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王都 はじまり編
水
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私が身体を洗い流したことで、その場にいた女の子達が一斉に水の入った樽に駆け寄る。
落ちていた桶を拾い水を掬い始める子、桶が足りず手で水を掬おうとしている子と様々だ。
私は持っていた桶をミエーラに渡すと、ミエーラは一瞬嬉しそうな表情を見せたが、すぐにその表情を変える。
(えっ――)
目を見開き、まるで何かに取り憑かれているかのようだった。
ミエーラは樽のそばまで行くと、身長と同じくらいの樽から水を救おうと必死で手を伸ばす。
(……水が少ないから届かないよね。……それにしてもさっきのミエーラ、なんであんなに怖い顔をしていたんだろう。そんなに身体を洗いたかったのかな……)
水を掬ってあげようとミエーラに近づくと、私は異変に気付いた。
(……………………えっ、あっ、あ……。だめだよ……みんな……)
顔を洗っているものだと思っていたが、そうではなかった。
6名の女の子達は、樽に入った水をごくごくと飲んでいたのだ。
みんな、辺りに水を撒き散らしながら水を飲んでいる。
このような場所で蓋もされず、ただ木の樽に入れられ放置された水。
中に何が入っているのかなんて分からない。そんな水を――
(こんなの――、……飲んだらだめだよ。汚いよ)
必死に飲む女の子達の表情に鳥肌が立つと共に、肌や髪に残る水の臭いが鼻から喉へと伝わり、私の想像力を掻き立てその味を舌の上で再現する。
そして、吐き気に襲われた。
女の子たちは無我夢中になり水を飲み続けた。
身体を洗うことを忘れ、裸になったみんなのお腹は不自然に膨れ上がっている。
(そうだよね。みんなは私よりも長い旅をしてきたんだよね。……でも、こんな水を飲むなんて……)
その時――
リータが女の子たちに近づき、後ろから2人の女の子の髪を掴んで持ち上げた。
「きゃああああああ!!」
「い、痛い! 痛いよッ!」
「誰が飲んでいいと言った」
「「ごめんなさいっ、ごめんなさい!」下ろして!」
「言われたことだけをやれ。分かったか」
「「分かりました!」ごめんなさい!」
リータはゆっくりと、2人を下ろした。
「「「……………………」」」
女の子たちが無言で身体を洗い流し始めると、リータは男の子たちが連れて行かれた部屋へと入って行く。
(私もちゃんと身体を洗おう。いつまた身体を洗えるのか分からないよね……)
私はミエーラから桶を受け取ると、水を掬い先にミエーラの身体を流した。
「……ありがとう。お姉ちゃん」
ミエーラがわずかに嬉しそうな表情を見せたので、ミエーラの頭を撫でた。
そして私も身体を洗い流す――。
(やっぱりこの水は、飲めるようなものじゃない。……でも、やっぱり。身体を洗い流せるだけでも気持ちいい……)
◆
身体を洗い終わるとリータが用意した服を着ることになったが、身体を拭くようなものは用意されていない。そのため私たちは着ていた服で身体を拭き上げることにした。
用意された服を見ると、薄い白布地でワンピースタイプのポンチョのようなものだ。
(これを着るんだ……)
私が下着を着ようとすると、リータに「必要ない」と止められた。
そしてみんなが着ていた服を集めるとドアの隅に置かれた木箱に放り込んだ。
「おい、行くぞ」
リータがそう叫ぶと、隣の部屋から着替えを済ませた2人の男の子が戻ってくる。
(……あの子たちもきっと)
男の子たちのお腹は服の上からでも分かるくらいに膨らんでいた。
「移動する。ついて来い」
「「「……………………」」」
部屋を出るリータのあとを子ども達がついていく。
私は一番最後に部屋を出ようとして、ドアの前で立ち止まった。
木箱の中を見ると、ぐちゃぐちゃになった私の服や靴が入っている。
「お姉ちゃん……。行こ」
立ち止まる私を心配したのか、一人で怖かったのかは分からない。
ミエーラは私の手を握るとそう言った。
(……もう、あの可愛い服。着れないんだ)
私の頬を涙が伝い流れた。
落ちていた桶を拾い水を掬い始める子、桶が足りず手で水を掬おうとしている子と様々だ。
私は持っていた桶をミエーラに渡すと、ミエーラは一瞬嬉しそうな表情を見せたが、すぐにその表情を変える。
(えっ――)
目を見開き、まるで何かに取り憑かれているかのようだった。
ミエーラは樽のそばまで行くと、身長と同じくらいの樽から水を救おうと必死で手を伸ばす。
(……水が少ないから届かないよね。……それにしてもさっきのミエーラ、なんであんなに怖い顔をしていたんだろう。そんなに身体を洗いたかったのかな……)
水を掬ってあげようとミエーラに近づくと、私は異変に気付いた。
(……………………えっ、あっ、あ……。だめだよ……みんな……)
顔を洗っているものだと思っていたが、そうではなかった。
6名の女の子達は、樽に入った水をごくごくと飲んでいたのだ。
みんな、辺りに水を撒き散らしながら水を飲んでいる。
このような場所で蓋もされず、ただ木の樽に入れられ放置された水。
中に何が入っているのかなんて分からない。そんな水を――
(こんなの――、……飲んだらだめだよ。汚いよ)
必死に飲む女の子達の表情に鳥肌が立つと共に、肌や髪に残る水の臭いが鼻から喉へと伝わり、私の想像力を掻き立てその味を舌の上で再現する。
そして、吐き気に襲われた。
女の子たちは無我夢中になり水を飲み続けた。
身体を洗うことを忘れ、裸になったみんなのお腹は不自然に膨れ上がっている。
(そうだよね。みんなは私よりも長い旅をしてきたんだよね。……でも、こんな水を飲むなんて……)
その時――
リータが女の子たちに近づき、後ろから2人の女の子の髪を掴んで持ち上げた。
「きゃああああああ!!」
「い、痛い! 痛いよッ!」
「誰が飲んでいいと言った」
「「ごめんなさいっ、ごめんなさい!」下ろして!」
「言われたことだけをやれ。分かったか」
「「分かりました!」ごめんなさい!」
リータはゆっくりと、2人を下ろした。
「「「……………………」」」
女の子たちが無言で身体を洗い流し始めると、リータは男の子たちが連れて行かれた部屋へと入って行く。
(私もちゃんと身体を洗おう。いつまた身体を洗えるのか分からないよね……)
私はミエーラから桶を受け取ると、水を掬い先にミエーラの身体を流した。
「……ありがとう。お姉ちゃん」
ミエーラがわずかに嬉しそうな表情を見せたので、ミエーラの頭を撫でた。
そして私も身体を洗い流す――。
(やっぱりこの水は、飲めるようなものじゃない。……でも、やっぱり。身体を洗い流せるだけでも気持ちいい……)
◆
身体を洗い終わるとリータが用意した服を着ることになったが、身体を拭くようなものは用意されていない。そのため私たちは着ていた服で身体を拭き上げることにした。
用意された服を見ると、薄い白布地でワンピースタイプのポンチョのようなものだ。
(これを着るんだ……)
私が下着を着ようとすると、リータに「必要ない」と止められた。
そしてみんなが着ていた服を集めるとドアの隅に置かれた木箱に放り込んだ。
「おい、行くぞ」
リータがそう叫ぶと、隣の部屋から着替えを済ませた2人の男の子が戻ってくる。
(……あの子たちもきっと)
男の子たちのお腹は服の上からでも分かるくらいに膨らんでいた。
「移動する。ついて来い」
「「「……………………」」」
部屋を出るリータのあとを子ども達がついていく。
私は一番最後に部屋を出ようとして、ドアの前で立ち止まった。
木箱の中を見ると、ぐちゃぐちゃになった私の服や靴が入っている。
「お姉ちゃん……。行こ」
立ち止まる私を心配したのか、一人で怖かったのかは分からない。
ミエーラは私の手を握るとそう言った。
(……もう、あの可愛い服。着れないんだ)
私の頬を涙が伝い流れた。
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