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第9章 新たな希望と変わる世界
第71話ー⑥ 捕らわれの獣たち 後編
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――その頃の篤志。
翔と別れた篤志は、1人で能力者の少年を相手にしていた。
「魔女様の悲願のために、僕は君たちをここで殺さなくちゃいけない。だから、死んで」
そう言って両手にためた電気を目の前にいる篤志に放つ少年。
「君が恵里菜の意思を継ぐものか。だったら、やっぱりここで君を止めるのは、僕の役割なんだろうね」
そしてその電気を躱す篤志。
「恵里菜は自分で最後を受け入れた。君にすべてを託したと言ってね」
「違うっ! 魔女様はお前たちに消されると言っていた。残されたビデオメッセージでそう言っていたんだ! だから僕は……お前を……お前たちを許さない!!」
少年がそう言って叫ぶと、床に電気が走る。
そして篤志が立つ床にも電気が及んでいた。
「おっと……今のは少し、痛かったかな」
そう言って微笑んで立つ篤志を見て、驚く少年。
「な、んで!? なんで僕の能力が効いていないんだ!!」
「君がここへ来ることは想定済みだったからね、ちょっと細工をしただけさ。と言っても、完全に防げたわけじゃないみたいだけど」
やれやれと言った顔をする篤志。
「細工……?」
「そうだよ。僕のもう一つの能力、『創造者』で、見えない全身ゴムスーツを作っていたのさ」
「そんな……」
「さて、電気が効かない私と君はどう戦ってくれるのかな?」
そう言ってにこりと微笑む篤志。そしてそんな篤志を見た少年は、手を振るわせて拳を握った。
ああ。きっとその感情は、怒りというのだろうな――
少年を見た篤志がそう思っていると、
「うわあああああああ!!!」
少年はそう言って、自身の身体に電気を纏わせて篤志に突っ込んでくる。
この子はここで終わりだろう――そう思った、篤志は向かってくる少年をまっすぐに見つめて、右手を伸ばした。
「心が壊れてしまう前に、君もここで消えてもらう――」
「ほたる! ダメです!! もうそれ以上は――!」
そう言って篤志の前に突然現れる奇抜な服装をした少女。そしてその少女は少年を真っ正面から受け止める。
「ダメです! これ以上やったら、ほたるも魔女様みたいに消えてしまいます! それに心だって!! 私はそんなの嫌です!! だから、もう!」
しかし身体に纏う電気を解除する様子のないほたる。
「このままじゃ、君も感電死しかねないが……?」
「いいです。ほたるを止められるのなら、それでいいです!」
目に涙をためてそう言う少女。
やれやれ。この子たちもまだ子供だという事だね――
そう思った篤志は、ほたるの首に手刀をくらわす。
そして意識が途切れたほたるは纏っていた電気を消失させて、そのまま倒れた。
「ほたる!? 大丈夫ですか? ほたる!!」
「大丈夫。ただ眠っただけだ」
篤志がそう言うと、ほっとする少女。
「君も『エヴィル・クイーン』にいた子だね」
「はい。でも魔女様がいない今、『エヴィル・クイーン』は意味を成しません。私は魔女様にこの子を……ほたるのことを頼まれていたから、ここにいます」
「そうか」
恵里菜の意思を受け継いだのはこの少女の方か――
そう思いながら、少女を見つめる篤志。
「あの、私達……」
「君たちがしたことは許されることじゃない。それはわかるね?」
篤志がそう言うと少女は俯いて、「はい」と言った。
随分、聞きわけがいいな――
「――だから君たちはその責任を取る必要がある」
「その通りです」
「そして君たちをこれからどうするかの権利は、私にあるわけだ」
「ええ」
「私達のところに来ないか。この少年と一緒に」
篤志が優しい声でそう言うと、少女はきょとんとする。
「……え?」
「君は恵里菜の元で薬の研究をしていただろう? その薬を今度は人の為になる薬にしよう」
「でも――!」
「じゃあここに残って、政府関係者に消されるという選択肢を君は取るのかい?」
篤志がニヤリと笑ってそう言うと、
「それは、嫌です」
少女は俯きながらそう答えた。
「じゃあ決まりだね」
そう言って篤志は微笑んだ。
「でも、なんで私の研究のことを知っていたのですか」
少女が不思議そうに篤志にそう尋ねると、
「――私には、未来がわかるからね」
篤志は笑いながらそう答えたのだった。
「あはは。あなたも魔女様と同じことを言うのですね」
少女はそう言って微笑む。
本当は、君をずっと前から知っていたからだよ。君の書いた論文を読み、君の言葉に私は心を打たれた。力のないものを救うために奇跡の力を授ける研究をしている君に。私もその一人だったから――
そんなことを思いながら、篤志は少女を見つめる。
「――さて、じゃあ私もそろそろ行かないとね」
「え、行くってどこにですか?」
「もちろん、もう1人の旧友と蹴りをつけるためだよ」
そう言って建物の方を見る篤志だった。
翔と別れた篤志は、1人で能力者の少年を相手にしていた。
「魔女様の悲願のために、僕は君たちをここで殺さなくちゃいけない。だから、死んで」
そう言って両手にためた電気を目の前にいる篤志に放つ少年。
「君が恵里菜の意思を継ぐものか。だったら、やっぱりここで君を止めるのは、僕の役割なんだろうね」
そしてその電気を躱す篤志。
「恵里菜は自分で最後を受け入れた。君にすべてを託したと言ってね」
「違うっ! 魔女様はお前たちに消されると言っていた。残されたビデオメッセージでそう言っていたんだ! だから僕は……お前を……お前たちを許さない!!」
少年がそう言って叫ぶと、床に電気が走る。
そして篤志が立つ床にも電気が及んでいた。
「おっと……今のは少し、痛かったかな」
そう言って微笑んで立つ篤志を見て、驚く少年。
「な、んで!? なんで僕の能力が効いていないんだ!!」
「君がここへ来ることは想定済みだったからね、ちょっと細工をしただけさ。と言っても、完全に防げたわけじゃないみたいだけど」
やれやれと言った顔をする篤志。
「細工……?」
「そうだよ。僕のもう一つの能力、『創造者』で、見えない全身ゴムスーツを作っていたのさ」
「そんな……」
「さて、電気が効かない私と君はどう戦ってくれるのかな?」
そう言ってにこりと微笑む篤志。そしてそんな篤志を見た少年は、手を振るわせて拳を握った。
ああ。きっとその感情は、怒りというのだろうな――
少年を見た篤志がそう思っていると、
「うわあああああああ!!!」
少年はそう言って、自身の身体に電気を纏わせて篤志に突っ込んでくる。
この子はここで終わりだろう――そう思った、篤志は向かってくる少年をまっすぐに見つめて、右手を伸ばした。
「心が壊れてしまう前に、君もここで消えてもらう――」
「ほたる! ダメです!! もうそれ以上は――!」
そう言って篤志の前に突然現れる奇抜な服装をした少女。そしてその少女は少年を真っ正面から受け止める。
「ダメです! これ以上やったら、ほたるも魔女様みたいに消えてしまいます! それに心だって!! 私はそんなの嫌です!! だから、もう!」
しかし身体に纏う電気を解除する様子のないほたる。
「このままじゃ、君も感電死しかねないが……?」
「いいです。ほたるを止められるのなら、それでいいです!」
目に涙をためてそう言う少女。
やれやれ。この子たちもまだ子供だという事だね――
そう思った篤志は、ほたるの首に手刀をくらわす。
そして意識が途切れたほたるは纏っていた電気を消失させて、そのまま倒れた。
「ほたる!? 大丈夫ですか? ほたる!!」
「大丈夫。ただ眠っただけだ」
篤志がそう言うと、ほっとする少女。
「君も『エヴィル・クイーン』にいた子だね」
「はい。でも魔女様がいない今、『エヴィル・クイーン』は意味を成しません。私は魔女様にこの子を……ほたるのことを頼まれていたから、ここにいます」
「そうか」
恵里菜の意思を受け継いだのはこの少女の方か――
そう思いながら、少女を見つめる篤志。
「あの、私達……」
「君たちがしたことは許されることじゃない。それはわかるね?」
篤志がそう言うと少女は俯いて、「はい」と言った。
随分、聞きわけがいいな――
「――だから君たちはその責任を取る必要がある」
「その通りです」
「そして君たちをこれからどうするかの権利は、私にあるわけだ」
「ええ」
「私達のところに来ないか。この少年と一緒に」
篤志が優しい声でそう言うと、少女はきょとんとする。
「……え?」
「君は恵里菜の元で薬の研究をしていただろう? その薬を今度は人の為になる薬にしよう」
「でも――!」
「じゃあここに残って、政府関係者に消されるという選択肢を君は取るのかい?」
篤志がニヤリと笑ってそう言うと、
「それは、嫌です」
少女は俯きながらそう答えた。
「じゃあ決まりだね」
そう言って篤志は微笑んだ。
「でも、なんで私の研究のことを知っていたのですか」
少女が不思議そうに篤志にそう尋ねると、
「――私には、未来がわかるからね」
篤志は笑いながらそう答えたのだった。
「あはは。あなたも魔女様と同じことを言うのですね」
少女はそう言って微笑む。
本当は、君をずっと前から知っていたからだよ。君の書いた論文を読み、君の言葉に私は心を打たれた。力のないものを救うために奇跡の力を授ける研究をしている君に。私もその一人だったから――
そんなことを思いながら、篤志は少女を見つめる。
「――さて、じゃあ私もそろそろ行かないとね」
「え、行くってどこにですか?」
「もちろん、もう1人の旧友と蹴りをつけるためだよ」
そう言って建物の方を見る篤志だった。
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