お姉様の代わりに悪役令嬢にされそうです

Blue

文字の大きさ
39 / 47

司教の暴挙

しおりを挟む
 キャルム様が目を覚ました。
「キャルム様?」
呼び掛けると彼はしっかりと私を見た。意識が混濁しているという事はないようだ。

「気分はどうですか?私が誰だかわかりますか?」
ゆっくり語り掛けてみる。何度か瞬きをした彼はニコリと笑顔になった。
「リリーさん、よかった。一瞬女神様に見えてしまって、天国に来てしまったのかと思いました」

冗談が言えるようなら大丈夫だろう。
「傷口は痛んだりしていませんか?」
「ええ、大丈夫です。少しくらくらしますが」
「多分、結構出血したのだと思います。マリーさんから造血剤は頂いたのですが、しばらくは安静にしていた方が」

「それは、ありがとうございます……いや、まったりしている場合ではなかった」
いきなり起き上がろうとしたキャルム様は、ふらついてソファへ逆戻りした。

「いきなり起きてはダメです。それと、一体どうしてこんな事になったのか聞いても?」
「大変なのです!急いでカーター様に知らせないと。もしくはオスカー殿下でも」
「もしかして何か動きがありましたか?」
「はい、父が……インファーナ司教が真っ黒い魔石を持って森に入って行ったんです。あれは瘴気の塊です。父は瘴気をバラまこうとしている!」

「それは本当ですか?」
教会の権力者が?
「本当です。どこかの夜会から戻ってから、クララさんが盛大に怒っていたのです。私が瘴気を浄化させてやるんだからと凄い剣幕で息巻いていて。その時に、父は彼女に言ったのです。きっと間もなく聖女の言う通りになるだろう。思う存分浄化して力を見せつけてやればいいって」

一気に言い終わったキャルム様は、悔しそうに唇を噛んだ。
「聖女候補が現れてから父は変わってしまった。それまでは多少強引な部分はありましたが、人を困らせるような事は決してしなかった。余計な権力を欲するような事はなかったのに。それが、彼女が現れた途端……父をなんとか止めなくては!クララさんでは絶対に瘴気を浄化することは出来ない!」

「わかりました。私が知らせに行きます!キャルム様はお願いですから安静にしていてください」
強く噛んだのだろう。下唇に血が滲んでいた。そっと触れてヒールをかける。
「申し訳ありません。リリーさんに頼りっぱなしになってしまって」

私は笑顔を見せた。
「何を言っているんですか。私は冒険者ですよ。どおんと任せてください!」
「リリーさん……ありがとう、ございます」

応接室を出ると受付に向かう。
「すみません!大変な事になりそうです。どなたかアヴァティーニ公爵家に伝言をお願いできませんか?」

マリーさんが対応する。
「一体どうしたって言うの?」
「インファーナ司教が、教会の裏の森に瘴気の塊である魔石を置きに行ったそうです。このままだと森から一気に瘴気が街に溢れてしまいます。そうなると魔物が街に出て来てしまう。どうか皆さんで食い止めてください。
私は城に伝えに行きます。ですからどなたか、私の姉二人に、ローズ姉様とカメリア姉様をここに呼んで欲しいのです。瘴気が出たと言えばすぐにわかりますので」

「俺が行く!こう見えても足は速いんだ」
「そうですね。彼ならアヴァティーニ家まですぐに行けると思います」
アニーさんのお墨付きなら問題はないだろう。
「すみませんがよろしくお願いします。あとの皆さんはどうか、街に来る魔物を食い止めて!」

そのまま私は強化魔法で城までダッシュする。門兵の人たちはすぐに私だと気付いて門を開けてくれた。そのままお義兄様の執務室へ。

「お義兄様!!」
扉をバタンと開けると、偶然にもオスカー殿下が一緒にいた。
「リリー?どうしたの?」

「瘴気よ!インファーナ司教が森の奥に瘴気を放ちに向かったらしいわ」
「なんだって!?」
「聖女候補に瘴気を浄化させて、力を見せつけようとしているって。でも、彼女では瘴気は浄化できない」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

実は私が国を守っていたと知ってましたか? 知らない? それなら終わりです

サイコちゃん
恋愛
ノアは平民のため、地位の高い聖女候補達にいじめられていた。しかしノアは自分自身が聖女であることをすでに知っており、この国の運命は彼女の手に握られていた。ある時、ノアは聖女候補達が王子と関係を持っている場面を見てしまい、悲惨な暴行を受けそうになる。しかもその場にいた王子は見て見ぬ振りをした。その瞬間、ノアは国を捨てる決断をする――

国王ごときが聖女に逆らうとは何様だ?

naturalsoft
恋愛
バーン王国は代々聖女の張る結界に守られて繁栄していた。しかし、当代の国王は聖女に支払う多額の報酬を減らせないかと、画策したことで国を滅亡へと招いてしまうのだった。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ ゆるふわ設定です。 連載の息抜きに書いたので、余り深く考えずにお読み下さい。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~

サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

処理中です...