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第4章 過去・今・未来
第27話ー⑨ 過去からの来訪者
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私がこの施設に来て1か月が経った頃、施設に変化が訪れる。
私たちを施設に連れてきて以来、顔を出さなかった黒服の男が私たちの前に現れた。
「君たちの役目を果たす時が来た」
黒服の男がそう言うと、後ろから女の人が現れた。
その女の人は私たちを見つめて、不気味な笑顔で言う。
「この子たちが、1st?」
そして無言で頷く黒服。
「へえ。とりあえず3人か……残りの2人はまたあとで捕まえればいいわね」
その女の人はそう言って不敵な笑みを浮かべていた。
「それにしても。こんなに小さな子供には気の毒ねえ。でも私たちの目的達成のためだから、仕方ないわよね」
その表情にぬくもりはなく、私は直感的にこの人は危ないとわかった。
「まずは誰からにしようかな」
その女の人は私たち3人を交互に見つめる。
そして私に指をさした。
「ふふふ。あなたにしようかな。一番小さいし、泣きわめかれても面倒だからね♪」
私は恐怖で何も言葉を発することができず、そして危ないとわかっているのにその場から動くこともできなかった。
すると、竜也君が私の前に立つ。
「俺からにしてくれない? こいつ、怖がってるし。俺は平気だから」
「ふーん。まあ、いいけど。どうせ全員やることだしね」
その女の人はつまらなそうにそう答える。
「じゃあ、こっちへ来なさい」
そして黒服は竜也君を呼び寄せた。
「ここに立ちなさい」
そう言って女の人の前に立たせる黒服の男。
「うふふ。すぐに楽になるから」
女の人はニコッと微笑み、右手を天に向ける。
私はこれから何が起こるのかという不安から、ごくりと息を飲んだ。
しばらくすると、女の人の右手が光り出す。
「あなたのハートからはどんな果実が取れるのでしょうね」
そう言って、女の人は竜也君の胸に光る右手を突き刺した。
そしてその腕は、竜也君の身体を貫通していた。
驚きのあまり私は目を見開き、声を失っていた。
当の本人である竜也君も何が起きているのか、理解できていないようだった。
そして竜也君は恐怖の表情を浮かべ、私たちの方を見つめる。
「竜也君……」
紡ちゃんはそう言って、目に涙を浮かべて口を押えていた。
私はそんな竜也君を見て、恐怖の感情が浮かんでしまう。
私も同じようになるのかと……。
そして女の人は、竜也君の胸から腕を引き抜いた。
それから竜也君はそのままその場に倒れこんだ。そしてその姿を見る限り流血はしていないが、動く気配はないようだった。
私たちはそんな竜也君の姿に唖然としていた。
「これよ、これ! やっぱり綺麗ね。純粋な子供から取れる結晶は質が違うわ!」
そう言いながら、竜也君の中から取り出した透明な塊を光に照らしながら見ている女の人。
「じゃあ、次はどっちにする?」
見ていた結晶から目を離して、今度は私たちに視線を送る女の人。
私は竜也君の出来事を見てから、恐怖で身体が竦み動けずにいた。
「……今度は私!」
そして今度は紡ちゃんが私の前に立ってそう言った。
「つ、むぎちゃん……」
「あなただけは必ず生きて」
そう言って、紡ちゃんは私を抱きしめてくれた。
紡ちゃんのその暖かい心のおかげで、私の恐怖で固まっていた身体が動くようになった。
「あら、仲がいいのね! 愛情って感じ? ……そうだ! その小さい子を先に差し出してくれたら、あなただけでも助けてあげましょうか? その愛情には興味があるわあ」
そう言いながら、女の人は不気味な笑顔を見せる。
私が犠牲になれば、紡ちゃんが助かる……。
「紡ちゃん、私……」
「何言っているんですか!! そんなことできるわけないでしょ! たとえ私だけ生き残ったとしても、そんな生き残り方をしたら私は絶対後悔する! そんな人生は絶対に嫌だ! それにこの子は私の大切な仲間で友達なの。だから売ることなんてできるわけない!!」
紡ちゃんは恐怖で震えつつも、勇気を振り絞るように女の人へそう告げた。
「紡ちゃん……」
「そ。じゃあ、さっさと、消えて」
そして女の人は、紡ちゃんの胸に腕を突き刺す。
本当に一瞬の出来事だった。
女の人は腕を抜き、紡ちゃんはその場に倒れる。
確かに腕は胸を貫通していたはずなのに、胸には傷一つなかった。
「あらあ。これもなかなか綺麗じゃない?」
満足そうに紡ちゃんの中にあった結晶を見つめる女の人。
私は動かなくなった紡ちゃんに駆け寄り、何度も声を掛ける。
「紡ちゃん? ねえ、起きて! 紡ちゃん!!」
しかし紡ちゃんからの返事はなかった。
そんな私を見た女の人は、あざ笑いながら言う。
「無理、無理! もう心が死んでいるからね。生きていても、そこに転がっているのはただの抜け殻。心のない人形と一緒なのよ。だからもう2度と自分で起き上がることはないし、話すこともないわ!」
「そん、な……」
「大丈夫、あなたももうすぐ二人と同じようになれる。すぐに終わるから、安心しなさい♪」
そう言って女の人は私に近づく。
私は抵抗するかのように、その場から離れた。
「あら、逃げ場なんてないのに」
そして女の人は、ゆっくりと追ってくる。
逃げなくちゃ、どこかへ。
二人は私の代わりに犠牲になった。だったら、私は生きて生きて、生き抜かなくちゃ。
同じことが繰り返されないように、私はここから逃げなくちゃいけない。
でもどうやって……?
考えても仕方ないことなんだ。今はただ足を止めちゃダメなんだ。
そして私は施設の中を走り回った。
「そろそろ外でもいいはずなのに……なんで……」
私は体力の限界を迎える。
そしてその場に座り込んでしまった。
「もう、無理だ……私も、人形になるのかな。なんでこんな運命なの……。私、何も悪いことなんてしてないのに。ただ、普通に楽しく生きていたかっただけなのに……。もうお父さんにもお母さんにも会えないのかな。竜也君、紡ちゃん……また二人に会いたいよ……」
私の目には涙が溢れていた。
「泣かなくても、もうすぐ二人と同じようになれるわよ?」
私の目の前に、あの女の人が現れた。
狂気が満ち溢れたその表情に私は再び固まってしまう。
「さあ、あなたの果実はどんな色をしているのでしょうね」
そして女の人は、手を天に向ける。
この瞬間、私は生きたいと強く願った。
すると急に私の身体は光り出し、そこで意識を失ったのだった。
私たちを施設に連れてきて以来、顔を出さなかった黒服の男が私たちの前に現れた。
「君たちの役目を果たす時が来た」
黒服の男がそう言うと、後ろから女の人が現れた。
その女の人は私たちを見つめて、不気味な笑顔で言う。
「この子たちが、1st?」
そして無言で頷く黒服。
「へえ。とりあえず3人か……残りの2人はまたあとで捕まえればいいわね」
その女の人はそう言って不敵な笑みを浮かべていた。
「それにしても。こんなに小さな子供には気の毒ねえ。でも私たちの目的達成のためだから、仕方ないわよね」
その表情にぬくもりはなく、私は直感的にこの人は危ないとわかった。
「まずは誰からにしようかな」
その女の人は私たち3人を交互に見つめる。
そして私に指をさした。
「ふふふ。あなたにしようかな。一番小さいし、泣きわめかれても面倒だからね♪」
私は恐怖で何も言葉を発することができず、そして危ないとわかっているのにその場から動くこともできなかった。
すると、竜也君が私の前に立つ。
「俺からにしてくれない? こいつ、怖がってるし。俺は平気だから」
「ふーん。まあ、いいけど。どうせ全員やることだしね」
その女の人はつまらなそうにそう答える。
「じゃあ、こっちへ来なさい」
そして黒服は竜也君を呼び寄せた。
「ここに立ちなさい」
そう言って女の人の前に立たせる黒服の男。
「うふふ。すぐに楽になるから」
女の人はニコッと微笑み、右手を天に向ける。
私はこれから何が起こるのかという不安から、ごくりと息を飲んだ。
しばらくすると、女の人の右手が光り出す。
「あなたのハートからはどんな果実が取れるのでしょうね」
そう言って、女の人は竜也君の胸に光る右手を突き刺した。
そしてその腕は、竜也君の身体を貫通していた。
驚きのあまり私は目を見開き、声を失っていた。
当の本人である竜也君も何が起きているのか、理解できていないようだった。
そして竜也君は恐怖の表情を浮かべ、私たちの方を見つめる。
「竜也君……」
紡ちゃんはそう言って、目に涙を浮かべて口を押えていた。
私はそんな竜也君を見て、恐怖の感情が浮かんでしまう。
私も同じようになるのかと……。
そして女の人は、竜也君の胸から腕を引き抜いた。
それから竜也君はそのままその場に倒れこんだ。そしてその姿を見る限り流血はしていないが、動く気配はないようだった。
私たちはそんな竜也君の姿に唖然としていた。
「これよ、これ! やっぱり綺麗ね。純粋な子供から取れる結晶は質が違うわ!」
そう言いながら、竜也君の中から取り出した透明な塊を光に照らしながら見ている女の人。
「じゃあ、次はどっちにする?」
見ていた結晶から目を離して、今度は私たちに視線を送る女の人。
私は竜也君の出来事を見てから、恐怖で身体が竦み動けずにいた。
「……今度は私!」
そして今度は紡ちゃんが私の前に立ってそう言った。
「つ、むぎちゃん……」
「あなただけは必ず生きて」
そう言って、紡ちゃんは私を抱きしめてくれた。
紡ちゃんのその暖かい心のおかげで、私の恐怖で固まっていた身体が動くようになった。
「あら、仲がいいのね! 愛情って感じ? ……そうだ! その小さい子を先に差し出してくれたら、あなただけでも助けてあげましょうか? その愛情には興味があるわあ」
そう言いながら、女の人は不気味な笑顔を見せる。
私が犠牲になれば、紡ちゃんが助かる……。
「紡ちゃん、私……」
「何言っているんですか!! そんなことできるわけないでしょ! たとえ私だけ生き残ったとしても、そんな生き残り方をしたら私は絶対後悔する! そんな人生は絶対に嫌だ! それにこの子は私の大切な仲間で友達なの。だから売ることなんてできるわけない!!」
紡ちゃんは恐怖で震えつつも、勇気を振り絞るように女の人へそう告げた。
「紡ちゃん……」
「そ。じゃあ、さっさと、消えて」
そして女の人は、紡ちゃんの胸に腕を突き刺す。
本当に一瞬の出来事だった。
女の人は腕を抜き、紡ちゃんはその場に倒れる。
確かに腕は胸を貫通していたはずなのに、胸には傷一つなかった。
「あらあ。これもなかなか綺麗じゃない?」
満足そうに紡ちゃんの中にあった結晶を見つめる女の人。
私は動かなくなった紡ちゃんに駆け寄り、何度も声を掛ける。
「紡ちゃん? ねえ、起きて! 紡ちゃん!!」
しかし紡ちゃんからの返事はなかった。
そんな私を見た女の人は、あざ笑いながら言う。
「無理、無理! もう心が死んでいるからね。生きていても、そこに転がっているのはただの抜け殻。心のない人形と一緒なのよ。だからもう2度と自分で起き上がることはないし、話すこともないわ!」
「そん、な……」
「大丈夫、あなたももうすぐ二人と同じようになれる。すぐに終わるから、安心しなさい♪」
そう言って女の人は私に近づく。
私は抵抗するかのように、その場から離れた。
「あら、逃げ場なんてないのに」
そして女の人は、ゆっくりと追ってくる。
逃げなくちゃ、どこかへ。
二人は私の代わりに犠牲になった。だったら、私は生きて生きて、生き抜かなくちゃ。
同じことが繰り返されないように、私はここから逃げなくちゃいけない。
でもどうやって……?
考えても仕方ないことなんだ。今はただ足を止めちゃダメなんだ。
そして私は施設の中を走り回った。
「そろそろ外でもいいはずなのに……なんで……」
私は体力の限界を迎える。
そしてその場に座り込んでしまった。
「もう、無理だ……私も、人形になるのかな。なんでこんな運命なの……。私、何も悪いことなんてしてないのに。ただ、普通に楽しく生きていたかっただけなのに……。もうお父さんにもお母さんにも会えないのかな。竜也君、紡ちゃん……また二人に会いたいよ……」
私の目には涙が溢れていた。
「泣かなくても、もうすぐ二人と同じようになれるわよ?」
私の目の前に、あの女の人が現れた。
狂気が満ち溢れたその表情に私は再び固まってしまう。
「さあ、あなたの果実はどんな色をしているのでしょうね」
そして女の人は、手を天に向ける。
この瞬間、私は生きたいと強く願った。
すると急に私の身体は光り出し、そこで意識を失ったのだった。
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