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嵐のような人
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「すまない!人がいることに気が付かなかった」
私とぶつかって、更に支えてくれた人物が謝ってきた。
「こちらこそ、ぼおっとしておりました」
目の前に立つ大きな男性。騎士団の服を着ていた彼は、ブルネットの短い髪をガシガシとかいた。
「本当にすまない。まさかこの辺りを女性が歩いているなんて思っていなくて。完全に俺の不注意だ」
頭を下げた彼に慌ててしまう。
「あの、本当にお気になさらないでください。私も注意していなかったのです。それに支えてくれたおかげでなんともありませんから。だからどうか、頭を上げてください」
「いや、これは完全に俺の不注意だ。レディに危うく傷を作ってしまう所だった。申し訳ない」
「傷は出来ていないのですから、そんなに謝らないでください。ね、この通り、私は何ともありません」
彼の前で、くるりと一周して見せる。
すると、少しだけバツが悪そうな表情で顔を上げた。がっちりした体格と濃いブルーの瞳が印象的だった。
なんだかその表情が可愛らしく思えてしまい、思わず笑顔になってしまった。驚いた顔で私を凝視する彼。固まってしまったようだ。
「ほら、私は本当に大丈夫ですから。それよりも、何か急いでいたのでは?どうか私の事は気にせず行ってください」
すっかり忘れていたようで、はっとした彼は私の手を突然握った。
「俺の名前はアーロン。アーロン・マルキオーロだ。もし、後日どこか痛めたりしたら、私に言ってくれ。騎士団に所属している。第二部隊の隊長と言えばわかるから」
そう言い残して、彼は物凄い勢いで去って行った。
「嵐のようだったわね、ふふふ」
快活な雰囲気の彼に、少しだけ癒された気がした。
突き当りを右に行けば騎士団棟、左に行けば竜騎士棟に行ける。迷わず左に曲がると数人の竜騎士の人たちがいた。
「こんにちは。お仕事中に申し訳ございません。リリー・アヴァティーニと申します。父に会いに来たのですが……」
そこまで言うと、皆すぐにわかってくれた。
「団長なら竜舎にいるはずです。竜舎にお一人で行くのは危険ですから、良かったらそこまでお送りしますよ」
数人の中の一人が言ってくれたがすぐに反対する声が上がった。
「お前はもう休憩時間終わるだろ。俺が行く」
「いや、俺は今からだから俺が行くよ」
「いいや、ここは年長者である俺だろ」
なにやら誰が付き添うかで揉めているらしい。私は別に事務所で待ってもいいのだが……。どうしようかと思っていると、後ろからカツカツと歩く足音。同時に声がかかった。
「何を揉めている?」
低く威圧感があったが美しい声だった。
彼を見た竜騎士の人たちが、もれなく焦っている。これは上の立場の人なのかもしれない。私が余計なこと言ったばかりに、彼らが怒られてしまうのは望んでいない。
声の方に身体を向ける。
「申し訳ございません。私が余計なお願いをしたばかりに。私が悪いのです」
謝罪をして頭を上げると、私は固まってしまった。
先程ぶつかった、騎士の方にも負けないくらい背の高い人が立っていた。彼ほどガタイがいい訳ではないが均整はとれている。黒い竜騎士の制服がよく似合う真っ黒の髪。そして闇夜でも輝きそうな金色の瞳。
「……黒色の竜」
忘れもしない、まだ誰も乗る人がいなかった、あの黒色の竜。彼が人になったのかと錯覚するほど纏う雰囲気が似ていた。
私の呟きが聞こえたのか、今度は彼が驚いた表情をした。
「何故、黒竜を知っている?」
鋭い目つきになった彼に、慌てたのは他の竜騎士たちだった。
「彼女は団長のお嬢様です。団長に会いに来たそうです」
途端に、彼の視線が元に戻る。だが、私の胸はドキドキしている。彼の視線が怖かったからではない。あまりにも黒色の竜に似ていたからだ。視線を逸らす事が出来ずにじっと見つめていると、何かに気付いた彼が私の顔に自分の顔を近付けた。
私とぶつかって、更に支えてくれた人物が謝ってきた。
「こちらこそ、ぼおっとしておりました」
目の前に立つ大きな男性。騎士団の服を着ていた彼は、ブルネットの短い髪をガシガシとかいた。
「本当にすまない。まさかこの辺りを女性が歩いているなんて思っていなくて。完全に俺の不注意だ」
頭を下げた彼に慌ててしまう。
「あの、本当にお気になさらないでください。私も注意していなかったのです。それに支えてくれたおかげでなんともありませんから。だからどうか、頭を上げてください」
「いや、これは完全に俺の不注意だ。レディに危うく傷を作ってしまう所だった。申し訳ない」
「傷は出来ていないのですから、そんなに謝らないでください。ね、この通り、私は何ともありません」
彼の前で、くるりと一周して見せる。
すると、少しだけバツが悪そうな表情で顔を上げた。がっちりした体格と濃いブルーの瞳が印象的だった。
なんだかその表情が可愛らしく思えてしまい、思わず笑顔になってしまった。驚いた顔で私を凝視する彼。固まってしまったようだ。
「ほら、私は本当に大丈夫ですから。それよりも、何か急いでいたのでは?どうか私の事は気にせず行ってください」
すっかり忘れていたようで、はっとした彼は私の手を突然握った。
「俺の名前はアーロン。アーロン・マルキオーロだ。もし、後日どこか痛めたりしたら、私に言ってくれ。騎士団に所属している。第二部隊の隊長と言えばわかるから」
そう言い残して、彼は物凄い勢いで去って行った。
「嵐のようだったわね、ふふふ」
快活な雰囲気の彼に、少しだけ癒された気がした。
突き当りを右に行けば騎士団棟、左に行けば竜騎士棟に行ける。迷わず左に曲がると数人の竜騎士の人たちがいた。
「こんにちは。お仕事中に申し訳ございません。リリー・アヴァティーニと申します。父に会いに来たのですが……」
そこまで言うと、皆すぐにわかってくれた。
「団長なら竜舎にいるはずです。竜舎にお一人で行くのは危険ですから、良かったらそこまでお送りしますよ」
数人の中の一人が言ってくれたがすぐに反対する声が上がった。
「お前はもう休憩時間終わるだろ。俺が行く」
「いや、俺は今からだから俺が行くよ」
「いいや、ここは年長者である俺だろ」
なにやら誰が付き添うかで揉めているらしい。私は別に事務所で待ってもいいのだが……。どうしようかと思っていると、後ろからカツカツと歩く足音。同時に声がかかった。
「何を揉めている?」
低く威圧感があったが美しい声だった。
彼を見た竜騎士の人たちが、もれなく焦っている。これは上の立場の人なのかもしれない。私が余計なこと言ったばかりに、彼らが怒られてしまうのは望んでいない。
声の方に身体を向ける。
「申し訳ございません。私が余計なお願いをしたばかりに。私が悪いのです」
謝罪をして頭を上げると、私は固まってしまった。
先程ぶつかった、騎士の方にも負けないくらい背の高い人が立っていた。彼ほどガタイがいい訳ではないが均整はとれている。黒い竜騎士の制服がよく似合う真っ黒の髪。そして闇夜でも輝きそうな金色の瞳。
「……黒色の竜」
忘れもしない、まだ誰も乗る人がいなかった、あの黒色の竜。彼が人になったのかと錯覚するほど纏う雰囲気が似ていた。
私の呟きが聞こえたのか、今度は彼が驚いた表情をした。
「何故、黒竜を知っている?」
鋭い目つきになった彼に、慌てたのは他の竜騎士たちだった。
「彼女は団長のお嬢様です。団長に会いに来たそうです」
途端に、彼の視線が元に戻る。だが、私の胸はドキドキしている。彼の視線が怖かったからではない。あまりにも黒色の竜に似ていたからだ。視線を逸らす事が出来ずにじっと見つめていると、何かに気付いた彼が私の顔に自分の顔を近付けた。
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