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第9章 新たな希望と変わる世界
第74話ー② アイドルでも役者でもステージの上では同じだから
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「なあ先生、いいだろう?」
「うーん。そうだな――」
凛子が食堂に着くと、剛と暁の会話が響いていた。
相変わらず声が大きいなあ。また狂司君と喧嘩勃発とかやめてよね――そんなことを思いながら凛子はため息を吐き、食べ物の並ぶカウンターへ向かった。
それから適当に食べ物をトレーに乗せた凛子は、織姫の近くに座る。
「相変わらず、剛君は賑やかですねえ」
「そうですね」
そう言って苦笑いをする織姫。
これは織姫ちゃんも同じことを思っていそうですね――
それから凛子は手を合わせて、食事を始める。
「そういえば、火山さんは少ししおん君に似ている気がします。しおん君もいつもああやって、真一君へ楽しそうに声を掛けていましたね」
「あはは。そうでしたね」
そして在りし日のしおんの姿を思い返す凛子。
『真一、今回の新曲のことだけど――!』
確かにしおん君も毎度毎度、騒がしかったなあ――
そう思いながら、ふふっと微笑む凛子。
「でも、凛子さんは火山さんには突っかからないんですね。しおん君に似ているのに」
「……まあ、しおん君はいじり甲斐があって楽しかったからかもですね☆ それに剛君って私達からしたら、結構な先輩ですし。こう見えて私は、上下関係は大事にするタイプなんです!」
「凛子さんって、意外と大人だなってところがありますよね。そういうところ、素直に尊敬します」
そう言って微笑む織姫。
「やめてくださいよお! そう言われるのは、ちょっと恥ずかしいです」
「うふふ」
そんなふうに思ってくれていたなんてね。織姫ちゃんの方がずっとしっかりしているし、ちゃんと自分の未来を見据えている。あまり口にはしないけど、陰でちゃんと努力をしていることを私は知っているんだから。私はそんな織姫ちゃんの方がすごいって思うよ――
そんなことを思いながら、織姫を見つめる凛子だった。
するとそこへ、
「なあ、2人にも確認しておきたいことがあるんだが……」
そう言って暁が剛を連れてやってくる。
「どうしたんですかあ?」
「実はだな――」
それから暁は、剛の要望を凛子と織姫に伝える。
「へえ。またレクを」
「今度は何をしようかって思いつかなくてさ。そしたら、剛が――」
「前回と同じでもいいんじゃないかって言ったわけだ!」
ドヤ顔でそう言う剛。
前回と同じって……自分からレクの提案をしておきながら、何をするかまでは考えるつもりはないってことだよね。これから教師になろうって人が、そんな考えなしで大丈夫なの――?
そんなことを思いながら、剛に冷めた視線を送る凛子。
「なぜそんなことを私たちに尋ねるのですか? ご自身の足りない頭でお考えになっては? あなたは仮にも教師でしょう??」
織姫はそう言って、暁を睨みつける。
「お、おう……そうだな」
「おっしゃる通りです」
そう言ってしょぼんとする暁と剛。
「それにまた同じレクリエーションって馬鹿ですか? 馬鹿ですよね?? 考えが短絡的すぎて、開いた口がふさがりませんよ」
「うっ……」
「はいはい。織姫ちゃん。それ以上本音を口にすると、先生が大変なことになるからやめてあげてください。お願いします☆」
そう言って織姫に笑顔を向ける凛子。
「ま、まあ、今日は凛子さんの笑顔に免じてこれくらいにしてあげます。もっとマシなレクリエーションの案を考えてきてください。それと、仕方がないから私も考えておきます」
織姫はそう言って顔を背けたのだった。
あらあら、素直じゃないこと――凛子はそう思いながら、微笑んでいた。
それから凛子は食事を終えて、食堂を後にしたのだった。
「今日の水蓮ちゃん当番は織姫ちゃんだったよね。部屋に戻ったら、SNSで宣伝でもしようかな」
そして自室に戻った凛子はSNSを開いた。
「まずはエゴサして、今の私がどうみられているか――」
それから凛子は、同じアイドルユニットのメンバーが自分のことをSNSに投稿していることを知る。
『ダンスレッスンを終えて、別のレッスン室を覗いてたら、凛子がリモートレッスンしているところを発見!』
その投稿と共に映る、ダンストレーナーと画面越しの凛子。
『そんな凛子を見て、すっごくやる気をもらった! 凛子にうちらも頑張ってるよって伝わるよう、頑張るっ♪』
『え! かなちゃん、凛子のレッスン見てたの? ずるい~! 今度は私も連れてってね♡ でも凛子を見てると、やる気出るのわかる~』
「これって……」
その投稿を見て行くと、メンバー同士で凛子についてそれぞれの想いを語っていた。
『凛子が最前線にいてくれるから、私は安心できてる。でも頼ってばかりは嫌! 隣に立てるようになりたいよね!』
『そうだね。今は離ればなれだけど、一緒のステージに立つ時までに、必ず胸を張れる存在になりたいね』
『ってか、またダンス上手になったよね! 私達のがダンス歴長いのに~!』
「……みんな。私、陰でひどいことをたくさん書いたのに。みんなは私にそんなことを思ってくれていたんだ」
しおん君が真一君を信じて音楽を楽しむ気持ちがなんとなく私にもわかった気がするな――
それから凛子はその投稿にコメントをした。
『ちょっと、ちょっと! 私のいないところで何を好き勝手に話しているんですかあ!』
『わ! 本人だ!!』『凛子、元気~? 早く会いたいよお』
「ふふふ。こういうことに気が付けるのも、きっとしおん君のおかげなのかな」
それから凛子はしばらくメンバーとSNSでやりとりをしていた。そしてそんな彼女たちのSNSでの会話を見ていたファンたちは、アイドルたちの仲睦まじい姿を目の当たりにして、以前にもまして彼女たちのとりこになっていたようで――
『りんりんだけ活躍してたイメージでメンバー間が不仲だと思ってたから、なんかホッとした!』
『もっと、こういう絡みみたい!!』
そんな言葉を添えられ、凛子たちのやりとりは拡散されていった。
「わあ。ただの何気ない会話をこんなに拡散してもらえるなんて」
経験がなかったことだったため、少し驚く凛子。
もっと早くにこうしていたら、よかったのかな。でも、今の私があるのは今までのことがあったからなんだよね。だから早いとか遅いとかはない。これからもっと良い関係を築いていけたらいい。これから成長していけたらいいんだ――
「アイドルになって良かったな。『白雪姫症候群』が覚醒してよかったな」
そう呟き、微笑む凛子だった。
「うーん。そうだな――」
凛子が食堂に着くと、剛と暁の会話が響いていた。
相変わらず声が大きいなあ。また狂司君と喧嘩勃発とかやめてよね――そんなことを思いながら凛子はため息を吐き、食べ物の並ぶカウンターへ向かった。
それから適当に食べ物をトレーに乗せた凛子は、織姫の近くに座る。
「相変わらず、剛君は賑やかですねえ」
「そうですね」
そう言って苦笑いをする織姫。
これは織姫ちゃんも同じことを思っていそうですね――
それから凛子は手を合わせて、食事を始める。
「そういえば、火山さんは少ししおん君に似ている気がします。しおん君もいつもああやって、真一君へ楽しそうに声を掛けていましたね」
「あはは。そうでしたね」
そして在りし日のしおんの姿を思い返す凛子。
『真一、今回の新曲のことだけど――!』
確かにしおん君も毎度毎度、騒がしかったなあ――
そう思いながら、ふふっと微笑む凛子。
「でも、凛子さんは火山さんには突っかからないんですね。しおん君に似ているのに」
「……まあ、しおん君はいじり甲斐があって楽しかったからかもですね☆ それに剛君って私達からしたら、結構な先輩ですし。こう見えて私は、上下関係は大事にするタイプなんです!」
「凛子さんって、意外と大人だなってところがありますよね。そういうところ、素直に尊敬します」
そう言って微笑む織姫。
「やめてくださいよお! そう言われるのは、ちょっと恥ずかしいです」
「うふふ」
そんなふうに思ってくれていたなんてね。織姫ちゃんの方がずっとしっかりしているし、ちゃんと自分の未来を見据えている。あまり口にはしないけど、陰でちゃんと努力をしていることを私は知っているんだから。私はそんな織姫ちゃんの方がすごいって思うよ――
そんなことを思いながら、織姫を見つめる凛子だった。
するとそこへ、
「なあ、2人にも確認しておきたいことがあるんだが……」
そう言って暁が剛を連れてやってくる。
「どうしたんですかあ?」
「実はだな――」
それから暁は、剛の要望を凛子と織姫に伝える。
「へえ。またレクを」
「今度は何をしようかって思いつかなくてさ。そしたら、剛が――」
「前回と同じでもいいんじゃないかって言ったわけだ!」
ドヤ顔でそう言う剛。
前回と同じって……自分からレクの提案をしておきながら、何をするかまでは考えるつもりはないってことだよね。これから教師になろうって人が、そんな考えなしで大丈夫なの――?
そんなことを思いながら、剛に冷めた視線を送る凛子。
「なぜそんなことを私たちに尋ねるのですか? ご自身の足りない頭でお考えになっては? あなたは仮にも教師でしょう??」
織姫はそう言って、暁を睨みつける。
「お、おう……そうだな」
「おっしゃる通りです」
そう言ってしょぼんとする暁と剛。
「それにまた同じレクリエーションって馬鹿ですか? 馬鹿ですよね?? 考えが短絡的すぎて、開いた口がふさがりませんよ」
「うっ……」
「はいはい。織姫ちゃん。それ以上本音を口にすると、先生が大変なことになるからやめてあげてください。お願いします☆」
そう言って織姫に笑顔を向ける凛子。
「ま、まあ、今日は凛子さんの笑顔に免じてこれくらいにしてあげます。もっとマシなレクリエーションの案を考えてきてください。それと、仕方がないから私も考えておきます」
織姫はそう言って顔を背けたのだった。
あらあら、素直じゃないこと――凛子はそう思いながら、微笑んでいた。
それから凛子は食事を終えて、食堂を後にしたのだった。
「今日の水蓮ちゃん当番は織姫ちゃんだったよね。部屋に戻ったら、SNSで宣伝でもしようかな」
そして自室に戻った凛子はSNSを開いた。
「まずはエゴサして、今の私がどうみられているか――」
それから凛子は、同じアイドルユニットのメンバーが自分のことをSNSに投稿していることを知る。
『ダンスレッスンを終えて、別のレッスン室を覗いてたら、凛子がリモートレッスンしているところを発見!』
その投稿と共に映る、ダンストレーナーと画面越しの凛子。
『そんな凛子を見て、すっごくやる気をもらった! 凛子にうちらも頑張ってるよって伝わるよう、頑張るっ♪』
『え! かなちゃん、凛子のレッスン見てたの? ずるい~! 今度は私も連れてってね♡ でも凛子を見てると、やる気出るのわかる~』
「これって……」
その投稿を見て行くと、メンバー同士で凛子についてそれぞれの想いを語っていた。
『凛子が最前線にいてくれるから、私は安心できてる。でも頼ってばかりは嫌! 隣に立てるようになりたいよね!』
『そうだね。今は離ればなれだけど、一緒のステージに立つ時までに、必ず胸を張れる存在になりたいね』
『ってか、またダンス上手になったよね! 私達のがダンス歴長いのに~!』
「……みんな。私、陰でひどいことをたくさん書いたのに。みんなは私にそんなことを思ってくれていたんだ」
しおん君が真一君を信じて音楽を楽しむ気持ちがなんとなく私にもわかった気がするな――
それから凛子はその投稿にコメントをした。
『ちょっと、ちょっと! 私のいないところで何を好き勝手に話しているんですかあ!』
『わ! 本人だ!!』『凛子、元気~? 早く会いたいよお』
「ふふふ。こういうことに気が付けるのも、きっとしおん君のおかげなのかな」
それから凛子はしばらくメンバーとSNSでやりとりをしていた。そしてそんな彼女たちのSNSでの会話を見ていたファンたちは、アイドルたちの仲睦まじい姿を目の当たりにして、以前にもまして彼女たちのとりこになっていたようで――
『りんりんだけ活躍してたイメージでメンバー間が不仲だと思ってたから、なんかホッとした!』
『もっと、こういう絡みみたい!!』
そんな言葉を添えられ、凛子たちのやりとりは拡散されていった。
「わあ。ただの何気ない会話をこんなに拡散してもらえるなんて」
経験がなかったことだったため、少し驚く凛子。
もっと早くにこうしていたら、よかったのかな。でも、今の私があるのは今までのことがあったからなんだよね。だから早いとか遅いとかはない。これからもっと良い関係を築いていけたらいい。これから成長していけたらいいんだ――
「アイドルになって良かったな。『白雪姫症候群』が覚醒してよかったな」
そう呟き、微笑む凛子だった。
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