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モテる男と言うのは
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「どうして一人でこんな所にいる?」
後ろを振り返れば、金色の瞳に見下ろされていた。
「……レジナルド」
黒いシャツに黒いパンツに黒いブーツ。ベルトだけがシルバーの姿で私を見つめる。どうやら男たちは、レジナルドの威圧で気を失ってしまったらしい。
「あの、教会に行っていたのですが、帰る前にカフェに寄ろうと思ったのです。普段、街には冒険者の服装で来るのが常だったので、ついその感覚で気が緩んでしまいました。でもこれくらいの男たちなら魔法で一発ですよ」
「お前が強いとかは問題ではない。危険だと理解しろ。もし今の男たちが薬を使ったりしたら魔法もくそもないんだぞ」
その通り過ぎて反論出来ず。
「……ごめんなさい」
「何もされていないんだな」
レジナルドが私の髪を一房取った。
「はい、レジナルドのお陰です。ありがとうございます」
「ん」
その髪にキスを落としたレジナルドは、手からハラハラと髪を落とし、その手で私の腰を抱いた。
「カフェ、一緒に行ってやる。俺から離れるな」
「はい……」
「レジナルドは、今日はお休みだったのですか?」
「ああ、午後からだがな」
「せっかくのお休みなのに、私の付き添いなんて……別にカフェはすぐそこですし、一緒に行く事ないですよ」
「俺が一緒に行きたいからいいんだ」
先程から女性の視線が半端ない。
曲がりなりにも私という同伴者がいるというのに、彼に視線を送る女性が後を絶たない。堂々と見つめてくる人までいる。見られている本人は、全く気にする素振りもなく、コーヒーを美味しそうに飲んでいた。
カフェに到着した私たちは、外のテラス席に座った。私はショートケーキのセットを、レジナルドはコーヒーを頼んだ。注文を聞きに来た女性店員は、私の目の前で肩にゴミがと言って彼に触っていた。彼はジロリとひと睨みしただけだった。
『私が一緒にいるのに、どうして平気な顔で他の人に触らせるのかしら?』
別に私はレジナルドの婚約者でも、恋人でもない。怒る方がお門違いだ。それはわかっているが、面白くないと思ってしまう。そんな気持ちで食べるケーキは美味しくなかった。
化粧室から戻った時だった。
レジナルドの隣の席に、見知らぬ女性が座っている。レジナルドの腕に手を置いて、何か話をしていた。ブルネットの髪を綺麗に巻いて、派手な化粧だが色気が半端ない。
彼は無視をして、明後日の方へ顔を向けている。だが、触れている手をどかそうとはしない。
もやもやする。レジナルドの拒絶の姿勢にもめげずに話しかけている女性。突然、その女性が彼の首の付け根辺りに手をかけた。もう一方の手は頬に置いている。そのまま彼女が顔を近付けたその時、レジナルドは初めて彼女の両手を払った。
一言二言、何かを言ったレジナルドに、怒った様子で去って行く彼女を黙って見つめる。それからレジナルドを見た。触られていた事も、去って行った事も、何も気にした様子はなかった。きっとこんな事は日常茶飯事なのだろう。
周りの女性の目は相変わらずレジナルドに向いている。このままだといずれ、新たな挑戦者が現れるのかもしれない。
なんだか無性にイラついた。もし、私があの席に座っていた時にあの人が来ても、あんな感じだったのだろう。彼女の座ったあのテーブルに、もう座りたくないと思った。
同時に、レジナルドの所に戻りたくないとも思った。例え今戻っても、きっと私は笑えない。私の心が狭いだけなのかもしれないけれど、笑って見ていられるほど大人ではないのだ。
戻る事を躊躇していると、レジナルドがこちらを見た。目が合った彼はニッと笑う。それがまた、私のもやもやを増幅させた。
彼のいるテラス席には戻らず、出口に真っ直ぐ向かった。彼がどんな顔をしているのかわからないが、今は見たくないし見られたくない。
「リリー?」
レジナルドが私の名を呼ぶ声が聞こえたが、無視して走った。
後ろを振り返れば、金色の瞳に見下ろされていた。
「……レジナルド」
黒いシャツに黒いパンツに黒いブーツ。ベルトだけがシルバーの姿で私を見つめる。どうやら男たちは、レジナルドの威圧で気を失ってしまったらしい。
「あの、教会に行っていたのですが、帰る前にカフェに寄ろうと思ったのです。普段、街には冒険者の服装で来るのが常だったので、ついその感覚で気が緩んでしまいました。でもこれくらいの男たちなら魔法で一発ですよ」
「お前が強いとかは問題ではない。危険だと理解しろ。もし今の男たちが薬を使ったりしたら魔法もくそもないんだぞ」
その通り過ぎて反論出来ず。
「……ごめんなさい」
「何もされていないんだな」
レジナルドが私の髪を一房取った。
「はい、レジナルドのお陰です。ありがとうございます」
「ん」
その髪にキスを落としたレジナルドは、手からハラハラと髪を落とし、その手で私の腰を抱いた。
「カフェ、一緒に行ってやる。俺から離れるな」
「はい……」
「レジナルドは、今日はお休みだったのですか?」
「ああ、午後からだがな」
「せっかくのお休みなのに、私の付き添いなんて……別にカフェはすぐそこですし、一緒に行く事ないですよ」
「俺が一緒に行きたいからいいんだ」
先程から女性の視線が半端ない。
曲がりなりにも私という同伴者がいるというのに、彼に視線を送る女性が後を絶たない。堂々と見つめてくる人までいる。見られている本人は、全く気にする素振りもなく、コーヒーを美味しそうに飲んでいた。
カフェに到着した私たちは、外のテラス席に座った。私はショートケーキのセットを、レジナルドはコーヒーを頼んだ。注文を聞きに来た女性店員は、私の目の前で肩にゴミがと言って彼に触っていた。彼はジロリとひと睨みしただけだった。
『私が一緒にいるのに、どうして平気な顔で他の人に触らせるのかしら?』
別に私はレジナルドの婚約者でも、恋人でもない。怒る方がお門違いだ。それはわかっているが、面白くないと思ってしまう。そんな気持ちで食べるケーキは美味しくなかった。
化粧室から戻った時だった。
レジナルドの隣の席に、見知らぬ女性が座っている。レジナルドの腕に手を置いて、何か話をしていた。ブルネットの髪を綺麗に巻いて、派手な化粧だが色気が半端ない。
彼は無視をして、明後日の方へ顔を向けている。だが、触れている手をどかそうとはしない。
もやもやする。レジナルドの拒絶の姿勢にもめげずに話しかけている女性。突然、その女性が彼の首の付け根辺りに手をかけた。もう一方の手は頬に置いている。そのまま彼女が顔を近付けたその時、レジナルドは初めて彼女の両手を払った。
一言二言、何かを言ったレジナルドに、怒った様子で去って行く彼女を黙って見つめる。それからレジナルドを見た。触られていた事も、去って行った事も、何も気にした様子はなかった。きっとこんな事は日常茶飯事なのだろう。
周りの女性の目は相変わらずレジナルドに向いている。このままだといずれ、新たな挑戦者が現れるのかもしれない。
なんだか無性にイラついた。もし、私があの席に座っていた時にあの人が来ても、あんな感じだったのだろう。彼女の座ったあのテーブルに、もう座りたくないと思った。
同時に、レジナルドの所に戻りたくないとも思った。例え今戻っても、きっと私は笑えない。私の心が狭いだけなのかもしれないけれど、笑って見ていられるほど大人ではないのだ。
戻る事を躊躇していると、レジナルドがこちらを見た。目が合った彼はニッと笑う。それがまた、私のもやもやを増幅させた。
彼のいるテラス席には戻らず、出口に真っ直ぐ向かった。彼がどんな顔をしているのかわからないが、今は見たくないし見られたくない。
「リリー?」
レジナルドが私の名を呼ぶ声が聞こえたが、無視して走った。
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