13 / 71
竜騎士
しおりを挟む
道が出来た向こうには背の高い人物が立っていた。アイスブルーの髪は涼やかな印象だが、無表情のせいか冷たそうに見える。その男性が着ているのは紺色の騎士服だった。騎士服を着ている騎士たちはたくさん目にしていたが、紺色の騎士服は初めて見る色だった。それに、何よりも印象的なのは彼の瞳だった。
『銀の瞳……』
光が当たっている訳でもないのに、輝いているように見える銀色に、アリアンナは釘付けになる。
「アリアンナ様ですね?」
見た目に比例するように抑揚のない話し方をする男性を、真っ直ぐ見つめながらアリアンナは頷いた。
「はい」
すると、つかつかと大股で近づきアリアンナの前に立つ。
「私はジルヴァーノ・ロクシードと申します。王太子殿下から要請されて、貴方様をお守りする為に参りました」
「守る、ためですか?」
何からと疑問に思ったアリアンナより、先にジルヴァーノと名乗った男性が答える。
「この状況から、守るように。そう言われました」
ジルヴァーノは徐にアリアンナの手を取る。そのまま手を引き、彼女を囲っていた男性たちの輪から連れ出した。大きくて熱いくらいの熱量の手に、何故か安心感を覚えるアリアンナ。
無言のまま、手だけをしっかりと握って歩く彼を斜め後ろから見る。ニコリともしない無愛想な男性なのに、アリアンナは不思議と優しい人だと感じた。
彼が連れて来てくれたのは、王妃とドメニカのいる場所だった。
「ああ、ジルヴァーノ。アリアンナを救ってくれてありがとう」
王妃が礼を言うと、騎士の礼を取ったジルヴァードは「いえ」と一言だけ言って去って行った。
去って行くジルヴァーノの背を目で追っていると、王妃がふわりとアリアンナを抱きしめた。
「ごめんなさい、アンナ。まさかあんなにたくさんの殿方たちに囲まれてしまうなんて……怖かったでしょう」
「いえ、あの方が助けて下さったから大丈夫よ」
ジルヴァーノに手を握られた途端、アリアンナの恐怖心は霧散していた。
「私が蹴散らしに行くつもりだったのに」
ドメニカが悔しそうにするのを、横目で見ながら王妃はアリアンナの頭を撫でた。
「ドメニカが止めに入ったら、間違いなくケガ人が出てしまうわ。ジルヴァーノで正解よ」
「お母様、あの方はどちらに所属していらっしゃるの?騎士服を着てはいたけれど、紺色というのは初めて見たわ」
疑問に思っていた事を王妃に問うと、王妃は笑って答えてくれた。
「確かにそうね。紺色の騎士は数が少ないから。あの色はね、竜騎士よ」
「竜騎士?」
「そう。竜に乗る事を認められた者たちだけしかなれない騎士。それが竜騎士なの。王国でも13人程しかいないわ。彼はその竜騎士をまとめ上げる団長よ」
竜騎士になっているという13人を見た事がない為何とも言えないが、ジルヴァーノはどう見ても王太子より少し年下に見えた。そんな若い男性が団長である事にアリアンナは驚く。
「優秀なのでしょうね。あの若さで団長を任されるなんて」
感嘆の声を上げると、ドメニカが答える。
「ジルヴァーノは元々は騎士団にいてね。私の部下だったのよ。公爵家の嫡男のくせに前線に立つのが好きでね。実際、あの子は強かった。そんなあの子が竜騎士になったきっかけは、魔物の定期討伐に行っている最中だったわ」
魔物という害獣が存在するこの世界では、定期的に魔物を討伐する事が決まっている。普段は人間の住んでいる場に現われる事はない。だが、一定数以上魔物の数が増えると、餌や縄張りを求めて村や町を襲うようになってしまうのだ。
そうならないように、定期的に魔物を討伐する。王都や力のある領主がいる街では騎士団が、それ以外ではギルドが討伐を担っている。
「ジルヴァーノが前線で戦っていると、何か小さいモノが魔物に取り囲まれているのを見つけてね。助けてみると竜の子供だったの。それが、彼の乗っている竜よ」
「……見てみたい」
アリアンナは無意識に呟いた。
「ふふふ、そうね。今度ジョエルに頼んで連れて行ってもらうといいわ」
呟きがしっかり聞こえた王妃は、そう提案した。
「本当に!?いいの?嬉しい」
表情は変わらなくても興奮しているのがわかった母と伯母は、キラキラと輝いている青い瞳を見て微笑んだ。
『銀の瞳……』
光が当たっている訳でもないのに、輝いているように見える銀色に、アリアンナは釘付けになる。
「アリアンナ様ですね?」
見た目に比例するように抑揚のない話し方をする男性を、真っ直ぐ見つめながらアリアンナは頷いた。
「はい」
すると、つかつかと大股で近づきアリアンナの前に立つ。
「私はジルヴァーノ・ロクシードと申します。王太子殿下から要請されて、貴方様をお守りする為に参りました」
「守る、ためですか?」
何からと疑問に思ったアリアンナより、先にジルヴァーノと名乗った男性が答える。
「この状況から、守るように。そう言われました」
ジルヴァーノは徐にアリアンナの手を取る。そのまま手を引き、彼女を囲っていた男性たちの輪から連れ出した。大きくて熱いくらいの熱量の手に、何故か安心感を覚えるアリアンナ。
無言のまま、手だけをしっかりと握って歩く彼を斜め後ろから見る。ニコリともしない無愛想な男性なのに、アリアンナは不思議と優しい人だと感じた。
彼が連れて来てくれたのは、王妃とドメニカのいる場所だった。
「ああ、ジルヴァーノ。アリアンナを救ってくれてありがとう」
王妃が礼を言うと、騎士の礼を取ったジルヴァードは「いえ」と一言だけ言って去って行った。
去って行くジルヴァーノの背を目で追っていると、王妃がふわりとアリアンナを抱きしめた。
「ごめんなさい、アンナ。まさかあんなにたくさんの殿方たちに囲まれてしまうなんて……怖かったでしょう」
「いえ、あの方が助けて下さったから大丈夫よ」
ジルヴァーノに手を握られた途端、アリアンナの恐怖心は霧散していた。
「私が蹴散らしに行くつもりだったのに」
ドメニカが悔しそうにするのを、横目で見ながら王妃はアリアンナの頭を撫でた。
「ドメニカが止めに入ったら、間違いなくケガ人が出てしまうわ。ジルヴァーノで正解よ」
「お母様、あの方はどちらに所属していらっしゃるの?騎士服を着てはいたけれど、紺色というのは初めて見たわ」
疑問に思っていた事を王妃に問うと、王妃は笑って答えてくれた。
「確かにそうね。紺色の騎士は数が少ないから。あの色はね、竜騎士よ」
「竜騎士?」
「そう。竜に乗る事を認められた者たちだけしかなれない騎士。それが竜騎士なの。王国でも13人程しかいないわ。彼はその竜騎士をまとめ上げる団長よ」
竜騎士になっているという13人を見た事がない為何とも言えないが、ジルヴァーノはどう見ても王太子より少し年下に見えた。そんな若い男性が団長である事にアリアンナは驚く。
「優秀なのでしょうね。あの若さで団長を任されるなんて」
感嘆の声を上げると、ドメニカが答える。
「ジルヴァーノは元々は騎士団にいてね。私の部下だったのよ。公爵家の嫡男のくせに前線に立つのが好きでね。実際、あの子は強かった。そんなあの子が竜騎士になったきっかけは、魔物の定期討伐に行っている最中だったわ」
魔物という害獣が存在するこの世界では、定期的に魔物を討伐する事が決まっている。普段は人間の住んでいる場に現われる事はない。だが、一定数以上魔物の数が増えると、餌や縄張りを求めて村や町を襲うようになってしまうのだ。
そうならないように、定期的に魔物を討伐する。王都や力のある領主がいる街では騎士団が、それ以外ではギルドが討伐を担っている。
「ジルヴァーノが前線で戦っていると、何か小さいモノが魔物に取り囲まれているのを見つけてね。助けてみると竜の子供だったの。それが、彼の乗っている竜よ」
「……見てみたい」
アリアンナは無意識に呟いた。
「ふふふ、そうね。今度ジョエルに頼んで連れて行ってもらうといいわ」
呟きがしっかり聞こえた王妃は、そう提案した。
「本当に!?いいの?嬉しい」
表情は変わらなくても興奮しているのがわかった母と伯母は、キラキラと輝いている青い瞳を見て微笑んだ。
59
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者を妹に奪われたのでヤケ酒していたら、なぜか黒薔薇公爵に求婚されました
音芽 心
恋愛
伯爵令嬢アイリスは、幼い頃から妹のメアリーと比較され、家族の愛を知らずに生きてきた。唯一幸せだった時間は、婚約者のカルヴィンと過ごしている間だけ。
だがある日、カルヴィンから唐突に婚約破棄を言い渡される。どうやらカルヴィンは、アイリスの知らない間にメアリーと恋仲になっていたらしい。
何もかもが嫌になり、家を抜け出して酒屋でヤケ酒をしていた時、ある男に声を掛けられる。酔っ払っていたアイリスは、その男が誰かもわからぬまま酒を飲み交わしたのだった。
その翌日、目を覚ましたアイリスは見知らぬベッドにいた。おそるおそる隣を見ると、そこにはなんと「黒薔薇公爵」と呼ばれ恐れられている男が寝ていて……!?
***
皆さんの♡や📣、そしてお気に入り登録、大変励みになっております!
楽しく執筆活動ができているのは皆さんのおかげです。
本当にありがとうございます。
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
婚約破棄されたトリノは、継母や姉たちや使用人からもいじめられているので、前世の記憶を思い出し、家から脱走して旅にでる!
山田 バルス
恋愛
この屋敷は、わたしの居場所じゃない。
薄明かりの差し込む天窓の下、トリノは古びた石床に敷かれた毛布の中で、静かに目を覚ました。肌寒さに身をすくめながら、昨日と変わらぬ粗末な日常が始まる。
かつては伯爵家の令嬢として、それなりに贅沢に暮らしていたはずだった。だけど、実の母が亡くなり、父が再婚してから、すべてが変わった。
「おい、灰かぶり。いつまで寝てんのよ、あんたは召使いのつもり?」
「ごめんなさい、すぐに……」
「ふーん、また寝癖ついてる。魔獣みたいな髪。鏡って知ってる?」
「……すみません」
トリノはペコリと頭を下げる。反論なんて、とうにあきらめた。
この世界は、魔法と剣が支配する王国《エルデラン》の北方領。名門リドグレイ伯爵家の屋敷には、魔道具や召使い、そして“偽りの家族”がそろっている。
彼女――トリノ・リドグレイは、この家の“戸籍上は三女”。けれど実態は、召使い以下の扱いだった。
「キッチン、昨日の灰がそのままだったわよ? ご主人様の食事を用意する手も、まるで泥人形ね」
「今朝の朝食、あなたの分はなし。ねえ、ミレイア? “灰かぶり令嬢”には、灰でも食べさせればいいのよ」
「賛成♪ ちょうど暖炉の掃除があるし、役立ててあげる」
三人がくすくすと笑うなか、トリノはただ小さくうなずいた。
夜。屋敷が静まり、誰もいない納戸で、トリノはひとり、こっそり木箱を開いた。中には小さな布包み。亡き母の形見――古びた銀のペンダントが眠っていた。
それだけが、彼女の“世界でただ一つの宝物”。
「……お母さま。わたし、がんばってるよ。ちゃんと、ひとりでも……」
声が震える。けれど、涙は流さなかった。
屋敷の誰にも必要とされない“灰かぶり令嬢”。
だけど、彼女の心だけは、まだ折れていない。
いつか、この冷たい塔を抜け出して、空の広い場所へ行くんだ。
そう、小さく、けれど確かに誓った。
婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。
ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。
こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。
(本編、番外編、完結しました)
0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。
アズやっこ
恋愛
❈ 追記 長編に変更します。
16歳の時、私は第一王子と婚姻した。
いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。
私の好きは家族愛として。
第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。
でも人の心は何とかならなかった。
この国はもう終わる…
兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。
だから歪み取り返しのつかない事になった。
そして私は暗殺され…
次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
婚約破棄イベントが壊れた!
秋月一花
恋愛
学園の卒業パーティー。たった一人で姿を現した私、カリスタ。会場内はざわつき、私へと一斉に視線が集まる。
――卒業パーティーで、私は婚約破棄を宣言される。長かった。とっても長かった。ヒロイン、頑張って王子様と一緒に国を持ち上げてね!
……って思ったら、これ私の知っている婚約破棄イベントじゃない!
「カリスタ、どうして先に行ってしまったんだい?」
おかしい、おかしい。絶対におかしい!
国外追放されて平民として生きるつもりだったのに! このままだと私が王妃になってしまう! どうしてそうなった、ヒロイン王太子狙いだったじゃん!
2021/07/04 カクヨム様にも投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる