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悪意の欠片
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私は地面に手を当て索敵をかける。すると、地下があるのか教会の下からワイルドボアの気配を感じた。
「キャルム様!」
慌てて中に戻る。
「ここに地下はありますか?」
「はい。地下倉庫が。大きくはないですが」
キョトンとして答えるキャルム様の腕を掴む。
「そこ。そこに多分、ワイルドボアの赤ちゃんがいます!彼女は自分の子供を取り戻すために結界を破ろうとしているのです」
二人で暗い階段を駆け下りる。グッと気温が下がった。
「ここです」
キャルム様がカギを回す。
すると、奥に小さな塊が見えた。丸くなったまま動かない。そおっと近づいてみるとワイルドボアの子供だった。どうやら寒さと飢えで衰弱しているようだ。
「この子を返さないと」
そっと抱き上げヒールをかける。魔力を感じたのか、ピクリと反応した。
「良かった」
そのまま、彼女のいる結界まで走る。自分の子供を近くに感じたのか、彼女が咆哮を上げた。
「さ、お戻り」
結界の手前まで来てから、子どもを降ろしてやった。プルプルと身体を震わせた子供のワイルドボアは、目の前にいる母親に向かって一目散に駆けて行った。再会を果たした親子は少しの間、身体を摺り寄せてから奥へと消えて行った。
「よかった」
ほっと息を吐いた私を見てキャルム様が微笑む。
「リリーさん、あなたは優しい人なのですね。冒険者だったら普通は討伐してしまうものでしょうに」
「上手く言えませんが、何でもかんでも討伐してしまえばいい、ではないと思っています。こちらに害がない限りは手を出さない。それだけです」
「素敵な考えですね」
「やる時は容赦しませんけれど」
おどけて言えば、キャルム様は声を出して笑った。
「それにしても……一体誰が?」
「そうですね」
神妙な表情になるキャルム様が、私に向き合った。
「リリーさん、お願いがあります」
「はい?」
「今回の事、ギルドには上手く言い訳してくれませんか?」
「何故、か聞いても?」
「はい……明らかに犯人は身内でしょう。何を目的であのような事をしたのかわからない。でも、きっとまた何かするような気がします。ここで騒ぎになると、警戒してしまうかもしれません。私は犯人を見つけたい。今回は大事には至らなかった。ですが最悪、街にワイルドボアが入ってしまって、大事になったかもしれないんです。下手に警戒されてしまえば捕まえられません。ですから」
「わかりました。ギルドには上手く言っておきます。ただ、私一人の胸にしまうにはちょっと重いです。ですから、宰相補佐をしている義兄にだけ話してもいいですか?彼なら黙っていてくれる上に、力になってくれます」
「はい、お任せします……すみません、こちらの勝手を言って」
「お気になさらないでください。キャルム様こそ、身内を疑わなくていけないなんて。あまり一人で気負わないでください。力になりますから」
「ありがとう」
気が付けば、私は彼の腕の中にいた。
「本当にあなたで良かった。リリーさん、ありがとう。そしてこれからもよろしくお願いします」
「はい」
そっと私を離してくれたキャルム様に笑顔を向ける。
「また来ますね」
「はい。また」
ギルドには子どものワイルドボアが、敷地内に入り込んでいて母親が探すのにウロウロしていたと言っておいた。全くの嘘ではないので、心はそんなに痛くならなかった。
それにしても……教会の人間が犯人なのは間違いないだろう。あそこに地下室がある事を知っている人間は教会の人間以外ないだろうし。しかし、目的がわからない。今騒ぎにしてもあまりいい事はないような気がする。
それにシモネッタ嬢の事も気にかかる。何故瘴気だなどと言い出しているのか。少なくとも教会の周辺に瘴気はなかった。
「こういうことは、頼れるお義兄様に相談するのが一番よね」
私は真っ直ぐ王城へ向かった。
「キャルム様!」
慌てて中に戻る。
「ここに地下はありますか?」
「はい。地下倉庫が。大きくはないですが」
キョトンとして答えるキャルム様の腕を掴む。
「そこ。そこに多分、ワイルドボアの赤ちゃんがいます!彼女は自分の子供を取り戻すために結界を破ろうとしているのです」
二人で暗い階段を駆け下りる。グッと気温が下がった。
「ここです」
キャルム様がカギを回す。
すると、奥に小さな塊が見えた。丸くなったまま動かない。そおっと近づいてみるとワイルドボアの子供だった。どうやら寒さと飢えで衰弱しているようだ。
「この子を返さないと」
そっと抱き上げヒールをかける。魔力を感じたのか、ピクリと反応した。
「良かった」
そのまま、彼女のいる結界まで走る。自分の子供を近くに感じたのか、彼女が咆哮を上げた。
「さ、お戻り」
結界の手前まで来てから、子どもを降ろしてやった。プルプルと身体を震わせた子供のワイルドボアは、目の前にいる母親に向かって一目散に駆けて行った。再会を果たした親子は少しの間、身体を摺り寄せてから奥へと消えて行った。
「よかった」
ほっと息を吐いた私を見てキャルム様が微笑む。
「リリーさん、あなたは優しい人なのですね。冒険者だったら普通は討伐してしまうものでしょうに」
「上手く言えませんが、何でもかんでも討伐してしまえばいい、ではないと思っています。こちらに害がない限りは手を出さない。それだけです」
「素敵な考えですね」
「やる時は容赦しませんけれど」
おどけて言えば、キャルム様は声を出して笑った。
「それにしても……一体誰が?」
「そうですね」
神妙な表情になるキャルム様が、私に向き合った。
「リリーさん、お願いがあります」
「はい?」
「今回の事、ギルドには上手く言い訳してくれませんか?」
「何故、か聞いても?」
「はい……明らかに犯人は身内でしょう。何を目的であのような事をしたのかわからない。でも、きっとまた何かするような気がします。ここで騒ぎになると、警戒してしまうかもしれません。私は犯人を見つけたい。今回は大事には至らなかった。ですが最悪、街にワイルドボアが入ってしまって、大事になったかもしれないんです。下手に警戒されてしまえば捕まえられません。ですから」
「わかりました。ギルドには上手く言っておきます。ただ、私一人の胸にしまうにはちょっと重いです。ですから、宰相補佐をしている義兄にだけ話してもいいですか?彼なら黙っていてくれる上に、力になってくれます」
「はい、お任せします……すみません、こちらの勝手を言って」
「お気になさらないでください。キャルム様こそ、身内を疑わなくていけないなんて。あまり一人で気負わないでください。力になりますから」
「ありがとう」
気が付けば、私は彼の腕の中にいた。
「本当にあなたで良かった。リリーさん、ありがとう。そしてこれからもよろしくお願いします」
「はい」
そっと私を離してくれたキャルム様に笑顔を向ける。
「また来ますね」
「はい。また」
ギルドには子どものワイルドボアが、敷地内に入り込んでいて母親が探すのにウロウロしていたと言っておいた。全くの嘘ではないので、心はそんなに痛くならなかった。
それにしても……教会の人間が犯人なのは間違いないだろう。あそこに地下室がある事を知っている人間は教会の人間以外ないだろうし。しかし、目的がわからない。今騒ぎにしてもあまりいい事はないような気がする。
それにシモネッタ嬢の事も気にかかる。何故瘴気だなどと言い出しているのか。少なくとも教会の周辺に瘴気はなかった。
「こういうことは、頼れるお義兄様に相談するのが一番よね」
私は真っ直ぐ王城へ向かった。
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