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第2章 変動
第14話ー④ ほんとうのじぶん
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私は職員室を出て、まっすぐ自室に向かっていた。
「なんで……なんで……なんで……」
私はその言葉を何度も繰り返していた。
自室に着いた私は部屋の扉をしっかりと閉めたのを確認すると、その場でしゃがみこんだ。
「なんで……なんで……なんで……!!」
頭を抱えて髪をぐしゃぐしゃにしながら、私はそう呟き続ける。
私はうまくやっていたはずなのに、どうして先生は気が付いたの……。このままじゃ、ダメだ。もっとうまくやらなくちゃ……。そうじゃないと、またみんなに嫌われる……。もう一人は嫌なのに……。
「やらなくちゃ。……私なら、できる。大丈夫、大丈夫だから」
私はそう言いながら、震える身体を両手で抑える。
「はあ、はあ。落ち着け、私……」
そして私は呼吸を整え、鏡の前へ立つ。
「私は、一人じゃない」
そう言いながら、鏡に向かって、不自然な笑顔を作った。
「これでいい。これでいいんだよ」
私は優等生でみんなの人気者。そういう設定なんだから……。
そのまま優香はしばらくの間、鏡の前で作り笑顔をしながら立っていた。
僕が優香を探り始めて数日。観察していると優香は先生の言う通り、たまに辛そうな顔をしていた。でもそれはほんの一瞬の表情だから、よく見ていないと見逃してしまうけれど。
優香を観察しながら、そんなことを思っているとマリアが僕のもとにやってきた。
「キリヤ、聞いてほしいことがある」
「マリアが相談なんて、珍しいね。いいよ。どうしたの?」
「実は……」
マリア曰く、最近女子の生活スペースで怪奇現象的なことが起こっているそうだ。
その原因を探るために3日前の夜、女子生徒みんなで見回りをしたが、何も見つからなかったらしい。きっと何かの間違いだということになって、それ以上は何もしなかったようだ。
しかし昨晩、再び怪奇現象は起きた。
「深夜遅くに音がするの。ガチャンガチャンって」
「へえ。もしかして、何かの亡霊とか……」
僕が真剣な表情でそう言うと、
「こ、怖いこと、言わないで!」
そう言って涙目になったマリアは僕をたたく。
「ははは。ごめんごめん! ……でもみんなが不安で眠れないんじゃ、困るよね。ストレスにもなるだろうし」
「キリヤ、今夜見に来て」
「え!? 女子スペースへの侵入は、ルール違反なんじゃ……」
「いい。キリヤなら!」
「いいって……」
でも先生に見つかったとしても、理由さえちゃんと説明できれば、きっと許してくれそうだな。
まあ疚しい気持ちで女子スペースに入るわけじゃないし、後ろめたいことは何にもないよね。
「わかった。じゃあ今夜、調査に行くよ」
「うん。ありがとう」
「でもみんなには内緒だからね? 見つかったら、何を言われるか……」
特にいろはは大ごとにしてくれそうだ……。
「わかった」
マリアは胸の前で両手をきゅっと握り、そう返事をした。
そして僕は今夜、マリアに頼まれた怪奇現象の調査をすることになった。
その日の晩。夕食を終えた僕は、マリアの部屋に向かった。
もちろん誰にもばれないようにこっそりと。
僕はマリアの部屋の前につくと、小さくノックをする。
すると、中からマリアが出てきて、
「キリヤ、ありがとう。中にどうぞ」
そう言いながら、僕を部屋に招き入れてくれた。
それにしても、マリアの部屋に入るのはいつぶりだろう。施設に来てからは一度も来たことがなかったな……。
そんなことを思い、部屋に足を踏み入れて、部屋の中をぐるりと眺めた。
マリアの部屋は整理されており、きれいな部屋だった。
「マリアは一人でもちゃんとしているんだね」
部屋に入った第一声がそれだった。
「私はキリヤと違って、いらないものはおいてないから」
マリアはどや顔でそう言うが、マリアの言ういらないものというのが植物のことなのだとしたら、僕は反論せずにはいられない。
「植物はいらないものなんかじゃないよ!! 心を癒すために必要なものなんだからね!」
それを聞いたマリアは楽しそうに笑っていた。
「何か言ってくれよ……」
なんだかそう言う僕だけが子供っぽいように感じて、恥ずかしく思ってしまった。
そしてそれから僕は怪奇現象が起こるまでマリアの部屋で過ごした。
「なんで……なんで……なんで……」
私はその言葉を何度も繰り返していた。
自室に着いた私は部屋の扉をしっかりと閉めたのを確認すると、その場でしゃがみこんだ。
「なんで……なんで……なんで……!!」
頭を抱えて髪をぐしゃぐしゃにしながら、私はそう呟き続ける。
私はうまくやっていたはずなのに、どうして先生は気が付いたの……。このままじゃ、ダメだ。もっとうまくやらなくちゃ……。そうじゃないと、またみんなに嫌われる……。もう一人は嫌なのに……。
「やらなくちゃ。……私なら、できる。大丈夫、大丈夫だから」
私はそう言いながら、震える身体を両手で抑える。
「はあ、はあ。落ち着け、私……」
そして私は呼吸を整え、鏡の前へ立つ。
「私は、一人じゃない」
そう言いながら、鏡に向かって、不自然な笑顔を作った。
「これでいい。これでいいんだよ」
私は優等生でみんなの人気者。そういう設定なんだから……。
そのまま優香はしばらくの間、鏡の前で作り笑顔をしながら立っていた。
僕が優香を探り始めて数日。観察していると優香は先生の言う通り、たまに辛そうな顔をしていた。でもそれはほんの一瞬の表情だから、よく見ていないと見逃してしまうけれど。
優香を観察しながら、そんなことを思っているとマリアが僕のもとにやってきた。
「キリヤ、聞いてほしいことがある」
「マリアが相談なんて、珍しいね。いいよ。どうしたの?」
「実は……」
マリア曰く、最近女子の生活スペースで怪奇現象的なことが起こっているそうだ。
その原因を探るために3日前の夜、女子生徒みんなで見回りをしたが、何も見つからなかったらしい。きっと何かの間違いだということになって、それ以上は何もしなかったようだ。
しかし昨晩、再び怪奇現象は起きた。
「深夜遅くに音がするの。ガチャンガチャンって」
「へえ。もしかして、何かの亡霊とか……」
僕が真剣な表情でそう言うと、
「こ、怖いこと、言わないで!」
そう言って涙目になったマリアは僕をたたく。
「ははは。ごめんごめん! ……でもみんなが不安で眠れないんじゃ、困るよね。ストレスにもなるだろうし」
「キリヤ、今夜見に来て」
「え!? 女子スペースへの侵入は、ルール違反なんじゃ……」
「いい。キリヤなら!」
「いいって……」
でも先生に見つかったとしても、理由さえちゃんと説明できれば、きっと許してくれそうだな。
まあ疚しい気持ちで女子スペースに入るわけじゃないし、後ろめたいことは何にもないよね。
「わかった。じゃあ今夜、調査に行くよ」
「うん。ありがとう」
「でもみんなには内緒だからね? 見つかったら、何を言われるか……」
特にいろはは大ごとにしてくれそうだ……。
「わかった」
マリアは胸の前で両手をきゅっと握り、そう返事をした。
そして僕は今夜、マリアに頼まれた怪奇現象の調査をすることになった。
その日の晩。夕食を終えた僕は、マリアの部屋に向かった。
もちろん誰にもばれないようにこっそりと。
僕はマリアの部屋の前につくと、小さくノックをする。
すると、中からマリアが出てきて、
「キリヤ、ありがとう。中にどうぞ」
そう言いながら、僕を部屋に招き入れてくれた。
それにしても、マリアの部屋に入るのはいつぶりだろう。施設に来てからは一度も来たことがなかったな……。
そんなことを思い、部屋に足を踏み入れて、部屋の中をぐるりと眺めた。
マリアの部屋は整理されており、きれいな部屋だった。
「マリアは一人でもちゃんとしているんだね」
部屋に入った第一声がそれだった。
「私はキリヤと違って、いらないものはおいてないから」
マリアはどや顔でそう言うが、マリアの言ういらないものというのが植物のことなのだとしたら、僕は反論せずにはいられない。
「植物はいらないものなんかじゃないよ!! 心を癒すために必要なものなんだからね!」
それを聞いたマリアは楽しそうに笑っていた。
「何か言ってくれよ……」
なんだかそう言う僕だけが子供っぽいように感じて、恥ずかしく思ってしまった。
そしてそれから僕は怪奇現象が起こるまでマリアの部屋で過ごした。
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