白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

文字の大きさ
120 / 501
第4章 過去・今・未来

第26話ー④ 未来へ進む路

しおりを挟む
 俺は所長室に到着し、部屋の扉をノックする。

 部屋の中から、「どうぞ」と所長の声が聞こえた。

 それから俺は扉を開け、部屋に入った。

「やあ。よく来たね」

 所長はソファに座り微笑みながら、そう言った。

「今日はどんなご用件でしょうか?」

 俺がそう所長に問うと、

「まあそこに座りなさい」

 と所長は自分の正面に座るよう俺にそう言った。

 そして俺は所長に言われるがまま、ソファに腰を掛ける。

「そういえば、いいコーヒーが入ったんだ。君も飲むだろう?」
「は、はあ。では、いただきます」

 俺がそう言うと、所長は楽しそうに部屋の奥にある給湯室へ向かい、コーヒーの準備をしていた。

「さあどうぞ」
「ありがとうございます」

 そして所長から差し出されたコーヒーはとても香ばしい香りが広がっており、質のいいコーヒーだということがすぐにわかった。

 でもわざわざなぜ、こんないいものを用意して待っていたのだろうか。

 もしかして優香の飛び級の件のことを考え直してくれとでもいうつもりなんじゃ……

 じゃあ、もしかして……このコーヒーは承諾させるための人参か?

 一杯のコーヒーを前に、俺はいろんな考えが頭をよぎる。


「ん? どうしたんだい? 飲まないのかい?」

「い、いや。あの、少し考え事を……」

「そうか。それと一つ言っておくと、このコーヒーに深い意味はないよ。ただ君とコーヒーを飲みたいと思っただけのことさ。だから何も気にせずに飲んでくれ」

「は、はい」


 所長もそういっていることだし、信じてみようかな。

 そうして俺はようやくコーヒーに口をつけた。

「あ、おいしいですね」

 俺はそのコーヒーを口にして、純粋に思ったことを口にしていた。

「そうだろう。ようやく手に入れた代物なんだ! いやあ。やっぱり普段の安物とは比べ物にならないくらい、品のいい口当たりだ!! 香りも……本当に素晴らしい!」

 所長は幸せそうにコーヒーについて語っていた。

 普段は大人の雰囲気を出している所長だが、たまには無邪気に好きなものに浸りたいときだってあるんだなと俺はそう思った。

「そうだ。いつまでもコーヒーに浸っている場合じゃないですよ! 俺をここに呼んだ理由はなんですか!!」
「お! すまん、すまん!」

 所長はすっかり忘れていたようで、申し訳なさそうな顔を俺に向ける。

 それから所長は本題に入る。

「実は先日の優香君の飛び級の件だ」

 俺は息をのんだ。


「もしかして、やっぱり無しとかじゃないですよね?」

「いや。それはないさ。優香君の飛び級は認める。だが、それには条件がある!!」

「条件……?」

「ああ。高校3年生レベルの学力が備わっていることが確認できたら、飛び級は認める。まあ今の優香君ならば、十分だと思うがね」

「なるほど……でもそれってどうやって確認するんですか?」

「普段の授業で使用しているタブレットがあるだろう? それで高校3年生までの範囲を卒業するまでに終わらせること。それが条件だ」

「それって、かなり大変なんじゃ……」


 2年生の範囲とプラスアルファで3年生の範囲まで。

 しかも残り5か月ほどで終わらせることは可能なんだろうか。

「そうだ。これはかなりリスクのある挑戦だ。下手をすれば、剛君のように成りかねない」

 剛のように……。

 俺はその言葉に、気持ちが揺らぐ。

 キリヤたちには自分のやりたいことをやってほしいと思っているけれど、でも無理をして、能力が暴走してしまったら……

「君の返答次第で、優香君の飛び級の話がどうなるかが決まる。さあ選んでくれ。時間はないぞ」

 所長は真剣な顔で、俺に告げた。

 今決めろと所長はそう言っているんだと思った。

 そして俺はキリヤと職員室で話したことを思い出す。



 ――僕は先生みたいに教師にはなれなくても、違う方法で同じ境遇の子供たちを救いたいんだ!!



 あの時のキリヤは本気だった。

 そんなキリヤの進む路を俺は妨げたくない。

 優香には確かに負担になるかもしれないけれど、でもきっと俺やキリヤがそばにいれば大丈夫だ。同じ過ちは絶対に繰り返さない。

 俺は教師として、生徒たちの未来を支えるんだ。

 俺は決意を固めて、所長に答えた。

「俺は優香を信じます。剛のようにならないように、俺とキリヤで彼女を支えます!!」

 コーヒーを飲みながら、所長は微笑む。

「そうか。では、私も精一杯の手助けはしよう。4月に二人そろって、研究所に来てくれることを楽しみにしているよ」

 それから俺はコップのコーヒーを飲みほして、所長室を後にした。

「これからが大変だな。よし!!」

 そして俺は施設に戻った。



 施設に戻った俺は早速キリヤと優香を職員室に呼び出して、飛び級の条件に付いて話した。

「以上が所長から出された条件だ」

 それを聞いたキリヤは心配そうな表情を浮かべる。

 しかしそれとは反対にケロッとしている優香。

「優香、大丈夫そうか?」
「ふふふ。もちろん問題ありません。もともとお勉強は嫌いではないですし、キリヤ君との今後が関わっているならば、なおさら気合が入ります!!」

 そう言って、微笑む優香。

 その顔に不安はない様子だった。


「でも無理をしたら、剛みたいに……」

「そうだ。だからそうならない為に、俺とキリヤで優香を支えるんだ。優香一人に大きな負担を背負わせないさ。3人で分担すれば、少しは楽になるだろう?」

「先生の言う通りです。私は一人じゃない。だって、こういってくれる先生やキリヤ君がいる。だから私はできるって思うんです。キリヤ君、私を信じてください! ね?」


 そう言って、キリヤに微笑む優香。

「そう、だね。先生もいるし、僕も優香を信じるよ!!」

 優香の言葉でキリヤの不安は取り除けたようだ。

「頑張ろう、二人とも!!」
「「はい!!」」

 そしてキリヤと優香の進路が決まり、卒業に向けて動き出した。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

黄泉がえり陽炎姫は最恐魔王に溺愛される

彪雅にこ
恋愛
「ああ、私、とうとう死んでしまうのね…」 侯爵令嬢フェリシアは、命の危機に瀕していた──。 王太子の婚約者だったフェリシアは、何者かの手にかかり、生死の境を彷徨い黄泉へと渡りかける。奇跡の生還を果たしたものの、毒の後遺症で子を成せなくなったと診断され、婚約は破棄に。陽炎姫と呼ばれる日陰の存在となっていた。 まるで邸を追い出されるかのように隣国の好色伯爵の元へ嫁がされる途中で馬車が暴漢に襲われ、再び命の危険に晒されたフェリシアを救ったのは、悪魔のような山羊の頭蓋骨の面を被った魔王だった。 人々から最恐と怖れられる魔王は、なぜフェリシアを助けたのか…? そして、フェリシアを黄泉へと送ろうとした人物とは? 至宝と称えられながらも表舞台から陽炎のように消えた侯爵令嬢と、その強大すぎる魔力と特異な容姿により魔王と恐れられる公爵の、恋と成長の物語。 表紙は友人の丸インコさんが描いてくださいました!感謝♡

貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~

みちのあかり
ファンタジー
同じゼミに通う王子から、ありえないプロポーズを受ける貧乏奨学生のレイシア。 何でこんなことに? レイシアは今までの生き方を振り返り始めた。 第一部(領地でスローライフ) 5歳の誕生日。お父様とお母様にお祝いされ、教会で祝福を受ける。教会で孤児と一緒に勉強をはじめるレイシアは、その才能が開花し非常に優秀に育っていく。お母様が里帰り出産。生まれてくる弟のために、料理やメイド仕事を覚えようと必死に頑張るレイシア。 お母様も戻り、家族で幸せな生活を送るレイシア。 しかし、未曽有の災害が起こり、領地は借金を負うことに。 貧乏でも明るく生きるレイシアの、ハートフルコメディ。 第二部(学園無双) 貧乏なため、奨学生として貴族が通う学園に入学したレイシア。 貴族としての進学は奨学生では無理? 平民に落ちても生きていけるコースを選ぶ。 だが、様々な思惑により貴族のコースも受けなければいけないレイシア。お金持ちの貴族の女子には嫌われ相手にされない。 そんなことは気にもせず、お金儲け、特許取得を目指すレイシア。 ところが、いきなり王子からプロポーズを受け・・・ 学園無双の痛快コメディ カクヨムで240万PV頂いています。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ化企画進行中「妹に全てを奪われた元最高聖女は隣国の皇太子に溺愛される」完結

まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。 コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。 部屋にこもって絵ばかり描いていた私は、聖女の仕事を果たさない役立たずとして、王太子殿下に婚約破棄を言い渡されました。 絵を描くことは国王陛下の許可を得ていましたし、国中に結界を張る仕事はきちんとこなしていたのですが……。 王太子殿下は私の話に聞く耳を持たず、腹違い妹のミラに最高聖女の地位を与え、自身の婚約者になさいました。 最高聖女の地位を追われ無一文で追い出された私は、幼なじみを頼り海を越えて隣国へ。 私の描いた絵には神や精霊の加護が宿るようで、ハルシュタイン国は私の描いた絵の力で発展したようなのです。 えっ? 私がいなくなって精霊の加護がなくなった? 妹のミラでは魔力量が足りなくて国中に結界を張れない? 私は隣国の皇太子様に溺愛されているので今更そんなこと言われても困ります。 というより海が荒れて祖国との国交が途絶えたので、祖国が危機的状況にあることすら知りません。 小説家になろう、アルファポリス、pixivに投稿しています。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 小説家になろうランキング、異世界恋愛/日間2位、日間総合2位。週間総合3位。 pixivオリジナル小説ウィークリーランキング5位に入った小説です。 【改稿版について】   コミカライズ化にあたり、作中の矛盾点などを修正しようと思い全文改稿しました。  ですが……改稿する必要はなかったようです。   おそらくコミカライズの「原作」は、改稿前のものになるんじゃないのかなぁ………多分。その辺良くわかりません。  なので、改稿版と差し替えではなく、改稿前のデータと、改稿後のデータを分けて投稿します。  小説家になろうさんに問い合わせたところ、改稿版をアップすることは問題ないようです。  よろしければこちらも読んでいただければ幸いです。   ※改稿版は以下の3人の名前を変更しています。 ・一人目(ヒロイン) ✕リーゼロッテ・ニクラス(変更前) ◯リアーナ・ニクラス(変更後) ・二人目(鍛冶屋) ✕デリー(変更前) ◯ドミニク(変更後) ・三人目(お針子) ✕ゲレ(変更前) ◯ゲルダ(変更後) ※下記二人の一人称を変更 へーウィットの一人称→✕僕◯俺 アルドリックの一人称→✕私◯僕 ※コミカライズ化がスタートする前に規約に従いこちらの先品は削除します。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

処理中です...