白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

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第1章 始まり

第1話ー② 出会い

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 入り口で教室の全体を見渡し、生徒たちの姿を確認した俺は、教室へと足を踏み入れる。

 生徒たちの年齢はそれぞれバラバラのようだけど、仲睦まじく会話を楽しんでいるようだったが、俺が教室に入った途端に先ほどまで楽しそうだった雰囲気は一気に変貌する。

 俺は生徒たちから妙な緊張感と嫌悪感を悟った。

 どうやら俺は生徒たちに受け入れてもらっていないらしい。

 しかし俺はここで折れるわけにもいかない。

 俺は教壇に立ち、生徒たちに顔を向ける。

 俺が昔、観ていた大好きなドラマで熱血教師が生徒の前で初めて自己紹介をする憧れのシーンがある。俺は自分が教師になったとき、必ずその自己紹介をすると決めていた。

「こほん。はじめまして! 今日からこのクラスを受け持つことになった、三谷暁だ。よろしくな。そして俺のことは気軽に暁先生って呼んでくれよ!」

 教師を目指して、十年余り……俺はようやくその夢が叶った瞬間だった。

 最後のポーズも決まり、俺は完璧な再現だったと自画自賛していたが……。

「………」

 あれ? リアクションが薄い? もしかしてあのドラマを知らないのか?

「ああ、あはは。ごめんな。初めから、テンション上げすぎたかな。実はこれ、俺が大好きなドラマのシーンでさ!」

 俺は慌ててフォローをしたが、もう遅かったようだ。

 フォローもむなしく、教室の中は静まり返っていた。

 そもそも俺は生徒たちに受け入れてもらっていないのに、余計に空気を悪くしてしまったかもしれない……。

「……ま、まあそんなわけで!これからよろしく頼む!」

 気を取り直してみたが、相変わらず教室は静まり返ったままで、その空気に思わず俺も苦笑いである。

 そして一人の少女が声を上げて笑い出した。

「あははははは! めっちゃうけるんですけどー! 滑っちゃうとこもだけど、それでも折れずに開き直るとか! ヤバすぎ!! あははははは!」

 何かわからないけど、ウケた!!

 俺はその少女に、粉々に打ち砕かれた心を救ってもらえたような気がした。

「あ、ありがとう。えっと、君は……」

「え? アタシ? アタシの名前は速水はやみいろは! ピッチピチの14歳! よろしく!」

 ピッチピチって……今そんなことを言う若者いるなんて思いもしなかったよ。

 しかし意外と好意的な子もいるみたいだ。

 俺はそんないろはの態度を見て、教師としてなんとかやっていけそうな気がした。

「速水いろは……と。よろしくな!よし、じゃあ順番に自己紹介をしてくれないか?早くみんなのことを覚えたいんだ」

 俺はいろはの情報を持っていたノートに書き留める。

「なんでそんな必要があるんだ? ここへ来る前に俺たちのデータはもらってんだろ? 俺たちがどんな奴らかってこともわかってるくせに」

 そう。彼のいう通りだ。俺はここへ来る前に施設を管轄している政府の人から彼らのデータをもらっている。

 多少は目を通したが、あくまであのデータは、政府の人たちが彼らのことを深く知らない人間に作らせたもの。だからあのデータからは表面的なことしかわからない。

 それはつまり、あのデータは本当の彼らの情報ではなく、誰かの目から見えた彼らの姿しか表記されていないってわけだ。

「ああ。もちろんデータはもらったし、軽く目も通したけれど、そのデータにあることが真実かどうかなんてわからないだろう? 俺は直接お前たちと関わって、本当のことを知っていきたいんだ」

 それを聞いた黒髪の美少年が微笑んだ。

「ふふっ。面白いね、暁先生。良いじゃないか、剛! それにみんなも! 自己紹介してあげようよ」

 その少年の言葉に他の生徒たちが頷く。

「僕の名前は桑島くわしまキリヤ。このクラスでは一番在籍歴が長いんだ。データで見たと思うけど、僕は氷を操る能力持ちだよ。これからよろしくね、暁先生?」

 自己紹介をするキリヤは終始笑顔だったが、その笑顔の裏に少し影があるように感じた。

 確か政府からのデータで桑島キリヤは最も危険人物と記載されていたけれど、その笑顔の裏と何か関係あるのだろうか。

 今はどんなに考えてもきっとわからないことなんだろう。

 だとしたら、これからキリヤと関わっていくうちに知っていけばいいことだ。

 俺は自己紹介をしてくれたキリヤに感謝を述べながら微笑む。

「ありがとう、キリヤ。これからよろしくな!じゃあ次は……」

そしてキリヤの後ろに隠れるきれいな黒髪の小柄な少女が口を開いた。

「……桑島くわしまマリアです。キリヤの妹です。よろしくお願いします……」

 そう言って、マリアは再びキリヤの後ろに隠れる。

 その行動からマリアはなんだか怯えているように見えた。

 彼女は人見知りなのか、それとも俺はいきなり嫌われてしまったのか……。

 もしも後者だとしたら、これからそれを挽回していくしかないな……。

 俺は後者ではないことを祈るばかりだ。

 それから次々に生徒たちが自己紹介をする。
 
 さっき噛み付いてきた少年は火山剛ひやまつよし。18歳でクラス最年長。短髪、高身長でいかにもクラスの番長といったところだろうか。剛は火を自在に操る能力者なんだそう。

 そして艶々のショートボブで切れ長な目をしている神宮寺奏多じんぐうじかなた。奏多はバイオリンから繰り出される斬撃を操る能力者。

 机で怯えながら俺を見つめるおかっぱヘアの少年は狭山さやままゆお。まゆおは竹刀を日本刀のように変化させる能力だ。

 次が、何を考えているかわからない風の能力者、風谷真一かぜたにしんいち。ヘッドホンを常に首に掛けているらしいが、もしかしたら音楽好きなんだろうか。

 最後に橙色の縁眼鏡でアニメのフィギュアを愛でている、具現化能力を持つ流山結衣るやまゆい。ちなみにマリアはフェロモンを使う能力者なんだとか。

 こうして全員の能力を聞くと、それぞれがとても個性豊かな能力を持っていることを知った。

 そして一通り自己紹介が終わると、教室は先ほどの緊張感が和らいでいるようだった。

 自己紹介のおかげで、少しだけ生徒たちと打ち解けられたのかもしれない。この自己紹介はやる価値があったんだなと俺はそう思った。

「よし、これで全員の名前を知ることができた。みんな、ありがとう! さて、今からだけど、軽くレクリエーションをしよう!」

「レクリエーション?」

「そうだ! 親睦を深めるために、ちょっとした遊びをするのさ!」

 生徒たちはとても驚いていた。

 そして奏多があざけりながら俺に問う。

「私たちと遊ぶっていうのは、どういうことかお分かりなんでしょうね?」

「ああ。もちろんさ! 全力で遊ぼう!」

 奏多の言う通りだ。殺人級の力を持つS級クラスの能力者と遊ぶということは、普通の人間ではとても考えられないこと。

 だから容易く口にしていい言葉ではない。

 つまり彼らと全力で遊ぶと言うことは、死を覚悟するという意味になるってことだ。

「はあ!? 暁センセーマジ、イカれてんじゃん! それともアタシたちのこと舐めてんの?」

「もちろん舐めてないし、俺はイカれてない! 俺は俺なりにお前たちと仲良くなりたいんだよ。さあみんな着替えたら、グラウンドに集合だ!」

 そして俺は一人グラウンドへ向かった。
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