【外伝】 白雪姫症候群 ースノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

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第2章 魔女たちの暗躍編

第1話ー① 途絶えない未来

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 所長から剛の様子が変だと聞いたキリヤは急いで観測ルームに向かっていた。

(剛、大丈夫だよね? また会えるって、信じていいんだよね??)

 不安に思いながら、そんなことを考えて廊下を走るキリヤ。

「所長! 剛に何かあったんですか!!」

 観測室に着いたキリヤは勢いよく、その扉を開けた。

「キリヤ君……これを見てくれ。剛君の脳波に異常が……」

 そう言われたキリヤは、所長が見ているモニターに目を向けた。

「これって……」


 ***


 ――ココハドコダ?


「剛君! 聞いてる??」
「え!?」

 急に呼びかけられた剛は、はっとしてその声の主の方を向いた。

「アカネ……? なんで」
「どうしたの? 変なの!」

 そう言って、アカネは笑っていた。

 剛はそんなアカネの笑顔を見て、なぜかその笑顔がとても懐かしく感じていた。

「悪い……なんか、悪い夢を見ていたのかも」
「夢?」
「ああ、アカネがいない世界の夢だよ」
「何それ……何のアニメ?」

 呆れた顔をするアカネ。

「ははは……」

 剛は困った顔で笑うしかなかった。

 アカネは今ここにいて、確かに生きている。あの時、アカネは死んだと思っていたのに――

 剛はアカネの横顔を見ながら、そんなことを思うのだった。



 帰り道、剛とアカネは並んで歩いていた。

「今日の晩御飯は何かなあ」
「ははは。アカネはいつもそればっかりだよな!」
「そ、そんなことないよ! 宿題やらなくちゃなあとかテレビも観てみたいなあとか! そういうことも思うよ!!」
「そうか! 今日って何のテレビやってるんだっけ?」
「うーん。普段はテレビ観れないから、わからないんだよね。ほら、お父さんが野球中継しか見せてくれないしさ」
「そうか……」

 アカネの父は昼間から酒を飲んでいて、酒がなくなると買ってこいと母親に命令していたり、酒を飲んでいない時はずっと煙草を吸っていったりするような人間だと近所の人から聞いていた剛。

 そして機嫌が悪いと、アカネやアカネの母に暴力を振るったりしているようだった。

 剛は実際にその現場を見たことはなかったが、アカネの腕や足に時々痛そうなアザを見て、噂通りの父親なんだろうという事は察していた。

「ごめんな、アカネ。あの時、俺がガツンと言ってやるなんて言ったから……」

 そう言って剛はアカネの肩に巻かれている包帯を見た。

 それは以前、剛がアカネの家に訪れた後に父親から受けたであろう暴力の傷跡だった。

「ううん。剛君がそう思ってくれただけでも嬉しかったよ。私は一人じゃないんだ、剛君が守ってくれるんだって!」

 アカネはそう言って微笑んだ。

「ありがとな、アカネ。もしもまた悩みとかがあれば、何でも聞くから! だから俺で良ければいつでも頼ってくれよ!」
「うん。ありがとう、剛君……じゃあ、私はこっちだから! バイバイ!」
「ああ、また明日!!」

 笑顔のアカネに手を振って別れた剛。

「本当にこれでいいのか。俺にもっとできることがあるんじゃないのか……」

 そしてアカネの父の顔が剛の脳裏によみがえる――。


 ***


 それは剛がアカネの家に行ったときのことだった。

 剛たちが家に着くと、ちょうどアカネの父が玄関から出てきたところに遭遇した。

「誰だ?」

 そう言って剛を睨みつけるアカネの父。くしゃくしゃの髪とヨレヨレのTシャツ、そして近寄るだけで酒臭さがしていた。

「えっと、俺はアカネさんのお友達で……」
「はあ? アカネの友達? 何しに来た??」
「あ、えっと……その」

 そしてゆっくりとアカネに視線を向ける父。

「な、何でもないです。ただ近くで用事があるからって、ついでに家に寄っただけなんです」
「ふーん。さっさと帰れ。俺はガキが嫌いなんだよ」

 そう言って再び家の中に戻る父。

「ごめんね、剛君」
「俺も、ごめん……ガツンと言うって言ったのに、何も」
「いいの! じゃあまたね!!」

 そう言って家の中に入るアカネ。

 そして剛は家に帰ろうと踵を返すと、

「お前、俺が殴ったことをあのガキに話したんじゃないだろうな!」

 大声で怒鳴るアカネの父の声が聞こえた。

「ごめんなさい……私、そんなつもりじゃ……」
「うるせえ!!」

 俺のせいで――! 剛はそう思ったけれど、アカネの家には近づけなかった。

 そしてそのまま振り返ることもなく、家まで走っていった。

「俺が弱いせいで……アカネ、ごめん――」


 ***


 両手にぐっと力を込めて握る剛。

「――帰ろう。今は無理でも、いつかきっと力をつけたらアカネをあの父親から救うんだ。あんな大人の元じゃなく、もっと幸せな場所へ」

 そして剛は家路についたのだった。
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