34 / 47
彼の後悔
しおりを挟む
「え?何!?」
私の身体は誰かに抱きしめられていた。
「リリー」
低く掠れた声に、腰の辺りがゾクリとした。間違いようもない。レジナルドだ。
「リリー、会いたかった……まだ私が嫌いか?」
切ない声にドキリとさせられるが、ここはダンスエリアだ。じっとしているなんて邪魔以外の何物でもない。周りの視線が痛い。
「レジナルド、とにかくこの場から離れましょう。ダンスはしないのだから」
途端にスッと抱き上げられ、テラスへと連れて行かれてしまう。テラスから庭へと続く階段を降り、近くにあったベンチに私を抱き上げたまま座るレジナルド。どうやら私を放すという選択肢はないようだ。
「あれから団長に、リリーに近づくなと接近禁止命令を出されてしまった。どうしてなのかわからなかったが、カーター殿が俺に言った。リリーを泣かせたからだと。その時は泣きたいのは俺だと思った。いきなり大嫌いだと言われたまま会う事が出来なくなって。リリーが怒った理由が全くわからないまま会う事を禁じられた」
私の肩に顔をうずめるレジナルド。
「初めのうちは理不尽だと怒ってさえいた。だが、見たんだ。仕事で街を巡回している時だった。リリーが他の男と親密そうに店に入って買い物をしていた。アクセサリーをリリーの胸元に着け、髪にも頬にも触れていた。リリーも嬉しそうに笑っていて。腸が煮えくり返る思いだった。しかもその後、カフェでも隣同士で座り、手に口づけ、口元のチョコを取っていた。仕事の途中じゃなかったら、乱入してあの男を殺していた」
声が震えているけれど、言っていることが物騒過ぎる。
「そこでわかった。リリーの言っていた事が。他の男に触れさせているリリーを見て初めてリリーが怒っていた理由がわかった」
顔を上げ、私をじっと見るレジナルド。金色の瞳が揺れていた。
「すまなかった。リリーに不快な思いをさせていた事に気付きもしなかった。他の異性に触れられている姿を見ると、あんなに嫌な思いになるとは知らなかった。もう絶対にさせない、だから許してくれ」
どうしよう……竜のように不遜ですらあった彼の態度が今は見る影もない。叱られてしょぼくれたワンコのようにすら見えてしまう。ワシャワシャしたい衝動に駆られる。もうここは衝動に従う事にしよう。
うなだれた彼の頭をいきなりワシャワシャする。初めて触れた彼の髪は、サラサラでしなやかだった。セットしていた髪が見事にくしゃくしゃになった彼にニッコリと笑いかける。
「これで許してあげます」
自分の髪がどんな状態になっているか知る由もない彼がキョトンとした。
「それだけ、なのか?」
「それだけって……レジナルド、すごい髪型になってしまっていますよ。やった私が言うのもなんですが」
笑いながら髪を元に戻す。手櫛だから限界があって、多少崩れている。それが逆に魅力的に見えてしまうのは何故?
ギュッと再び抱きしめられてしまった。ちょっとだけ苦しい。
「リリー」
艶めいた声色で名前を呼ばれる。
彼の金色の瞳がキラキラ光り出した。その美しさに思わず見惚れていると金色が近づいて来た。すぐ目の前まで近づいた金色にびっくりしていると、背後から緩い声色が聞こえた。
「ストーップ。それ以上は、お父さん許しませんよ」
声の方を見ればお義兄様たちだった。
「お義兄様」
「ふふふ、世の父親たちの気持ちがわかってしまったよ。許したくなくなるものだねぇ」
「もう、カーターったら」
ローズ姉様たちが笑っている。
しかし、一人だけ笑っていない人がいた。
「レジナルド?」
声を掛けても一点だけを見ている。いや、睨んでいる。殺気が凄い。
「貴様……」
黒い大地を流れるマグマのような声が夜の庭に響き渡った。
私の身体は誰かに抱きしめられていた。
「リリー」
低く掠れた声に、腰の辺りがゾクリとした。間違いようもない。レジナルドだ。
「リリー、会いたかった……まだ私が嫌いか?」
切ない声にドキリとさせられるが、ここはダンスエリアだ。じっとしているなんて邪魔以外の何物でもない。周りの視線が痛い。
「レジナルド、とにかくこの場から離れましょう。ダンスはしないのだから」
途端にスッと抱き上げられ、テラスへと連れて行かれてしまう。テラスから庭へと続く階段を降り、近くにあったベンチに私を抱き上げたまま座るレジナルド。どうやら私を放すという選択肢はないようだ。
「あれから団長に、リリーに近づくなと接近禁止命令を出されてしまった。どうしてなのかわからなかったが、カーター殿が俺に言った。リリーを泣かせたからだと。その時は泣きたいのは俺だと思った。いきなり大嫌いだと言われたまま会う事が出来なくなって。リリーが怒った理由が全くわからないまま会う事を禁じられた」
私の肩に顔をうずめるレジナルド。
「初めのうちは理不尽だと怒ってさえいた。だが、見たんだ。仕事で街を巡回している時だった。リリーが他の男と親密そうに店に入って買い物をしていた。アクセサリーをリリーの胸元に着け、髪にも頬にも触れていた。リリーも嬉しそうに笑っていて。腸が煮えくり返る思いだった。しかもその後、カフェでも隣同士で座り、手に口づけ、口元のチョコを取っていた。仕事の途中じゃなかったら、乱入してあの男を殺していた」
声が震えているけれど、言っていることが物騒過ぎる。
「そこでわかった。リリーの言っていた事が。他の男に触れさせているリリーを見て初めてリリーが怒っていた理由がわかった」
顔を上げ、私をじっと見るレジナルド。金色の瞳が揺れていた。
「すまなかった。リリーに不快な思いをさせていた事に気付きもしなかった。他の異性に触れられている姿を見ると、あんなに嫌な思いになるとは知らなかった。もう絶対にさせない、だから許してくれ」
どうしよう……竜のように不遜ですらあった彼の態度が今は見る影もない。叱られてしょぼくれたワンコのようにすら見えてしまう。ワシャワシャしたい衝動に駆られる。もうここは衝動に従う事にしよう。
うなだれた彼の頭をいきなりワシャワシャする。初めて触れた彼の髪は、サラサラでしなやかだった。セットしていた髪が見事にくしゃくしゃになった彼にニッコリと笑いかける。
「これで許してあげます」
自分の髪がどんな状態になっているか知る由もない彼がキョトンとした。
「それだけ、なのか?」
「それだけって……レジナルド、すごい髪型になってしまっていますよ。やった私が言うのもなんですが」
笑いながら髪を元に戻す。手櫛だから限界があって、多少崩れている。それが逆に魅力的に見えてしまうのは何故?
ギュッと再び抱きしめられてしまった。ちょっとだけ苦しい。
「リリー」
艶めいた声色で名前を呼ばれる。
彼の金色の瞳がキラキラ光り出した。その美しさに思わず見惚れていると金色が近づいて来た。すぐ目の前まで近づいた金色にびっくりしていると、背後から緩い声色が聞こえた。
「ストーップ。それ以上は、お父さん許しませんよ」
声の方を見ればお義兄様たちだった。
「お義兄様」
「ふふふ、世の父親たちの気持ちがわかってしまったよ。許したくなくなるものだねぇ」
「もう、カーターったら」
ローズ姉様たちが笑っている。
しかし、一人だけ笑っていない人がいた。
「レジナルド?」
声を掛けても一点だけを見ている。いや、睨んでいる。殺気が凄い。
「貴様……」
黒い大地を流れるマグマのような声が夜の庭に響き渡った。
11
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
国王ごときが聖女に逆らうとは何様だ?
naturalsoft
恋愛
バーン王国は代々聖女の張る結界に守られて繁栄していた。しかし、当代の国王は聖女に支払う多額の報酬を減らせないかと、画策したことで国を滅亡へと招いてしまうのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ゆるふわ設定です。
連載の息抜きに書いたので、余り深く考えずにお読み下さい。
辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~
サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね
猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」
広間に高らかに響く声。
私の婚約者であり、この国の王子である。
「そうですか」
「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」
「… … …」
「よって、婚約は破棄だ!」
私は、周りを見渡す。
私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。
「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」
私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。
なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。
結婚するので姉様は出ていってもらえますか?
基本二度寝
恋愛
聖女の誕生に国全体が沸き立った。
気を良くした国王は貴族に前祝いと様々な物を与えた。
そして底辺貴族の我が男爵家にも贈り物を下さった。
家族で仲良く住むようにと賜ったのは古い神殿を改装した石造りの屋敷は小さな城のようでもあった。
そして妹の婚約まで決まった。
特別仲が悪いと思っていなかった妹から向けられた言葉は。
※番外編追加するかもしれません。しないかもしれません。
※えろが追加される場合はr−18に変更します。
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる