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第2章 魔女たちの暗躍編
第5話ー① 不安
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「キリヤ君の様子はどうですか?」
優香はそう言いながら、モニターを覗くゆめかの隣に立った。
「今日は神無月さんと訓練しているよ」
ゆめかは振り向きながら、そう答えた。
そしてゆめかの前にある画面を覗く優香。
「ちょっと根詰めすぎじゃないかって思うけど、優香君の意見はどうだい?」
「私の意見、ですか」
ゆめかの問いに優香は少し黙って考えた。
本当は少し無茶しすぎかな、とは思っているけれど――
「私はキリヤ君が決めたことなら、応援しようと思います。もし何かあっても、私が彼の傍で支えます。だって私は、キリヤ君の頼れる相棒ですからね!」
そう言って微笑む優香。
「それは頼もしい限りだね! よろしく頼むよ、優香君。でも一人じゃ、どうにもならない時には、必ず私を頼ること! いいね?」
「はい!」
「優香君は、本当にキリヤ君を信頼しているというか、愛が深いというか。彼のことが大好きなんだってことが伝わってくるよ」
「は、はい? た、確かに信頼はしていますが、愛が深いとか大好きとかそういうわけじゃ! まあ好きと言えば、好きですけど……でも、それは友人としてですね――」
「あーはいはい」
ゆめかはにこやかな顔でそう言った。
「白銀さん、聞いてますか??」
「ほら、優香君もキリヤ君の頑張りをちゃんと目で見てあげないとね!」
「はい……」
ゆめかの大人の余裕を見せられた優香は、言われるがままモニターに視線を戻す。そしてそのモニターに映るキリヤは、膝に手を乗せながら息を切らしていた。
大丈夫って言っていたのに。大丈夫じゃない、じゃない――
優香はそんなことを思いながら、そこに映るキリヤを見つめるのだった。
***
――訓練室。
「ちょっと休憩にするか? もうずっとノンストップだろう?」
「い、いえ……まだ大丈夫です。それに、神無月さんとの時間を、無駄にしたくないので……」
キリヤは息を切らしながら、神無月にそう告げた。
「やる気があるのは何よりだが、それで身体を壊したら意味がないからな。訓練が本番じゃない。自分のやるべきことを間違うなよ」
自分のやるべきことを間違うな、か――
キリヤは神無月の言葉に、胸が痛くなる。
自分があの時に間違わなければ、きっと――そんな思いがこみ上げるキリヤ。
「強く、なりたいんです。自分の力のなさで救えない命があるのは、もう、嫌なんです」
キリヤは俯きながら、そう言った。
「身体を鍛えるだけが強くあることじゃないと思うぞ……はあ。今日はこの辺にしよう。俺も次の仕事があるからな」
「……わかりました」
「次の訓練までに、課題を出す。キリヤの願う強さが何なのか。その答えを俺に聞かせてくれ」
「僕の願う強さ……」
「ああ。……って、そろそろ時間が!? 急がないと、つばめにどやされるな……じゃあ、お疲れさん」
神無月はそう言って訓練室を後にした。
一人になったキリヤはその場に座り込んだ。
強さに種類なんてあるんだろうか。誰にも負けない力、誰でも救える力。それが強さじゃないのかな――
「はあ」
神無月さんは僕に何を言わせたいんだろう――
そんなことを思いながら、キリヤはボーっと神無月の出て行った扉を見つめる。
能力者である僕は、その力がなければただの非力な人間でしかない。優香のように優れた身体能力と頭脳があるわけでもない。神無月さんのように強靭な肉体を持っているわけじゃない――
「だったら、そうなれるように今はただ頑張るしかないじゃないか……」
そう呟いたキリヤは訓練室にあるカメラの方を向き、
「白銀さん、見ているんですよね? 模擬訓練、お願いします」
そう告げたのだった。
***
――モニタールーム。
「だ、そうだよ?」
「『だ、そうだよ?』じゃないですよ! 今の今まで組み手をしていたじゃないですか! ダメです!! 今日はもう終わりです! オーバーワークです!!」
優香は血相を変えて、ゆめかにそう言った。
「でもさっき応援するって――」
「ええ、言いましたよ! 言いましたけども!」
さっきは白銀さんにカッコつけてそう言ったけど、でも今のキリヤ君を見ていたら――
そう思いながら、モニターに視線を移す優香。
そこに映るキリヤは神無月から食らったであろう傷が痛々しく、息も上がりきっており、これ以上続ければ彼は倒れてしまうのでは、と優香は心配していた。
「でも彼は、まだやめる気はないって顔をしているね」
「そう、ですけど……」
そう言って俯く優香。
『白銀さん? 聞いていますか??』
「どうする?」
やれやれと言った顔で優香を見つめるゆめか。
白銀さんもここでやめるつもりはないって顔してる……仕方ないな――
「……わかりました。でもちょっと待っててください! 私も行きます!!」
「そう言うと思ったよ」
そう言って微笑むゆめか。
そして優香は大急ぎでモニタールームを出て行った。
優香はそう言いながら、モニターを覗くゆめかの隣に立った。
「今日は神無月さんと訓練しているよ」
ゆめかは振り向きながら、そう答えた。
そしてゆめかの前にある画面を覗く優香。
「ちょっと根詰めすぎじゃないかって思うけど、優香君の意見はどうだい?」
「私の意見、ですか」
ゆめかの問いに優香は少し黙って考えた。
本当は少し無茶しすぎかな、とは思っているけれど――
「私はキリヤ君が決めたことなら、応援しようと思います。もし何かあっても、私が彼の傍で支えます。だって私は、キリヤ君の頼れる相棒ですからね!」
そう言って微笑む優香。
「それは頼もしい限りだね! よろしく頼むよ、優香君。でも一人じゃ、どうにもならない時には、必ず私を頼ること! いいね?」
「はい!」
「優香君は、本当にキリヤ君を信頼しているというか、愛が深いというか。彼のことが大好きなんだってことが伝わってくるよ」
「は、はい? た、確かに信頼はしていますが、愛が深いとか大好きとかそういうわけじゃ! まあ好きと言えば、好きですけど……でも、それは友人としてですね――」
「あーはいはい」
ゆめかはにこやかな顔でそう言った。
「白銀さん、聞いてますか??」
「ほら、優香君もキリヤ君の頑張りをちゃんと目で見てあげないとね!」
「はい……」
ゆめかの大人の余裕を見せられた優香は、言われるがままモニターに視線を戻す。そしてそのモニターに映るキリヤは、膝に手を乗せながら息を切らしていた。
大丈夫って言っていたのに。大丈夫じゃない、じゃない――
優香はそんなことを思いながら、そこに映るキリヤを見つめるのだった。
***
――訓練室。
「ちょっと休憩にするか? もうずっとノンストップだろう?」
「い、いえ……まだ大丈夫です。それに、神無月さんとの時間を、無駄にしたくないので……」
キリヤは息を切らしながら、神無月にそう告げた。
「やる気があるのは何よりだが、それで身体を壊したら意味がないからな。訓練が本番じゃない。自分のやるべきことを間違うなよ」
自分のやるべきことを間違うな、か――
キリヤは神無月の言葉に、胸が痛くなる。
自分があの時に間違わなければ、きっと――そんな思いがこみ上げるキリヤ。
「強く、なりたいんです。自分の力のなさで救えない命があるのは、もう、嫌なんです」
キリヤは俯きながら、そう言った。
「身体を鍛えるだけが強くあることじゃないと思うぞ……はあ。今日はこの辺にしよう。俺も次の仕事があるからな」
「……わかりました」
「次の訓練までに、課題を出す。キリヤの願う強さが何なのか。その答えを俺に聞かせてくれ」
「僕の願う強さ……」
「ああ。……って、そろそろ時間が!? 急がないと、つばめにどやされるな……じゃあ、お疲れさん」
神無月はそう言って訓練室を後にした。
一人になったキリヤはその場に座り込んだ。
強さに種類なんてあるんだろうか。誰にも負けない力、誰でも救える力。それが強さじゃないのかな――
「はあ」
神無月さんは僕に何を言わせたいんだろう――
そんなことを思いながら、キリヤはボーっと神無月の出て行った扉を見つめる。
能力者である僕は、その力がなければただの非力な人間でしかない。優香のように優れた身体能力と頭脳があるわけでもない。神無月さんのように強靭な肉体を持っているわけじゃない――
「だったら、そうなれるように今はただ頑張るしかないじゃないか……」
そう呟いたキリヤは訓練室にあるカメラの方を向き、
「白銀さん、見ているんですよね? 模擬訓練、お願いします」
そう告げたのだった。
***
――モニタールーム。
「だ、そうだよ?」
「『だ、そうだよ?』じゃないですよ! 今の今まで組み手をしていたじゃないですか! ダメです!! 今日はもう終わりです! オーバーワークです!!」
優香は血相を変えて、ゆめかにそう言った。
「でもさっき応援するって――」
「ええ、言いましたよ! 言いましたけども!」
さっきは白銀さんにカッコつけてそう言ったけど、でも今のキリヤ君を見ていたら――
そう思いながら、モニターに視線を移す優香。
そこに映るキリヤは神無月から食らったであろう傷が痛々しく、息も上がりきっており、これ以上続ければ彼は倒れてしまうのでは、と優香は心配していた。
「でも彼は、まだやめる気はないって顔をしているね」
「そう、ですけど……」
そう言って俯く優香。
『白銀さん? 聞いていますか??』
「どうする?」
やれやれと言った顔で優香を見つめるゆめか。
白銀さんもここでやめるつもりはないって顔してる……仕方ないな――
「……わかりました。でもちょっと待っててください! 私も行きます!!」
「そう言うと思ったよ」
そう言って微笑むゆめか。
そして優香は大急ぎでモニタールームを出て行った。
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