白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

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第9章 新たな希望と変わる世界

第70話ー① 残された子供たち

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 エントランスゲート前。

 トランクケースを片手に奏多はニヤリと笑い、エントランスゲートを見つめていた。

「うふふ。剛の教師っぷりをしっかりとこの目に焼き付けませんとね」

 そして暁さんから頼まれた、あの子のことを――

 それから奏多はスマホを取り出すと、

「もしもし? 今、エントランスゲートの前にいるのですが――」

 電話の向こうにいる相手へそう伝えたのだった。


 * * *


 暁が施設を出て2日目。S級保護施設はいつもとは違う日常が流れていた。

 食堂にて――。

 シーンとした食堂で剛は一人、食事を摂っていた。

「先生がいないだけでこんなに閑散とするものなんだな……」

 先生からここを任されているのに、俺って何もできないんだな――そう思いながら、食べる手が止まる剛。

「そういえば、水蓮の顔をあれからずっと見ていない気がする。たぶん先生に目を合わせないよう言われているんだろうな」

 ――でもこのままじゃ、水蓮はもう部屋から出てこれないんじゃ……なんでそんな約束をしたまま、先生は水蓮を残したんだろう。

「先生が無意味なことをするはずがない。きっと何か考えがあってのことなんだろうな」

 そしてご飯に箸をつける剛。すると、食堂の外から足音が聞こえる。

 剛はその音の方に視線を向けると、

「火山さん!! 大変です!!」

 織姫がそう言って息を切らしながら食堂へやってきた。

「大変って……何かあったのか?」
「ええ、実は……奏多ちゃんが!!」
「奏多が――?」



 織姫から話を聞いた剛は大急ぎでエントランスゲートに向かっていた。

「奏多がわざわざ……どうしたんだろう」

 剛がエントランスゲートに着くと、トランクケースを持った奏多がゲートの前に立っていた。

「もうっ! 遅いですよ、剛!!」
「悪いって! ほら、これ!」

 そう言って剛はゲスト用のパスを奏多に渡した。

「ありがとうございます!」

 剛からゲストパスを受け取った奏多は、そのゲストパスを使って、エントランスゲートを潜った。

「でもどうしたんだ? 急に施設に来るなんて。それに、先生は今――」
「ええ。先生から話は伺っております! そのうえで施設が今どんな様子か見に来たんですよ」
「そうだったのか」

 先生、奏多にも頼んでいたんだな――

 そう思いながら、剛はしゅんとする。

「それで? どうですか?」

 その言葉にはっとした剛は、

「どう、っていうのは?」

 首をかしげてそう言った。

「ちゃんと先生の言いつけ通りに、生徒たちをまとめられているかってことを聞いているんです」
「そ、それは……その」

 そう言いながら、目を泳がせる剛。

「はあ。そんなことだろうとは思っておりましたけれど」

 ため息交じりにそう言う奏多。

 この言い方は、きっと俺のことを不甲斐なく思ったからなんだろうな――

「はは、きついな……」
「あら? それは私がきつい女って言っているんですか?」
「あ、いや、そんな意味じゃ――」
「まあ剛いじりはこの辺にして……水蓮ちゃんの様子はどうなんですか?」

 奏多から水蓮の言葉が出るとは思っていなかった剛は、驚いた表情をする。

「水蓮のことも聞いているのか?」
「はい。私は先生からは水蓮ちゃんのことを頼まれていたので」
「そうだったのか……」

 きっと俺だけじゃ、心許ないって先生も思ったんだろうな――


「それで? どうなんですか??」

「俺もしばらく顔を見ていなくて……その、部屋から出てこないんだ。能力のことを気にしているんだと思う」

「食事はどうしているんですか?」

「毎日部屋まで持っていくけど、顔は見せてくれないんだ。でも空のトレーだけは部屋の外に置いてあるから、たぶんちゃんとご飯は食べているとは思うけど……」


 そう言って俯く剛。

「剛はなぜ、部屋に入らないのですか」
「え?」

 そう言って顔を上げた剛はとても驚いた表情をする。

「それだけ心配に思っていて、なぜ何もしないのですかと言う意味です」
「俺だって、何もしていないわけじゃ……」
「ご飯を運んで、出てこないからそこに置いたままですか……扉を開けて部屋に入ろうとは思わなかったんですか?」

 俺は先生と違って無効化の力がない。もしも水蓮と目が合ってしまったら――そんなことをふと思ってしまう剛。

「だ、だって、そうしたら……水蓮の能力が誤発動して、それで――」
「自分が石化するのが怖い、と」
「ち、違うっ!! 俺が石化したら、きっと水蓮も悲しむだろう! それに俺だって部屋に入ろうと思った事はあったさ! でも! でも……」

 ああ。そうだ。俺はきっと、水蓮の能力を恐れているんだ。SS級能力者に――

「まあ状況はわかりました。とりあえず建物に入りましょう? 久々に剛とゆっくりお話ししたいですから」

 奏多はそう言って微笑み、建物に向かって歩いていった。

「俺が暁先生みたいな教師になるのは、まだまだ遠い道のりなのかもしれないな……」

 そう呟き、剛は奏多の後を追ったのだった。
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