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アフターストーリー
第1話ー⑦ 決着
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「ありがとう、キリヤ君」
「父さん、キリヤでいいよ」
「あ、あはは! そうだな。息子に君付けって言うのはおかしいか! わかったよ、キリヤ」
キリヤの言葉に満面の笑みでそう答えた父。
これで僕たちは、本当の親子になれたんだ――
そう思いながら、キリヤは嬉しそうに微笑んだのだった。
「ああ、そうだ。せっかくだから、これから晩酌でもどうかな? もう成人しているだろう?」
「あ……せっかくだけど、やめておくね。外に出られていても、僕はまだS級能力者であることに変わりはないんだ。だからもし能力の制御が効かなくなったらって思うと怖くてね」
申し訳なさそうな顔でそう言うキリヤ。
別世界にいた時は、そんな心配もなかったから普通に晩酌なんてしていたけれど。でもこの世界の僕は『白雪姫症候群』のS級クラスの能力者だから――
しかし、いつかはこの世界でも父とお酒の飲みかわせたらいいな――と思うキリヤだった。
「そうか……ごめんな、私も気が付かなくて」
「ううん。僕こそ、ごめんね……でも、父さんは飲みなよ! 僕はジュースで乾杯するからさ!」
「わかった。すまないね、私だけ……じゃあ、準備を――」
父がそう言って立ち上がると、母がちょうどリビングに戻って来た。
「晩酌ね! 任せて! 私が腕によりをかけたおつまみを用意するわ」
そう言って嬉しそうに笑う母。
「聞いていたのかい?」
「そんな盗み聞きしたみたいな言い方!」
「実際はどうなの?」
キリヤはそう言って鋭い視線を母に送る。
「『義父さんに謝りたかったからなんだ!!』くらいからしか聞いてないわよ」
「それって、ほとんど聞いているじゃないか!!」
「てへっ☆」
舌をペロリと出してそう言う母。
母さんのてへぺろが見られても、全然嬉しくないから! まあでも。マリアは母さんに似ているから、マリアがやったら可愛いかなとは思ったけれど――!
キリヤはそう思いつつ、話を聞かれていた恥ずかしさで赤面していた。
「あはは、まあいいじゃないか。母さんも心配していたことだろう?」
父はそう言いながら母の方を見て、優しく微笑んだ。
「そう、なの?」
明るく楽観的な性格の母が、まさか自分と父のことを心配してくれていたなんて――とそう思うキリヤ。
「まあね。私が再婚しなければよかったのかなって、悩んだ時期もあったから。でも、安心した。だからありがとう、キリヤ」
そう言って母はキリヤの頭を撫でる。
「ちょっと!? 子ども扱いしないでよ!!」
キリヤは恥ずかしそうな顔でそう言った。
「あはは。ごめん、ごめん。でも母さんの中では、小学生のキリヤで止まっているのよ。あれからずっとキリヤと居られなかったしね……でも、立派な大人になってくれてよかった」
母はそう言って嬉しそうに微笑んだ。
母さんもずっと悩んでいたんだ。やっぱり、今日ここに来たことは正解だったってことだよね――
「母さんもいろいろとごめんね。それと――ずっと気にかけてくれてありがとう!」
「うふふ、当たり前でしょ? だって私は、キリヤのお母さんなんだから!!」
母は自慢げにそう言った。
「うん、そうだね!」
「それじゃあ、おつまみね! ちょっと待っていて!」
それから母はキッチンに向かおうとした時、何かを思い出した顔でキリヤを見た。
「そうだ、キリヤ! 優香ちゃんに寝室案内してあげて! 客間があったでしょう?」
「はーい」
「よろしくね」
そう言ってから母はキッチンへと向かった。
それからキリヤは優香を寝室に通し、リビングに戻ってから父と晩酌をした。
父は酒が回り、すぐに眠ってしまったが、少ない時間の中で父と過ごせたことはキリヤにとってかけがえのない思い出となったのだった。
――翌日。
キリヤたちが目を覚ますと、父とマリアはもう家を出ていた。
「ごめんね。お父さん、仕事に行っちゃったから」
玄関先で母はそう言って申し訳なさそうな顔をする。
「ううん。また帰った時に、たくさん話すから、大丈夫。だからまた来るねって伝えておいて!」
キリヤはすっきりとした顔で微笑みながら母にそう言った。
「わかった。……キリヤ、元気でね」
「母さんも」
「優香ちゃんもまた遊びに来てね! あ、でも次に来るときは、結婚の挨拶の時、かな?」
ニヤニヤと嬉しそうに笑う母。
そんな母の言葉にキリヤは顔を真っ赤にした。
「ちょっと、母さん!!」
キリヤが語気を強めてそう言うと、
「わかりました!」
優香は笑顔で元気よくそう答えた。
「優香まで!?」
「え、違うんですか……?」
悲しそうな顔でキリヤを見つめる優香。
そんな優香を見たキリヤはしどろもどろになり、困惑した表情を浮かべた。
「え、あ……」
「うふふ。じゃあ、2人とも。身体は大切にね! 私はいつでもここで待っているから。だからいつでも帰ってらっしゃい」
母がそう言うと、
「うん!」
「は、はい」
キリヤと優香はそう返したのだった。
「じゃあ、行ってらっしゃい」
「いってきます!」
キリヤと優香は声を合わせてそう言って、桑島家を後にしたのだった。
――電車内にて。
「本当に素敵なご両親だったね」
「うん!」
「それと――行ってらっしゃい、だって」
恥ずかしそうにそう言う優香。
きっと、そう言われたことが嬉しかったのかな――とキリヤは思い、微笑んだ。
「そうだね、それは、優香ももう家族ってことなんだと思うよ」
「……そうだと、いいな」
優香はそう言って、嬉しそうに笑った。
それからキリヤは優香と共に研究所へ戻って行ったのだった。
父さんのことも慎太のことも、僕は1人ですべてを決めつけていた――でも、現実は違っていて。
過去は何も変わらないけれど、この先の未来は今の僕が作っていける。
慎太の生きた証、そして家族の絆。僕はそのすべてを大切に、この先も歩んでいこう。
これまでの過去との決着。そう、ここが1つの終着点。そして、僕はまた次の路へと向かっていく――。
「父さん、キリヤでいいよ」
「あ、あはは! そうだな。息子に君付けって言うのはおかしいか! わかったよ、キリヤ」
キリヤの言葉に満面の笑みでそう答えた父。
これで僕たちは、本当の親子になれたんだ――
そう思いながら、キリヤは嬉しそうに微笑んだのだった。
「ああ、そうだ。せっかくだから、これから晩酌でもどうかな? もう成人しているだろう?」
「あ……せっかくだけど、やめておくね。外に出られていても、僕はまだS級能力者であることに変わりはないんだ。だからもし能力の制御が効かなくなったらって思うと怖くてね」
申し訳なさそうな顔でそう言うキリヤ。
別世界にいた時は、そんな心配もなかったから普通に晩酌なんてしていたけれど。でもこの世界の僕は『白雪姫症候群』のS級クラスの能力者だから――
しかし、いつかはこの世界でも父とお酒の飲みかわせたらいいな――と思うキリヤだった。
「そうか……ごめんな、私も気が付かなくて」
「ううん。僕こそ、ごめんね……でも、父さんは飲みなよ! 僕はジュースで乾杯するからさ!」
「わかった。すまないね、私だけ……じゃあ、準備を――」
父がそう言って立ち上がると、母がちょうどリビングに戻って来た。
「晩酌ね! 任せて! 私が腕によりをかけたおつまみを用意するわ」
そう言って嬉しそうに笑う母。
「聞いていたのかい?」
「そんな盗み聞きしたみたいな言い方!」
「実際はどうなの?」
キリヤはそう言って鋭い視線を母に送る。
「『義父さんに謝りたかったからなんだ!!』くらいからしか聞いてないわよ」
「それって、ほとんど聞いているじゃないか!!」
「てへっ☆」
舌をペロリと出してそう言う母。
母さんのてへぺろが見られても、全然嬉しくないから! まあでも。マリアは母さんに似ているから、マリアがやったら可愛いかなとは思ったけれど――!
キリヤはそう思いつつ、話を聞かれていた恥ずかしさで赤面していた。
「あはは、まあいいじゃないか。母さんも心配していたことだろう?」
父はそう言いながら母の方を見て、優しく微笑んだ。
「そう、なの?」
明るく楽観的な性格の母が、まさか自分と父のことを心配してくれていたなんて――とそう思うキリヤ。
「まあね。私が再婚しなければよかったのかなって、悩んだ時期もあったから。でも、安心した。だからありがとう、キリヤ」
そう言って母はキリヤの頭を撫でる。
「ちょっと!? 子ども扱いしないでよ!!」
キリヤは恥ずかしそうな顔でそう言った。
「あはは。ごめん、ごめん。でも母さんの中では、小学生のキリヤで止まっているのよ。あれからずっとキリヤと居られなかったしね……でも、立派な大人になってくれてよかった」
母はそう言って嬉しそうに微笑んだ。
母さんもずっと悩んでいたんだ。やっぱり、今日ここに来たことは正解だったってことだよね――
「母さんもいろいろとごめんね。それと――ずっと気にかけてくれてありがとう!」
「うふふ、当たり前でしょ? だって私は、キリヤのお母さんなんだから!!」
母は自慢げにそう言った。
「うん、そうだね!」
「それじゃあ、おつまみね! ちょっと待っていて!」
それから母はキッチンに向かおうとした時、何かを思い出した顔でキリヤを見た。
「そうだ、キリヤ! 優香ちゃんに寝室案内してあげて! 客間があったでしょう?」
「はーい」
「よろしくね」
そう言ってから母はキッチンへと向かった。
それからキリヤは優香を寝室に通し、リビングに戻ってから父と晩酌をした。
父は酒が回り、すぐに眠ってしまったが、少ない時間の中で父と過ごせたことはキリヤにとってかけがえのない思い出となったのだった。
――翌日。
キリヤたちが目を覚ますと、父とマリアはもう家を出ていた。
「ごめんね。お父さん、仕事に行っちゃったから」
玄関先で母はそう言って申し訳なさそうな顔をする。
「ううん。また帰った時に、たくさん話すから、大丈夫。だからまた来るねって伝えておいて!」
キリヤはすっきりとした顔で微笑みながら母にそう言った。
「わかった。……キリヤ、元気でね」
「母さんも」
「優香ちゃんもまた遊びに来てね! あ、でも次に来るときは、結婚の挨拶の時、かな?」
ニヤニヤと嬉しそうに笑う母。
そんな母の言葉にキリヤは顔を真っ赤にした。
「ちょっと、母さん!!」
キリヤが語気を強めてそう言うと、
「わかりました!」
優香は笑顔で元気よくそう答えた。
「優香まで!?」
「え、違うんですか……?」
悲しそうな顔でキリヤを見つめる優香。
そんな優香を見たキリヤはしどろもどろになり、困惑した表情を浮かべた。
「え、あ……」
「うふふ。じゃあ、2人とも。身体は大切にね! 私はいつでもここで待っているから。だからいつでも帰ってらっしゃい」
母がそう言うと、
「うん!」
「は、はい」
キリヤと優香はそう返したのだった。
「じゃあ、行ってらっしゃい」
「いってきます!」
キリヤと優香は声を合わせてそう言って、桑島家を後にしたのだった。
――電車内にて。
「本当に素敵なご両親だったね」
「うん!」
「それと――行ってらっしゃい、だって」
恥ずかしそうにそう言う優香。
きっと、そう言われたことが嬉しかったのかな――とキリヤは思い、微笑んだ。
「そうだね、それは、優香ももう家族ってことなんだと思うよ」
「……そうだと、いいな」
優香はそう言って、嬉しそうに笑った。
それからキリヤは優香と共に研究所へ戻って行ったのだった。
父さんのことも慎太のことも、僕は1人ですべてを決めつけていた――でも、現実は違っていて。
過去は何も変わらないけれど、この先の未来は今の僕が作っていける。
慎太の生きた証、そして家族の絆。僕はそのすべてを大切に、この先も歩んでいこう。
これまでの過去との決着。そう、ここが1つの終着点。そして、僕はまた次の路へと向かっていく――。
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