お姉様の代わりに悪役令嬢にされそうです

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ザ・王子様

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 声の方へと顔を向ける。
『それは視線も感じるわ』
後ろで眩しいくらいの笑顔を見せて、声を掛けてきたのは今日の主役であろう第二王子だった。

陽に輝く金の髪をかき上げて、微笑む姿は正にザ・王子様。絵本に出てくる、お手本のような王子だ。チョコレート色の瞳はキラキラして甘そうだ。この瞳で口説かれたら、世の女性のほとんどが陥落するに違いない。

「ああ、オスカー。楽しいよ。彼女の魔法は凄いんだ」
両手を拘束されたまま、楽しそうに笑うグランディ様。やはり変態だ。でも、流石に王子の前で、このままなのもマズイと思い拘束を解く。

「美しいレディ、彼が失礼なことをしたようだね。申し訳ない」
何故か彼に変わって謝罪する第二王子殿下。
「殿下に謝っていただくなんて、畏れ多い事でございます」
慌てて立ち上がる。

「レディは知らないかな?アーチーは私の従兄弟えでね。歳も同じで学校でも同級生だったんだよ」
それは初耳だ。こんな変態が殿下と血が繋がっているなんて。

「申し訳ありません。存じ上げませんでした」
「ああ、いいんだ。別に誇る事でもないし」
困ったような表情で笑う殿下。殿下もこの人で苦労しているのかもしれない。

「ねえ、オスカー。彼女は花の三姉妹の末の妹だよ」
「え?ではローズ嬢の妹君か?」

「はい、ご挨拶が遅れました。アヴァティーニ公爵家三女、リリー・アヴァティーニでございます。以後、お見知りおきを」
「見た目がまるで違うのでわからなかったよ。私はオスカー・バウドーラ。この国の第二王子でローズ嬢とは同級生だったんだ」

座るように促される。そして、何故か殿下もこのテーブルに座った。なんで?

「ローズ嬢から二人の妹君の話はよく聞いていたよ。聞いていると言った方がいいかな。今でも会えば君たちの話を聞くからね」
「それはとんだお耳汚しを」
「全然。君のお父上の方が凄いから」
笑う殿下。

「それは重ね重ね……」
穴があるのなら今すぐ入りたい。
「はは、そんな恐縮しないでいいよ。アーチーの時と同じ感じでいい」
無理だから。こんな変態と同じ扱いなんて出来ません。

「試しにオスカーの両手をぐるぐる巻きにしてみたら?緊張ほどけるかもしれないよ」
グランディ様が笑いながら指をクルクル回した。この野郎。

再びグランディ様の手を拘束しようかと思った時、殿下から話しかけられる。
「君たちの名前の由来って、やはり見た目なのかな?」
「ええ、そうらしいです。見た目というか髪の色でしょうか。ローズ姉様は花の女王であるバラのように赤い髪、カメリア姉様は私より少しだけピンクがかった色が椿のように神秘的だと。私の髪色は満月に照らされた百合に似ているからと聞きました」

「なるほど。竜騎士団長はロマンチストなのだな」
「ふふ、そのようです」
つい笑ってしまう。だって、お母様を褒めるお父様は本当にロマンチストだから。

「……美しいな」
「はい?」
「遠目で、立ち姿が美しいレディだと思っていた。スッと真っ直ぐに立つ姿は正に百合のようだった。それに……笑った表情は更に美しい」

「ありがとうございます」
褒められてしまった。
「リリー嬢はまだデビュー前か?」
「はい、今回デビュタントです」
「そうか……きっと誰よりも美しいのだろうな。楽しみだ」
この褒め殺しには、どう対処すればいいのだろう。

「オスカー、グイグイ行き過ぎ。リリー嬢が困っているよ」
まさかのグランディ様による助け船。泥船にならないでしょうね。
「オスカーは、随分とリリー嬢を気に入ったみたいだね。実はね、私もリリー嬢の事気に入ったんだあ。ははは、ライバルだね」
泥船だったわ。



「はあ。疲れた」
ほとんどの時間、あの二人が席にいた。もう私の精神力がゴリゴリ削られ、風前の灯火だ。せめて帰る前に癒されたいと、お父様がいるであろう竜騎士団の棟に向かっている。本当に疲れていたのだ。

でなければ、いつもなら避けられたはず。

 突然、柱の影から飛び出した人物と見事にぶつかってしまった。
「キャッ!」
「うわっ!」
ぶつかった拍子に後ろへ身体が傾いた。ヤバいと思ったその時、大きな手が私を支えたのだった。
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