白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

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アフターストーリー

第4話ー③ 夢、叶うまで

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 ――車内。
 
 仕事を終えた凛子は、自宅へと向かっていた。

「凛子、無理はしていない?」

 ルームミラー越しにマネージャーは凛子にそう尋ねた。

「大丈夫ですよ。お芝居もアイドル活動も楽しいですから」

 凛子は座席シートに身を預けたまま、笑顔でそう答えた。

「そう。それならよかったわ」

 ホッとした声でマネージャーはそう言った。

 アイドル活動が原因で私が『白雪姫症候群スノーホワイト・シンドローム』に覚醒したこと、まだ気にしているのかな――

 そう思いながら、凛子は運転するマネージャーの後姿を見つめた。

「――そういえば、そろそろよね」
「そうですね」

 マネージャーが言った「そろそろ」と言うのは、凛子のアイドル活動卒業の日を示していた。

「もう少し早くてもいいんじゃない? だって朝ドラの主演も決まったし、これ以――」
「いいえ。私は、ちゃんと最後までアイドルをやりたいですから」

 凛子はしっかりとした口調でそう告げた。

 昔の私なら、絶対にこんなことを言わなかったのにね――

 そんなことを思い、凛子は小さく笑う。

「そっか。うん、わかったわ。じゃあ私は、凛子が最後までアイドルでいられるように支えるわ」
「ええ、頼りにしていますね。マネージャー」
「うん」

 そして凛子は帰宅したのだった。



 ――凛子の部屋。

「ああああ……」

 凛子はそう言いながら、ベッドに顔を埋めた。

 大丈夫とは言いつつも、やっぱり疲れは溜まるものだね――

 そして体勢を変えて、天井を見る凛子。

「『はちみつとジンジャー』の全国ツアー、か……もうそこまで来ているなんてね」

 私はまだ、役者として活動をできていない。そんな私を彼らは……しおん君はライバルと思ってくれるでしょうか――

「はあ」

 それから凛子は、先日観た『はちみつとジンジャー』の音楽番組を思い出す。


 * * *


『さて、先日発売された1stアルバムのことをお聞かせください!』

 司会の女性が笑顔でそう尋ねると、

『はい! 今回のアルバムは自分たちのファーストシングルからライブのみで披露してきた楽曲を含むアルバムになっています!』

 しおんははつらつとそう答えた。

『なるほど。それは『はちみつとジンジャー』の歴史が詰まった一枚という事ですね! そしてそのアルバムですが、なんと週間オリコンランキング1位でしたよね! そちらのお気持ちをお聞かせください!!』

 しおんは頭をの後ろを掻くと、

『いやあ、まさか……って思いましたよ! でも、自分と真一が揃えばいつかはって思っていたので、これをきっかけにもっと上を目指していきたいです! そして、応援してくださるファンの皆さんには、本当に感謝しています! みんな、ありがとう!!』

 カメラ目線で喜色満面にそう言った。

 そんなしおんを観ていた司会の女性はクスクスと笑いながら、

『ありがとうございます! しおん君はいつもそんなに元気いっぱいなんですか? そこのところ、真一君はどう思います?』

 今度は真一の方を見てそう尋ねる。

 唐突に話を振られ、真一はビクッと肩を少し震わせてから、

『あ、はい……いつも騒がしくて、手を焼いています。ステージでも家でも、こんな感じなんですよね』

 困った顔でそう答えた。

『はあ!? そんなことないだろ!! むしろ、真一の方が――!』
『でも――そんなしおんだから、僕は一緒に音楽をやりたいと思うんだと思います』

 真一はしおんの言葉を遮り、笑顔でそう言った。

『真一……』
『うふふ。そんな2人の絆を確かめることができたところで、一曲ご披露いただきましょう! お2人は演奏の準備をお願いします!!』

 それから『はちみつとジンジャー』はアルバムに収録されているデビュー曲、『風音のプレリュード』を披露したのだった。


 * * *


「まさかそんな人気アーティストになるなんてね……私も、負けていられない」

 役者としてだけじゃなく。アイドルとして、音楽をやる人間として――

 凛子はそう思いながら、唇をキュッと結ぶ。

 そして凛子はこれまで以上に活動へ力を入れていくのだった。


 * * *


 ツアーが決まって1か月が経過した頃――

 事務所のレッスンルームでしおんと真一は新曲を制作していた。

「まとまらないな……」

 ため息交じりにそう言うしおん。

「別に新曲はなくてもいいんじゃない?」

 真一は、はちみつジンジャードリンクを持ちながらそう言った。

「そうだけどさ」

 そう言いながら、「うーん」としおんは唸る。

「まあ、凛子のために何かしてあげたい気持ちはわかるけど――」
「だから凛子ためじゃないって!」
「はいはい」

 真一はそう言って、はちみつジンジャードリンクを口に含む。

「ぐぅ」

 真一の奴、俺たちのことをちょっとからかってるよな、絶対に――

 そう思いながら、恨めしく真一を見るしおん。


「――そういえば。凛子と全然打ち合わせもしていないけど……その辺は大丈夫なの?」

「あ……確かに」

「『ASTERアスター』の先輩たちとは、大体話はまとまった。でも凛子とは、あれから一度も連絡を取っていないよね。新曲のこともいいけど、まずはそっちだと思うんだ」


 真一の言う事も一理ある――

「社長に言って、凛子の事務所に連絡を取ってもらわないとな」

 腕を組みながら困り顔でそう言うしおん。

「ねえ」
「あ、なんだ?」
「ずっと疑問に思っていたんだけどさ。しおんと凛子ってあんなに仲がいいのに、なんで連絡先の一つも知らないわけ? 意味がわからないんだけど」

 真一は首を傾げてそう言った。

「べ、別に仲良くねえよ! むしろ仲は悪い方だろうが!!」
「ふーーん」

 そう言って怪訝な顔をする真一。

「なんだよ、その目……真一だって、俺以外に連絡とってる奴いんのか? 事務所関係者以外で!!」
「いるよ」

 そう言ってスマホを取り出す真一。そして真一は自身のチャットアプリの履歴をしおんに見せた。

「なん……だと!? まゆおと結衣とのグループチャットじゃないか! なんで俺、入れてもらってないわけ!?」
「え、入れてほしかったの?」

 ぽかんとした顔をする真一。

 少しくらいは俺の加入を検討してくれても良かったんじゃないか――!?

 それからしおんは小さくため息を吐き、

「そうだけど――でも、いいや! お前ら3人って、なんだか特別って言うか……俺がその中に入るのはなんか変な気がするから」

 諦めた表情でそう言った。

 だって幼馴染だもんな、3人は。だから俺とは違う絆ってもんがあるだろうし――

「うーん。まゆおも結衣も良いって言いそうだけど」

 聞いてみようか、と真一は真剣な顔でそう言った。

 もしかして俺、友達のいない可哀そうな人間だと思われてる――!?

 それを否定できない自分に少し悲しくなるしおん。

「だからいいって! まあそれはそれとしてだ――俺と凛子は仲良くねえ!!」
「はあ、わかった。じゃあ、社長にお願いしよう」
「それでいいんだよ!」

 そう言って鼻を鳴らしながら、腕を組んで座るしおん。

「はいはい」

 ため息交じりに真一はそう言ったのだった。

 そして後日、しおんたちはついに凛子と再会することになったのだった。
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