超能力者の狩られる世界で

葉月

文字の大きさ
4 / 31
一章

2話 危機一髪

しおりを挟む
「大人しくしてな!」

 犯人の手早いこと。本当に一瞬だった。

 声を上げる暇もなく地面に倒され、人質は全員手を縛られて何十人もの人が私たちに銃口を向けている。
 手慣れているのか相当準備をしていたのかは知らないが、本当にあっという間だった。

「だ、誰か、助け……いやああああああ!」

 どこかへ連れて行かれる女性。助けたくても手を縛られ、銃口を向けられているこの状況。助けようとすることは間違いなく自殺行為だ。

「お前らも来い!」

 それに続くように私たちも連れていかれた。1階にいたのだが、階段を上らされて5階に連れていかれた。
 警察は1階から突入してくるだろうから、1階にいるとすぐに救出されやすいし、戦闘になると邪魔なのだろう。


「ヒャッハー! やっぱ楽しいぜ!」

 早く警察は来ないのだろうか。テロリストの何人かは楽しむように銃を乱射している。
 幸いにも何もないところに撃っており、まだ誰にも当たってはいないが、流れ弾に当たってもおかしくない状況だ。

 こんな状況なのに意外と冷静な自分が不思議でならない。異世界に来た影響だろうか。

「……光って、こういうの意外と平気? 経験者?」

 小声で沙月さんが話しかけてくる。周りが騒がしいのと、拉致した人が多すぎるせいか全く気付かれていない。私も小声で返事をする。

「怖いですよ。だけど、自分でも怖いくらい冷静です。……警察はさすがに早すぎますよね」

 よくよく見ると沙月さんも渚さんも冷静なのだろうか。周りは皆泣いたり怯えていたりしているのに沙月さんは笑顔で話しかけている。渚さんは何ともないといったような顔。こういうのに慣れているのだろうか?

「……? まあいいや。ねえ、渚。準備いい?」

「問題ない」

「よし。んとね、それっぽいものがもうすぐ来るよ。数えるね。3、2——」

「てめえら何ごちゃごちゃ話してやがる!」

 やっと私達の話し声に気付いたようだ。その人のカウントダウンと重なるようにテロリストの1人が声を荒げ、こちらに銃を向けてくる。

 さすがにまずい。と、思ったその時だった。

「1、0」

 そのカウントダウンが0になった瞬間、シャッターが開くような音がし始めた。その瞬間、明らかにテロリスト達が慌て出し始めた。

 まさか、沙月さんは警察の関係者なのだろうか。でも、正確なタイミングが分かったのはなぜだろうか。

「何事だ!?」

「いくらなんでも早すぎるだろ!? どうなっていやがる!」

 テロリストは焦っているのか、私達に目もくれていない。
 全員が1階に降りていく。監視の目が居なくなった。

「えっと……沙月さん、これは一体……」

「えっへん、凄いでしょ」

「お前だけが凄いわけじゃないだろ。それにそんな事を言っている暇はない。ほら、解けたぞ」

「うー、天才ナメないでよね」

 どうやらロープが切られたらしい。渚さんの手にはいつの間にか折りたたみできるナイフが握られていた。どこから取り出されたのかは分からないけど。

 ……そういえば鞄などの持ち物の回収はされていたけど、人質の数が多いせいか体の隅々を確認してまで回収はされていなかった。
 ということは、ポケットとかに隠し持っていたのだろうか。ここでそんな物を持っているとなると、やはり警察官だろうか。

「ありがとうございます」

「そういえばさ、光って超能力者?」

「超能力者……? 超能力とかの類なら持っていないと思いますけど……」

 この発言から察するとこの世界では超能力というものがあって当然なのだろうか。
 ということは、私をこの世界に連れてきた犯人はそいつかもしれない。

 なるほど。魔法はないと思っていたが、超能力ならありそうだ。

「うーん……なら大丈夫……か? ……やばっ、渚!」

 突然、爆発音が何回か鳴り響く。テロリスト達が銃などで散々ボロボロにした床なのに、その衝撃で崩れていく。

 そして不幸なことに、私の真上の天井や足元の床も崩れ落ちていく。

「しまっ……」

 渚さんのそんな声が聞こえたと思う。やはり、あの爆発でかなり崩れたらしい。っていうか脆すぎないか、この建物。

 体が思うように動いてくれない。ああ、この瓦礫の量は死んだかな。
 一瞬のことのはずなのに、ここまでゆっくりに感じるとは思わなかった。今まで2度ほど味わった記憶はあるが、小さい頃の記憶だからかあまり覚えていないのだ。

 今までの記憶……これが走馬灯か。皆にもう1度会いたかったな……


「っと、大丈夫か?」

「えっ、あっ、はい」

 突如、時間が猛スピードで動き出す。男性の声が聞こえた。どうやら私を危機一髪のところで受け止めて助けてくれたらしい。

 いやいや、待て待て。5階から落ちたんですよ? 穴の抜けた床が4枚見えるってことはここ1階ですよ? 腕とか大丈夫か?

 その人の服装は私が知っている日本の警察の制服やテロ対策部隊ものとは違うが、全員統一されていていた。この世界でのテロ対策部隊かそういう類の人たちで間違いないだろう。

「うらぁ!」

 そう声を上げて襲いかかってきたのはテロリストだった。長いナイフ……いや、刀!? 刀なんて持ってるの!?

 このままではこの警官は斬られてしまう。そう考えた瞬間、体が勝手に動いた。
 警官を押し退け、運が良ければ真剣白刃取りで……いや無理でしょ、死ぬ!

「ぐあっ、な、なんだ!?」

 突如、目を開けていられないほどの強烈な光が襲った。目を瞑っていても光っているのがよく分かる。

 その直後にびゅん、と刀が振り下ろされる音はした。だがどこも痛くない。すると、あの強烈な光は消えて目が開けられた。

「目が、目がーっ!」

 刀を持っていたテロリストはまともに光を食らったせいか目を押さえている。……某大佐が失明したあの呪文は誰も唱えていないのだが。

「……はっ、そいつを取り押さえろ!」

 驚いていた警官と思われる人たちだが、思い出したかのように取り押さえ始める。その間も目を押さえているテロリスト。……もしや、失明したかな。

「怪我はない?」

「大丈夫です。さっきのは何だったんでしょう……」

「……そうだな、よし。ここは危険だ。早く出よう」

「はい」

 間があったが、周りを見ていたし状況判断でもしていたのだろう。
 あの光もこの警官のものか? それなら、私の質問には答えそうだけど……あるいは、別人がやったことなのだろうか。

 警官は私の手を引いて、外に向かう。テロが始まってから数十分しか経っていないのに建物は既に瓦礫だらけだった。


「ちょっと待った」

 障害物だらけの店を抜け出して道路に出た瞬間、行く手を阻むように1人の男性が立っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

処理中です...