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22 閑話 レイモンド
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リリアン・シーウェルはローラの義母の連れ子で、ローラとはタイプの違う人間だ。
見た目は可憐な美少女だが、本性は異性に媚を売る娼婦のような女。この女と関わるのは危険な気がしていたので、大切なローラの義妹ではあるが、私は極力関わらないようにしていた。
そのリリアン・シーウェルはとんでもないことを言い出す。
「私、アストン様のことをずっとカッコいいなぁって思っていたのです。お義姉様と結婚するまででいいので、私の恋人になってくれませんか?
勿論、アストン様はお義姉様の婚約者ですから、秘密の恋人ってことでいいですわ。
アストン様はいつもお義姉様にべったりしてますが、私のこともあんな風に扱って下さい。
お姉様にするみたいに抱きしめて欲しいですし、愛も囁いて欲しいですわ。私のことは『リリー』って呼んで欲しいです」
「断る! 君は私にローラを裏切れと言うのか?
私はローラを愛しているんだ。そんなことは出来ない」
こんな女を恋人にするなんて出来ない。
これ以上、ローラを裏切ることもしたくなかった。
「やだわぁー! 他の女と閨を共にしておきながら、お義姉様を愛しているから裏切りたくないですって?
分かりました。やはり、今夜のことはすぐにお義姉様に報告させて頂きます。
あ、私の友達もアストン様と夫人が個室に入って行くところを見てますから、お義姉様には、友達と一緒に報告してみようかしら」
そこまで言われてしまったら、私は拒否出来なかった。
仮面舞踏会に来てしまったことが、私の破滅の始まりだったのだ。
リリアン・シーウェルは秘密の恋人らしいことをしたいと言いだす。
夜会の途中に二人きりで会って欲しい、会った時は愛を囁いて抱きしめて欲しい、必ず愛称で呼んで欲しい、仮面舞踏会に一緒に参加して欲しいなど、私が困惑することばかりを要求するようになる。
断るとローラに私の不貞のことをバラすと脅されてしまい、私は従うしかなかった。
リリアン・シーウェルと一緒にいる時間はストレスしか感じられず、自分の感情を押し殺して時間が過ぎることを待つ。
このことをローラが知ってしまったら、真面目で品行方正なローラのことだから、私を軽蔑し婚約を解消したいと言い出すだろう。だから絶対にバレてはいけない。私はローラだけは手放せない。
こんな私の心情を読み取ってるのか、リリアン・シーウェルは益々、酷い振る舞いをして私を困らせるようになる。
こんな馬鹿げた関係を続けても上手くいくはずがないことに、私は早く気付くべきだったのだ……
結婚まであと三か月になる頃、夜会でいつものようにローラとダンスを二曲続けて踊った後、私は適当な理由をつけてローラの側を離れた。あの憎い女が待っているから、嫌でも行かなくてはならなかったのだ。
不安そうにするローラの表情を見て、後ろ髪を引かれる思いだった。早くローラの所に戻りたいと考え、あの女の所に行くのだが……
「レイモンド様、『愛してる』って言葉はもっと気持ちを込めて言って下さい。
『リリー』って私を呼ぶ声は、お義姉様を呼ぶ時よりも、もっと優しく呼んでくれないと私は満足出来ませんわ。もう一度、始めからやり直して言ってくれますか? 恋人として大切に扱ってくれないと、お義姉様にバラしますわよ」
リリー・シーウェルは、私が嫌々付き合っているのを分かっているようで、そんな私の態度が気に入らないらしく、色々と注文を付けてくる。
本当に苦痛な時間だ……
「リリー、愛している」
「レイモンド様、私も愛していますわ」
仕方なく、馬鹿げた演技を繰り返していたが、まさかその現場をローラに見られていたとは思わなかった。
「あらっ! 部屋のドアをきちんと閉めたはずなのに、少しだけ隙間が開いてますわ」
「何だって!」
リリアン・シーウェルからの呼び出しを終えて部屋から出て行く時に、閉めたはずのドアが少しだけ開いていることに気付く。その瞬間、嫌な予感がした。
こんな女と二人でいる所を見られたら、私は終わりだ。急いでローラの所に戻るが、彼女の姿が見つからない。
「アストン様。シーウェル伯爵令嬢は体調不良のため、ハワード侯爵令嬢が付き添われ、お帰りになられました」
「……そうか」
会場の給使からローラが帰ったことを知らされる。
具合なんて悪そうには見えなかったが、何かあったか?
私がいない間に誰か嫌な奴に絡まれたか? それとも、飲み物を口にして中に何かが入っていたとか?
ローラを狙う男は沢山いるから心配だ。
不安になった私は、翌日にローラに会いに行くことにした。
部屋にいたローラは顔色が悪く、相当具合が悪そうに見えた。そして、私に対しての態度がいつもと違う。
もしかして……、ローラは何かに気付いたか? それとも、私達のあの姿を見られたか?
いつもなら見舞いに行くと、どんなに具合が悪くても笑顔で喜んでくれたのに、気持ちが悪くて吐き気がするから、しばらくは見舞いを遠慮して欲しいと言われてしまう。
そして、今まではローラの部屋を自由に訪ねることを許されていたのに、具合が悪いことを理由にそれを拒否され、会ってくれなくなってしまった。
見た目は可憐な美少女だが、本性は異性に媚を売る娼婦のような女。この女と関わるのは危険な気がしていたので、大切なローラの義妹ではあるが、私は極力関わらないようにしていた。
そのリリアン・シーウェルはとんでもないことを言い出す。
「私、アストン様のことをずっとカッコいいなぁって思っていたのです。お義姉様と結婚するまででいいので、私の恋人になってくれませんか?
勿論、アストン様はお義姉様の婚約者ですから、秘密の恋人ってことでいいですわ。
アストン様はいつもお義姉様にべったりしてますが、私のこともあんな風に扱って下さい。
お姉様にするみたいに抱きしめて欲しいですし、愛も囁いて欲しいですわ。私のことは『リリー』って呼んで欲しいです」
「断る! 君は私にローラを裏切れと言うのか?
私はローラを愛しているんだ。そんなことは出来ない」
こんな女を恋人にするなんて出来ない。
これ以上、ローラを裏切ることもしたくなかった。
「やだわぁー! 他の女と閨を共にしておきながら、お義姉様を愛しているから裏切りたくないですって?
分かりました。やはり、今夜のことはすぐにお義姉様に報告させて頂きます。
あ、私の友達もアストン様と夫人が個室に入って行くところを見てますから、お義姉様には、友達と一緒に報告してみようかしら」
そこまで言われてしまったら、私は拒否出来なかった。
仮面舞踏会に来てしまったことが、私の破滅の始まりだったのだ。
リリアン・シーウェルは秘密の恋人らしいことをしたいと言いだす。
夜会の途中に二人きりで会って欲しい、会った時は愛を囁いて抱きしめて欲しい、必ず愛称で呼んで欲しい、仮面舞踏会に一緒に参加して欲しいなど、私が困惑することばかりを要求するようになる。
断るとローラに私の不貞のことをバラすと脅されてしまい、私は従うしかなかった。
リリアン・シーウェルと一緒にいる時間はストレスしか感じられず、自分の感情を押し殺して時間が過ぎることを待つ。
このことをローラが知ってしまったら、真面目で品行方正なローラのことだから、私を軽蔑し婚約を解消したいと言い出すだろう。だから絶対にバレてはいけない。私はローラだけは手放せない。
こんな私の心情を読み取ってるのか、リリアン・シーウェルは益々、酷い振る舞いをして私を困らせるようになる。
こんな馬鹿げた関係を続けても上手くいくはずがないことに、私は早く気付くべきだったのだ……
結婚まであと三か月になる頃、夜会でいつものようにローラとダンスを二曲続けて踊った後、私は適当な理由をつけてローラの側を離れた。あの憎い女が待っているから、嫌でも行かなくてはならなかったのだ。
不安そうにするローラの表情を見て、後ろ髪を引かれる思いだった。早くローラの所に戻りたいと考え、あの女の所に行くのだが……
「レイモンド様、『愛してる』って言葉はもっと気持ちを込めて言って下さい。
『リリー』って私を呼ぶ声は、お義姉様を呼ぶ時よりも、もっと優しく呼んでくれないと私は満足出来ませんわ。もう一度、始めからやり直して言ってくれますか? 恋人として大切に扱ってくれないと、お義姉様にバラしますわよ」
リリー・シーウェルは、私が嫌々付き合っているのを分かっているようで、そんな私の態度が気に入らないらしく、色々と注文を付けてくる。
本当に苦痛な時間だ……
「リリー、愛している」
「レイモンド様、私も愛していますわ」
仕方なく、馬鹿げた演技を繰り返していたが、まさかその現場をローラに見られていたとは思わなかった。
「あらっ! 部屋のドアをきちんと閉めたはずなのに、少しだけ隙間が開いてますわ」
「何だって!」
リリアン・シーウェルからの呼び出しを終えて部屋から出て行く時に、閉めたはずのドアが少しだけ開いていることに気付く。その瞬間、嫌な予感がした。
こんな女と二人でいる所を見られたら、私は終わりだ。急いでローラの所に戻るが、彼女の姿が見つからない。
「アストン様。シーウェル伯爵令嬢は体調不良のため、ハワード侯爵令嬢が付き添われ、お帰りになられました」
「……そうか」
会場の給使からローラが帰ったことを知らされる。
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私がいない間に誰か嫌な奴に絡まれたか? それとも、飲み物を口にして中に何かが入っていたとか?
ローラを狙う男は沢山いるから心配だ。
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もしかして……、ローラは何かに気付いたか? それとも、私達のあの姿を見られたか?
いつもなら見舞いに行くと、どんなに具合が悪くても笑顔で喜んでくれたのに、気持ちが悪くて吐き気がするから、しばらくは見舞いを遠慮して欲しいと言われてしまう。
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