白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

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第4章 過去・今・未来

第30話ー② それは幸せな物語

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 奏多の帰国当日。僕は今日もいつものように先生の自室で過ごしていた。

「そろそろ家に着いた頃か……? いや、もしかしたらどこかで寄り道とか」
「そんなに気になるなら、空港まで迎えに行けばいいのに」

 僕は隣でソワソワする先生に呆れ声でそう告げた。

 どうやら昨晩に奏多が日本に帰国したという連絡があったらしい。それからずっと気になって仕方がないんだとか。

 でも恋人が帰国したなんて聞いたら、嬉しくてそんな行動を取ってしまうのもしょうがないよね。ま、僕にはわからない感覚だけどさ。

「他の日に外へ出かけるから、その時の為に迎えはやめることにしたんだ」
「そういうことね。外で長い時間一緒に過ごすために、省けるところは省こうと……」

 僕がニヤリと笑いながら問いかけると、

「ま、まあそれで大体あってるよ」

 先生はそう言って恥ずかしそうに答えた。

「相変わらず、先生はわかりやすいなあ」
「そ、そんなこと! ……あるかもしれないけど」

 先生は口を尖らせながら、そう答えた。

「あはは! まあそういうところも好きなんだけどさ」

 僕が笑いながらそう言うと、

「ありがとな、キリヤ!」

 そう言いながら、先生は万遍の笑みを浮かべた。

 先生ったら、本当に奏多に会えることが楽しみなんだな。

 先生の姿を見て、僕はそんなことを思っていた。

 すると急にブーッブーッと音を立てながら、机にある先生のスマホが振動した。

「先生、スマホ」
「あ、ああ。……お、奏多からだ!!」

 それから先生はスマホを持ち、奏多を迎えにエントランスゲートへ向かっていった。

「僕はまゆおたちでも呼んでこようかな」

 そして僕も先生の自室を出て、男子の生活スペースへと向かった。



 キリヤと別れて自室を出た俺は、エントランスゲートに急いで向かっていた。

 俺が奏多から帰国の話を聞いて、はや1か月……

「ようやく奏多に会えるんだな」

 そんなことを呟きながら、俺は心を躍らせていた。

 奏多の帰国の話を聞いた時から俺は奏多に会えることが楽しみで仕方がなくて、年甲斐もなくハイテンションだったと思う。

 それが原因で優香に怒られたり、キリヤに呆れられたりしたっけ……でも、そんなことはもういいんだ。だって俺は今日奏多に会えるんだからさ!!

 3月に奏多と別れてから、約9か月……あっという間ではあったけれど、奏多のいない日々はやはり物足りなく思っていた。

 でも今はその時の気持ちを吹っ飛ばすくらい、今は幸せな気持ちで満たされている。

 そんな幸せな気持ちに浸りつつ、俺はふと思った。

「ダサくなったとか、おじさんっぽくなったとか言われないよな……俺、そんなに変わってないはずだし」

 そんなことを呟きながら歩いていると、あっという間にゲート近くまで来ていた。そしてその場所からゲートの方に視線を向けると、そこには愛おしい人の姿があった。

「急がないとな」

 それから俺は小走りでゲート前へ向かった。

 そしてそんな俺の姿を見つけた奏多は、ゲートの向こうから笑顔で手を振っていた。

「先生!! お久しぶりです!」

 最後にあった時よりも伸びた髪のせいなのか、奏多が少し大人っぽくなったように感じた。そして俺は動くたびに揺れるその綺麗な黒髪を見て、きゅんとしてしまう。

「す、すまん、待たせたな」
「本当に待ちくたびれましたよ! この9か月、先生に会えるのを待ちわびていたんですから」

 そういって優しく微笑む奏多。その顔を見て、俺の顔が熱くなるのを感じた。

「俺も同じ気持ちだよ」

 俺はそう言いながら奏多に笑顔を向けた。

 それから俺は持っていたゲストパスを奏多に渡し、奏多はそれを使ってゲートを潜って保護施設の敷地内に入った。

 奏多はもともとここの卒業生だが、卒業した今は外部の人間として認識されている為、奏多は以前のようにここを通ることができない。でも俺が研究所から渡されているゲスト用のカードパスを使用することで特別に入場することが許される。

「ゲートが新しくなりましたね! ……でも中は何にも変わっていないですね」

 奏多は懐かしむように、施設の敷地内を歩いていた。

「そうだな。まあ多少直したところはあるけど、ほとんど奏多が居た時と変化はないかもな!」

 俺は奏多の隣を歩きながらそう答えた。

「こうやって懐かしむことができる環境があるって、とても素敵なことですね」
「ははっ。そうだな」

 そんな話をしながら、俺たちは建物の中へ入っていく。



 食堂に着くと、マリアと結衣が奏多を待っていた。

「奏多! 久しぶり!!」

 そう言ってマリアは奏多に駆け寄り、そしてマリアに続いて結衣も奏多に駆け寄った。

「マリアも結衣もお久しぶりですね。元気にしていましたか?」

 奏多は優しい笑顔を二人に向けていた。

「元気にしておりましたよ! 奏多殿はいかがお過ごしでしたか!」
「私も元気に過ごしておりましたよ。ふふっ。ありがとうございます! 結衣もマリアも相変わらずみたいでよかったです」

 それからキリヤとまゆおも食堂にやってきた。

「奏多、久しぶり」
「神宮寺さん、お久しぶりです」
「キリヤもまゆおもお久しぶりです」

 奏多は二人に笑顔でそう答えた。

「キリヤ……なんだか大人っぽくなりました?」
「そ、そう……かな? ありがとう!」
「それにまゆおはなんだか顔つきが変わりましたね。たくましくなったように思います」

 そんな奏多の言葉に照れるまゆお。

「あ、ありがとうございます」

 もしこんな時にいろはがいたら、まゆおのことを茶化していたんだろうなと俺はふと思った。

「先生? どうしたの?」

 キリヤは俺の顔を見て、そう言った。

「なんだか懐かしい感じがしてな……。まだ1年も経っていないはずなのに奏多や剛、それといろはがいたのが遠い昔のように感じてさ……」

 俺がそう言うと、

「そうだね。……僕ももうすぐここを出るし、またさみしくなっちゃうね」

 キリヤは少し寂しそうな表情をして、そう答えた。

「でも別れがあるってことは、新たな出会いがあるってことでもある。奏多や剛がここを出たあと、優香たちに出会った。そしてたくさんの思い出ができた。別れは確かにさみしく思うけど、新たな出会いのための別れなら、いいものなのかもしれないな」

 俺がそう言うと、キリヤは「うん」と微笑みながら答えた。

「あ、先生! ちょっと、ちょっと!」
「ん、なんだ?」

 急に結衣から呼ばれた俺はキリヤから離れて、結衣の元へと向かった。

 そしてそこでふと振り返ると奏多がキリヤに近寄り、耳元で何かを伝えている姿が見えた。

 2人は一体、何の話をしているんだろう。

 俺はそんなことを思いながら、2人の様子を見ていた。

「先生、ちゃんと聞いてますですか!」
「え、あ、ああ。何だっけ?」

 それから俺は結衣の話を聞きつつ、奏多とキリヤのことが気になって視線をチラチラとむけていた。

 そして奏多が笑顔でキリヤから離れると、心なしかキリヤの顔色が悪くなっているように見えた。

「奏多は楽しそうにしているし、何かの思い出話とかなんだろうな。それでキリヤの顔が青くなっているように見えたのはきっと俺の気のせいだな、うん」

 その後、生徒たちと俺は奏多と会話を楽しんだ。
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