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第9章 新たな希望と変わる世界
第76話ー② 結び
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「先生。今日はからあげ、あるといいね!」
「ああ、そうだな!」
暁は水蓮を連れて、食堂に向かっていた。
食堂に着いたら、織姫に奏多のことを聞かないとな――
そう思いながら、歩みを進める暁と水蓮。そして少し廊下を進んだところで、
「お、先生も水蓮も、偶然だな! 一緒に食堂までいこうぜ!」
剛に出会い、暁は3人で食堂に向かうことになった。
「剛君、ちゃんと勉強はしていますか?」
「おお、水蓮! そんなことを心配してくれるのか? 嬉しいなあ」
剛は笑顔でそう言って、水蓮の頭を撫でる。
「スイは心配してあげられる、素敵な子! なのです!!」
水蓮はえへんとしながら、剛にそう告げた。
「ああ、いい子いい子」
剛もすっかりお兄さんだな――そんなことを思いながら剛と水蓮を見つめる暁。
「それに、奏多ちゃんがいつも言ってるの! 剛君はちょっとお馬鹿だから、スイが助けなさいって!」
「奏多のやつ~! なんてことを水蓮に教えてるんだよ!!」
「ふふふ。だから、困ったらスイに何でも言ってね!」
水蓮と剛の会話を聞き、奏多の剛に対する接し方がなんとなく自分のそれと違うような気がする暁。
奏多と剛は相変わらずの関係なんだな。きっと古い付き合いだからこその関係性なんだろう。そう思うと、少しだけ羨ましいな――
暁が施設に来たとき、すでに剛は奏多と出逢っていた。だから剛は自分の知らない奏多を知っていることを暁は知っている。
でも、俺しか知らない奏多だって――!
そんなことを思う暁。
そしてふとあの時の所長の言葉――自分のことを後回しにしなくてもいい――を思い出す。
奏多だって、いつまでも待ってくれるわけじゃないんだろうな……俺はこのままでいいのか? いろんなことに片が付いたらって、それはいつになる? それまで奏多を待たせてもいいのか――?
「先生、難しい顔してる! どうしたのぉ?」
水蓮は暁の服の裾を掴みながら、心配そうな顔でそう言った。
「あ、いや。なんでもないよ!」
暁はそう言って笑った。
「まあどうせ、奏多に会えなくて寂しい!! みたいなことだろう、先生??」
そう言って剛はニヤニヤと笑っていた。
「そうなの? じゃあスイと一緒だね! スイも奏多ちゃんに会いたい!!」
「ははは。そうだな!」
水蓮はすっかり奏多のことを気に入ったみたいだな。2人の姿を見ているとまるで本物の親子みたいなんだよな。でも、奏多が母親か――
「なあ、水蓮。奏多がもし水蓮のママになったら、嬉しいか?」
「うん!」
満面の笑みでそう言う水蓮。
「そうか」
そう言って安堵の表情を浮かべる暁。
「どうしたんだ? 急に、そんな質問」
暁が唐突にしたその質問に、剛は首を傾げながらそう言った。
「あ、いや。なんだか奏多と水蓮を見ていると本当の親子みたいだなと思ってさ。それで聞いただけだ。特に深い意味はないよ」
「ふーん。そっか!」
でも剛の言う通りだよな。なんで俺は、いきなりそんなことを水蓮に――?
そう思いながら、怪訝な顔をする暁だった。
――食堂にて。
暁たちが食堂に着くと、凛子と織姫がすでに夕食を始めていた。
「凛子ちゃーん! 織姫ちゃーん!」
水蓮はそう言いながら、凛子たちの元に向かう。
「あらら、水蓮ちゃん! 私達と一緒に食べますかあ?」
「うん、食べるー!」
「ふふふ……じゃあこの私が、スーパーでデンジャラスな盛り付けをしてあげますね☆ 人呼んで……りんりんディナースペシャル!!」
「わーい!!」
水蓮は両手を上げて、嬉しそうにそう言った。
「ありがとな、凛子!!」
「いえいえ。ここにいる限り、出来ることをやっておきたかったので。じゃあ行きましょ!」
それから凛子は水蓮と手を繋ぎ、食べ物の並ぶカウンターへと向かった。
「じゃあ俺も」
そう言って剛もカウンターへと向かった。
「あなたはいいんですか?」
織姫は残っている暁にそう尋ねた。
「ああ、ちょっと織姫に話があるからな!」
「ふぇ!? わ、私に話……?」
暁の言葉を聞き、急に動揺する織姫。
織姫は、もしかして俺が説教でもすると思ってるのか? なんだろう、焦りというか動揺が半端ないような――?
「そ、そんな驚かなくてもいいんだぞ? そんなに大したことでもないしな!」
「別に驚いてなんていません! それで、話とは??」
気を取り直して、織姫は暁にそう問いかけた。
「ああ、えっとな。今度、奏多と2人で東京へ出かけようと思っていて――」
「は、はあ!? それってデ、デートってことじゃないですか!!」
あ、あれ。織姫って俺と奏多のことを知っている、よな――?
動揺する織姫を見て、首を傾げる暁。
「え? ま、まあそうなるな」
「ななな……なんで私に、そんなことを!!」
そう言って勢いよく立ち上がる織姫。
「ええ!? ま、まあ落ち着けって! まだ何も話していないだろう!?」
その言葉で冷静になった織姫は、
「……そうでした。それで? 出かけようと思っていて、何ですか?」
そう言って不満そうな顔で着席した。
「ああ。それで、その時に贈り物をしたいんだよ。俺がここを空けていた時に、水蓮の面倒を見ていてくれたことへのお礼にな」
「……なるほど。そうでしたか」
織姫はそう言いながら、静かに頷く。
「だから、その……奏多が欲しそうなものを織姫ならわかるかなって! 従妹だし、昔から知っているだろう?」
「……」
「お、織姫?」
「……あなたは馬鹿ですか。いえ、馬鹿でしたね」
「え?」
急に罵倒され始めたことに驚く暁。
あれ、俺何か間違えたか――?
「あの、えっと――」
「なんで、デートの時に渡すプレゼントを私に……」
そう言って俯く織姫。
「織姫……?」
「もう、なんでもないです!! それと、私も奏多ちゃんの欲しいものなんてわかりませんよ!!」
織姫はプンプンしながら、そっぽを向いてそう言った。
「そ、そうか……」
もしかして奏多のほしいものがわからないことに怒って……? プライドを傷つけられたとか思ったのかもしれないな。もっと慎重に聞くべきだったよ――
そう思いながら、未だにプンプンしている織姫の横顔を見ていた。
「ま、まあ仕方がないので、弦太にでも聞いておいてあげますよ! 仕方がないのでね!!」
「織姫~! ありがとう!!」
暁は顔の前で手を合わせてそう言った。
「ふんっ」
そして織姫は、そっぽを向いたままそう言ったのだった。
「ああ、そうだな!」
暁は水蓮を連れて、食堂に向かっていた。
食堂に着いたら、織姫に奏多のことを聞かないとな――
そう思いながら、歩みを進める暁と水蓮。そして少し廊下を進んだところで、
「お、先生も水蓮も、偶然だな! 一緒に食堂までいこうぜ!」
剛に出会い、暁は3人で食堂に向かうことになった。
「剛君、ちゃんと勉強はしていますか?」
「おお、水蓮! そんなことを心配してくれるのか? 嬉しいなあ」
剛は笑顔でそう言って、水蓮の頭を撫でる。
「スイは心配してあげられる、素敵な子! なのです!!」
水蓮はえへんとしながら、剛にそう告げた。
「ああ、いい子いい子」
剛もすっかりお兄さんだな――そんなことを思いながら剛と水蓮を見つめる暁。
「それに、奏多ちゃんがいつも言ってるの! 剛君はちょっとお馬鹿だから、スイが助けなさいって!」
「奏多のやつ~! なんてことを水蓮に教えてるんだよ!!」
「ふふふ。だから、困ったらスイに何でも言ってね!」
水蓮と剛の会話を聞き、奏多の剛に対する接し方がなんとなく自分のそれと違うような気がする暁。
奏多と剛は相変わらずの関係なんだな。きっと古い付き合いだからこその関係性なんだろう。そう思うと、少しだけ羨ましいな――
暁が施設に来たとき、すでに剛は奏多と出逢っていた。だから剛は自分の知らない奏多を知っていることを暁は知っている。
でも、俺しか知らない奏多だって――!
そんなことを思う暁。
そしてふとあの時の所長の言葉――自分のことを後回しにしなくてもいい――を思い出す。
奏多だって、いつまでも待ってくれるわけじゃないんだろうな……俺はこのままでいいのか? いろんなことに片が付いたらって、それはいつになる? それまで奏多を待たせてもいいのか――?
「先生、難しい顔してる! どうしたのぉ?」
水蓮は暁の服の裾を掴みながら、心配そうな顔でそう言った。
「あ、いや。なんでもないよ!」
暁はそう言って笑った。
「まあどうせ、奏多に会えなくて寂しい!! みたいなことだろう、先生??」
そう言って剛はニヤニヤと笑っていた。
「そうなの? じゃあスイと一緒だね! スイも奏多ちゃんに会いたい!!」
「ははは。そうだな!」
水蓮はすっかり奏多のことを気に入ったみたいだな。2人の姿を見ているとまるで本物の親子みたいなんだよな。でも、奏多が母親か――
「なあ、水蓮。奏多がもし水蓮のママになったら、嬉しいか?」
「うん!」
満面の笑みでそう言う水蓮。
「そうか」
そう言って安堵の表情を浮かべる暁。
「どうしたんだ? 急に、そんな質問」
暁が唐突にしたその質問に、剛は首を傾げながらそう言った。
「あ、いや。なんだか奏多と水蓮を見ていると本当の親子みたいだなと思ってさ。それで聞いただけだ。特に深い意味はないよ」
「ふーん。そっか!」
でも剛の言う通りだよな。なんで俺は、いきなりそんなことを水蓮に――?
そう思いながら、怪訝な顔をする暁だった。
――食堂にて。
暁たちが食堂に着くと、凛子と織姫がすでに夕食を始めていた。
「凛子ちゃーん! 織姫ちゃーん!」
水蓮はそう言いながら、凛子たちの元に向かう。
「あらら、水蓮ちゃん! 私達と一緒に食べますかあ?」
「うん、食べるー!」
「ふふふ……じゃあこの私が、スーパーでデンジャラスな盛り付けをしてあげますね☆ 人呼んで……りんりんディナースペシャル!!」
「わーい!!」
水蓮は両手を上げて、嬉しそうにそう言った。
「ありがとな、凛子!!」
「いえいえ。ここにいる限り、出来ることをやっておきたかったので。じゃあ行きましょ!」
それから凛子は水蓮と手を繋ぎ、食べ物の並ぶカウンターへと向かった。
「じゃあ俺も」
そう言って剛もカウンターへと向かった。
「あなたはいいんですか?」
織姫は残っている暁にそう尋ねた。
「ああ、ちょっと織姫に話があるからな!」
「ふぇ!? わ、私に話……?」
暁の言葉を聞き、急に動揺する織姫。
織姫は、もしかして俺が説教でもすると思ってるのか? なんだろう、焦りというか動揺が半端ないような――?
「そ、そんな驚かなくてもいいんだぞ? そんなに大したことでもないしな!」
「別に驚いてなんていません! それで、話とは??」
気を取り直して、織姫は暁にそう問いかけた。
「ああ、えっとな。今度、奏多と2人で東京へ出かけようと思っていて――」
「は、はあ!? それってデ、デートってことじゃないですか!!」
あ、あれ。織姫って俺と奏多のことを知っている、よな――?
動揺する織姫を見て、首を傾げる暁。
「え? ま、まあそうなるな」
「ななな……なんで私に、そんなことを!!」
そう言って勢いよく立ち上がる織姫。
「ええ!? ま、まあ落ち着けって! まだ何も話していないだろう!?」
その言葉で冷静になった織姫は、
「……そうでした。それで? 出かけようと思っていて、何ですか?」
そう言って不満そうな顔で着席した。
「ああ。それで、その時に贈り物をしたいんだよ。俺がここを空けていた時に、水蓮の面倒を見ていてくれたことへのお礼にな」
「……なるほど。そうでしたか」
織姫はそう言いながら、静かに頷く。
「だから、その……奏多が欲しそうなものを織姫ならわかるかなって! 従妹だし、昔から知っているだろう?」
「……」
「お、織姫?」
「……あなたは馬鹿ですか。いえ、馬鹿でしたね」
「え?」
急に罵倒され始めたことに驚く暁。
あれ、俺何か間違えたか――?
「あの、えっと――」
「なんで、デートの時に渡すプレゼントを私に……」
そう言って俯く織姫。
「織姫……?」
「もう、なんでもないです!! それと、私も奏多ちゃんの欲しいものなんてわかりませんよ!!」
織姫はプンプンしながら、そっぽを向いてそう言った。
「そ、そうか……」
もしかして奏多のほしいものがわからないことに怒って……? プライドを傷つけられたとか思ったのかもしれないな。もっと慎重に聞くべきだったよ――
そう思いながら、未だにプンプンしている織姫の横顔を見ていた。
「ま、まあ仕方がないので、弦太にでも聞いておいてあげますよ! 仕方がないのでね!!」
「織姫~! ありがとう!!」
暁は顔の前で手を合わせてそう言った。
「ふんっ」
そして織姫は、そっぽを向いたままそう言ったのだった。
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