こっぴどく振られたこともあったけど、今はけっこう幸せです

せいめ

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02 マリアとテッド

 マリアは、王都から列車で数時間かかる田舎の村で暮らしている16歳の普通の女の子だ。
 色褪せた金髪にクルクルの天然パーマの髪が嫌で、いつも三つ編みにしている。三つ編みにしないと、髪が爆発したようになってしまうからだ。この髪を何とかしたいと思っていたが、田舎で貧しい暮らしをしている農民の娘であるマリアには、髪をきつく三つ編みにしてまとめるくらいしか出来なかった。

 顔も特別可愛いわけではないが、村の人たちからは愛嬌があるとよく褒められる。愛嬌があって元気だから、農家の嫁には丁度いいと。
 こんな環境で育ったマリアは、みんなが顔見知りのこの土地で、誰かと結婚して子供を産んで育てることが自分の人生の全てなのだと思っていた。

 そんなマリアには二つ年上の恋人がいる。幼馴染のテッドだ。
 テッドは茶色の髪に涼しげな黒い目、整った顔立ちの長身で運動神経がよく、村の女の子たちから人気だった。
 活発でお転婆だったマリアは、騎士を目指して鍛練をしていたテッドと一緒になって体を動かしたり、差し入れのクッキーを届けたりしていたら、テッドから告白されて恋人同士になっていた。
 マリアは、子供の頃からテッドのことが好きだったので、告白された時はとても嬉しかった。

 テッドは優しくて真面目な性格で、付き合い始めてすぐに、マリアの両親に交際の許可を取りに来てくれた。
 そしてテッドの両親にも付き合っていることや、いずれは結婚したいと思っていることも話してくれた。

「マリアちゃんがうちの嫁に来てくれるなら嬉しいね。元気で明るいから、うちの中も明るくしてくれるだろう」

「そうだな! やっぱり元気で明るい子が一番だ。
 結婚したら忙しく働かなくてはならないし、家のことも守らなくてはいけない。だから、少しくらいお転婆で活発な方がいい。
 マリアが嫁にくる日を今から楽しみにしてるよ」

 テッドの両親も二人の交際を喜んでくれていた。
 その頃のマリアは、大好きなテッドと恋人になれただけでなく、お互いの両親からも認められたことでとても幸せに感じていた。

 しかしテッドは十八歳になると、王都の騎士団に入りたいと言い出す。
 テッドが騎士になりたくて子供の頃から努力していたことは知っていた。近くの町にも騎士団はあるので、そこに入団希望をしているのかと思っていたのだが、テッドは昔から王都騎士団に入りたいと考えていたようだ。
 王都騎士団で能力が認められると、王都に邸を持つ貴族から護衛として雇ってもらえることがあるらしい。
 貴族の護衛騎士の方が給料がかなり高いらしく、テッドは王都騎士団で経験を積んだら、貴族の護衛騎士になりたいということを教えてくれた。
 優しいテッドは、田舎で貧しい暮らしをしている家族を楽にさせてあげたいという気持ちが強いらしい。

「マリア。俺は王都騎士団に入って、絶対に出世してやる。
 騎士として身を立てることが出来たら、マリアを王都に呼び寄せる。そしたら結婚しよう。
 それまで数年かかると思うが、俺を信じて待っていて欲しい。必ずマリアを迎えに来るよ」

 マリアは大好きなテッドと離れるのは寂しかったが、そこまで真剣に自分との将来を考えてくれていたことはとても嬉しかった。
 それに、大切なテッドの夢はマリアの夢でもあったので、応援してあげたいと思ったのだ。

「離れるのは寂しいけど、テッドのことを応援しながら待ってるよ。
 でも、待つのは五年までだよ。あまり遅くなるとお父さんとお母さんが心配しちゃうから」

「五年後はマリアも二十一歳だもんな。
 そこまで待たせないから大丈夫だ。
 マリア……、愛してるよ。お前のために頑張ってくるからな」

「私もテッドを愛してる。手紙書くから、テッドも返事書いてね」

「ああ。約束するよ」

 テッドは王都騎士団の入団試験に合格し、見習い騎士として働くことになり、すぐに王都に旅立って行った。
 ずっと一緒だったテッドがいなくなった後、マリアは寂しくて仕方がなかった。
 それでも手紙のやり取りは沢山していたし、給料が入ったからとハンカチやスカーフ、髪飾りなどを贈ってくれたりしていたので、離れていてもテッドからの愛が沢山伝わってきたので安心できた。

 しかし、それから数ヶ月経つ頃にはテッドから手紙が届かなくなっていた。マリアが手紙を出しても返事すらこない。
 テッドは少し前に見習い騎士から正騎士になれたらしく、仕事が忙しいとは言っていた。
 何かあったのかと不安になったマリアは、自分の両親やテッドの両親に勧められたこともあって、王都に会いに行くことにしたのだ。

 しかし、会いに行ったマリアが見たのは、テッドの酷い裏切りだった……


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