笑い方を忘れた令嬢

Blue

文字の大きさ
33 / 71

暗くなった正体

しおりを挟む
 窓の外が暗くなり、部屋も薄暗くなってしまう。
「何!?何が起こったの?」
ドメニカが王妃とアリアンナを守るように立ち、立て掛けていた剣を持つ。

暗い窓をジッと見ていると黒い影が動いた。
「あら?黒じゃないみたい、銀色?」
王妃が緊張感のない声を上げる。
「まさか?」
アリアンナが、窓辺に近づいた。すると、やはり影が動き金色の瞳がこちらを覗いた。

「ロワ?」
アリアンナが銀の竜の名を読んだ途端、影がぶわっと後ろに下がる。窓から離れた影の全身が見える。影の正体はやはりロワだった。アリアンナは窓を開けてテラスへ出る。

「どうしたの?どうして外に?ジルヴァーノ様はご存じなの?」
立て続けに質問するが、銀の竜は飛びながら鼻先でアリアンナの頬にすり寄る。いつもよりもすり寄る力が強い。
「ロワ?もしかして何か嫌な事でもあったの?」
アリアンナが質問すると、銀の竜は彼女をジッと見つめてから、ゆっくりと金の瞳を一度閉じた。

「そうなのね。何があったの?」
そう聞くアリアンナを、銀の竜は鼻先に乗せようとした。

「お母様、ドメニカ叔母様。ロワに何かあったみたい。ジルヴァーノ様に知らせてくるわ」
そう言っている間にも銀の竜は、アリアンナを鼻先に乗せ終わってしまう。

「わかったわ。後で報告してね」
「はい」
銀の竜がふわりと飛び上がる。いつの間にか黒の竜たちもすぐ傍を飛んでいた。そして竜舎の方へとアリアンナを連れて飛んで行ってしまった。

「はあぁ、驚いた。聞いてはいたけれど、本当にアンナは竜たちに気に入られているのね」
「そうなの。凄いでしょ」
「ええ。まるでおとぎ話に出てくる竜の姫神子のようじゃない」
「やっぱり……そう思うわよね」
少しだけ王妃が声を潜めた。

 銀の竜の鼻先に乗せられて、アリアンナは竜舎へと向かう。竜舎に到着すると、残っていた竜たちが銀の竜の帰還を喜ぶように首を伸ばした。だが喜んでいない者が一人。仁王立ちになって岩の下で恐ろしい表情をしているジルヴァーノがいた。

「ロワ、ジルヴァーノ様だわ……なんだか凄く怒っていらっしゃるみたいよ」
ロワはどこ吹く風と言わんばかりに、ジルヴァーノの立っている目の前に降り立つ。

「ロワ、一体どういうつもりだ?」
地響きでもしそうな程低い声で威圧するジルヴァーノに、アリアンナは怖くなり銀の竜にしがみついてしまう。すると銀の竜は、文句を言うようにジルヴァーノに鼻息を吹きかけた。

「うわっ、何をするんだ。ロワ!」
そこで初めて銀の竜の鼻の上にしがみついているアリアンナを見つけた。
「え?アリアンナ様?」

アリアンナは銀の竜にしがみついたまま、ジルヴァーノに向かって声を上げた。
「ロワを怒らないであげて下さい。ロワは何か嫌な事があったみたいで……私に教えに来たのです」
「嫌な事……」
「そうです。だから私……ジルヴァーノ様にお教えしようと……」

「そうでしたか……アリアンナ様まで巻き込んでしまい、申し訳ありません」
いつもの声色に戻ったジルヴァーノ。アリアンナに向けて片手を上げた。
「アリアンナ様。降りるのをお手伝いします。私の手をお取りください」
ホッとしたアリアンナは、銀の竜の鼻を撫でた。
「ロワ。もう大丈夫だから降ろしてくれる?」

アリアンナが言うと、銀の竜は素直に首を下げた。ジルヴァーノの手に自分の手を置くとそのままキュッと握られる。アリアンナの心臓がトクントクンと鳴り出したが、アリアンナは気付かないフリをした。

手を離そうと軽く引く。しかし、舞踏会の時のように、ジルヴァーノの手はアリアンナを離してはくれなかった。仕方なくそのままで話を続ける事にする。

「ロワは、何か嫌な事があったから私の所へ来たようなのです。別に逃げ出した訳ではありません。叱らないであげて下さい」
ジルヴァーノは、銀の竜をジッと見つめる。銀の竜もジルヴァーノをジッと見た。

「はあぁ、やはりダメだったのだな」
大きくため息を吐きながら、諦めたように呟くジルヴァーノ。
「あの」
アリアンナは話が見えない。
「何がダメだったのですか?」
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約者を妹に奪われたのでヤケ酒していたら、なぜか黒薔薇公爵に求婚されました

音芽 心
恋愛
伯爵令嬢アイリスは、幼い頃から妹のメアリーと比較され、家族の愛を知らずに生きてきた。唯一幸せだった時間は、婚約者のカルヴィンと過ごしている間だけ。 だがある日、カルヴィンから唐突に婚約破棄を言い渡される。どうやらカルヴィンは、アイリスの知らない間にメアリーと恋仲になっていたらしい。 何もかもが嫌になり、家を抜け出して酒屋でヤケ酒をしていた時、ある男に声を掛けられる。酔っ払っていたアイリスは、その男が誰かもわからぬまま酒を飲み交わしたのだった。 その翌日、目を覚ましたアイリスは見知らぬベッドにいた。おそるおそる隣を見ると、そこにはなんと「黒薔薇公爵」と呼ばれ恐れられている男が寝ていて……!? *** 皆さんの♡や📣、そしてお気に入り登録、大変励みになっております! 楽しく執筆活動ができているのは皆さんのおかげです。 本当にありがとうございます。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。

アズやっこ
恋愛
 ❈ 追記 長編に変更します。 16歳の時、私は第一王子と婚姻した。 いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。 私の好きは家族愛として。 第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。 でも人の心は何とかならなかった。 この国はもう終わる… 兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。 だから歪み取り返しのつかない事になった。 そして私は暗殺され… 次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。

婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。

ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。 こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。 (本編、番外編、完結しました)

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

婚約破棄されたトリノは、継母や姉たちや使用人からもいじめられているので、前世の記憶を思い出し、家から脱走して旅にでる!

山田 バルス
恋愛
 この屋敷は、わたしの居場所じゃない。  薄明かりの差し込む天窓の下、トリノは古びた石床に敷かれた毛布の中で、静かに目を覚ました。肌寒さに身をすくめながら、昨日と変わらぬ粗末な日常が始まる。  かつては伯爵家の令嬢として、それなりに贅沢に暮らしていたはずだった。だけど、実の母が亡くなり、父が再婚してから、すべてが変わった。 「おい、灰かぶり。いつまで寝てんのよ、あんたは召使いのつもり?」 「ごめんなさい、すぐに……」 「ふーん、また寝癖ついてる。魔獣みたいな髪。鏡って知ってる?」 「……すみません」 トリノはペコリと頭を下げる。反論なんて、とうにあきらめた。 この世界は、魔法と剣が支配する王国《エルデラン》の北方領。名門リドグレイ伯爵家の屋敷には、魔道具や召使い、そして“偽りの家族”がそろっている。 彼女――トリノ・リドグレイは、この家の“戸籍上は三女”。けれど実態は、召使い以下の扱いだった。 「キッチン、昨日の灰がそのままだったわよ? ご主人様の食事を用意する手も、まるで泥人形ね」 「今朝の朝食、あなたの分はなし。ねえ、ミレイア? “灰かぶり令嬢”には、灰でも食べさせればいいのよ」 「賛成♪ ちょうど暖炉の掃除があるし、役立ててあげる」 三人がくすくすと笑うなか、トリノはただ小さくうなずいた。  夜。屋敷が静まり、誰もいない納戸で、トリノはひとり、こっそり木箱を開いた。中には小さな布包み。亡き母の形見――古びた銀のペンダントが眠っていた。  それだけが、彼女の“世界でただ一つの宝物”。 「……お母さま。わたし、がんばってるよ。ちゃんと、ひとりでも……」  声が震える。けれど、涙は流さなかった。  屋敷の誰にも必要とされない“灰かぶり令嬢”。 だけど、彼女の心だけは、まだ折れていない。  いつか、この冷たい塔を抜け出して、空の広い場所へ行くんだ。  そう、小さく、けれど確かに誓った。

婚約破棄イベントが壊れた!

秋月一花
恋愛
 学園の卒業パーティー。たった一人で姿を現した私、カリスタ。会場内はざわつき、私へと一斉に視線が集まる。  ――卒業パーティーで、私は婚約破棄を宣言される。長かった。とっても長かった。ヒロイン、頑張って王子様と一緒に国を持ち上げてね!  ……って思ったら、これ私の知っている婚約破棄イベントじゃない! 「カリスタ、どうして先に行ってしまったんだい?」  おかしい、おかしい。絶対におかしい!  国外追放されて平民として生きるつもりだったのに! このままだと私が王妃になってしまう! どうしてそうなった、ヒロイン王太子狙いだったじゃん! 2021/07/04 カクヨム様にも投稿しました。

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

処理中です...