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第2章 変動

第14話ー③ ほんとうのじぶん

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 僕は朝食を摂るために食堂へ向かっていると、その途中で優香を見つけた。

 優香はとても深刻そうな顔で、窓の外を見ている。

「何かあったのかな……」

 僕は心配で優香に声を掛けた。

「おはよう、優香。どうしたの? 何かあった??」

 優香は少しびくっと肩を震わせてから、何かをごまかすようにいつもの笑顔で答えた。

「おはようございます、桑島君。なんでもないですよ! 早起きしすぎて、ちょっと眠たいなって思っただけです」

 眠たいだけで、そんな顔になるものかな。

 僕はそんな疑問を抱いたが、それ以上は言及しなかった。

「そう? それならいいけど……」
「では、また食堂で」

 そういって優香は食堂に向かって歩いて行った。

 一体何があったんだろう……。何か悩み事でもあるのかな。

 僕は優香の後姿を見ながら、そんなことを思った。

「僕も食堂にいこうかな」

 そして僕は食堂を目指し、再び歩き出す。



 それから何もなく1か月が過ぎ、優香と狂司はクラスになじんできた。

 クールで賢い狂司は他の生徒と対等に会話するも正論を突きつけて、たまに一部の生徒と衝突したりしていた。

 そして運動も勉強も完璧で、狂司とは対照的に人当たりの良い優香はクラスの人気者になっていた。

「優香ちゃん、聞いてよー! この間、まゆおがさ!!」
「優香殿、実は最新のアニメが!!」
「優香、これ。私のおすすめ」

 みんなの話を親身になって聞く優香。そんな優香に甘える女子生徒たち。その姿はなんだか仲の良い姉妹のような光景だった。

 しかし優香は時折、辛そうな顔をしているのを俺は知っていた。

 優香が無理をしているように感じた俺は、優香を職員室に呼び出した。

「優香、大丈夫か? 無理はしていないか??」
「何のことでしょう? 私は無理なんてしてないですよ。みんなのことも本当に大好きですし。みんな仲良くしてくれて、すごく嬉しいです!」
「そうか……」
「先生も私なんかを気にかけていただき、ありがとうございます。ご心配をおかけして、本当にすみません」

 そう言って、深々と頭を下げる優香。

「いや、無理をしてないのならいいんだよ。でもな、なんかたまに辛そうな表情をするから気になってな……」
「そうでしょうか……?」
「ああ。今は言いたくないならいい。でもいつか必ずお前のことを話してくれよ。俺は何があってもお前の味方でいるから」

 その言葉を聞き、優香はいつもの笑顔で答えた。

「ありがとうございます」

 そして優香は職員室を出て行った。

「なあ、どう思う?」

 俺は自室に向かってそう言った。するとその扉が開き、そこからキリヤが出てくる。

「何かはありそうだね。でも話せない理由がありそうなのも確かかな」
「だよな……」
「気にはなる。でも変に深堀すると、良くないかもね」
「……そうだな。うーん。とりあえず俺は見守ることにするよ。何か起こりそうなときにすぐ動ける準備はしておく」
「じゃあ僕は近くでいろいろと探ってみようかな。もちろん深堀しない程度で」

 キリヤは顎に手をやりながら、そう答えた。

「よろしく頼むよ」
「うん! 任せてよ!」

 そう言ってキリヤはどや顔をして見せた。

「ごめんな。ほんとは俺が一人で何とかしなきゃいけないことなのに」

 俺が申し訳ないなといった顔をすると、キリヤは嬉しそうに答える。

「前にも言ったけど、僕は先生の力になりたいんだ。それに奏多に先生のことを頼まれているしね!」

 そう言って微笑むキリヤ。

「奏多がキリヤに……。そうか。ありがとな!」
「よし、じゃあ僕は部屋に戻るよ! そうそう。最近観葉植物たちの元気がないから、ちゃんと水やり忘れないでね!!」

 そう言うと、キリヤは職員室を出て行った。

「そういえば、今日はまだ水やりしてなかったな」

 俺は部屋にある観葉植物を見に行くと、キリヤの言う通り本当に元気がないように見えた。

 こんな変化に気が付けるなんて、キリヤはそれほどまでに植物のことが好きなんだろうな。

「もしかして植物と会話ができるとか……? まさかな。そんなわけないか!」

 それから俺は、部屋にあるキリヤからもらった観葉植物に水をやった。

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