超能力者の狩られる世界で

葉月

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二章

22話 試練の問題

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「いててて……」

 強引に突破した上に突破に成功してアドレナリンが切れたためか、関節などの痛みを感じる。その上、さっき壊した氷の破片で顔の皮膚を切ったらしい。赤い液体が流れていた。

「ここ……か」

 中は綺麗で、先程の屋敷とは違って氷漬けだったり、物が散乱しているということは全くなかった。本当に人がこの建物にいるのか? と疑いたくなるくらいに人気もない。……ここにいなければ、もう詰んだも同然だろう。私は死ぬ。

「うん。ここだ」

 あの屋敷で手に入れた本を開く。この家の間取りらしきものが書かれていた。私が把握できている範囲では、一致している。ほぼ間違いなくここでいいだろう。

「にしても何これ。迷路かよ」

 扉があったので、開けると何もない部屋があった。唯一あるのはまた扉だった。今度は2つあったので、とりあえず左側を開けると今度は廊下だった。その廊下を何回か曲がりながら先に進む。

 しかし、建物は間取り図で見る以上に迷路だった。奥へ進もうとしたが、いつの間にか右側の扉から出ており、先程の部屋へと戻された。これでは先に進めない。

「どうなってるんだ、これ?」

 何回も進もうと試みるが、結果は同じだ。右側、左側、どちらから入っても結果は同じで反対側の扉へと出る。あまりにも先に進めないので、隠し扉を疑ってみた。だが、それすら見当たらない。間取り図を見てもこの先は確実にある。別の建物だという可能性は低いのだけれど……

「……まさか、先に進んでいる、とか?」

 ゲームではそういうのはある。見た目は全く同じだけど、実は違う部屋だというやつだ。本当にそんなことができるかは分からないが、確認してみる価値はある。

「何か印……あ、ちょうどいいのがあるわ」

 顔から流れ出る赤いやつがあるではないか。それをペンの代わりにして壁に丸を書いて印をつける。どこに書いたかも確認してから先へと進む。

「よっしゃ、当たった」

 次の部屋では丸の印は無かった。ということは、ここは別の部屋だ。

 そこで1つ疑問が浮かぶ。私が入り口から入ってきたあの扉は何なのだろう。最初に開けた扉と同じ場所の扉を開けてみると、元の入り口と同じだった。
 だが、違う。入り口の扉が閉まっている。私はあの扉を閉めた覚えはない。それに、風が吹いていた方向から考えてもあり得ない。風は扉を開ける方向に吹いていた。よってここも違う。

「……先に進んだ方がいいな」

 扉を閉め、元の部屋に戻る。そうやってしばらく似たような部屋を繰り返しながら進んでいくと、入り口へと戻る扉が明らかに違っていた。その上、開かない。扉には何か書かれていた。

「問題、炭酸水素ナトリウムの化学式はどれ? ……いや、問題!?」

 まさか、問題が出るとは思っていなかったので驚愕した。しかも、化学式。……3年前だから、当時13歳だよね? 元の世界と同じなら、まだ化学式とか習ってないよね? 中1の知識でこれ解いたのか?

「1.Na2CO3、2.NaHCO2、3.Na2HCO2、4.NaHCO3。……うん。4だな」

 1番は炭酸ナトリウム。2、3はよく分からん。そんな物質が存在するのかも知らん。で、4は炭酸水素ナトリウムだ。

 ……覚えた当時は炭酸ナトリウムとの違いが分からなくて苦労した記憶があるから、嫌でもよく覚えている。今考えれば、炭酸ナトリウムなのにH水素がない時点で違うと気付くべきなんだけどね。

「……んで、答え分かったけどどうするんだよ、これ」

 答えは分かったが、その先はどうするのだろか。そう思っていると、扉にボタンのようなものが付いていた。それを押すと、ディスプレイが現れた。押すと、反応する。タッチパネルと同じだ。4を選択して確定を押すと、カチャと音がした。鍵が解除されたのだろう。

「お、開いた開いた」

 先へ進むと、また先程と同じような扉だ。そしてこちらも同じようにまた問題があった。

「問題、次の読みはどれか。……いや、これ中1が読めるか?」

 そこに書かれていたのは緑青という文字だ。漫画であったから覚えているが、なかったら覚えるどころかこの言葉を知りもしなかっただろう。

「1.ろくしょう、2.りょくしょう、3.りょくせい、4.りょくあお。……1ですね」

 先程と同じように答えを打つと扉の鍵が開いたようだ。扉を開けて先に進むとまた部屋があった。

「問題、x^2-7x-18=0の解を求めよ。ただし、0<xとする……って、二次方程式ぃ!?」

 今度は中3くらいでやる問題だっただろうか。……いやいやいや。今までやってきたけどさ。本当にこれを解いて、先にいるのか? それとも私がそう思ってるだけで、実はいなかったとかいうオチはやめてよ?

「……まあ、分かるから答えて先に行くか」

 答えは9だ。扉を開けて先に進むとまた部屋があった。

「……うん。やっぱりあるよな」

 そして先程と同じように問題もあった。……これを解いて、何になると言うのだろうか。

「問題、3x^2+4x-5の判別式のD/4の解を求めよ、って……はあ」

 そんなに頭が良いのか……? 中1には判別式の意味すら分からないと思うんですけど……もしかして、当てずっぽうで当てたとか? 3年もあるんだし、ひたすらやれば答えられないことはない。

「答えは19、っと」

 正解し、扉が開く。問題はまだある。一体何問あるのだろうか。100問も解けとか言われたら、それはもう地獄でしかない。

「問題、以下の条文は憲法第何条か。……あ、オワタ」

 私にとって最悪の問題だ。こちらの世界の国の憲法なんて、知るわけがない。これを問題にするということは、学校で勉強するような内容ってことだろう。

 まず1条とか、序盤の方はないだろう。私の国の常識が通用するなら、内容的にあり得なさそうだ。それに、今までの難易度から考えると簡単ではないはずだ。……憲法第25条は覚えた覚えがあるけど、その辺りか?

「えー……21?」

 半分推測、半分当てずっぽうである。が、当たったようだ。ガチャ、と扉の鍵が解除される音がした。

「あ、開いた……嘘だろ……」

 信じられない気持ちでドアノブに手をかけると、本当に開いた。まさかとは思うけど、間違いを答えても開くとかじゃないよね?

「……いや、流石にないない」

 そう信じて先に進む。進んだ先には同じような部屋と扉がまたある。

「いつまであるのさ……」

 問題はまだまだ終わってくれそうもない。私はいつまで解ければよいのだろうか。せめて後何問だとか、書いて欲しかったな。

「問題、1→2、3→5、7→17。では5=?はいくつか……問題の傾向が急に変わったな」

 ひらめき問題か? だが、これはすぐに分かった。素数とその順番が関係している。5番目の素数は11。よって答えは11だ。

「よし、正解」

 これも難なくクリアした。ここから全部ひらめき問題になると、私も答えられるかどうか怪しい。地理や歴史の問題を出されるよりは正答率は高いだろうけど。

「問題、マッチ棒を2本動かして等式を完成させ、その答えを書け……」

 ……分からん。ぱっと見ではさっぱり分からん。そこにはマッチ棒で1×1=4と書かれている。何をどう弄ったら成立する……?

 ヒントがないだろうか、と手に入れた本を開く。残念ながら、それらしきものは全くなかった。どうやら、自分で解くしかないらしい。

「1にマッチ棒を2本入れて他の数字……4か。でも、もう一方の1を動かすと×が残る……」

 ×はマッチ棒2本でできている。では、これを動かせば……14=4、41=4、11=9……全然合わない。

「ええ……? これ、今までで1番分からん……」

 適当に4と数字を入れてみるけど、開かない。一応、適当に打っても開くわけではないようだ。その上、画面には残り2回と書かれている。回数制限あるのか。これでは数字をひたすら打って、なんていう総当たりはできない。

「……」

 体感で数分考えたが、分からん。大体、こういうのは普通では考えなさそうな答えになる。漢字か? ……うーん、なさそう。英語……は無理そうだ。他には——

「……! ローマ数字!」

 右側の1を動かして、4を9に変える。そして、残るのは1×。見方を変えればローマ数字9であるⅨにも見える……!

「いよっしゃあああああ! 正解!」

 答えは9で正解だった。我ながら天才な気がした。……気がしただけで、人にこれを言ったら鼻で笑われるだろうけど。

「……ん?」

 開かない。鍵が開くような音はしたのに、扉が開かない。

「あー……」

 ……いるのか、そこに。
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