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第7章 それぞれのサイカイ
第53話ー⑤ 風向き
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数日後。ネットの噂は収まるどころか、拡大していった。
暁はそんなことがあっても教室で涼しい顔をしながら授業を受ける真一の様子がつい気になってしまっていた。
暁がそわそわとしていると真一は何かを察したのか、
「先生、集中できないんだけど。何かあるなら言ってくれる?」
そう言って暁の方に顔を向けた。
「ああ、えっと……」
他の生徒たちが聞いている前で質問するべきか暁は悩み、すぐに真一の問いには答えられなかった。
「どうせ、ネットの噂のことを気にしているんでしょ。別に僕なら大丈夫だから」
そう言って、タブレットに視線を戻す真一。
「そう、か……」
それから暁は真一のその言葉を信じて、それ以上は気にしないことにした。
きっと、今の真一なら一人じゃないから乗り越えられるってことなのかもな――。
そんなことを思い、暁は真一の姿を見ながら微笑んだのだった。
* * *
授業後。真一としおんはいつものようにしおんの部屋で練習をしていた。
するとしおんのスマホに着信が入る。
「わ……父さんから……」
父からの電話になんとなく嫌そうな顔をするしおん。
きっと僕に気を遣っているのだろう――そう思った真一は、
「出たら? 僕は気にしないから」
しおんにそう言った。そしてしおんは渋々電話に応答した。
「はい。もしもし……ああ、大丈夫だよ。は? ネットニュース?? あんなのガセネタ……え、あやめたちが? あ、ああ。わかった。じゃあ」
そして電話を切ったしおんはそのままスマホをいじる。
「何かあったの? あやめが何??」
「ああ……これか!!」
そう言って、スマホを真剣に見つめるしおん。
「はあ?? また好き勝手書きやがって!」
「またネットニュース??」
「ああ。『ASTER』のファンが、俺のせいであやめに悪影響になるとか……」
「え、何それ!?」
そして真一もしおんが見ているネットニュースを覗き見る。すると、そこには真一がしおんと音楽をやることであやめの兄であるしおんに迷惑が掛かるといった内容が書かれていた。
『真一だっけ? あの子のせいで『ASTER』もあやめも迷惑だよね』
『わかる~! あんなにあやめが太鼓判押してくれたのに、スキャンダルだらけとか、マジで裏切りだよね』
『しおん君もかわいそうだよね! 解散して一人で音楽活動やればいいのに!!』
ネットに出た噂が全て真実というわけではないけれど、それでもその噂を見て不快に思う人間が一定数いるという事なんだと真一はそう思った。
僕だけならまだしも、『ASTER』やしおんにも迷惑をかけてしまっているのが現状だ……僕はこのまましおんと音楽をやることが正解なんだろうか――と不安が押し寄せる真一。
「真一、大丈夫か? 顔色が悪いぞ?」
真一の顔を覗き込みながら、しおんはそう言った。
「う、うん」
「気にすんなよ! 俺は真一以外とやるなんて考えてないからな!」
「でも、僕の存在が『ASTER』の迷惑に……」
そして真一の肩に腕をそっと乗せて、肩を組むしおん。
「そうだとしても関係ない! 『ASTER』は『ASTER』。俺たちは俺たちだ! 迷惑だって思うなら、そんな噂を超えるくらいの大物になりゃいいだろ?」
そう言ってしおんは笑った。
(きっと僕一人だったらこの不安に押しつぶされて、それでもう諦めてしまっていたかもしれないな――)
真一はふっと笑いながら、
「……そうだね。うん。ありがとう、しおん」
しおんにそう告げたのだった。
「おっし! じゃあ練習再開だ!! 俺たちは世界一のミュージシャンになるんだからな!」
「ああ!」
そして真一たちは今日も大好きな音楽を奏でた。
暁はそんなことがあっても教室で涼しい顔をしながら授業を受ける真一の様子がつい気になってしまっていた。
暁がそわそわとしていると真一は何かを察したのか、
「先生、集中できないんだけど。何かあるなら言ってくれる?」
そう言って暁の方に顔を向けた。
「ああ、えっと……」
他の生徒たちが聞いている前で質問するべきか暁は悩み、すぐに真一の問いには答えられなかった。
「どうせ、ネットの噂のことを気にしているんでしょ。別に僕なら大丈夫だから」
そう言って、タブレットに視線を戻す真一。
「そう、か……」
それから暁は真一のその言葉を信じて、それ以上は気にしないことにした。
きっと、今の真一なら一人じゃないから乗り越えられるってことなのかもな――。
そんなことを思い、暁は真一の姿を見ながら微笑んだのだった。
* * *
授業後。真一としおんはいつものようにしおんの部屋で練習をしていた。
するとしおんのスマホに着信が入る。
「わ……父さんから……」
父からの電話になんとなく嫌そうな顔をするしおん。
きっと僕に気を遣っているのだろう――そう思った真一は、
「出たら? 僕は気にしないから」
しおんにそう言った。そしてしおんは渋々電話に応答した。
「はい。もしもし……ああ、大丈夫だよ。は? ネットニュース?? あんなのガセネタ……え、あやめたちが? あ、ああ。わかった。じゃあ」
そして電話を切ったしおんはそのままスマホをいじる。
「何かあったの? あやめが何??」
「ああ……これか!!」
そう言って、スマホを真剣に見つめるしおん。
「はあ?? また好き勝手書きやがって!」
「またネットニュース??」
「ああ。『ASTER』のファンが、俺のせいであやめに悪影響になるとか……」
「え、何それ!?」
そして真一もしおんが見ているネットニュースを覗き見る。すると、そこには真一がしおんと音楽をやることであやめの兄であるしおんに迷惑が掛かるといった内容が書かれていた。
『真一だっけ? あの子のせいで『ASTER』もあやめも迷惑だよね』
『わかる~! あんなにあやめが太鼓判押してくれたのに、スキャンダルだらけとか、マジで裏切りだよね』
『しおん君もかわいそうだよね! 解散して一人で音楽活動やればいいのに!!』
ネットに出た噂が全て真実というわけではないけれど、それでもその噂を見て不快に思う人間が一定数いるという事なんだと真一はそう思った。
僕だけならまだしも、『ASTER』やしおんにも迷惑をかけてしまっているのが現状だ……僕はこのまましおんと音楽をやることが正解なんだろうか――と不安が押し寄せる真一。
「真一、大丈夫か? 顔色が悪いぞ?」
真一の顔を覗き込みながら、しおんはそう言った。
「う、うん」
「気にすんなよ! 俺は真一以外とやるなんて考えてないからな!」
「でも、僕の存在が『ASTER』の迷惑に……」
そして真一の肩に腕をそっと乗せて、肩を組むしおん。
「そうだとしても関係ない! 『ASTER』は『ASTER』。俺たちは俺たちだ! 迷惑だって思うなら、そんな噂を超えるくらいの大物になりゃいいだろ?」
そう言ってしおんは笑った。
(きっと僕一人だったらこの不安に押しつぶされて、それでもう諦めてしまっていたかもしれないな――)
真一はふっと笑いながら、
「……そうだね。うん。ありがとう、しおん」
しおんにそう告げたのだった。
「おっし! じゃあ練習再開だ!! 俺たちは世界一のミュージシャンになるんだからな!」
「ああ!」
そして真一たちは今日も大好きな音楽を奏でた。
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