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影
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何処の会社から巻き上げたのか、そこそこの大きさのある廃倉庫が今回の仕事場。以前下見に来た時よりも殺伐としている。おそらくこの日のための準備をしたのだろう。少々面倒だがプランを変え、念のためにと持ってきていたライフルを用意する。
息を潜めているとその人物が現れた。今回のターゲット、伏見組の組長だ。しかし今彼を撃つわけにはいかない。そんな事をすれば場は混乱に陥り、彼の部下達が何を始めるか分からない。こちらの情報は多少漏らしているから、順当にいけばそろそろ頃合いだ。
「頭。」
幹部の1人と思われる男がターゲットに何かを告げる。
「ほう、彼奴がですか…。」
空気が変わったのが少し離れた位置にいても分かった。
「それでは、始めましょう。」
その声を合図に周りにいた男達が動き出す。ターゲットの護衛には5人を残し、数人は左右に分かれ、2人が内部へと入っていく。どうやら考えはあるようだ。だがそんな事は関係ない。
(まずは右側の3人…。)
小さな発砲音と共にその数だけ男達が倒れる。今ので居場所はバレた。すぐさま第2ポイントへ向かう。思惑どうり眼下には混乱が広がる。続いて左側の4人に銃を向けるが、警戒している相手を全て射抜くのは容易ではない。
(7…いや、5)
小さく舌打ちして2人を仕留める。残りの2人はこちらに気付いているが短銃ではこの距離での正確な射撃は無理に等しい。再びポイントを変え、スコープを覗く。
(これで…7。)
男達は見失った影を懸命に探すもその努力は水の泡と化す。スコープから顔を上げ、得物を取り出し周囲を見回すと、背後から待ちわびていた怒号が聞こえた。
「ここかぁ!!!」
その声で下部にいたターゲット達にも居場所がバレた。だがこのアングルではどうする事も出来ない。
(9…。)
すぐに間合いを詰め、手にしていたそれで立て続けに頸動脈を切り裂く。
その直後、4人の男のけたたましい足音が響いた。という事は残りはターゲットと護衛が1人。男達は一斉になだれ込むがそこに残っていたのは微かな華の香りのみ。困惑が場を包んだその刹那、4つの発砲音とともに白い煙が辺りを覆う。1つを近くに仕掛けていた煙幕弾に当てたのだ。
(10…2。)
黒い影はすでに手すりを乗り越え、宙を舞っていた。小さな足場を踏み台に舞い降り、華麗に着地した先で待っていたのは、7つの屍とこちらを見据える男達。護衛の男は容赦なく発砲する。虚しく地に打ち付けられる弾丸、近づく足音、男の中を恐怖が支配する。
「う、うあぁぁぁぁぁ!!!!!」
ヤケになって乱射されるそれはもはや明後日の方向へと響く。間合いをつめ、いつもの様に振りかぶる。
(13…。)
飛び散る血飛沫。それを器用に避けた影はターゲットを見据えた。
「完敗のようですね。私達は貴方を侮っていた。最後に顔を見せてはくれませんか?」
命乞いではない。本人なりの仁義を貫くつもりだろう。深く被っていたフードを脱ぎ、マスクをおろして得物を突きつける。耳の上で小さく何かが煌めいた。
(ラスト…14。)
「おや、随分お若いのですね。まさか、貴方ほどの方に負けるとは。」
その清い笑顔を一瞥すると躊躇無く首元を切り裂く。液体の噴出音が不気味に響いた。マスクとフードをつけ直しながら上部を見据えると、唯一生かした男が顔を出した。目元のみで挑発する。しかしその男の眼に戦意はなく、ただただ恐怖が浮かぶだけだった。
息を潜めているとその人物が現れた。今回のターゲット、伏見組の組長だ。しかし今彼を撃つわけにはいかない。そんな事をすれば場は混乱に陥り、彼の部下達が何を始めるか分からない。こちらの情報は多少漏らしているから、順当にいけばそろそろ頃合いだ。
「頭。」
幹部の1人と思われる男がターゲットに何かを告げる。
「ほう、彼奴がですか…。」
空気が変わったのが少し離れた位置にいても分かった。
「それでは、始めましょう。」
その声を合図に周りにいた男達が動き出す。ターゲットの護衛には5人を残し、数人は左右に分かれ、2人が内部へと入っていく。どうやら考えはあるようだ。だがそんな事は関係ない。
(まずは右側の3人…。)
小さな発砲音と共にその数だけ男達が倒れる。今ので居場所はバレた。すぐさま第2ポイントへ向かう。思惑どうり眼下には混乱が広がる。続いて左側の4人に銃を向けるが、警戒している相手を全て射抜くのは容易ではない。
(7…いや、5)
小さく舌打ちして2人を仕留める。残りの2人はこちらに気付いているが短銃ではこの距離での正確な射撃は無理に等しい。再びポイントを変え、スコープを覗く。
(これで…7。)
男達は見失った影を懸命に探すもその努力は水の泡と化す。スコープから顔を上げ、得物を取り出し周囲を見回すと、背後から待ちわびていた怒号が聞こえた。
「ここかぁ!!!」
その声で下部にいたターゲット達にも居場所がバレた。だがこのアングルではどうする事も出来ない。
(9…。)
すぐに間合いを詰め、手にしていたそれで立て続けに頸動脈を切り裂く。
その直後、4人の男のけたたましい足音が響いた。という事は残りはターゲットと護衛が1人。男達は一斉になだれ込むがそこに残っていたのは微かな華の香りのみ。困惑が場を包んだその刹那、4つの発砲音とともに白い煙が辺りを覆う。1つを近くに仕掛けていた煙幕弾に当てたのだ。
(10…2。)
黒い影はすでに手すりを乗り越え、宙を舞っていた。小さな足場を踏み台に舞い降り、華麗に着地した先で待っていたのは、7つの屍とこちらを見据える男達。護衛の男は容赦なく発砲する。虚しく地に打ち付けられる弾丸、近づく足音、男の中を恐怖が支配する。
「う、うあぁぁぁぁぁ!!!!!」
ヤケになって乱射されるそれはもはや明後日の方向へと響く。間合いをつめ、いつもの様に振りかぶる。
(13…。)
飛び散る血飛沫。それを器用に避けた影はターゲットを見据えた。
「完敗のようですね。私達は貴方を侮っていた。最後に顔を見せてはくれませんか?」
命乞いではない。本人なりの仁義を貫くつもりだろう。深く被っていたフードを脱ぎ、マスクをおろして得物を突きつける。耳の上で小さく何かが煌めいた。
(ラスト…14。)
「おや、随分お若いのですね。まさか、貴方ほどの方に負けるとは。」
その清い笑顔を一瞥すると躊躇無く首元を切り裂く。液体の噴出音が不気味に響いた。マスクとフードをつけ直しながら上部を見据えると、唯一生かした男が顔を出した。目元のみで挑発する。しかしその男の眼に戦意はなく、ただただ恐怖が浮かぶだけだった。
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