23 / 47
再び教会へ
しおりを挟む
「こんにちは」
ギルドに顔を出すと、マリーさんが受付で手を振ってくれた。なんだか今日はいつもよりギルドに人が多い気がする。
「なんだか人が多くないですか?」
「そうなのよ。花祭りが近いのもあると思うのだけれど、最近、どうも魔物の数が増えているみたいで。だから必然的に冒険者たちが集まって来ているの」
「魔物の数が増えているんですか?」
「そうなの。まだ強力な魔物は確認されていないのだけれどね。ああ、そうそう。リリーちゃんにお願いしたい依頼があるわ」
「教会とか?」
「そ、正解。どうもあの森も魔物が増えているみたい。街の外も中もじゃ、普通に生活している人たちは不安よね」
「そうですね、わかりました。今回の依頼はなんですか?」
「またワイルドボアですって。詳しい事は教会に行って聞いてみて」
「はい」
「こんにちは」
教会に入るとキャルム様がいた。
「ああ、リリーさん。よかった、来ていただけて」
「またワイルドボアが出たって」
「そうなんです。しかも敷地に入ろうとして……以前のワイルドボアの件から、敷地内には私が結界を張っているのですが、わざわざ結界を破ろうとする個体がいるのです」
ワイルドボアは決してバカではない。入れない場所に無理矢理入るという無駄な事はしないはずだ。
「ここに入りたい理由でもあるんでしょうか?」
「ここに入ったとしても、何もありません。教会ですから食べ物も必要な分しかありませんし」
うんうんと、二人でしばらく考えるがわからない。
「とにかく私、森に行ってみますね」
すると、突然扉が開いて聖女候補のシモネッタ嬢が入って来た。
「キャルム様!そんな人に頼まなくても私が瘴気を払えば落ち着くって言っているじゃない」
瘴気?瘴気が出ているの?そんな話聞いてない。話が見えませんが?
「ですから、瘴気など見当たらないと言っているでしょう。何を根拠に言っているのです?」
「だって瘴気が森の奥にあるのよ。それを聖女である私が払うの!」
「クララさんは聖女ではなく、聖女候補でしょう。現実的に考えてあなたの魔力では、例え瘴気が出たとしても払う事など出来ません」
「出来るもん。キャルム様のバカ!」
何処にそんな力があるのか、割れんばかりの勢いで扉を閉めた彼女が走り去った。バタバタと足音が遠のいていく。
「ええっと?」
「すみません。どうも父がそそのかしているのか、自分には瘴気を払う力があると信じているようで……」
「瘴気が出ているのですか?」
「いえ、少なくとも私には感じられません。これでもここら一体の教会の人間の中で、私がの魔力が一番高いのです。その私が感じないのですから、瘴気は少なくともこの周辺にはありません」
「わかりました。とりあえず行ってみますね」
「……本当なら私が行くべきなのですが……申し訳ありません」
悔しそうな彼の手をそっと握る。
「ふふ、そんなに眉間にしわを寄せたらダメですよ。天使様にそれは似合いません」
「私は天使などでは」
「ごめんなさい。男性に向かって言うべき言葉ではないのはわかっているのですが、どうしても私には天使様に見えてしまうんです」
「私にはリリーさんが女神様に見えます。あ、以前も言いましたね、これ」
「ふふ、ありがとうございます。では行ってきます」
「気を付けてください。今も結界に触れている感覚がありますので」
「はい」
「いた」
確かに一頭のワイルドボアが、結界を壁のように感じているのか、前足でしきりに引っ掻いている。どうやら本当にこの一頭だけのようだ。周辺に他の魔物の気配はない。しばらく見ていると、ワイルドボアが体当たりをしてきた。それでもダメだと思ったらしいワイルドボアは、後ずさりで下がる。そして、全速力で駆けてきて再び体当たりした。
結界が少しだけ波打ったのが見えた。これは何回も同じことをされたら破られてしまうだろう。
「おかしい。何故あの個体だけここに固執するの?」
何か欲しいものでもあるのだろうか?辺りを見回すがめぼしいものはない。再び体当たりするワイルドボア。あまりの衝撃に、自身の身体がひっくり返った。
「あ!」
ひっくり返った拍子に見えた張ったお乳。どうやら彼女は子供を産んでいるらしい。
この時、なんとなく感じるものがあった。彼女の悲痛な感情を。
「まさか……」
ギルドに顔を出すと、マリーさんが受付で手を振ってくれた。なんだか今日はいつもよりギルドに人が多い気がする。
「なんだか人が多くないですか?」
「そうなのよ。花祭りが近いのもあると思うのだけれど、最近、どうも魔物の数が増えているみたいで。だから必然的に冒険者たちが集まって来ているの」
「魔物の数が増えているんですか?」
「そうなの。まだ強力な魔物は確認されていないのだけれどね。ああ、そうそう。リリーちゃんにお願いしたい依頼があるわ」
「教会とか?」
「そ、正解。どうもあの森も魔物が増えているみたい。街の外も中もじゃ、普通に生活している人たちは不安よね」
「そうですね、わかりました。今回の依頼はなんですか?」
「またワイルドボアですって。詳しい事は教会に行って聞いてみて」
「はい」
「こんにちは」
教会に入るとキャルム様がいた。
「ああ、リリーさん。よかった、来ていただけて」
「またワイルドボアが出たって」
「そうなんです。しかも敷地に入ろうとして……以前のワイルドボアの件から、敷地内には私が結界を張っているのですが、わざわざ結界を破ろうとする個体がいるのです」
ワイルドボアは決してバカではない。入れない場所に無理矢理入るという無駄な事はしないはずだ。
「ここに入りたい理由でもあるんでしょうか?」
「ここに入ったとしても、何もありません。教会ですから食べ物も必要な分しかありませんし」
うんうんと、二人でしばらく考えるがわからない。
「とにかく私、森に行ってみますね」
すると、突然扉が開いて聖女候補のシモネッタ嬢が入って来た。
「キャルム様!そんな人に頼まなくても私が瘴気を払えば落ち着くって言っているじゃない」
瘴気?瘴気が出ているの?そんな話聞いてない。話が見えませんが?
「ですから、瘴気など見当たらないと言っているでしょう。何を根拠に言っているのです?」
「だって瘴気が森の奥にあるのよ。それを聖女である私が払うの!」
「クララさんは聖女ではなく、聖女候補でしょう。現実的に考えてあなたの魔力では、例え瘴気が出たとしても払う事など出来ません」
「出来るもん。キャルム様のバカ!」
何処にそんな力があるのか、割れんばかりの勢いで扉を閉めた彼女が走り去った。バタバタと足音が遠のいていく。
「ええっと?」
「すみません。どうも父がそそのかしているのか、自分には瘴気を払う力があると信じているようで……」
「瘴気が出ているのですか?」
「いえ、少なくとも私には感じられません。これでもここら一体の教会の人間の中で、私がの魔力が一番高いのです。その私が感じないのですから、瘴気は少なくともこの周辺にはありません」
「わかりました。とりあえず行ってみますね」
「……本当なら私が行くべきなのですが……申し訳ありません」
悔しそうな彼の手をそっと握る。
「ふふ、そんなに眉間にしわを寄せたらダメですよ。天使様にそれは似合いません」
「私は天使などでは」
「ごめんなさい。男性に向かって言うべき言葉ではないのはわかっているのですが、どうしても私には天使様に見えてしまうんです」
「私にはリリーさんが女神様に見えます。あ、以前も言いましたね、これ」
「ふふ、ありがとうございます。では行ってきます」
「気を付けてください。今も結界に触れている感覚がありますので」
「はい」
「いた」
確かに一頭のワイルドボアが、結界を壁のように感じているのか、前足でしきりに引っ掻いている。どうやら本当にこの一頭だけのようだ。周辺に他の魔物の気配はない。しばらく見ていると、ワイルドボアが体当たりをしてきた。それでもダメだと思ったらしいワイルドボアは、後ずさりで下がる。そして、全速力で駆けてきて再び体当たりした。
結界が少しだけ波打ったのが見えた。これは何回も同じことをされたら破られてしまうだろう。
「おかしい。何故あの個体だけここに固執するの?」
何か欲しいものでもあるのだろうか?辺りを見回すがめぼしいものはない。再び体当たりするワイルドボア。あまりの衝撃に、自身の身体がひっくり返った。
「あ!」
ひっくり返った拍子に見えた張ったお乳。どうやら彼女は子供を産んでいるらしい。
この時、なんとなく感じるものがあった。彼女の悲痛な感情を。
「まさか……」
11
あなたにおすすめの小説
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~
サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね
猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」
広間に高らかに響く声。
私の婚約者であり、この国の王子である。
「そうですか」
「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」
「… … …」
「よって、婚約は破棄だ!」
私は、周りを見渡す。
私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。
「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」
私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。
なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる