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黒竜の騎士
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彼の顔がすぐ目の前にある。半歩進めばキスが出来そうなくらい近い。金の瞳がキラッと光った気がした。
「瞳の色が……」
途端に、ドキドキしていた心臓が急に冷えた。この後に続く言葉を私は知っている。
じっと耐えるように、彼を見据える。
「瞳の色が左右で違うのだな……宝石のようだ。美しい」
私は目を見開いた。覚悟していたセリフとは真逆の言葉が返ってきたからだ。
「美しい……ですか?」
思わず聞いてしまう。
「ああ、こんな美しい瞳を初めて見た」
少し呆けたように、呟くように言う彼の言葉は、ストンと私の心に落ちた。そしてフワフワと暖かい何かが舞っているような感覚がした。
「ありがとう、ございます」
すると、おもむろに彼の指先が近づいてきたかと思ったら、スッと目元を拭われた。
「何故泣く?」
言われて初めて気が付いた。私は泣いていたのだ。
「すみません。今まで家族以外でそんな風に言ってくれた人がいなかったので」
涙がハラハラと落ちる。
「皆、きっと思っていたと思うが。たまたま俺が口にしただけだ」
この人は私を泣かせたいのだろうか。涙が止まらない。
「困ったな。どうやったら泣き止む?」
本当に困ったようで、眉が下がっている。
「ごめんなさい。私にもわかりません」
ハラハラと流れていく涙。久々に泣いた私は止め方がわからない。暫く彼が考えるようなポーズを取る。その間も涙は流れて止まらない。
「黒竜を見るか?」
「え?」
「知っているという事は、会ったことがあるのだろう」
「はい、幼い頃ですが」
「団長も竜舎にいる。どうだ?行くか?」
「はい」
またもや彼の指が、私の目元を拭った。
「よし、今のが最後の涙だったな」
「え?」
自分でもびっくりした。いつの間にか泣き止んでいる。
「おまえたち、彼女は私が連れて行く。気にせず休め」
そう言い終わるとスッと私を抱き上げた。
「え?え?なんで?」
「この方が早い。それに少しでも私の匂いを付けておいた方がいい」
彼は至極当然という顔で、そのまま歩き出した。
後ろでは何やら雄叫びのような声が聞こえたが、すぐに消えた。彼の歩くスピードが速いのだ。最奥にある竜舎にあっという間に到着してしまった。そして彼はそのまま竜舎へと入って行く。私はどうしていいのかわからず、大人しくするしかなかった。
他の竜たちが興味深そうに私を見ていた。そして突き当りの右側。丸くなり眠っていたらしい黒色の竜が、目を覚ましてこちらを見た。
「やっぱり綺麗」
抱かれていることも忘れ、黒色の竜を見つめる。幼い頃に見たままの竜がそこにいた。
のそりと起き上がる黒色の竜。顔を近付け私をじっと見る。
『さっきの彼のよう』
あまりにも似ていた挙動に思わず笑ってしまった。勿論、彼にも竜にも私が笑った理由はわからないだろう。
しかし、笑った事で何かを刺激したのか、黒色の竜が私の頬に鼻先を摺り寄せた。
「どうやら君を思い出したようだ。君を受け入れている」
「本当に!?覚えていてくれたの?嬉しい」
鼻先を撫でるとグルグルと鳴いた。
「凄いな。俺と団長以外で受け入れたのを見たのは君が初めてだ」
彼が感心していると、後ろから大きな影が動くのが見えた。彼が咄嗟に後ずさる。影の正体は白金の竜だった。フンッと鼻息で抗議する。
「ジルヴァラ?」
私が名前を呼べば、白金の竜がクウと鳴いた。
「私の事覚えてくれているの?」
クウとまたもや鳴く。
「嬉しいわ。ずっと会いたかった」
彼がジルヴァラの傍に寄ってくれる。でも降ろしてはくれない。
そっと私の手に寄せた鼻先を撫でると嬉しそうに擦り付けてきた。
「君はどうやら竜に好かれやすいようだな」
言っている間も、黒色の竜がまるで構えと言っているように後ろから首を伸ばす。
久しぶりの竜たちとの触れ合いに幸せを感じていると、背後から地を這うような恐ろしい声が響いた。
「瞳の色が……」
途端に、ドキドキしていた心臓が急に冷えた。この後に続く言葉を私は知っている。
じっと耐えるように、彼を見据える。
「瞳の色が左右で違うのだな……宝石のようだ。美しい」
私は目を見開いた。覚悟していたセリフとは真逆の言葉が返ってきたからだ。
「美しい……ですか?」
思わず聞いてしまう。
「ああ、こんな美しい瞳を初めて見た」
少し呆けたように、呟くように言う彼の言葉は、ストンと私の心に落ちた。そしてフワフワと暖かい何かが舞っているような感覚がした。
「ありがとう、ございます」
すると、おもむろに彼の指先が近づいてきたかと思ったら、スッと目元を拭われた。
「何故泣く?」
言われて初めて気が付いた。私は泣いていたのだ。
「すみません。今まで家族以外でそんな風に言ってくれた人がいなかったので」
涙がハラハラと落ちる。
「皆、きっと思っていたと思うが。たまたま俺が口にしただけだ」
この人は私を泣かせたいのだろうか。涙が止まらない。
「困ったな。どうやったら泣き止む?」
本当に困ったようで、眉が下がっている。
「ごめんなさい。私にもわかりません」
ハラハラと流れていく涙。久々に泣いた私は止め方がわからない。暫く彼が考えるようなポーズを取る。その間も涙は流れて止まらない。
「黒竜を見るか?」
「え?」
「知っているという事は、会ったことがあるのだろう」
「はい、幼い頃ですが」
「団長も竜舎にいる。どうだ?行くか?」
「はい」
またもや彼の指が、私の目元を拭った。
「よし、今のが最後の涙だったな」
「え?」
自分でもびっくりした。いつの間にか泣き止んでいる。
「おまえたち、彼女は私が連れて行く。気にせず休め」
そう言い終わるとスッと私を抱き上げた。
「え?え?なんで?」
「この方が早い。それに少しでも私の匂いを付けておいた方がいい」
彼は至極当然という顔で、そのまま歩き出した。
後ろでは何やら雄叫びのような声が聞こえたが、すぐに消えた。彼の歩くスピードが速いのだ。最奥にある竜舎にあっという間に到着してしまった。そして彼はそのまま竜舎へと入って行く。私はどうしていいのかわからず、大人しくするしかなかった。
他の竜たちが興味深そうに私を見ていた。そして突き当りの右側。丸くなり眠っていたらしい黒色の竜が、目を覚ましてこちらを見た。
「やっぱり綺麗」
抱かれていることも忘れ、黒色の竜を見つめる。幼い頃に見たままの竜がそこにいた。
のそりと起き上がる黒色の竜。顔を近付け私をじっと見る。
『さっきの彼のよう』
あまりにも似ていた挙動に思わず笑ってしまった。勿論、彼にも竜にも私が笑った理由はわからないだろう。
しかし、笑った事で何かを刺激したのか、黒色の竜が私の頬に鼻先を摺り寄せた。
「どうやら君を思い出したようだ。君を受け入れている」
「本当に!?覚えていてくれたの?嬉しい」
鼻先を撫でるとグルグルと鳴いた。
「凄いな。俺と団長以外で受け入れたのを見たのは君が初めてだ」
彼が感心していると、後ろから大きな影が動くのが見えた。彼が咄嗟に後ずさる。影の正体は白金の竜だった。フンッと鼻息で抗議する。
「ジルヴァラ?」
私が名前を呼べば、白金の竜がクウと鳴いた。
「私の事覚えてくれているの?」
クウとまたもや鳴く。
「嬉しいわ。ずっと会いたかった」
彼がジルヴァラの傍に寄ってくれる。でも降ろしてはくれない。
そっと私の手に寄せた鼻先を撫でると嬉しそうに擦り付けてきた。
「君はどうやら竜に好かれやすいようだな」
言っている間も、黒色の竜がまるで構えと言っているように後ろから首を伸ばす。
久しぶりの竜たちとの触れ合いに幸せを感じていると、背後から地を這うような恐ろしい声が響いた。
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