱いなんて出来ません。
「試しにオスカーの両手をぐるぐる巻きにしてみたら?緊張ほどけるかもしれないよ」
グランディ様が笑いながら指をクルクル回した。この野郎。
再びグランディ様の手を拘束しようかと思った時、殿下から話しかけられる。
「君たちの名前の由来って、やはり見た目なのかな?」
「ええ、そうらしいです。見た目というか髪の色でしょうか。ローズ姉様は花の女王であるバラのように赤い髪、カメリア姉様は私より少しだけピンクがかった色が椿のように神秘的だと。私の髪色は満月に照らされた百合に似ているからと聞きました」
「なるほど。竜騎士団長はロマンチストなのだな」
「ふふ、そのようです」
つい笑ってしまう。だって、お母様を褒めるお父様は本当にロマンチストだから。
「……美しいな」
「はい?」
「遠目で、立ち姿が美しいレディだと思っていた。スッと真っ直ぐに立つ姿は正に百合のようだった。それに……笑った表情は更に美しい」
「ありがとうございます」
褒められてしまった。
「リリー嬢はまだデビュー前か?」
「はい、今回デビュタントです」
「そうか……きっと誰よりも美しいのだろうな。楽しみだ」
この褒め殺しには、どう対処すればいいのだろう。
「オスカー、グイグイ行き過ぎ。リリー嬢が困っているよ」
まさかのグランディ様による助け船。泥船にならないでしょうね。
「オスカーは、随分とリリー嬢を気に入ったみたいだね。実はね、私もリリー嬢の事気に入ったんだあ。ははは、ライバルだね」
泥船だったわ。
「はあ。疲れた」
ほとんどの時間、あの二人が席にいた。もう私の精神力がゴリゴリ削られ、風前の灯火だ。せめて帰る前に癒されたいと、お父様がいるであろう竜騎士団の棟に向かっている。本当に疲れていたのだ。
でなければ、いつもなら避けられたはず。
突然、柱の影から飛び出した人物と見事にぶつかってしまった。
「キャッ!」
「うわっ!」
ぶつかった拍子に後ろへ身体が傾いた。ヤバいと思ったその時、大きな手が私を支えたのだった。
『それは視線も感じるわ』
後ろで眩しいくらいの笑顔を見せて、声を掛けてきたのは今日の主役であろう第二王子だった。
陽に輝く金の髪をかき上げて、微笑む姿は正にザ・王子様。絵本に出てくる、お手本のような王子だ。チョコレート色の瞳はキラキラして甘そうだ。この瞳で口説かれたら、世の女性のほとんどが陥落するに違いない。
「ああ、オスカー。楽しいよ。彼女の魔法は凄いんだ」
両手を拘束されたまま、楽しそうに笑うグランディ様。やはり変態だ。でも、流石に王子の前で、このままなのもマズイと思い拘束を解く。
「美しいレディ、彼が失礼なことをしたようだね。申し訳ない」
何故か彼に変わって謝罪する第二王子殿下。
「殿下に謝っていただくなんて、畏れ多い事でございます」
慌てて立ち上がる。
「レディは知らないかな?アーチーは私の従兄弟えでね。歳も同じで学校でも同級生だったんだよ」
それは初耳だ。こんな変態が殿下と血が繋がっているなんて。
「申し訳ありません。存じ上げませんでした」
「ああ、いいんだ。別に誇る事でもないし」
困ったような表情で笑う殿下。殿下もこの人で苦労しているのかもしれない。
「ねえ、オスカー。彼女は花の三姉妹の末の妹だよ」
「え?ではローズ嬢の妹君か?」
「はい、ご挨拶が遅れました。アヴァティーニ公爵家三女、リリー・アヴァティーニでございます。以後、お見知りおきを」
「見た目がまるで違うのでわからなかったよ。私はオスカー・バウドーラ。この国の第二王子でローズ嬢とは同級生だったんだ」
座るように促される。そして、何故か殿下もこのテーブルに座った。なんで?
「ローズ嬢から二人の妹君の話はよく聞いていたよ。聞いていると言った方がいいかな。今でも会えば君たちの話を聞くからね」
「それはとんだお耳汚しを」
「全然。君のお父上の方が凄いから」
笑う殿下。
「それは重ね重ね……」
穴があるのなら今すぐ入りたい。
「はは、そんな恐縮しないでいいよ。アーチーの時と同じ感じでいい」
無理だから。こんな変態と同じ扱いなんて出来ません。
「試しにオスカーの両手をぐるぐる巻きにしてみたら?緊張ほどけるかもしれないよ」
グランディ様が笑いながら指をクルクル回した。この野郎。
再びグランディ様の手を拘束しようかと思った時、殿下から話しかけられる。
「君たちの名前の由来って、やはり見た目なのかな?」
「ええ、そうらしいです。見た目というか髪の色でしょうか。ローズ姉様は花の女王であるバラのように赤い髪、カメリア姉様は私より少しだけピンクがかった色が椿のように神秘的だと。私の髪色は満月に照らされた百合に似ているからと聞きました」
「なるほど。竜騎士団長はロマンチストなのだな」
「ふふ、そのようです」
つい笑ってしまう。だって、お母様を褒めるお父様は本当にロマンチストだから。
「……美しいな」
「はい?」
「遠目で、立ち姿が美しいレディだと思っていた。スッと真っ直ぐに立つ姿は正に百合のようだった。それに……笑った表情は更に美しい」
「ありがとうございます」
褒められてしまった。
「リリー嬢はまだデビュー前か?」
「はい、今回デビュタントです」
「そうか……きっと誰よりも美しいのだろうな。楽しみだ」
この褒め殺しには、どう対処すればいいのだろう。
「オスカー、グイグイ行き過ぎ。リリー嬢が困っているよ」
まさかのグランディ様による助け船。泥船にならないでしょうね。
「オスカーは、随分とリリー嬢を気に入ったみたいだね。実はね、私もリリー嬢の事気に入ったんだあ。ははは、ライバルだね」
泥船だったわ。
「はあ。疲れた」
ほとんどの時間、あの二人が席にいた。もう私の精神力がゴリゴリ削られ、風前の灯火だ。せめて帰る前に癒されたいと、お父様がいるであろう竜騎士団の棟に向かっている。本当に疲れていたのだ。
でなければ、いつもなら避けられたはず。
突然、柱の影から飛び出した人物と見事にぶつかってしまった。
「キャッ!」
「うわっ!」
ぶつかった拍子に後ろへ身体が傾いた。ヤバいと思ったその時、大きな手が私を支えたのだった。
12
あなたにおすすめの小説
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
実は私が国を守っていたと知ってましたか? 知らない? それなら終わりです
サイコちゃん
恋愛
ノアは平民のため、地位の高い聖女候補達にいじめられていた。しかしノアは自分自身が聖女であることをすでに知っており、この国の運命は彼女の手に握られていた。ある時、ノアは聖女候補達が王子と関係を持っている場面を見てしまい、悲惨な暴行を受けそうになる。しかもその場にいた王子は見て見ぬ振りをした。その瞬間、ノアは国を捨てる決断をする――
辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~
サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
噂の聖女と国王陛下 ―婚約破棄を願った令嬢は、溺愛される
柴田はつみ
恋愛
幼い頃から共に育った国王アランは、私にとって憧れであり、唯一の婚約者だった。
だが、最近になって「陛下は聖女殿と親しいらしい」という噂が宮廷中に広まる。
聖女は誰もが認める美しい女性で、陛下の隣に立つ姿は絵のようにお似合い――私など必要ないのではないか。
胸を締め付ける不安に耐えかねた私は、ついにアランへ婚約破棄を申し出る。
「……私では、陛下の隣に立つ資格がありません」
けれど、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「お前は俺の妻になる。誰が何と言おうと、それは変わらない」
噂の裏に隠された真実、幼馴染が密かに抱き続けていた深い愛情――
一度手放そうとした運命の絆は、より強く絡み合い、私を逃がさなくなる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる