白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

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第4章 過去・今・未来

第27話ー⑪ 過去からの来訪者

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  翌日、俺は生徒たちにシロが施設から出て行くことを話した。

「シロの帰る場所が分かったんだ。急だけど、2日後ここを出ることになった」
「え……でもシロが決めたことなら、仕方ないよね」

 マリアはそう言ってとても悲しそうな表情をしていた。

 しかしマリアが悲しがるのも無理はない。

 誰よりもシロと長い時間を過ごしていたマリア。きっとシロとの別れがさみしくないはずはないだろう。

「でもなんでそんなに急に?」

 まゆおは首をかしげながら問う。

「いろいろと都合があるみたいなんだ。でも俺からはちょっと説明できないんだよ。すまない……。でもこうするほかに、シロが幸せになる方法がないんだ」
「そう、ですか。そうなら、仕方がないのかもしれませんね」

 まゆおが引き下がると、今度はキリヤが俺に疑問を投げかける。

「もしかして、この間の襲撃事件と何か関係があるんじゃないの?」
「それは関係ない」

 俺はキリヤにきっぱりとそう答えた。

 しかし実際は全く関係がないわけではない。

 ここで少しでも関係があることを伝えれば、生徒たちに不安を抱かせてしまう。

 だから俺は生徒たちに真実を告げることはしなかった。

「関係ないなら、いいんだけどさ。もしかして、僕たちに気を使って施設を出るんじゃないかって思ったんだ。いろはみたいに……」

 キリヤの言葉に俯くまゆお。

「そんなことないです。家族が家で私の帰りを待っているので。だから心配しないでください」

 そう言って、微笑むシロ。

「家族が……そっか。じゃあ早く帰ってあげないとね。きっとお母さんもお父さんも、早くシロに会いたいよね」

 キリヤはそう言いながら、シロの頭を優しくなでる。

「キリヤ君、ありがとう。みんなもたくさん、たくさんありがとう。そしてマリアお姉ちゃん……本当のお姉ちゃんみたいに接してくれて、本当にありがとう。すごく楽しかったです! 私、絶対に一緒に過ごしたことを忘れないです!」
「シロ……」

 そしてシロを優しく抱きしめるマリア。

「マリアお姉ちゃん……。またすぐに会えるよ。だから……」
「うん」

 マリアはシロをしばらく抱きしめたままだった。

「まだ今日と明日がある。残りの時間を目いっぱい楽しもうな」

 俺の言葉に生徒たちは力強くうなずいた。

 それから俺たちはシロとの残りの時間を楽しんだ。



 そしてシロが旅立つ日。

 食堂で最後の朝食を済ませるシロと、その隣にはマリアがいた。

 いつものように仲睦まじく、会話を楽しんでいるようだった。

「おはよう。シロ、マリア!」
「おはようございます、先生!」
「おはよう、先生」

 笑顔で答えるシロとマリア。

「シロ、朝食後に迎えが来るからな」

 俺はシロにそう告げる。

「……わかりました!」

 俺はシロにあんなことを言ったが、本当は迎えなんかこない。俺の嘘に少し驚きつつ、シロはそれにのってくれた。

「じゃあそれまで、ゆっくり楽しめよ!」

 俺がそういうとシロは頷き、食事を再開した。



 それから数分後、俺はエントランスゲート前でシロを待っていた。

 そしてシロはマリアと共にやってきた。

「もういいのか?」

 俺の問いにシロは微笑み、「うん」と答えた。

「シロ、また会えるよね?」

 マリアは悲しそうにシロにそう問いかけた。

 その問いにシロは笑顔を作り、返答する。

「うん。必ずまた会えるよ。だからその日まで、待っていて」
「わかった……。ありがとう、シロ」

 マリアはそう言って優しくシロを抱きしめ、涙を流す。

 そしてシロの目にも涙が溢れていた。

 記憶を取り戻すためという理由で、シロはこの施設にやってきた。

 俺たちの目的はシロの記憶を取り戻すことだったはずなのに、いつの間にか俺たちはシロからたくさんのものをもらっていたのかもしれない。

 結局、救われたのは俺たちの方だったということだ。

 マリアはシロと出会って、大きく変わったと思う。

 いつもキリヤの後ろに隠れていたマリアが、自分から誰かのために行動するようになり、今は確かな愛情の注ぎ方を知ったんだ。

 そして俺も教師として大切なことを教わった……。

 シロとの出会いは、俺たちにとって必然的なものだったんだな。

「よし、じゃあ行こう。いいな、シロ?」

 俺はシロにそう告げる。

「うん」

 そしてシロはマリアと向かい合い、

「ありがとう」とマリアに微笑んだ。

 それからマリアはポケットから、小さな袋を取り出す。

 そしてその袋をシロに渡した。

「これは私からの贈り物。開けてみて?」

 シロはラッピングを解き、袋の中のものを取り出す。

 それは緑色の石の使っているブレスレットだった。

「再会の意味があるマラカイトを使ったブレスレット。私とお揃い」

 マリアは自分の手首にあるブレスレットを見せた。

「ありがとう、マリアちゃん! 絶対、絶対大切にするね! また会うときまで、必ず肌身離さず持っているから!」
「うん」

 そして俺たちはマリアに見送られながらゲートを出た。



「どこだと、能力が発動しやすい?」

 俺は歩きながら、シロに問う。

「なるべく広いところがいいです」
「そうか。確か、施設の裏に公園があったような……そこならどうだ?」
「いってみましょう」

 そして俺たちは施設の裏にある公園へ。

 公園と言っても特に遊具があるわけでもなく、ちょっとした砂場とベンチがあるだけの場所だった。

「このくらいの広さがあれば十分ですね!」
「そうか、良かったよ。……じゃあ、本当にお別れの時だな」
「先生、今までありがとうございました。施設で過ごした時間は楽しかったです」

 そう言って微笑むシロ。

「俺の方こそ、ありがとう。シロの言葉で俺はたくさん救われたよ。そして生徒たちもきっとシロのおかげで変わったと思うんだ」
「そうだといいな。……じゃあそろそろ行きます。こっちの私のこともよろしくお願いしますね」
「ああ」

 それからシロは公園の中央に向かった。

 そして足を止めたシロは目を閉じ、意識を集中しているようだった。

 するとシロの周りが光り出す。

「へえ。これが時間渡りか……」

 俺は目の前で起こる不思議な幻想に、思わず見とれていた。

 シロが一瞬こっちを振り返ったと思ったら、そこにいたはずのシロの姿はなくなっていた。

「シロ。元気でな……」

 シロを見送った後、俺はスマホを取り出し、とある場所に連絡を取った。

「さて、俺も行かなくちゃな」

 スマホをポケットにしまい、俺は公園を去った。
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