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3話 魔王の討伐と参りましょう!
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「きゃーっ! ディラン様!」
「大丈夫か、エリー!?」
「あ、あれは……魔王か!?」
天井を破壊し、黒い羽と角を生やした見た目は人間のような者。あれが魔王だ。
どうして魔王は序盤の弱いうちに勇者を倒さないんだ! という問題を無くした結果、勇者が現れた瞬間に魔王が現れるというイベントが発生する。
ただ、魔王も復活してから時間はそこまで経っていないため、本調子ではない。
しかし、これがかなり難しいイベントで、このイベントで魔王は倒すことはできない。魔王に一定のダメージを加えると魔王は撤退していく。
だが、相手は魔王だ。弱体化しているとはいえ、強い。ここでゲームオーバーする人も多かった。
「……勇者はどこだ?」
……こんなセリフ、ゲームにはなかったはず。ああ、私が女だから気付いてないのね。
「はっ!」
ならば好都合。先手必勝ね。その問いに答えることなく、攻撃する。油断していたのか、魔王に一撃を食らわせることができた。
……だが、やはり足りない。魔法も使って、追い詰めなければ……!
「ふふ……はーっはっはっはっ!」
突然、魔王は高らかに笑い始めた。何が何だか分からず、誰もが呆然としていた。それは勿論、私も。
「勇者が、この小娘だと? そのようなみずぼらしい格好でか? 面白い話だ。勇者というよりは『聖剣の乙女』と名乗った方が正確ではないか!」
そう言って笑い続ける。その魔王の言葉にハッとなって自分の格好を確認する。
ビリビリに破いたせいでミニスカートになったドレス。髪を触ってみれば、これまでの戦闘で髪は乱れていた。誰がどう見ても、かなり恥ずかしい格好。
今更ながら、顔に熱が集まるのが分かる。
「……次に会う時を楽しみに待っているぞ、勇者とやら」
「ちょっ!?」
そう言って、魔王は飛び去っていった。だが、特に大ダメージを与えた様子はない。このイベントが終わると魔王はフラフラになりながら急いで撤退するのだが、その様子もない。
どう考えても、規定のダメージには達していない。
私のせいで、このゲームのシナリオが大きく変わってしまったようだ。
「無事か!?」
「私は問題ありません。陛下こそ、お怪我はありませんか?」
「安心しろ、無事だ。それよりお主……そのような口調だったか?」
……やってしまった。今の口調は前世の影響が大きい。あのような口調は前世の私からすれば違和感が大きい。その上、今世でもあのような口調は使われない。だから、口調が自然と変わってしまった。
「聖剣の影響を受けたせいですわ」
「そうか」
誤魔化したが、嘘は言っていない。前世を思い出した、なんてことはそう簡単にはバレないでしょう。
「陛下。魔王についてですが、このままでは完全に復活を遂げてしまいますわ」
「同意見だ。急ぎ、討伐隊を編成せねば」
この討伐隊には必ず聖女が入る。勇者に魔王の呪いは効かないが、他人の呪いを解くことはできない。つまり、後方支援はできない。聖女がいないと、討伐隊は一気に壊滅してしまう。
勇者と魔王の1対1では魔王の魔力量が多すぎる。持久戦に持ち込まれれば勝ち目はほとんどない。
「それについて、ご提案がございますわ」
「何だ。言ってみろ」
「その前にですが、婚約破棄は受け入れます。そもそも、婚約の継続は難しいでしょう」
「……そうだな」
殿下は学園の生徒の目の前で堂々と宣言してしまった。このまま婚約を続けていても、お互いに得はない。このまま破棄をしてしまった方が被害は小さい。他の貴族から何を言われるか分かったものじゃない。
「その代わりと言ってはなんですが、先程の殿下達への罰として、この件の当事者全員を討伐隊に編成していただけないでしょうか? 私を捕らえようとした方々は殿下の命令で仕方なく行ったことですから、不問としていただきたいのです」
その提案に陛下は驚いた。婚約破棄を言い渡し、冤罪をかけようとした相手全員を連れて行くからでしょう。
聖女だけでも嫌なはずなのに、取り巻きを含めて全員。ありえない。と陛下はお考えになられているのでしょう。
「……それでいいのか?」
「はい。ただし、一兵士として」
「ふっ、なるほどな」
要するに「身分は関係ない。ただの兵士として連れて行く」と言っている。兵士としての環境に王子や貴族が耐えられるわけがない。その上、本来であれば自分達から下の身分の者からの命令も、受けなければならない。
そして、逃げ出すことは許されない。私の監視の下、生き地獄を味わえばいい。
「良かろう」
「感謝申し上げますわ、陛下」
私は笑顔で答えた。状況を理解できず、呆然としている殿下。一方で、絶望の表情でこちらを見る聖女。
これまでの聖女の行動、そして前世の記憶。そこから全てを悟った私は聖女に近付いた。
「な、何よ!」
「……同じ転生者同士、仲良くやっていきましょ?」
向こうも気付いたらしい。恐怖からか、震え上がっていた。別に取って食ってやろうなんて思ってもいないし、そんなことは一言も言っていないのだけれど。
「殿下。お望み通り、婚約破棄を致しますわ。でも、これからもよろしくお願い致しますわね?」
笑顔でそう言うと、殿下は震え上がった。何も変なことは言っていないのに。
2人とも、この先の展開はお察しかしら?
「さあ、皆様。魔王の討伐と参りましょう!」
舞踏会に向かう可憐な乙女の如く、私は宣言した。
今日から勇者として頑張らせていただきますわ!
「大丈夫か、エリー!?」
「あ、あれは……魔王か!?」
天井を破壊し、黒い羽と角を生やした見た目は人間のような者。あれが魔王だ。
どうして魔王は序盤の弱いうちに勇者を倒さないんだ! という問題を無くした結果、勇者が現れた瞬間に魔王が現れるというイベントが発生する。
ただ、魔王も復活してから時間はそこまで経っていないため、本調子ではない。
しかし、これがかなり難しいイベントで、このイベントで魔王は倒すことはできない。魔王に一定のダメージを加えると魔王は撤退していく。
だが、相手は魔王だ。弱体化しているとはいえ、強い。ここでゲームオーバーする人も多かった。
「……勇者はどこだ?」
……こんなセリフ、ゲームにはなかったはず。ああ、私が女だから気付いてないのね。
「はっ!」
ならば好都合。先手必勝ね。その問いに答えることなく、攻撃する。油断していたのか、魔王に一撃を食らわせることができた。
……だが、やはり足りない。魔法も使って、追い詰めなければ……!
「ふふ……はーっはっはっはっ!」
突然、魔王は高らかに笑い始めた。何が何だか分からず、誰もが呆然としていた。それは勿論、私も。
「勇者が、この小娘だと? そのようなみずぼらしい格好でか? 面白い話だ。勇者というよりは『聖剣の乙女』と名乗った方が正確ではないか!」
そう言って笑い続ける。その魔王の言葉にハッとなって自分の格好を確認する。
ビリビリに破いたせいでミニスカートになったドレス。髪を触ってみれば、これまでの戦闘で髪は乱れていた。誰がどう見ても、かなり恥ずかしい格好。
今更ながら、顔に熱が集まるのが分かる。
「……次に会う時を楽しみに待っているぞ、勇者とやら」
「ちょっ!?」
そう言って、魔王は飛び去っていった。だが、特に大ダメージを与えた様子はない。このイベントが終わると魔王はフラフラになりながら急いで撤退するのだが、その様子もない。
どう考えても、規定のダメージには達していない。
私のせいで、このゲームのシナリオが大きく変わってしまったようだ。
「無事か!?」
「私は問題ありません。陛下こそ、お怪我はありませんか?」
「安心しろ、無事だ。それよりお主……そのような口調だったか?」
……やってしまった。今の口調は前世の影響が大きい。あのような口調は前世の私からすれば違和感が大きい。その上、今世でもあのような口調は使われない。だから、口調が自然と変わってしまった。
「聖剣の影響を受けたせいですわ」
「そうか」
誤魔化したが、嘘は言っていない。前世を思い出した、なんてことはそう簡単にはバレないでしょう。
「陛下。魔王についてですが、このままでは完全に復活を遂げてしまいますわ」
「同意見だ。急ぎ、討伐隊を編成せねば」
この討伐隊には必ず聖女が入る。勇者に魔王の呪いは効かないが、他人の呪いを解くことはできない。つまり、後方支援はできない。聖女がいないと、討伐隊は一気に壊滅してしまう。
勇者と魔王の1対1では魔王の魔力量が多すぎる。持久戦に持ち込まれれば勝ち目はほとんどない。
「それについて、ご提案がございますわ」
「何だ。言ってみろ」
「その前にですが、婚約破棄は受け入れます。そもそも、婚約の継続は難しいでしょう」
「……そうだな」
殿下は学園の生徒の目の前で堂々と宣言してしまった。このまま婚約を続けていても、お互いに得はない。このまま破棄をしてしまった方が被害は小さい。他の貴族から何を言われるか分かったものじゃない。
「その代わりと言ってはなんですが、先程の殿下達への罰として、この件の当事者全員を討伐隊に編成していただけないでしょうか? 私を捕らえようとした方々は殿下の命令で仕方なく行ったことですから、不問としていただきたいのです」
その提案に陛下は驚いた。婚約破棄を言い渡し、冤罪をかけようとした相手全員を連れて行くからでしょう。
聖女だけでも嫌なはずなのに、取り巻きを含めて全員。ありえない。と陛下はお考えになられているのでしょう。
「……それでいいのか?」
「はい。ただし、一兵士として」
「ふっ、なるほどな」
要するに「身分は関係ない。ただの兵士として連れて行く」と言っている。兵士としての環境に王子や貴族が耐えられるわけがない。その上、本来であれば自分達から下の身分の者からの命令も、受けなければならない。
そして、逃げ出すことは許されない。私の監視の下、生き地獄を味わえばいい。
「良かろう」
「感謝申し上げますわ、陛下」
私は笑顔で答えた。状況を理解できず、呆然としている殿下。一方で、絶望の表情でこちらを見る聖女。
これまでの聖女の行動、そして前世の記憶。そこから全てを悟った私は聖女に近付いた。
「な、何よ!」
「……同じ転生者同士、仲良くやっていきましょ?」
向こうも気付いたらしい。恐怖からか、震え上がっていた。別に取って食ってやろうなんて思ってもいないし、そんなことは一言も言っていないのだけれど。
「殿下。お望み通り、婚約破棄を致しますわ。でも、これからもよろしくお願い致しますわね?」
笑顔でそう言うと、殿下は震え上がった。何も変なことは言っていないのに。
2人とも、この先の展開はお察しかしら?
「さあ、皆様。魔王の討伐と参りましょう!」
舞踏会に向かう可憐な乙女の如く、私は宣言した。
今日から勇者として頑張らせていただきますわ!
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