お姉様の代わりに悪役令嬢にされそうです

Blue

文字の大きさ
38 / 47

事件

しおりを挟む
 夜会に行った翌日。
驚くほど早く帰ってきたお父様が、私を見た途端に大泣きしてしまった。
「くっ、リリー。何故レジナルドなんだ。あんなクソ生意気な小僧なんかにリリーは勿体ない!」

「お父様……」
「リリー。私の可愛い娘があんな……こんな事なら黒竜と結婚したいと言っていた時に許せば良かった。黒竜の方が何倍も良かった」

「いやいや、お父様、竜とは流石に結婚は出来ないわよ」
ローズ姉様が冷静に突っ込むが、お父様は聞いていない。
「こうなったら私の手で奴の息の根を……」
「ちょっと、すごい物騒な事言っているわよ。お父様、気をしっかり!」
カメリア姉様も落ち着かせようと、お父様の肩をさする。

「うう、大体カメリア。隣国でとっとと婚約者なんぞ見つけおって。よくも私が反対する機会すら与えずに話を進めてくれたな」
「うわ、とばっちり」
「ローズもだ。あんな切れ者捕まえて、私が反対する隙さえ与えないような男。どうしてお前たちは皆、父様から巣立って行くんだ……寂し過ぎるだろ」

「お父様……」
お父様の本音を初めて聞いてしまった。胸がギュウッとなる。

右にローズ姉様、左にカメリア姉様、床に私が、お父様を囲うように座った。
「ねえ、お父様。確かに女である以上、恋をして誰かに嫁ぐことに幸せを感じてしまう。でもね、お父様を好きな気持ちは変わらないのよ」
ローズ姉様が私たちの気持ちを代弁してくれる。

「リリーも好きな人を見つけたわ。でもよく考えて。レジナルドはお父様の部下でしょ。いつでもリリーの様子を聞くことが出来る。なんなら会う事だっていつでも出来るわ。カメリアは隣国ではあるけれど、来ようと思えばすぐに来る事が出来る距離よ。私だってここにいる。忘れないで。私たちは嫁いでいても、ちゃんと傍にいるわ」

「ローズ……」
「私も。今まではゲームから逃げていたからあまり帰って来なかったけれど、もう大丈夫だからもっと帰って来る。ザックもここが楽しいみたいだし」
「私だって、いくらなんでもすぐにお嫁には行かないわ。まだこの家にいる。まだ末娘でいさせてくれるでしょ?」

お父様の瞳からは大粒の涙が流れていた。
「そうだな。お前たちはアイツらに持って行かれたとしても、私の可愛い娘たちであることに変わりはないもんな。そうだよな」
これで落ち着いたかに見えたお父様。

「だがな……やっぱりレジナルドは嫌だぁー!!」
怒号で屋敷が震えましたよ、お父様。



「こんにちは」
ギルドにやって来ました。
「あら、リリーちゃん。少しだけ久しぶりね」
「そうですね。最近バタバタしていて。何かおススメありますか?」

バタンッ!
入り口の扉が物凄い勢いで開いた。屈強な体つきの男性が扉に手をかけている。
「おい、誰かヒール使える奴はいるか?」
焦ったような口調に驚いたが手を上げた。

「私、使えます!」
「助かる。そいつがすぐそこで倒れていたんだ。治療してやってくれないか?」
彼の後ろで仲間の人が支えている人物がいた。

「キャルム様!?」
支えられていたのはキャルム様だった。
「どうしたんですか?」
慌てて駆け寄る。即席でイスを3脚ほど並べてそこに横たえさせた。

「どうしたのかはわかんねえ。そこの路地の所で倒れていたんだ」
一体何があったというのだろう。ざっと見てみると後頭部を殴られたような傷がある。そこからずっと出血していた。

「ヒール」
小さく囁く。傷は綺麗に塞がった。
「どれだけ出血したのか……傷は治りましたけれど、多分貧血状態なのではないかと」
マリーさんに言えば、すぐに造血剤をくれた。連れて来てくれた男性に、少し身体を起こしてもらい、造血剤を飲ませた。

ここでは辛いだろうと、マリーさんが応接室のソファを貸してくれたので、そこに運んでもらう。荒かった息はすっかりおさまり、静かな寝息が聞こえ出した。しばらくして彼の睫毛が震えた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

結婚するので姉様は出ていってもらえますか?

基本二度寝
恋愛
聖女の誕生に国全体が沸き立った。 気を良くした国王は貴族に前祝いと様々な物を与えた。 そして底辺貴族の我が男爵家にも贈り物を下さった。 家族で仲良く住むようにと賜ったのは古い神殿を改装した石造りの屋敷は小さな城のようでもあった。 そして妹の婚約まで決まった。 特別仲が悪いと思っていなかった妹から向けられた言葉は。 ※番外編追加するかもしれません。しないかもしれません。 ※えろが追加される場合はr−18に変更します。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

処理中です...