お姉様の代わりに悪役令嬢にされそうです

Blue

文字の大きさ
25 / 47

失態

しおりを挟む
「クックックック」
私は今、めちゃめちゃ笑われている。隣を歩く、オスカー殿下に。
「まだ笑いますか?」
「ククク、すまない。だが……クッ」

王城にあと少しで着くという時に、自分が冒険者の格好のまま来た事に気付いた。冒険者の格好と言っても、白いシャツにこげ茶のパンツとベスト。黒いブーツとひざ丈の黒いマント。そこまで怪しい服装ではない……はず。

「でも、きっと門兵の人たちには私だと気付いてもらえないかもしれないわね」
こんな格好で表から堂々と入れてもらえるのかわからない。でも裏口なんてどこにあるのか知らない。仕方がないのでギルドカードを見せることにしたのだ。

「こんにちは」
門兵の人たちに笑顔で挨拶をする。
「こんにちは……これはこれは」
何かを言いかけた門兵の人たちの目の前に、ギルドカードを突き付けた。

「こんな格好ですが、私はこういうものです。わかっていただけないかもしれませんが信じてください!」

キョトンとした門兵の人たちは、とってもいい笑顔を見せた。
「わかっておりますとも、リリー・アヴァティーニ様。本日はギルドから直接のお越しなのですね。大丈夫です。冒険者の服装でもアヴァティーニ様だとすぐにわかりました」

「え?あら?」
思いっきりフライングした気分の私は真っ赤になってしまった。

「そこの可愛らしい冒険者は、誰に用事かな?」
そこへ登場したのがオスカー殿下だったのだ。

「それにしても、まさかギルドカードを突き付けるとは……予想外の動きに門兵たちがたじろいだのが見て取れたよ」
肩を震わせている。まだおかしいのか、このやろう。

「いやあ、あんな珍しい君を見る事が出来たのはラッキーだったな。あんな……クク」
「もう面倒なので笑い続けてください」
「ハハハ。すまない。可愛かったからつい。それで?その格好のままここへ来るなんて、街で何かあったのか?」
鋭いわ、この人。

「秘密です」
「秘密?へえ、私も先程の事を秘密にしておこうと思ったけれど、なんだか無性に言いふらしたくなってしまったなぁ」
「くっ」
この王子、実は腹黒のようだ。


「おや?冒険者仕様のままなのかい?それと、どうして殿下も?」
「それが……」
オスカー殿下をジトリと睨むが、殿下は素知らぬ顔だ。

「もしかして、なにか弱みでも握られちゃったかな?ばらされたくなかったら一緒に話を聞かせてって」
流石お義兄様。バッチリ正解です。

「ふふ、相変わらずカーター殿は鋭いな。話を聞かせては貰うが、他言はしないし協力もする」
お義兄様が、じっとオスカー殿下を見る。
「ま、いいでしょう。聞くからには協力するのは当たり前ですよ。それで?リリーはどうしたんだい?」

執務室のソファに座らされる。お茶まで淹れてもらってしまった。
「ごめんなさい。お仕事中なのはわかっていたのだけれど」
「いいんだよ。可愛い義妹の為なんだ。仕事なんて二の次さ」
「宰相殿が聞いたら泣いてしまいそうなセリフだな」
オスカー殿下が笑うが、お義兄様は涼しい顔だ。
「家族が一番大切ですから」

お茶を飲んで落ち着いた私は、教会でのことを話し始めた。

「リリーの話を聞く限り少なくとも犯人は、ワイルドボアの子供を欲しがってしたわけではなさそうだね」
断言するお義兄様。
「どうして?」
「だって、欲しがって捕まえたのなら、最低限の世話はするだろう。でもその子は衰弱していた。それはつまり生死は特に気にしていなかったという事だ」

言われて初めて気が付いた。確かにそうだ。あの子はあと1日もったかどうかという程弱っていた。
「じゃあどうして……」

オスカー殿下がぼそりと呟いた。
「街の中にワイルドボアを解き放とうとしていたという事なのではないか?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

実は私が国を守っていたと知ってましたか? 知らない? それなら終わりです

サイコちゃん
恋愛
ノアは平民のため、地位の高い聖女候補達にいじめられていた。しかしノアは自分自身が聖女であることをすでに知っており、この国の運命は彼女の手に握られていた。ある時、ノアは聖女候補達が王子と関係を持っている場面を見てしまい、悲惨な暴行を受けそうになる。しかもその場にいた王子は見て見ぬ振りをした。その瞬間、ノアは国を捨てる決断をする――

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね

猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」 広間に高らかに響く声。 私の婚約者であり、この国の王子である。 「そうですか」 「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」 「… … …」 「よって、婚約は破棄だ!」 私は、周りを見渡す。 私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。 「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」 私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。 なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。

結婚するので姉様は出ていってもらえますか?

基本二度寝
恋愛
聖女の誕生に国全体が沸き立った。 気を良くした国王は貴族に前祝いと様々な物を与えた。 そして底辺貴族の我が男爵家にも贈り物を下さった。 家族で仲良く住むようにと賜ったのは古い神殿を改装した石造りの屋敷は小さな城のようでもあった。 そして妹の婚約まで決まった。 特別仲が悪いと思っていなかった妹から向けられた言葉は。 ※番外編追加するかもしれません。しないかもしれません。 ※えろが追加される場合はr−18に変更します。

ベッドの上で婚約破棄されました

フーツラ
恋愛
 伯令嬢ニーナはベッドの上で婚約破棄を宣告された。相手は侯爵家嫡男、ハロルド。しかし、彼の瞳には涙が溜まっている。何か事情がありそうだ。

処理中です...