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10 協力
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セシリアとマクラーレン様と待ち合わせをしたのは、王宮内にある図書館だった。
王宮の図書館は、国内一の蔵書数なので非常に広く、館内には個室の勉強部屋まであってとても便利な場所だ。
王太子妃教育で登城しているセシリアと、王太子殿下の側近をしているマクラーレン様の昼休みに合わせて、図書館で会おうということになったのだが……
「シーウェル伯爵令嬢。ずっと君のことが気になっていた。大丈夫だったか?」
マクラーレン様って、こんな風に話しかけてくる人だったかしら?
セシリアは従兄妹のマクラーレン様に対して、堅物だとか無愛想だとかよく辛口なことを言っていて、私から見ても、口数が少なくて近寄り難いイメージがあった。
プラチナブロンドのサラサラの髪に、灰色の瞳の整った顔立ちの美丈夫であるマクラーレン様は、次期公爵ということもあり、密かに彼を狙っている御令嬢が沢山いると聞いたことはある。
今までは婚約者のアストン様が大好きすぎて、他の殿方は全く目に入ってこなかったから気がつかなかったけど、こうやって見ると確かにマクラーレン様はモテそうな容姿をしている。しかも、三つ年上のマクラーレン様は、低くて聞き心地のいい大人っぽい声をしているのよね。
そんなマクラーレン様から〝気になっていた〟なんて声を掛けられたら、世の御令嬢方は勘違いしてしまうでしょうね。
でも私は勘違いしないわ。マクラーレン様はお優しい方だから、従兄妹の親友である私のことを心配してくれただけよ。
「マクラーレン様。先日は助けて下さってありがとうございました。醜態を晒してしまい、お恥ずかしい限りですわ。
マルコリーゼのチョコも嬉しかったです。とても美味しく頂きました。本当にありがとうございました」
お礼を伝えると、マクラーレン様が安堵の表情を浮かべるのが分かった。
「友人が美味しい物を食べると人は元気になると言っていたから、君がチョコが好きだと聞いて用意したんだ……
厚かましいことをしてしまったかと、時間が経ってから後悔したが、君が喜んでくれたなら良かった」
フッと笑ったマクラーレン様の顔は危険なほど美しいものだった。
こういうのを眼福と言うのかしら?
「あー、はいはい。ルイスは良かったわね。
あの日フローラはマルコリーゼのチョコを美味しい、美味しいって沢山食べていたから、また届けてちょうだい。次はもっと沢山持ってきてね。
ほら、今後の計画を立てるわよ」
セシリアの言葉にハッと現実に戻される。
「シーウェル伯爵令嬢。セシリアから話は聞いているが、伯爵家を出るって考えは本気か?
君は真面目で淑女の見本のような御令嬢だと思っていたから、自分の結婚式当日に家出を計画するなんて、意外だと思ってしまったんだ」
「結婚式当日に私がいなくなることが、あの男と義妹が一番困ることだろうと思ったのです。
当日に私がいなくなれば、父もアストン侯爵様も仕方なく二人を結婚させると思います。
しかし、あの二人は隠れて付き合うくらいならいいかもしれませんが、夫婦としては上手くいかないでしょう。義妹は愛人は務められても、侯爵夫人は務まりませんわ。あの男も義妹に手を出したことをいつか後悔するでしょう。それが私の復讐です。私はあの二人を許さない。
……マクラーレン様はこんな私に幻滅しますよね?」
私は二人への怒りを本音で語ってしまった。
こんな私の本性を知って、マクラーレン様は引いてしまったかもしれない。
「君がそこまで追い詰められるほど、あの男を真剣に愛していたということだろう?」
「……そうですね、大好きでしたわ。婚約出来て嬉しかったですし、本気で愛していました。これからずっとあの人と一緒に生きていくのだと思っていました。だから、裏切りが許せないのです……」
この話をしていると、また涙が出てきてしまいそうになる。でも、もう人前では泣きたくない。
「分かった。私は君の復讐に協力する」
「……え?」
「はあ? ルイスが復讐を手伝うですって?
それよりもフローラが伯爵家を出た後に住む場所と仕事を紹介してあげてよ。待遇の良い仕事じゃないとダメよ。住む場所も、綺麗でちゃんとした使用人がいる所にしてよね」
マクラーレン様がこんなことに手を貸すような人には見えなかったから、あっさりと私の復讐に協力すると言ってくれたことに、私もセシリアも驚きを隠せなかった。
「仕事も住む場所もちゃんと考えてあるから大丈夫だ。
だが、私もシーウェル伯爵令嬢を裏切ったあの男と女を許せない。だから私も君の復讐に協力させてもらう。
そのかわり全て終わったら、また前を向いて新しい生活を頑張れると約束してくれるか?」
マクラーレン様とここまで話をしたのは初めてなのに、この人は本気で私のことを心配してくれているようだ。
何だか胸が温かくなってきた。
「全て終わったら、前を向いて頑張っていきますわ。よろしくお願いします」
「よろしく!」
そして私達は今後の計画を話し合うことにした。
王宮の図書館は、国内一の蔵書数なので非常に広く、館内には個室の勉強部屋まであってとても便利な場所だ。
王太子妃教育で登城しているセシリアと、王太子殿下の側近をしているマクラーレン様の昼休みに合わせて、図書館で会おうということになったのだが……
「シーウェル伯爵令嬢。ずっと君のことが気になっていた。大丈夫だったか?」
マクラーレン様って、こんな風に話しかけてくる人だったかしら?
セシリアは従兄妹のマクラーレン様に対して、堅物だとか無愛想だとかよく辛口なことを言っていて、私から見ても、口数が少なくて近寄り難いイメージがあった。
プラチナブロンドのサラサラの髪に、灰色の瞳の整った顔立ちの美丈夫であるマクラーレン様は、次期公爵ということもあり、密かに彼を狙っている御令嬢が沢山いると聞いたことはある。
今までは婚約者のアストン様が大好きすぎて、他の殿方は全く目に入ってこなかったから気がつかなかったけど、こうやって見ると確かにマクラーレン様はモテそうな容姿をしている。しかも、三つ年上のマクラーレン様は、低くて聞き心地のいい大人っぽい声をしているのよね。
そんなマクラーレン様から〝気になっていた〟なんて声を掛けられたら、世の御令嬢方は勘違いしてしまうでしょうね。
でも私は勘違いしないわ。マクラーレン様はお優しい方だから、従兄妹の親友である私のことを心配してくれただけよ。
「マクラーレン様。先日は助けて下さってありがとうございました。醜態を晒してしまい、お恥ずかしい限りですわ。
マルコリーゼのチョコも嬉しかったです。とても美味しく頂きました。本当にありがとうございました」
お礼を伝えると、マクラーレン様が安堵の表情を浮かべるのが分かった。
「友人が美味しい物を食べると人は元気になると言っていたから、君がチョコが好きだと聞いて用意したんだ……
厚かましいことをしてしまったかと、時間が経ってから後悔したが、君が喜んでくれたなら良かった」
フッと笑ったマクラーレン様の顔は危険なほど美しいものだった。
こういうのを眼福と言うのかしら?
「あー、はいはい。ルイスは良かったわね。
あの日フローラはマルコリーゼのチョコを美味しい、美味しいって沢山食べていたから、また届けてちょうだい。次はもっと沢山持ってきてね。
ほら、今後の計画を立てるわよ」
セシリアの言葉にハッと現実に戻される。
「シーウェル伯爵令嬢。セシリアから話は聞いているが、伯爵家を出るって考えは本気か?
君は真面目で淑女の見本のような御令嬢だと思っていたから、自分の結婚式当日に家出を計画するなんて、意外だと思ってしまったんだ」
「結婚式当日に私がいなくなることが、あの男と義妹が一番困ることだろうと思ったのです。
当日に私がいなくなれば、父もアストン侯爵様も仕方なく二人を結婚させると思います。
しかし、あの二人は隠れて付き合うくらいならいいかもしれませんが、夫婦としては上手くいかないでしょう。義妹は愛人は務められても、侯爵夫人は務まりませんわ。あの男も義妹に手を出したことをいつか後悔するでしょう。それが私の復讐です。私はあの二人を許さない。
……マクラーレン様はこんな私に幻滅しますよね?」
私は二人への怒りを本音で語ってしまった。
こんな私の本性を知って、マクラーレン様は引いてしまったかもしれない。
「君がそこまで追い詰められるほど、あの男を真剣に愛していたということだろう?」
「……そうですね、大好きでしたわ。婚約出来て嬉しかったですし、本気で愛していました。これからずっとあの人と一緒に生きていくのだと思っていました。だから、裏切りが許せないのです……」
この話をしていると、また涙が出てきてしまいそうになる。でも、もう人前では泣きたくない。
「分かった。私は君の復讐に協力する」
「……え?」
「はあ? ルイスが復讐を手伝うですって?
それよりもフローラが伯爵家を出た後に住む場所と仕事を紹介してあげてよ。待遇の良い仕事じゃないとダメよ。住む場所も、綺麗でちゃんとした使用人がいる所にしてよね」
マクラーレン様がこんなことに手を貸すような人には見えなかったから、あっさりと私の復讐に協力すると言ってくれたことに、私もセシリアも驚きを隠せなかった。
「仕事も住む場所もちゃんと考えてあるから大丈夫だ。
だが、私もシーウェル伯爵令嬢を裏切ったあの男と女を許せない。だから私も君の復讐に協力させてもらう。
そのかわり全て終わったら、また前を向いて新しい生活を頑張れると約束してくれるか?」
マクラーレン様とここまで話をしたのは初めてなのに、この人は本気で私のことを心配してくれているようだ。
何だか胸が温かくなってきた。
「全て終わったら、前を向いて頑張っていきますわ。よろしくお願いします」
「よろしく!」
そして私達は今後の計画を話し合うことにした。
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