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第3章 毒リンゴとお姫様
第21話ー② 眠り姫を起こすのは王子様のキス
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部屋に着くと、所長が中で待っていた。
「キリヤ君、よく来たね」
所長は笑顔で僕を迎えてくれた。
「所長、今日はありがとうございます」
そして僕も笑顔で返す。
「いや。いいんだよ。早速だが、調査資料はこっちだ」
そういって所長は隣にある小さな部屋に案内してくれた。
そこにはたくさんのファイルが机の上で山積みになっていた。
「ここにあるものは、好きに読んでくれて構わないよ。ちょっと散らかってはいるがね……」
所長は照れ笑いをしながら、そう言っていた。
「いえ、ご用意してくださっただけでもありがたいです。ありがとうございます!」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。じゃあ私は仕事があるからこれで。また帰るときは、ゆめか君に言ってくれ」
「はい!」
「それと冷蔵庫に飲み物があるから、好きに飲んでくれて構わないからね。他に何か不自由があれば、いつでも言ってくれ。じゃ、ごゆっくり」
そう言って、所長は部屋を出て行った。
「ふふっ。所長はキリヤ君がくるって聞いてから、わざわざ飲み物やお菓子を用意していたんだ。そんな姿を見て、本当に面倒見のいい人だなって思ったよ」
それを聞いた僕は、申し訳ない気持ちになった。
「そうだったんですね……所長は忙しい人なのに、なんだか申し訳ないです」
「いやいや。楽しそうに準備していたから、大丈夫だよ。暁君のこともそうだけど、所長は施設の子供たちのことはかなり気にかけているみたいでね。だから、何かしてあげたいって思ったのかもしれない」
「それはなんだか嬉しいです。僕たちみたいに施設にいる子供たちは、親や家族から愛情を受けずに育ってきたことがほとんどなんです。だからそう思ってくれている人がいるって本当にありがたいです」
「そうか。でも思っているのは所長だけじゃないよ。私も、ここの『グリム』の隊員たちもそうさ。君たちはいろんな人たちに愛されているんだよ」
ゆめかさんはそう言いながら、僕に優しく微笑んでくれた。
「ありがとうございます」
「じゃあ私も仕事に戻るよ。頑張ってね、キリヤ君」
「あ、はい! ありがとうございます」
それからゆめかさんは研究所に戻っていった。
「さて。早速、調査資料を読んでみようか」
そして僕は近くにあったファイルと手に取り、読み始めた。
『ポイズン・アップル』の実験が始まったのは、今から約8年前。
被検体は貧しい家庭の子供から選び、その家庭には協力金として政府から資金援助をしているようだった。
初めの被験者Aは『ポイズン・アップル』(以下、『チップ』と記載)を埋入後に2週間で暴走し、今も昏睡状態にある。
チップ自体に問題があるとわかった政府は被検体Aでの実験結果をもとにチップの改良を行った。
続いて2人目の被験体Bは改良後のチップを埋入し、しばらくは問題なく過ごしていたが、1年経った頃に体の不調を感じ始めたようだった。そして2年後にチップが暴走し、昏睡状態になった。
その後も同様にチップを改良しつつ、チップの起動限界を確認。現段階の研究結果では平均5年ほどでチップが暴走するという事実が確認されているようだ。
そして研究をしているうちに、チップを埋め込んだ子供たちの能力値が上昇することも判明した。もともとクラスCだった子供がA以上のクラス転換をしていることを確認している。
今回の調査結果から政府はこのチップを使いどんなことを企んでいるのか、その真実はまだわからなかった。
しかし一つだけわかることは、純粋な子供たちを利用した悪質な実験だということ。この実験は早くやめさせなければ、これからも多くの子供たちが犠牲となるだろう。
僕はその調査資料を読み、唖然とした。
「平均5年って……じゃあいろはにはもう時間がないってことなんじゃ……」
何としても早く救う方法を見つけ出さないと、調査資料にある子供たちのようにいろはも昏睡状態に――。
いや。そんなこと、絶対にさせない!!
「他の調査資料にチップを取り外す方法の記載があるかもしれない!」
そして僕は手当たり次第に調査資料を読み漁る。
しかしどの資料も状態や発生した事件のことは記されているが、取り出す方法は記されていない。
仮説として一撃で破壊するという方法はあったけれど、実際にその方法が正しいのかは誰にもわからない。
「もうお手上げなのかな……」
僕が途方に暮れていると、ふとあることを思い出す。
いろはを必ず救うと誓い、諦めずに頑張るまゆおの姿。
「まゆおは本気だ。だったら、僕もこんなところで諦めるわけにはいかないよね」
そして僕は再び、調査資料を読み漁っていった。
必ずヒントはあるはずなんだ。
僕はそれを見つけるまで、絶対に諦めるもんか!!
「キリヤ君、よく来たね」
所長は笑顔で僕を迎えてくれた。
「所長、今日はありがとうございます」
そして僕も笑顔で返す。
「いや。いいんだよ。早速だが、調査資料はこっちだ」
そういって所長は隣にある小さな部屋に案内してくれた。
そこにはたくさんのファイルが机の上で山積みになっていた。
「ここにあるものは、好きに読んでくれて構わないよ。ちょっと散らかってはいるがね……」
所長は照れ笑いをしながら、そう言っていた。
「いえ、ご用意してくださっただけでもありがたいです。ありがとうございます!」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。じゃあ私は仕事があるからこれで。また帰るときは、ゆめか君に言ってくれ」
「はい!」
「それと冷蔵庫に飲み物があるから、好きに飲んでくれて構わないからね。他に何か不自由があれば、いつでも言ってくれ。じゃ、ごゆっくり」
そう言って、所長は部屋を出て行った。
「ふふっ。所長はキリヤ君がくるって聞いてから、わざわざ飲み物やお菓子を用意していたんだ。そんな姿を見て、本当に面倒見のいい人だなって思ったよ」
それを聞いた僕は、申し訳ない気持ちになった。
「そうだったんですね……所長は忙しい人なのに、なんだか申し訳ないです」
「いやいや。楽しそうに準備していたから、大丈夫だよ。暁君のこともそうだけど、所長は施設の子供たちのことはかなり気にかけているみたいでね。だから、何かしてあげたいって思ったのかもしれない」
「それはなんだか嬉しいです。僕たちみたいに施設にいる子供たちは、親や家族から愛情を受けずに育ってきたことがほとんどなんです。だからそう思ってくれている人がいるって本当にありがたいです」
「そうか。でも思っているのは所長だけじゃないよ。私も、ここの『グリム』の隊員たちもそうさ。君たちはいろんな人たちに愛されているんだよ」
ゆめかさんはそう言いながら、僕に優しく微笑んでくれた。
「ありがとうございます」
「じゃあ私も仕事に戻るよ。頑張ってね、キリヤ君」
「あ、はい! ありがとうございます」
それからゆめかさんは研究所に戻っていった。
「さて。早速、調査資料を読んでみようか」
そして僕は近くにあったファイルと手に取り、読み始めた。
『ポイズン・アップル』の実験が始まったのは、今から約8年前。
被検体は貧しい家庭の子供から選び、その家庭には協力金として政府から資金援助をしているようだった。
初めの被験者Aは『ポイズン・アップル』(以下、『チップ』と記載)を埋入後に2週間で暴走し、今も昏睡状態にある。
チップ自体に問題があるとわかった政府は被検体Aでの実験結果をもとにチップの改良を行った。
続いて2人目の被験体Bは改良後のチップを埋入し、しばらくは問題なく過ごしていたが、1年経った頃に体の不調を感じ始めたようだった。そして2年後にチップが暴走し、昏睡状態になった。
その後も同様にチップを改良しつつ、チップの起動限界を確認。現段階の研究結果では平均5年ほどでチップが暴走するという事実が確認されているようだ。
そして研究をしているうちに、チップを埋め込んだ子供たちの能力値が上昇することも判明した。もともとクラスCだった子供がA以上のクラス転換をしていることを確認している。
今回の調査結果から政府はこのチップを使いどんなことを企んでいるのか、その真実はまだわからなかった。
しかし一つだけわかることは、純粋な子供たちを利用した悪質な実験だということ。この実験は早くやめさせなければ、これからも多くの子供たちが犠牲となるだろう。
僕はその調査資料を読み、唖然とした。
「平均5年って……じゃあいろはにはもう時間がないってことなんじゃ……」
何としても早く救う方法を見つけ出さないと、調査資料にある子供たちのようにいろはも昏睡状態に――。
いや。そんなこと、絶対にさせない!!
「他の調査資料にチップを取り外す方法の記載があるかもしれない!」
そして僕は手当たり次第に調査資料を読み漁る。
しかしどの資料も状態や発生した事件のことは記されているが、取り出す方法は記されていない。
仮説として一撃で破壊するという方法はあったけれど、実際にその方法が正しいのかは誰にもわからない。
「もうお手上げなのかな……」
僕が途方に暮れていると、ふとあることを思い出す。
いろはを必ず救うと誓い、諦めずに頑張るまゆおの姿。
「まゆおは本気だ。だったら、僕もこんなところで諦めるわけにはいかないよね」
そして僕は再び、調査資料を読み漁っていった。
必ずヒントはあるはずなんだ。
僕はそれを見つけるまで、絶対に諦めるもんか!!
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