白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

文字の大きさ
459 / 501
アフターストーリー

第4話ー② 夢、叶うまで

しおりを挟む
 全国ツアーが決まってから、数日後――。

 しおんと真一は事務所のレッスンルームでライブを見据えた練習を始めていた。

「――ここ、もっとあがる曲にするか?」
「うーん。そうだね。でも後半に向けて盛り上げたいし、前半はミドルテンポの曲がいいかな」
「そうか。そうしよう!」

 そんなこんなで練習は続き、数時間後が経っていた。

「今日はこれくらいにしようか」

 しおんがアコースティックギターを下ろしながら真一にそう言うと、

「そうだね。根詰めしすぎるのも良くはないし」

 真一はそう言ってはちみつジンジャードリンク(あやめの指導の下、真一が自作したもの)を飲んだ。

「おう! じゃあ、帰ろうぜ!」

 そして2人は事務所のレッスンルームを後にした。



 ――帰宅途中。

「そういえば、凛子の件。よかったね」

 真一は隣を歩くしおんの顔を見て、ニヤリと笑いながらそう言った。

「よ、よかったって何が!?」

 しかも、なんだその何かを含んだ顔は――!

 しおんはそう思いながら、狼狽える。

「え、だって……一緒にライブをしたかったんでしょ?」

 そう言って真一は首を傾げた。

 そんな真一を見て、しおんは自分が変な勘違いをしてしまったことを少し恥ずかしく思った。

 いや、今のは紛らわしい言い方をした真一が悪い――!

 しおんはそれからため息を吐くと、

「まあ、そうだけどさ。でもなんだか、緊張するな……」

 そう言って顔を強張らせた。

「僕たちは僕たちにできる音楽をやればいい。それに、せっかくに全国ツアーでしょ。ファンの人たちが楽しんでくれるようなライブにすることが、大事なんじゃない?」

 真一はそう言って微笑む。

 ファンの人たちが楽しんでくれるライブ、か――

「ああ、そうだな。楽しもう! 俺たちも!!」

 しおんは満面の笑みで真一にそう答えた。

「うん! その意気だよ」

 そして真一としおんは住んでいるシェアハウスへと戻って行った。



 ――シェアハウスにて。

「ただいま戻りました」

 しおんがそう言って、真一と共に屋内に入ると、

「おう! お帰り!! 待ってたぞ!!」

 『ASTERアスター』のドラマー、哲郎てつろうは共同のキッチンスペースから顔を出してそう言った。

 筋トレで鍛えられているその身体に、人気カフェで見たことのあるような緑のスタイリッシュなエプロンというミスマッチな姿で、今日も夕食の準備をしてくれていたんだろうな、としおんは微笑む。

「ただいまです……」

 真一は恥ずかしそうに哲郎へそう言った。

「おお! クールな真一が珍しく、ただいまの挨拶を!! 嬉しいねえ」

 そう言ってニコニコと笑う哲郎。

 哲郎の言葉を聞いた真一は、顔を赤くしてカタカタと震えた。

「ぷっ。照れてんのか、真一」

 そう言って肩を震わせるしおん。

「う、うるさいっ!!」

 そう言って真一はしおんを睨みつける。

 しおんはそんな真一を見ながら、腹を抱えて大笑いをしたのだった。

「んじゃ、晩飯の用意は俺と陽太ようたでしたから、お前らはさっさと着替えてこいよ!」
「忙しいのに、いつもありがとうございます」

 しおんがそう言って軽く頭を下げると、

「良いってことよ! ツアー決まってお前らだって忙しいだろ? それに。可愛い後輩の世話をするのが、先輩の役目ってもんだ!」

 そう言って哲郎はニッと笑った。

「あ、ありがとうございます……」

 真一は嬉しそうに小さな声でそう言った。

 しおんはそんな真一を見て微笑んだのち、「じゃあ、また」と哲郎に告げて、真一と共に2階にある自分の部屋へ向かった。



 ――しおんの部屋にて。

 しおんは持っていたアコースティックギターを下ろし、胡坐をかいて座った。

「はあ。今日も良い音を出せたな……」

 そう呟きながら、天井を見つめるしおん。

 凛子もツアーに――

 そう思い、しおんは微笑んでいた。

「ちゃんとライバルって思ってくれているのかな」

 そしてしおんはふと、最近の凛子の活躍を思い返す。


 * * *


 昼の時間帯で放映されていた情報番組に、凛子は出演していた。

『朝の連続テレビドラマでの主演が決まりましたね!』

 インタビュアーはそう言って凛子にマイクを向ける。

『はい! 前回は台詞一言で終わってしまう役でしたので、今回はまさかという思いです!』

 凛子は胸に手を当てて、嬉しそうに笑ってそう言った。

『それでは、楽しみにしてくださっているファンの皆さんへ一言、お願いします!』

 凛子はカメラに視線を向けると、

『皆さんの朝にたくさんの笑顔をお届けできるよう、精進いたします! お楽しみに!!』

 そう言って満面の笑みをしたのだった。

『はい、ありがとうございました! 知立ちりゅう凛子さんでした!』


 * * *


「朝の連続テレビドラマって、若手女優の登竜門みたいなもん、だよな。それに撮影もすごくタイトだって、昔テレビで観たことあったけど……スケジュール的に俺たちのツアーに参加して大丈夫なのか?」

 そんなことを呟き、腕を組んで「うーん」と唸るしおん。

 でも、もしそんな大変な中で参加してくれるって言うのなら、俺はそれに応えないとな――!

「よっし、新曲でも作るか!!」

 そう言ってアコースティックギターを手に取るしおん。すると、

「しおん、着替えた? みんな待ってるよ」

 扉越しにそう言う真一の声が聞こえる。

「あ、ああ! ちょっと先に行っていてくれ!」
「わかった」

 そして真一はしおんの部屋の前から去って行った。

「まあ飯が終わってからにすっか」

 それからしおんは着替えを済まし、部屋を出て、真一たちと夕食を楽しんだのだった。



 ――夕食後。

「じゃあ、気を取り直して――」

 そしてアコースティックギターを手に取り、しおんは作曲を始める。

 真一、驚くかな――

 そんなことを思いながら、ニヤニヤと笑いながらギターの音を鳴らすしおん。

 そして、

「しおん? ちょっと入るよ」

 そう言って真一が部屋に入ってきた。

「し、真一!?」
「はあ。やっぱり――」

 ギターを抱えるしおんを見て、そう呟く真一。

「なんで!?」
「いや。隣の部屋だし。それに、ここのシェアハウスは防音設備があるって言っても多少は聴こえるんだよ」
「あ……」

 そして真一はしおんの隣に腰を下ろす。

「新曲作るのなら、僕にも相談してよ。僕たちは……い、一緒にやっているんだから」

 恥ずかしそうにそう言う真一。

「ははは! そうだよな! ごめんごめん!!」

 そう言って頭を掻くしおん。

 俺はまた1人で勝手に先走っちまったってことか――

「それで? どんな曲にするの?」

 そう言いながら、真一はしおんの前に広げられているノートを覗き込む。

「うーん。イメージはまだ固まっていないんだよな……でも、せっかく凛子もライブに来るのなら、一緒に楽しめる曲がいいなって思ってさ!」

 しおんはそう言ってニッと笑う。

「ああ、そういうこと。凛子のために曲を書いていたわけね」

 真一はノートを見ながら、淡々とそう言った。

「は、はあ!? そういうことじゃねえって!!」
「今、そういうことっぽいことを言っていたよ」

 そう言って楽しそうに笑う真一。

「だから違うって!! とりあえず、新曲作るぞ!!」
「はいはい」

 それからしおんと真一は時間が許す限り、新曲の制作を続けたのだった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

【完結】黒の花嫁/白の花嫁

あまぞらりゅう
恋愛
秋葉は「千年に一人」の霊力を持つ少女で、幼い頃に龍神――白龍の花嫁として選ばれていた。 だが、双子の妹の春菜の命を救うために、その霊力を代償として失ってしまう。 しかも、秋葉の力は全て春菜へと移り、花嫁の座まで奪われてしまった。 それ以来、家族から「無能」と蔑まれながらも、秋葉は失われた力を取り戻すために静かに鍛錬を続けていた。 そして五年後、白龍と春菜の婚礼の日。 秋葉はついに霊力が戻らず、一縷の望みも消えてしまった。 絶望の淵に立つ彼女の前に、ひとりの青年が現れる。 「余りもの同士、仲良くやろうや」 彼もまた、龍神――黒龍だった。 ★ザマァは軽めです! ★後半にバトル描写が若干あります! ★他サイト様にも投稿しています!

黄泉がえり陽炎姫は最恐魔王に溺愛される

彪雅にこ
恋愛
「ああ、私、とうとう死んでしまうのね…」 侯爵令嬢フェリシアは、命の危機に瀕していた──。 王太子の婚約者だったフェリシアは、何者かの手にかかり、生死の境を彷徨い黄泉へと渡りかける。奇跡の生還を果たしたものの、毒の後遺症で子を成せなくなったと診断され、婚約は破棄に。陽炎姫と呼ばれる日陰の存在となっていた。 まるで邸を追い出されるかのように隣国の好色伯爵の元へ嫁がされる途中で馬車が暴漢に襲われ、再び命の危険に晒されたフェリシアを救ったのは、悪魔のような山羊の頭蓋骨の面を被った魔王だった。 人々から最恐と怖れられる魔王は、なぜフェリシアを助けたのか…? そして、フェリシアを黄泉へと送ろうとした人物とは? 至宝と称えられながらも表舞台から陽炎のように消えた侯爵令嬢と、その強大すぎる魔力と特異な容姿により魔王と恐れられる公爵の、恋と成長の物語。 表紙は友人の丸インコさんが描いてくださいました!感謝♡

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香
ファンタジー
 いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。

貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~

みちのあかり
ファンタジー
同じゼミに通う王子から、ありえないプロポーズを受ける貧乏奨学生のレイシア。 何でこんなことに? レイシアは今までの生き方を振り返り始めた。 第一部(領地でスローライフ) 5歳の誕生日。お父様とお母様にお祝いされ、教会で祝福を受ける。教会で孤児と一緒に勉強をはじめるレイシアは、その才能が開花し非常に優秀に育っていく。お母様が里帰り出産。生まれてくる弟のために、料理やメイド仕事を覚えようと必死に頑張るレイシア。 お母様も戻り、家族で幸せな生活を送るレイシア。 しかし、未曽有の災害が起こり、領地は借金を負うことに。 貧乏でも明るく生きるレイシアの、ハートフルコメディ。 第二部(学園無双) 貧乏なため、奨学生として貴族が通う学園に入学したレイシア。 貴族としての進学は奨学生では無理? 平民に落ちても生きていけるコースを選ぶ。 だが、様々な思惑により貴族のコースも受けなければいけないレイシア。お金持ちの貴族の女子には嫌われ相手にされない。 そんなことは気にもせず、お金儲け、特許取得を目指すレイシア。 ところが、いきなり王子からプロポーズを受け・・・ 学園無双の痛快コメディ カクヨムで240万PV頂いています。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...