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第4章 過去・今・未来
第27話ー① 過去からの来訪者
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ゆめかは子供たちの眠る部屋を見ていた。
「私がもう少し協力できていたら、もっと違う結果になっていたのかな……」
ゆめかがそんなことを呟いていると、所長がゆめかの隣にやってきた。
「ゆめか君? またここに来ていたのかい?」
「所長……。ええ。今日もここで自分の力のなさに打ちひしがれていたところさ」
そう言いながら、苦笑いをするゆめか。
「そんなことはないさ。君は十分すぎるくらい、『白雪姫症候群』の研究に協力してくれたじゃないか。君がいなければ、この症状のことは誰もわからず、我々は今日まで過ごしていたかもしれない。だから、君には感謝しかないよ」
所長はそう言いながら、ゆめかに微笑む。
しかし浮かない顔のゆめか。
「ゆめか君?」
「……もうすぐ運命の日がやってきます」
「そうか。そろそろなんだね」
「ええ」
「気が進まないかい?」
「これは仕方のないこと、なんですよね。だったら私は与えられた使命をこなすだけですよ」
そして二人はしばらくその場に留まっていた。
その頃の施設。
今日もいつものように授業が行われていた。
優香は飛び級卒業のためにいつもの倍以上の量のノルマをこなしていた。
当初はかなり負担がかかるのではと思っていたが、優香が授業時間外に無理をして勉強をしている様子は感じられない。
そもそも優香は通常ノルマを午前中には終えている為、午後は空き時間であることが多かったから、少しだけ勉強時間を増やしただけのことなのかもしれない。
何はともあれ、優香にとってそこまで負担になっていなくてよかったと俺は胸をなでおろした。
しかし油断は禁物だ。優香がキリヤとともに無事卒業できるよう、俺は最後までサポートする。もう俺はあの時と同じ過ちは繰り返さない!!
そんなことを思いつつ、俺は生徒たちを見守った。
そして午前の授業を終え、昼食時間となった。
生徒たちはお腹を満たすために食堂へ向かっていったが、優香だけは一人で教室に残っていた。
「優香。もうお昼だし、そのくらいにしよう」
「……」
俺の言葉が届いていないのか、優香が手を止めることはなかった。
「おーい、優香?」
よく見たら、優香はすごく集中しているようだった。
まあ優香が終わるまで、俺もここで待つことにしよう。
そう思い俺は椅子に腰を掛けたまま優香を見守る。
それにしてもすごい集中力だ。俺なんて腹が減ったら、すぐに集中力が切れるんだけどな……やっぱり勉強ができるやつって、集中力が違うのかもしれない。
そんなことを考えていると、なかなか来ない俺たちを心配したのかキリヤが教室にやってくる。
「優香、まだやってたの? このままじゃ、先生が腹ペコで倒れちゃうよ」
すると、キリヤの声に反応した優香は手を止めた。
「あれ? 今、何時ですか?」
キリヤは教室に掛かっている時計を見ながら、「13時5分」と答えた。
「嘘!?」
「本当だよ。ほら、ご飯食べに行くよ? ちゃんと食べないと勉強効率が落ちるからね」
「そうですね」
そう言って立ち上がる優香。
俺が声を掛けた時はまったく反応しなかったのに、キリヤの一言でこんなに簡単に動くなんて……
次からはキリヤに声を掛けてもらおうと俺はそう思った。
そして俺と優香、キリヤは少し遅い昼食を摂ることになった。
昼食後、俺たちは午後の授業を再開した。
変わりない毎日のようで少しずつこの施設も変化をしている。
最近の変化は優香の勉強量だけではなく、シロも授業に参加するようになったことだ。
そんなことを考えつつ、俺はシロに目を向ける。
そして慣れない手つきでタブレットを操作するシロの姿があった。
「シロ、大丈夫か?」
「はい……たぶん」
「困ったら、いつでも言えよ」
そして頷くシロ。
マリアもそんなシロの様子を優しい眼差しで見守っていた。
最近のマリアはシロに付きっ切りと言うわけではなく、求められたら少しだけサポートをするようにしているようで、生活のほとんどをシロの自主性に任せているそう。
そのおかげもあってか、シロは一人でいろんなことができるようになっていた。
お皿洗いも上手だし、教室の掃除もすごくきれいで丁寧だ。そして勉強も覚えが早く、どんどん学力レベルを上げている。
俺はシロがこの先、どんな大人になっていくのかがとても楽しみだった。
これが親心と言うやつなんだろうか……。
そんなことを考えつつ、俺は微笑んでいたのかもしれない。
14時を過ぎると大体の生徒たちがノルマを終えて、教室を出て行った。
14時45分。教室に残るのは優香とまゆお、シロの3人だった。
優香はまた時間をオーバーしてしまいそうだったので、昼食後キリヤに午後の授業が終わる時間になったら、教室に来るよう頼んでおいた。
そしてシロは15時前にはノルマを終えて教室を出て行き、残ったまゆおと優香は時間いっぱいまで勉強を続けていた。
それから終了時間になるとまゆおは今日のノルマを終えて、ササッと教室を出て行った。
そしてやはり優香は予想通り、時間になっても手を止めることはなかった。
15時を過ぎてから何度か声はかけたけれど、やはり俺の声は届かず……
「キリヤを待つしかないのかな」
俺は黙々と勉強する優香を見つめつつ、キリヤが優香を迎えに来るのを待つことにした。
それからしばらくしてキリヤが教室へやってきた。
「優香、時間だよ。今日はもうおしまい」
「もうそんな時間でしたか。集中していると時間はあっという間ですね」
そう言いながら、身体を伸ばす優香。
「今日は捗った?」
キリヤの問いに、笑顔で返す優香。
「今は高3の夏くらいの範囲ですね! いいペースで来ていますよ!」
「さ、さすが……でも無理だけはしないでよ?」
「わかっています。私はキリヤ君と一緒に研究所へ行くのですから!」
「そうだよ。約束したんだから!」
そう言って、微笑みあう二人。
俺はそんな二人を見て、とても羨ましく感じた。
「なんだか、二人を見ていると羨ましいよ。本当の友達ってこういう関係なんだろうなってそう思うんだ。相手を支えて、支えられて。お互いがお互いを必要としている関係ってすごく理想的だよな。俺もそんな親友がほしかったな」
高校生の時にS級になった俺は、それからその時までの友人とは連絡を取っていない。だからもうきっと俺のことなんて覚えていないだろうな……。
そんなことを考えているとキリヤは俺にニコっと微笑み、
「何言ってるの? 僕と先生だって立派な友達でしょ? 今は生徒と教師って立場かもしれないけど、時間外は大切な友人だって僕は思ってるよ!!」
「キ、キリヤーー!!」
俺は嬉しさのあまりキリヤに抱き着く。
「ちょっ! これじゃ、いつもと逆じゃないか」
そんな俺たちのやり取りを優香は笑いながら見ていた。
「私がもう少し協力できていたら、もっと違う結果になっていたのかな……」
ゆめかがそんなことを呟いていると、所長がゆめかの隣にやってきた。
「ゆめか君? またここに来ていたのかい?」
「所長……。ええ。今日もここで自分の力のなさに打ちひしがれていたところさ」
そう言いながら、苦笑いをするゆめか。
「そんなことはないさ。君は十分すぎるくらい、『白雪姫症候群』の研究に協力してくれたじゃないか。君がいなければ、この症状のことは誰もわからず、我々は今日まで過ごしていたかもしれない。だから、君には感謝しかないよ」
所長はそう言いながら、ゆめかに微笑む。
しかし浮かない顔のゆめか。
「ゆめか君?」
「……もうすぐ運命の日がやってきます」
「そうか。そろそろなんだね」
「ええ」
「気が進まないかい?」
「これは仕方のないこと、なんですよね。だったら私は与えられた使命をこなすだけですよ」
そして二人はしばらくその場に留まっていた。
その頃の施設。
今日もいつものように授業が行われていた。
優香は飛び級卒業のためにいつもの倍以上の量のノルマをこなしていた。
当初はかなり負担がかかるのではと思っていたが、優香が授業時間外に無理をして勉強をしている様子は感じられない。
そもそも優香は通常ノルマを午前中には終えている為、午後は空き時間であることが多かったから、少しだけ勉強時間を増やしただけのことなのかもしれない。
何はともあれ、優香にとってそこまで負担になっていなくてよかったと俺は胸をなでおろした。
しかし油断は禁物だ。優香がキリヤとともに無事卒業できるよう、俺は最後までサポートする。もう俺はあの時と同じ過ちは繰り返さない!!
そんなことを思いつつ、俺は生徒たちを見守った。
そして午前の授業を終え、昼食時間となった。
生徒たちはお腹を満たすために食堂へ向かっていったが、優香だけは一人で教室に残っていた。
「優香。もうお昼だし、そのくらいにしよう」
「……」
俺の言葉が届いていないのか、優香が手を止めることはなかった。
「おーい、優香?」
よく見たら、優香はすごく集中しているようだった。
まあ優香が終わるまで、俺もここで待つことにしよう。
そう思い俺は椅子に腰を掛けたまま優香を見守る。
それにしてもすごい集中力だ。俺なんて腹が減ったら、すぐに集中力が切れるんだけどな……やっぱり勉強ができるやつって、集中力が違うのかもしれない。
そんなことを考えていると、なかなか来ない俺たちを心配したのかキリヤが教室にやってくる。
「優香、まだやってたの? このままじゃ、先生が腹ペコで倒れちゃうよ」
すると、キリヤの声に反応した優香は手を止めた。
「あれ? 今、何時ですか?」
キリヤは教室に掛かっている時計を見ながら、「13時5分」と答えた。
「嘘!?」
「本当だよ。ほら、ご飯食べに行くよ? ちゃんと食べないと勉強効率が落ちるからね」
「そうですね」
そう言って立ち上がる優香。
俺が声を掛けた時はまったく反応しなかったのに、キリヤの一言でこんなに簡単に動くなんて……
次からはキリヤに声を掛けてもらおうと俺はそう思った。
そして俺と優香、キリヤは少し遅い昼食を摂ることになった。
昼食後、俺たちは午後の授業を再開した。
変わりない毎日のようで少しずつこの施設も変化をしている。
最近の変化は優香の勉強量だけではなく、シロも授業に参加するようになったことだ。
そんなことを考えつつ、俺はシロに目を向ける。
そして慣れない手つきでタブレットを操作するシロの姿があった。
「シロ、大丈夫か?」
「はい……たぶん」
「困ったら、いつでも言えよ」
そして頷くシロ。
マリアもそんなシロの様子を優しい眼差しで見守っていた。
最近のマリアはシロに付きっ切りと言うわけではなく、求められたら少しだけサポートをするようにしているようで、生活のほとんどをシロの自主性に任せているそう。
そのおかげもあってか、シロは一人でいろんなことができるようになっていた。
お皿洗いも上手だし、教室の掃除もすごくきれいで丁寧だ。そして勉強も覚えが早く、どんどん学力レベルを上げている。
俺はシロがこの先、どんな大人になっていくのかがとても楽しみだった。
これが親心と言うやつなんだろうか……。
そんなことを考えつつ、俺は微笑んでいたのかもしれない。
14時を過ぎると大体の生徒たちがノルマを終えて、教室を出て行った。
14時45分。教室に残るのは優香とまゆお、シロの3人だった。
優香はまた時間をオーバーしてしまいそうだったので、昼食後キリヤに午後の授業が終わる時間になったら、教室に来るよう頼んでおいた。
そしてシロは15時前にはノルマを終えて教室を出て行き、残ったまゆおと優香は時間いっぱいまで勉強を続けていた。
それから終了時間になるとまゆおは今日のノルマを終えて、ササッと教室を出て行った。
そしてやはり優香は予想通り、時間になっても手を止めることはなかった。
15時を過ぎてから何度か声はかけたけれど、やはり俺の声は届かず……
「キリヤを待つしかないのかな」
俺は黙々と勉強する優香を見つめつつ、キリヤが優香を迎えに来るのを待つことにした。
それからしばらくしてキリヤが教室へやってきた。
「優香、時間だよ。今日はもうおしまい」
「もうそんな時間でしたか。集中していると時間はあっという間ですね」
そう言いながら、身体を伸ばす優香。
「今日は捗った?」
キリヤの問いに、笑顔で返す優香。
「今は高3の夏くらいの範囲ですね! いいペースで来ていますよ!」
「さ、さすが……でも無理だけはしないでよ?」
「わかっています。私はキリヤ君と一緒に研究所へ行くのですから!」
「そうだよ。約束したんだから!」
そう言って、微笑みあう二人。
俺はそんな二人を見て、とても羨ましく感じた。
「なんだか、二人を見ていると羨ましいよ。本当の友達ってこういう関係なんだろうなってそう思うんだ。相手を支えて、支えられて。お互いがお互いを必要としている関係ってすごく理想的だよな。俺もそんな親友がほしかったな」
高校生の時にS級になった俺は、それからその時までの友人とは連絡を取っていない。だからもうきっと俺のことなんて覚えていないだろうな……。
そんなことを考えているとキリヤは俺にニコっと微笑み、
「何言ってるの? 僕と先生だって立派な友達でしょ? 今は生徒と教師って立場かもしれないけど、時間外は大切な友人だって僕は思ってるよ!!」
「キ、キリヤーー!!」
俺は嬉しさのあまりキリヤに抱き着く。
「ちょっ! これじゃ、いつもと逆じゃないか」
そんな俺たちのやり取りを優香は笑いながら見ていた。
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