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幕間
第77話ー① 物語はハッピーエンドがいいよね!
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『ポイズン・アップル』の事件が解決し、速水いろはは実家に戻ることになった。
――速水家の前。
「じゃあ、速水さん。元気でね」
いろはのお世話係をしていた角田尚之は、目を潤ませながらいろはにそう言った。
「ああ、はい! でも、なんで角田さんが泣いてんの?」
やれやれと言った顔でそう言ういろは。
「だって……速水さんとあんなに一緒に居たのに、もう会えなくなるなんて――僕は、僕は――!」
「ま、まあ。また遊びに行くから! だから、泣かないでよ?」
「ああ、そうだね……」
そして目の涙を拭う角田。
「じゃあ気を取り直して……元気でね、速水さん」
角田が笑顔でそう言うと、
「はい! 角田さんも奥さんと子供たちと仲良くね!」
満面の笑みでいろははそう答えた。
「もちろんさ! それと、早く彼に会えるといいね」
「……うん」
いろはは弱気な声でそう頷く。
確かに会いたいよ、でも――
角田の言う彼と言うのは、いろはがずっと待たせている相手だからだった。
「自信、ないのかい?」
「そ、そんなこと――! って言いたいけど、ちょっとね。だいぶ待たせちゃってるしさ」
そう言って俯くいろは。
「大丈夫だよ。きっと。速水さんは素敵な女の子なんだから。それに、こんなに素敵な女の子を泣かせるのなら、その彼は見る目がないってことになるかな?」
「あはは! そうだね! うん!!」
そう言って微笑むいろは。
「うん。やっぱり速水さんは笑顔が似合う。じゃあ、僕は本当にそろそろ行くよ。元気でね! そしてまた会おう」
「はい!」
そして角田はいつもの施設へと戻っていった。
「さてと!」
それからいろはは自宅の扉の前に立つ。
角田さんには、一人で行くって言ったけど――
そう思いながら、いろはは胸に手を当てる。
「やっぱり緊張するなあ。でも、ここで弱音を吐くなんて、女が廃る! それにこれじゃ、まゆおに合わせる顔がないってもんよ!!」
そしていろははそう言って、その勢いのままインターホンを押した。
すると、インターホンから『はい』と言う女性の声を聞くいろは。
「アタシ……いろはだよ。ただいま、お母さん!!」
いろははそう言ったが、返事が返ってくることはなかった。
「え……まさかアタシ、カンドーされた感じ?」
そう思いながら、呆然とするいろは。すると、
「おかえりなさい!!」
そう言いながら、母が扉から現れる。
「うん、ただいま!!」
いろははそんな母に満面の笑みを向けたのだった。
――リビングにて。
「家の中は昔と変わんないね」
いろははリビングの椅子に腰かけながら、そう呟いた。
「そうね。いろはがいつ帰ってきてもいいようにって、昔のままにしておいたのよ」
「そうなんだ……ありがとね、お母さん」
いろははそう言って微笑む。
それからいろはの母は、いろはの前のソファに腰かけると、ゆっくりと口を開く。
「研究所から、いろはのことはいろいろと聞いてる」
「そっか……」
そりゃそうだよね。お母さんたち、どう思っただろう。アタシのせいで政府からお金をもらえなくなっちゃったんだよね――
いろはは母からどんな言葉を浴びせられても、仕方がないのかもしれないとそう覚悟した。しかし、
「ごめんね、私達が間違ってた」
いろはが母から伝えられたのは、そんな謝罪の言葉だった。
「いろはのことを宝だって言ったのに、結局はお金のために、いろはのことを――」
「ストーップ!!」
「え?」
言葉を遮られたことに、きょとんとする母。
「もう終わったことはいいじゃん! アタシはもう何ともないんだしさ! これまでがどうだったかじゃなくて、これからどうするかをお母さんと話したいんだよ」
いろははそう言って微笑んだ。
そして、過去のことはもうお互い水に流せばいいじゃん――いろははそう言った。
「いろは……ふふっ。知らないうちに、そんなことを思えるようになっていたんだね」
母はそう言って嬉しそうに笑った。
「うん! S級の施設でたっくさん学んだからさ!」
「そうなんだ。ねえ、いろは」
「ん?」
「いろははこれからの話がしたいって言ってくれたけど、でも私は聞きたい。いろはがS級施設でどんな生活を送っていたのかを」
母が笑顔でそう問うと、
「え~、もうしょうがないなあ。いいよ、教えてあげる!!」
いろはは満面の笑みで答えたのだった。
そしていろははS級施設での思い出を母に聞かせる。
クラスメイトとの出会い。その後、暁が来てから施設にいることがもっと楽しくなったことや『シロ』の名付け親になったこと。そして――
「また会おうって約束した人がいるんだ」
いろはは恥ずかしそうに母へそう言った。
「素敵だね。その子って、今はどうしているの?」
「それがさ! 聞いて驚かないでよ?」
「う、うん!」
そして母は、ごくりと息を飲む。
そんな母を見て、いろははニヤリと笑う。
「昔、お母さんが好きだった剣道少年がいたでしょ?」
「え、うん。まゆお君――だったかな?」
「そう! そのまゆお、君がいたんだよ! S級施設に!!」
自慢げにいろははそう告げる。
そして母はいろはのその言葉に目を丸くした。
「ええええ!? それで、それで? あ、もしかして……その、まゆお君が――?」
「えへへ……」
頬を赤くして頭を掻きながら、いろはは微笑んだ。
「へえ。そうなんだ。うふふ、やっぱりいろはは私の子ってことだよね」
ニヤニヤ笑いながらそう言う母。
「あはは、そうだね。まさかのまさかだったよ」
腕を組み、「うんうん」と頷きながらそう言ういろは。
「そうね……あ、でもまゆお君って、もう剣道は――」
「そう。最初に会った時、もう剣道はやっていなかったんだ。でも、また頑張ってた。だから今も、きっとね」
そう言って微笑むいろは。それを見た母は、
「あ、そうだ!!」
そう言ってスマホをいじり始める。
「どうしたの?」
そして母はスマホの画面をいろはに見せると、
「これ見て! もうすぐ剣道の大会があるの! もしもまゆお君が続けていたら、この大会に出場している可能性は高いんじゃない?」
嬉しそうにそう言った。
そこに書かれていたのは、『全国青少年剣道選手権大会』の文字――全国の剣道をやっている学生たちが出場する催し――だった。
これなら、確かにまゆおとあえるかもしれない――!
「……うん。行こう! この大会、観に行く!! まゆおに、会いたい!!」
「うふふ。じゃあ一緒に行こう。私もちゃんと挨拶しなくちゃね」
母はうっとりとした顔で頬に右手をあてる。
「それって、単にお母さんが会いたいだけなんじゃ――」
「そんなことないよ! いろはの母として、会うに決まっているでしょ!? いやねえ」
あ、その顔は……絶対にファンの顔だよ、お母さん――?
そんなことを思いながら、うっとりと微笑む母の顔を見るいろはだった。
――速水家の前。
「じゃあ、速水さん。元気でね」
いろはのお世話係をしていた角田尚之は、目を潤ませながらいろはにそう言った。
「ああ、はい! でも、なんで角田さんが泣いてんの?」
やれやれと言った顔でそう言ういろは。
「だって……速水さんとあんなに一緒に居たのに、もう会えなくなるなんて――僕は、僕は――!」
「ま、まあ。また遊びに行くから! だから、泣かないでよ?」
「ああ、そうだね……」
そして目の涙を拭う角田。
「じゃあ気を取り直して……元気でね、速水さん」
角田が笑顔でそう言うと、
「はい! 角田さんも奥さんと子供たちと仲良くね!」
満面の笑みでいろははそう答えた。
「もちろんさ! それと、早く彼に会えるといいね」
「……うん」
いろはは弱気な声でそう頷く。
確かに会いたいよ、でも――
角田の言う彼と言うのは、いろはがずっと待たせている相手だからだった。
「自信、ないのかい?」
「そ、そんなこと――! って言いたいけど、ちょっとね。だいぶ待たせちゃってるしさ」
そう言って俯くいろは。
「大丈夫だよ。きっと。速水さんは素敵な女の子なんだから。それに、こんなに素敵な女の子を泣かせるのなら、その彼は見る目がないってことになるかな?」
「あはは! そうだね! うん!!」
そう言って微笑むいろは。
「うん。やっぱり速水さんは笑顔が似合う。じゃあ、僕は本当にそろそろ行くよ。元気でね! そしてまた会おう」
「はい!」
そして角田はいつもの施設へと戻っていった。
「さてと!」
それからいろはは自宅の扉の前に立つ。
角田さんには、一人で行くって言ったけど――
そう思いながら、いろはは胸に手を当てる。
「やっぱり緊張するなあ。でも、ここで弱音を吐くなんて、女が廃る! それにこれじゃ、まゆおに合わせる顔がないってもんよ!!」
そしていろははそう言って、その勢いのままインターホンを押した。
すると、インターホンから『はい』と言う女性の声を聞くいろは。
「アタシ……いろはだよ。ただいま、お母さん!!」
いろははそう言ったが、返事が返ってくることはなかった。
「え……まさかアタシ、カンドーされた感じ?」
そう思いながら、呆然とするいろは。すると、
「おかえりなさい!!」
そう言いながら、母が扉から現れる。
「うん、ただいま!!」
いろははそんな母に満面の笑みを向けたのだった。
――リビングにて。
「家の中は昔と変わんないね」
いろははリビングの椅子に腰かけながら、そう呟いた。
「そうね。いろはがいつ帰ってきてもいいようにって、昔のままにしておいたのよ」
「そうなんだ……ありがとね、お母さん」
いろははそう言って微笑む。
それからいろはの母は、いろはの前のソファに腰かけると、ゆっくりと口を開く。
「研究所から、いろはのことはいろいろと聞いてる」
「そっか……」
そりゃそうだよね。お母さんたち、どう思っただろう。アタシのせいで政府からお金をもらえなくなっちゃったんだよね――
いろはは母からどんな言葉を浴びせられても、仕方がないのかもしれないとそう覚悟した。しかし、
「ごめんね、私達が間違ってた」
いろはが母から伝えられたのは、そんな謝罪の言葉だった。
「いろはのことを宝だって言ったのに、結局はお金のために、いろはのことを――」
「ストーップ!!」
「え?」
言葉を遮られたことに、きょとんとする母。
「もう終わったことはいいじゃん! アタシはもう何ともないんだしさ! これまでがどうだったかじゃなくて、これからどうするかをお母さんと話したいんだよ」
いろははそう言って微笑んだ。
そして、過去のことはもうお互い水に流せばいいじゃん――いろははそう言った。
「いろは……ふふっ。知らないうちに、そんなことを思えるようになっていたんだね」
母はそう言って嬉しそうに笑った。
「うん! S級の施設でたっくさん学んだからさ!」
「そうなんだ。ねえ、いろは」
「ん?」
「いろははこれからの話がしたいって言ってくれたけど、でも私は聞きたい。いろはがS級施設でどんな生活を送っていたのかを」
母が笑顔でそう問うと、
「え~、もうしょうがないなあ。いいよ、教えてあげる!!」
いろはは満面の笑みで答えたのだった。
そしていろははS級施設での思い出を母に聞かせる。
クラスメイトとの出会い。その後、暁が来てから施設にいることがもっと楽しくなったことや『シロ』の名付け親になったこと。そして――
「また会おうって約束した人がいるんだ」
いろはは恥ずかしそうに母へそう言った。
「素敵だね。その子って、今はどうしているの?」
「それがさ! 聞いて驚かないでよ?」
「う、うん!」
そして母は、ごくりと息を飲む。
そんな母を見て、いろははニヤリと笑う。
「昔、お母さんが好きだった剣道少年がいたでしょ?」
「え、うん。まゆお君――だったかな?」
「そう! そのまゆお、君がいたんだよ! S級施設に!!」
自慢げにいろははそう告げる。
そして母はいろはのその言葉に目を丸くした。
「ええええ!? それで、それで? あ、もしかして……その、まゆお君が――?」
「えへへ……」
頬を赤くして頭を掻きながら、いろはは微笑んだ。
「へえ。そうなんだ。うふふ、やっぱりいろはは私の子ってことだよね」
ニヤニヤ笑いながらそう言う母。
「あはは、そうだね。まさかのまさかだったよ」
腕を組み、「うんうん」と頷きながらそう言ういろは。
「そうね……あ、でもまゆお君って、もう剣道は――」
「そう。最初に会った時、もう剣道はやっていなかったんだ。でも、また頑張ってた。だから今も、きっとね」
そう言って微笑むいろは。それを見た母は、
「あ、そうだ!!」
そう言ってスマホをいじり始める。
「どうしたの?」
そして母はスマホの画面をいろはに見せると、
「これ見て! もうすぐ剣道の大会があるの! もしもまゆお君が続けていたら、この大会に出場している可能性は高いんじゃない?」
嬉しそうにそう言った。
そこに書かれていたのは、『全国青少年剣道選手権大会』の文字――全国の剣道をやっている学生たちが出場する催し――だった。
これなら、確かにまゆおとあえるかもしれない――!
「……うん。行こう! この大会、観に行く!! まゆおに、会いたい!!」
「うふふ。じゃあ一緒に行こう。私もちゃんと挨拶しなくちゃね」
母はうっとりとした顔で頬に右手をあてる。
「それって、単にお母さんが会いたいだけなんじゃ――」
「そんなことないよ! いろはの母として、会うに決まっているでしょ!? いやねえ」
あ、その顔は……絶対にファンの顔だよ、お母さん――?
そんなことを思いながら、うっとりと微笑む母の顔を見るいろはだった。
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